8.感染症

ゾコーバ錠(エンシトレルビル)の作用機序【COVID-19】

新型コロナウイルス感染症

2022年6月22日、厚労省の薬食審・医薬品第二部会にて、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」を対象疾患とする新規経口剤のゾコーバ錠(エンシトレルビル)の承認可否が審議されましたが、承認可否の判断は見送りになりました。

塩野義製薬|申請のニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名ゾコーバ錠125mg
一般名エンシトレルビル フマル酸(開発コード:S-217622)
製品名の由来XO(ノックアウト)+ Covid=Xocova?
製造販売塩野義製薬(株)
効能・効果SARS-CoV-2による感染症?
用法・用量1日1回、5日間経口投与?
収載時の薬価

 

審議の概要については以下の通りでした。

ゾコーバ錠の審議の概要について

1.審議結果

  • 本日の議論を踏まえ、さらに慎重に議論を重ねる必要があるとのことであった。
  • 緊急承認については分科会での審議を行うこととされているところ、次回の審議は、分科会と合同で行うこととなった。

2.主な議論

  • 第2b相試験の主要評価項目の結果、副次評価項目の結果、事後解析の結果等を踏まえた有効性の評価について。
  • 動物実験における催奇形性の所見、薬物相互作用の状況、臨床試験における副作用の発現状況等を踏まえた安全性の評価について。
  • 現在承認されている医薬品の状況、本剤による入院・宿泊療養者の隔離期間への影響等を踏まえた臨床的位置付けについて。
  • オミクロン株の流行期に実施された臨床試験であることを踏まえた有効性、臨床的位置付けについて。

3.今後の予定

  • 薬事分科会・部会合同で審議(公開)を行う(日程は調整中)。

厚労省|令和4年6月22日(水)薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 審議の概要について

 

2022年2月に「条件付き早期承認制度」を適用するとして申請されていましたが、その後、2022年5月20日に施行された「緊急承認制度」を適用する申請に切り替えられています。

今回、緊急承認については上位の分科会での審議が必要で、今後、専門部会と分科会が合同で行われる予定とのことです。

 

ただ、緊急承認制度は以下を満たす医薬品とされているため、2つ目の「当該医薬品の使用以外に適当な方法がない」は個人的には満たさないのでは?と思ってしまっています・・・。

  • 国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品であり、
  • かつ、当該医薬品の使用以外に適当な方法がない

厚労省|薬生薬審発0520第1号 令和4年5月20日:緊急承認制度における承認審査の考え方について

 

ご存じの通り、既に「SARS-CoV-2による感染症」を効能・効果とする医薬品は国内で承認されていて、経口薬も登場しているからです。

 

木元 貴祥
承認されれば初の国産の治療薬ですねー。

 

ゾコーバ錠が今後承認されるかどうかは不明ですが、作用機序等について解説していきます!

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは

2019年末頃、中国の中国湖北省武漢市を中心に原因不明の肺炎ウイルスが発生しました。

 

その後、数カ月で日本を含む全世界にパンデミックを引き起こした原因ウイルスが「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」です。このウイルスによって引き起こされる疾患名として、世界保健機関(WHO) は正式名称を「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」と発表しました。

「COVID-19」の読み方:コヴィッド・ナインティーン

 

木元 貴祥
ウイルス名がSARS-CoV-2、疾患名がCOVID-19ですね。たまに混同してしまいます(笑)

 

SARSサーズ(Severe acute respiratory syndrome coronavirus:重症急性呼吸器症候群)と言えば、2003年頃に中国を中心に流行したウイルス感染症で、この原因もコロナウイルス(SARS-CoV)でしたね。今回の新型コロナウイルスもSARS-CoVと似ていることからSARS-CoV-2と名付けられています。

 

 

症状としては無症状から風邪様症状(発熱、倦怠感、咳、味覚異常)が多く、重症化することはあまりありません。

しかし、一部、肺炎・呼吸困難・血栓症等、重症化することもあり、特に高齢者や基礎疾患(例:糖尿病心不全COPD等の呼吸器疾患)を持っている方では重症化のリスクが高いと言われています。

エンレスト(サクビトリルバルサルタン)の作用機序【心不全】

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重症化の可能性や世界的なパンデミックにより、日本においてCOVID-19は2020年1月に感染症法に基づく「指定感染症」及び検疫法に基づく「検疫感染症」に指定されました。

【参考】内閣官房|新型コロナウイルス感染症の指定感染症等への指定について

 

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖メカニズム

コロナウイルスの外観は「コロナ(太陽の光冠)」に似ていることからその名前が付けられています。

分類としては「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」で、RNAをゲノムとしているウイルスですね!主にヒトの粘膜上皮細胞に感染します。

 

木元 貴祥
ウイルスの分類・・・いくつかありますが覚えていますか??特徴と代表例はこんな感じですね。1)

 

ちなみに、アデノ随伴ウイルスの仕組みを用いた治療法なんかもありますね。

ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】

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プラス鎖というのはゲノムそのものがmRNAとして働くことが可能なもの、マイナス鎖というのはゲノムを鋳型として一旦mRNAを作るものを言います。

 

SARS-CoV-2はプラス鎖の一本鎖RNAウイルスですので、ゲノム自体がmRNAとして働き、ヒト細胞内に侵入するとすぐにウイルスタンパク質の合成が始まりますね。

 

SARS-CoV-2がヒトの粘膜上皮細胞に感染する場合、以下の図のようなプロセスで感染・増殖します。

  1. 吸着・膜融合・脱殻:ヒト細胞内に入る
  2. ゲノム(RNA)の複製とタンパク質合成:ヒト細胞内で増える
  3. 細胞からの遊離:ヒト細胞外へ出て、他の細胞に感染する

