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2025年4月18日、厚労省薬事審議会の再生医療等製品・生物由来技術部会にて、「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」を対象疾患とするエレビジス点滴静注(デランジストロゲン モキセパルボベク)の承認可否が審議され、条件・期限付き承認(期限3年)が了承されました。
中外製薬|申請のニュースリリース
現時点では未承認のため、ご注意ください。
基本情報
製品名 | エレビジス点滴静注 |
一般名 | デランジストロゲン モキセパルボベク (開発コード:SRP-9001) |
製品名の由来 | |
製造販売 | 中外製薬(株) |
効能・効果 | デュシェンヌ型筋ジストロフィー。ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。 ▶抗AAVrh74抗体が陰性の患者 ▶歩行可能な患者 ▶3歳以上8歳未満の患者 |
用法・用量 | 単回の点滴静注(再投与はしない) |
収載時の薬価 | |
発売日 |
条件および期限付承認後に改めて行う製造販売承認申請までの期間中は、長期の有効性及び安全性の確認を目的とした臨床試験並びに使用する全症例を対象とした製造販売後調査により製造販売後承認条件評価を行う。
エレビジスは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対して1回の静脈内投与で治療が完結する遺伝子治療です!

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ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】
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今回はデュシェンヌ型筋ジストロフィーとエレビジス(デランジストロゲン モキセパルボベク)の作用機序について解説します。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とは
骨格筋の壊死・機能異常を主病変とする遺伝性筋疾患を総称して「筋ジストロフィー」と呼んでいます。
その中でもいくつかの型に分類されていますが、最も代表的な型がデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD:Duchenne Muscular Dystrophy)です。1)
DMDでは、筋細胞内に存在するジストロフィンと呼ばれるタンパク質の遺伝子異常・変異によって、全身の筋力低下(歩行障害等)が現れます。
根本的な治療法はなく、ステロイド投与による治療が一般的です。2)
その他、リハビリテーション、対症療法等が行われていますが、新たな治療選択肢が望まれていました。
近年では、一部の遺伝子異常を有するDMDに対して、アンチセンス核酸医薬品のビルテプソ(ビルトラルセン)が登場しました!
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ビルテプソ(ビルトラルセン)の作用機序【筋ジストロフィー】
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DMDの原因:ジストロフィンの欠乏
DMDでは遺伝子異常・変異(主にはエクソンの欠失)によってジストロフィンが欠乏しています。
ジストロフィンをコードする遺伝子配列には79個のエクソンが存在していますが、DMDでは様々な遺伝子異常によって、一部のエクソンが欠失していることがあります(例:エクソン45、51、52の欠失など)。
ジストロフィン遺伝子が正常な場合、DNA配列から転写⇒スプライシング⇒翻訳の過程を経て正常なジストロフィンが合成されます。
しかし、一部のエクソンが欠失している場合、異常なmRNAが合成されてしまい、翻訳時に途中でストップしてしまいます。そのためジストロフィンが合成されず、DMDを発症すると考えられています。
用語解説
- 転写:DNAからmRNA前駆体を合成する過程
- エクソン:タンパク質情報がコードされている配列
- イントロン:タンパク質情報がコードされていない配列
- スプライシング:イントロンが取り除かれ、エキソンのみのmRNA配列にする過程
- 翻訳:mRNAからタンパク質を合成する過程
エレビジス(SRP-9001)の作用機序・特徴:遺伝子治療
エレビジスの中身(構造)は、ジストロフィンタンパク質の機能を残して短縮化した短縮型ジストロフィン(マイクロジストロフィン)遺伝子を「アデノ随伴ウイルス血清型rh74(AAVrh74)」と呼ばれるウイルスの殻(カプシド)で包んだ構造をしています。
アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた遺伝子治療では、搭載可能な遺伝子サイズの制限(~4.7kb)があり、正常なジストロフィン遺伝子(14kb)は入りきらないという問題がありました。3)
そこで、ジストロフィンの機能を保有したまま、少し短くしたマイクロジストロフィンの遺伝子を用いることで搭載可能となったようです。

ジストロフィン産生細胞は筋肉に存在していますが、静脈内に投与されたエレビジスは骨格筋細胞に効率的に取り込まれていきます。4)
骨格筋細胞に侵入すると、マイクロジストロフィン遺伝子が放出されて、遺伝子のみが核内に移行します。
その後、核内で環状DNA(エピソーム)として永続的に留まるといった特徴がありますので、そこからマイクロジストロフィンが産生されていきます。4)

作用機序的には、いずれのエクソン欠失タイプにも使用可能ですが、エクソン8 and/or エクソン9を含む欠失変異例には禁忌とされています。この理由として、投与後に免疫介在性筋炎が観察されたためです。
エビデンス紹介:EMBARK試験
根拠となった臨床試験(EMBARK試験)をご紹介します。5)
本試験は、歩行可能なデュシェンヌ型筋ジストロフィーの4歳~7歳の男児を対象に、エレビジス群とプラセボ群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「52週時点におけるNSAAスコア*のベースラインからの変化」とされ、結果は以下の通りでした。
試験群 | エレビジス群 | プラセボ群 |
52週時点における NSAAスコアのベースラインからの変化 |
+2.57ポイント | +1.92ポイント |
群間差=0.65(95%CI:-0.45~1.74) P=0.2441 |
||
12週時点の平均マイクロジストロフィン発現量 | 34.29% | 0.00% |
*NSAAスコア:ノース・スター歩行能力評価(North Star Ambulatory Assessment)は、歩行能力を評価する尺度です。DMDの治療薬の有効性や安全性を評価する試験などで用いられています。
主要評価項目は残念ながら有意差が示されませんでしたが、いくつかの副次評価項目(例:床から立ち上がるまでの時間や、10メートルの歩行時間など)では、エレビジス群で有意な改善が認められたとのことでした。

副作用
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、嘔吐、吐き気、肝機能検査値上昇、発熱、血小板減少などが報告されていました。
稀に急性の重篤な心筋炎も起こることから、特に注意が必要です。
用法・用量
後日更新予定です。
臨床試験では、単回の静脈内投与とされていました。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
エレビジスはこんな薬
- デュシェンヌ型筋ジストロフィー初の遺伝子治療
- 単回の静脈内投与でマイクロジストロフィンが永続的に産生される
- エクソン8 and/or エクソン9を含む欠失変異例には禁忌
- 心筋炎には注意が必要
これまで、DMDは治療選択肢が限られていたことから、新たな治療法が望まれていました。
2020年にはアンチセンス核酸医薬品のビルテプソ(ビルトラルセン)が登場したものの、限られた遺伝子異常タイプにしか使用できませんでした。
エレビジスは単回投与かつ、幅広い遺伝子異常タイプに使用可能なため、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。
遺伝子治療としては、脊髄性筋委縮症に使用するゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)以来の登場です。
血友病領域では、ベクベッツ(フィダナコゲン エラパルボベク)と呼ばれる新たな遺伝子治療の開発が行われましたが、残念ながら全世界で開発・商業化が中止されています…。
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以上、今回はデュシェンヌ型筋ジストロフィーと、エレビジス(デランジストロゲン モキセパルボベク)の作用機序についてご紹介しました!
参考資料・文献など
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