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ミネブロとは、2019年1月8日に「高血圧症」を効能・効果として承認された新薬で、非ステロイド型のアルドステロン拮抗薬に分類されています。特にミネラルコルチコイド(MR)受容体に対して選択的な遮断作用を有していますね。
基本情報
製品名 | ミネブロ錠1.25mg/2.5mg/5mg ミネブロOD錠1.25mg/2.5mg/5mg |
一般名 | エサキセレノン |
製品名の由来 | 薬効分類名「ミネラルコルチコイド受容体ブロッカー」より「ミネブロ」と命名した。 |
製造販売 | 第一三共(株) |
効能・効果 | 高血圧症 |
用法・用量 | エサキセレノンとして2.5mgを1日1回経口投与する。 なお、効果不十分な場合は、5mgまで増量することができる。 |
OD錠は2022年2月22日に承認取得
類薬にはアルダクトンA(スピロノラクトン)とセララ(エプレレノン)があります。
今回は高血圧症とミネブロ(エサキセレノン)の作用機序・特徴についてご紹介します。
高血圧症とは
高血圧はよく聞く疾患だと思います。
健康診断等で引っかかった方も多いのではないでしょうか?
血圧とは血管内の圧力のことで、通常は動脈圧を意味しています。
血圧は心臓が収縮するとき(血液を全身に送り出す時)に最も高くなり、これが「収縮期血圧」(上の血圧)と呼ばれています。
また、心臓が拡張するとき(血液を心臓に取り込んでいる時)には最低となり、これが「拡張期血圧」(下の血圧)と呼ばれています。
血圧の正常値は、
- 収縮期血圧:140mmHg未満
- 拡張期血圧:90mmHg未満
で、どちらかがこれ以上であれば高血圧症と診断されます。
ただし、一度の血圧測定で診断するのではなく、繰り返し、色々な場面で測定を行って、最終的に診断されます。
高血圧の症状
通常、高血圧になったとしても自覚症状はありません。
しかしながら、放置してしまうと、脳出血・脳梗塞、心筋梗塞・心不全、不整脈、腎不全、大動脈瘤、脈硬化症といった多くの合併症を引き起こす原因となります。
従って、早期から治療を開始することが望ましいとされています。
高血圧症の治療
高血圧の治療の基本は「生活習慣の改善」です。
生活習慣の改善項目は以下の6項目があります。
- 食塩制限
- 野菜や果物の摂取とコレステロール・飽和脂肪酸の制限
- 適正体重の維持
- 運動療法
- アルコール制限
- 禁煙
これら生活習慣の改善を行っても高血圧が改善しない場合、薬物療法が行われます。
高血圧の治療薬(薬物療法)
高血圧治療薬の種類としては、以下のものがあります。
- カルシウム(Ca)拮抗薬
- ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬)
- ACE阻害薬
- 利尿薬
- β遮断薬
- アルドステロン拮抗薬(MR拮抗薬)
第一選択薬としては以下の積極的適応1)を考慮して選択されます。
Ca拮抗薬 | ARB/ ACE阻害薬 |
サイアザイド系 利尿薬 |
β遮断薬 | |
左心肥大 | 〇 | 〇 | ||
LVEFの低下した 心不全 |
〇*1 | 〇 | 〇*1 | |
頻脈 | 〇 (非ジヒドロピリミジン系) |
〇 | ||
狭心症 | 〇 | 〇*2 | ||
心筋梗塞後 | 〇 | 〇 | ||
蛋白尿/微量アルブミン尿 を有するCKD |
〇 |
*1:少量から開始し、注意深く漸増する。
*2:冠攣縮には注意。
患者さんの合併症や状態に合わせて上記の薬剤の単剤治療から治療が開始されます。
単剤治療で効果が認められない場合、増量もしくは2種類以上の薬剤を適宜併用して治療を継続します。
よく用いられる薬剤としては、ARBもしくはCa拮抗薬の単剤もしくはそれらの併用療法だと思います。
今回ご紹介するミネブロはアルドステロン拮抗薬(MR拮抗薬)に分類されていますが、第一選択からはなかなか使用されない薬剤で、治療抵抗性高血圧や低レニン性高血圧に対して有用とされています。1)
その他、MR拮抗薬は心不全の予防改善効果が示唆されていて、心不全の治療ガイドライン2)でも推奨されています。そのため、心不全合併の患者さんではARB+β遮断薬+利尿薬にプラスしてMR拮抗薬の併用も推奨されていますね。1)
レニン-アンジオテンシン系とアルドステロン
体内には、血圧や体液バランスを保つために「レニン-アンジオテンシン系」と呼ばれる調節機構があります。
腎臓の糸球体の壁には傍糸球体装置と呼ばれる部位があり、血圧を感知して、レニンと呼ばれる物質の分泌を調節しています。
分泌されたレニンは、肝臓で合成された「アンジオテンシノーゲン」を「アンジオテンシンⅠ(ATⅠ)」に変換します。
その後、ATⅠは血管内皮細胞膜にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)により「アンジオテンシンⅡ(ATⅡ)」に変換されます。
ATⅡが結合がAT1受容体に結合することで強力な血管収縮作用に伴う血圧上昇を引き起こします。
その他、ATⅡが副腎に作用することでアルドステロンの分泌が促進されます。
アルドステロンは腎臓の遠位尿細管に存在しているミネラルコルチコイド(MR)受容体に作用し、水の再吸収を促進させます。
その結果、体液が貯留し、高血圧を促進させると考えられています。
ミネブロ(エサキセレノン)の作用機序