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染・増殖メカニズム:プロテアーゼとは

 

上記②のタンパク質合成の過程では、翻訳で合成されたタンパク質は非常に高分子(大きい)のため、適切なサイズに切り取る必要があります。ここで働くのがプロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)です。

プロテアーゼがタンパク質を適切な大きさに切り取ることで、ウイルスタンパク質が完成し、増殖していきます。

 

ちなみに、②の過程のうち、RNAポリメラーゼに関与しているのが以下の薬剤ですね。

 

重症度別の治療方法

現在、重症度別の治療方法については厚労省の「新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )診療の手引き」や日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方」2)に掲載されています。

新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )診療の手引き:重症度別マネジメントのまとめ

新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )診療の手引き 第7.2版

 

軽症(重症化リスク因子あり)~重症例といった幅広い範囲では、国内初の治療薬として登場したベクルリー(レムデシビル)が使用でき、重症例では適宜ステロイドやオルミエント(バリシチニブ)が併用されます。

ベクルリー(レムデシビル)の作用機序・副作用【COVID-19】

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軽症・中等症Ⅰで重症化リスク因子のある場合には以下の選択肢です。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するゾコーバも軽症から使用が見込まれる経口剤ですね。

 

各薬剤の特徴については「COVID-19に対する薬物治療の考え方」2)が分かりやすいと思います♪(下図)

重症リスクを有する軽症 COVID-19 患者への治療薬の特徴(2022 年2月時点)

 

そもそも、まずは感染しないように手洗い・うがい、そしてワクチン接種が大事なのをお忘れないように~。

コミナティ、スパイクバックス、ヌバキソビッド、ジェコビデンの作用機序【新型コロナウイルス】

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ゾコーバ錠(エンシトレルビル)の作用機序:3CLプロテアーゼ阻害

ゾコーバ錠はタンパク質合成過程におけるプロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)を選択的に阻害するといった作用機序です!3)

 

タンパク質合成が完了しないため、ヒト細胞内で増殖することができなくなり、結果としてウイルスの増殖抑制効果を発揮すると考えられていますね。

ゾコーバ錠(エンシトレルビル)の作用機序:プロテアーゼ阻害

 

作用機序としては、既に承認済のパキロビッドパックの有効成分であるニルマトレルビルと同じですね。

 

ちなみに、パキロビッドパックはニルマトレルビルの代謝(分解)を抑制するリトナビルを同時に服用ことで、ニルマトレルビルの体内濃度を長時間維持する役割を担っています。

パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)の作用機序・特徴【COVID-19】

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エビデンス紹介:軽症/中等症患者を対象としたPhaseⅡb part

根拠となった臨床試験は、現在実施中の第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験のうち、PhaseⅡb partの結果です。4)

論文未公表のため、後日更新予定

 

PhaseⅡb partでは、軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者さん428例(日本:419例、韓国:9例)を対象に、プラセボとゾコーバを比較した臨床試験で、主要評価項目は以下の2つとされました。

  1. 4日目(3回投与後)におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量
  2. COVID-19の12症状合計スコアの初回投与開始から120時間(6日目)までの単位時間あたりの変化量

 

①は統計学的有意にゾコーバ群で改善が認められた一方で、②はプラセボとの統計学的な有意差が認められていません。

 

木元 貴祥
臨床試験としては未達成という結果です。果たしてこの結果で承認されるのかどうか・・・・っ!?

 

オミクロン株、デルタ株への治療効果は?

現時点では不明です。

基礎の試験においては、オミクロン株、デルタ株に対して抗ウイルス効果は保たれていたとされていました。5)

 

参考までに、その他の治療薬については以下の通りです。

  • ロナプリーブ:オミクロン株に対しては中和活性が低下するため、推奨されない
  • ゼビュディ:オミクロン株に対して中和活性は保たれていたと報告されている。
  • ラゲブリオ:オミクロン株に対して前臨床試験では抗ウイルス効果が認められた。
  • パキロビッド:オミクロン株に対して前臨床試験では抗ウイルス効果が認められた。

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

 

用法・用量

正式承認後に更新予定です。

臨床試験では1日1回、5日間経口投与されていました。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ゾコーバはこんな薬

  • 緊急承認制度を適用した初の審議品目(承認可否は保留
  • 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口治療薬
  • 3CLプロテアーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を抑制する

 

COVID-19はワクチンや有効な治療薬も存在していませんでしたが、2020年以降、凄まじいスピードで治療薬やワクチンが開発されていきました。初めての登場はベクルリーでしたね。

ベクルリー(レムデシビル)の作用機序・副作用【COVID-19】

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その後、軽症から中等症に使用できる初の抗体カクテル療法のロナプリーブ点滴静注(カシリビマブ/イムデビマブ)や、ゼビュディ点滴静注液(ソトロビマブ)が登場しました。

さらにその後、経口薬のラゲブリオ(モルヌピラビル)パキロビッドパックも登場し、治療選択肢が広がりました。

 

木元 貴祥
一旦は見送りになりましたが、今後、承認に向けてどうなるのか注目です!!!

 

ワクチンはこちらの記事でまとめていますので、ご覧下さいませ♪

コミナティ、スパイクバックス、ヌバキソビッド、ジェコビデンの作用機序【新型コロナウイルス】

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以上、今回は新型コロナウイルス治療薬では初の国産経口剤となる(可能性のある)ゾコーバ錠(エンシトレルビル)の作用機序とエビデンスについて解説しました!

 

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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