ミネブロはアルドステロンの作用するミネラルコルチコイド(MR)受容体を選択的に遮断する薬剤です。
水の再吸収が阻害され、水は尿から体外へと排出されます。その結果、体液量が減少して血圧低下作用を示すと考えられています。
エビデンス紹介:ESAX-HTN試験
根拠となった臨床試験は国内第Ⅲ相試験のESAX-HTN試験があります。3-4)
本態性高血圧症患者さんを対象にセララ(一般名:エプレレノン)に対するミネブロ(2.5mg/日 or 5.0mg/日)の降圧効果を比較した試験です。
主要評価項目は「12週時の座位血圧(収縮期及び拡張期)のベースラインからの変化量」で、セララに対するミネブロ2.5mgの非劣性が検証されました。
その他、ミネブロ2.5mgに対するミネブロ5.0mgの優越性も検証しています。
試験群 | セララ群 | ミネブロ 2.5mg群 |
ミネブロ 5.0mg群 |
座位血圧のベースラインからの変化量 (収縮期/拡張期) |
−12.1/−6.1mmHg | −13.7/−6.8mmHg | −16.9/−8.4mmHg |
セララに対するミネブロ2.5mgの非劣性 | 非劣性が証明 | - | |
ミネブロ2.5mgに対するミネブロ5.0mgの優越性 | - | 優越性が証明 |
このようにミネブロ2.5mgではセララと同程度の降圧効果が得られています。
また、ミネブロを5.0mgに増量することでより降圧効果が高まることが示されました。
用法・用量
2.5mgを1日1回経口投与します。
なお、効果不十分な場合は、5mgまで増量することができます。
副作用
主な副作用として、血清カリウム値上昇(4.1%)、血中尿酸増加(1.4%)、高尿酸血症(1.0%)等が報告されています。
重大な副作用として高カリウム血症(1.7%)がありますので特に注意が必要です。
薬価
収載時(2019年2月26日)の薬価は以下の通りです。
- ミネブロ錠1.25mg:46.90円
- ミネブロ錠2.5mg:89.90円(1日薬価:89.90円)
- ミネブロ錠5mg:134.90円
なお、有用性加算の対象とされています。
有用性加算の根拠
- 類薬のセララ(エプレレノン)で投与禁忌とされている患者(中等度腎機能障害合併高血圧患者、アルブミン尿を有する糖尿病合併高血圧患者)でも投与可能である点。
算定方法等については以下の記事をご参照ください。
>>【新薬:薬価収載】13製品+再生医療等製品(2019年2月26日)
ミネブロの特徴:アルダクトン、セララとの違い
同様の作用機序(アルドステロン拮抗薬)としてはアルダクトンA(スピロノラクトン)とセララ(エプレレノン)があります。
第一世代のアルダクトンはMR受容体への選択性が低く、性ホルモン受容体等にも作用してしまうため、男性の女性化乳房、陰萎、月経痛などの副作用が懸念されていました。
その後、MR受容体選択性を高めた第二世代のセララが登場し、上記の副作用が少なくなりました。
ミネブロはMR受容体選択性が高く、かつ非ステロイド型の薬剤です。4)
ミネブロの審査報告書で4)は、以下の特徴が挙げられていました。
スピロノラクトンで報告されているような性ホルモン関連有害事象に関する懸念は認められておらず、安全性に大きな問題も認められていない。
その他にもセララは中等度以上の腎機能障害で禁忌ですが、ミネブロは重度から禁忌ですので、腎機能によってセララが使用できない患者さんにも期待できそうですね☆
2022年に登場した新規アルドステロン拮抗薬ケレンディア(フィネレノン)を含めた一覧表についてはこちらでまとめています。
-
ケレンディア(フィネレノン)の作用機序・特徴【糖尿病合併CKD】
続きを見る
まとめ・あとがき
ミネブロはこんな薬
- アルドステロン拮抗薬(MR拮抗薬)として初の非ステロイド型
- ミネラルコルチコイド受容体選択的遮断作用
- セララと同程度の降圧効果(2.5mgの場合)
- 性ホルモン関連有害事象に関する懸念は認められていない
一方で、各ガイドライン1-2)では、以下のような患者さんにMR拮抗薬が推奨されています。
- 低レニン性高血圧
- 心不全合併の高血圧
心不全とその治療薬については以下の記事をご覧ください。
-
フォシーガ(ダパグリフロジン)の作用機序【糖尿病/心不全/CKD】
続きを見る
これまでアルダクトンやセララの性ホルモン関連有害事象を懸念されていた患者さんにとってはミネブロはより良いのではないでしょうか。
以上、今回は高血圧症とミネブロ錠(エサキセレノン)の作用機序と特徴についてご紹介しました!
ARBの作用機序や一覧表については以下の記事をご覧ください☆
-
【高血圧】ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬)の作用機序と薬剤一覧の紹介
続きを見る
2022年に登場した新規アルドステロン拮抗薬ケレンディア(フィネレノン)については以下をご参考くださいませ。
-
ケレンディア(フィネレノン)の作用機序・特徴【糖尿病合併CKD】
続きを見る
引用文献・資料等
- 日本高血圧学会|高血圧治療ガイドライン2019
- 日本循環器学会|急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
- ミネブロ 添付文書
- ミネブロ 審査報告書
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