1.中枢神経系

ザズベイ(ズラノロン)の作用機序と特徴【うつ病】

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2025年10月30日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて「うつ病、うつ状態」を効能・効果とするザズベイカプセル(ズラノロン)の承認可否が審議される予定です!

塩野義製薬|申請のニュースリリース

基本情報

製品名 ザズベイカプセル30mg
一般名 ズラノロン
製品名の由来
製造販売 塩野義製薬(株)
効能・効果 うつ病、うつ状態
用法・用量 1日1回14日間の経口投与?
収載時の薬価
発売日

 

木元 貴祥
木元 貴祥
うつ病の薬物治療としてはSNRI、SSRI、NaSSA等が用いられますが、ザズベイは新規の作用機序を有する薬剤かつ即効性が期待されています!

 

参考

  • SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
  • SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬
  • NaSSA:ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬

 

今回はうつ病(特に大うつ病性障害)の病態・治療法とザズベイ(ズラノロン)の作用機序等について解説しています。

 

うつ病と症状

  • 仕事がうまくいかない
  • 学校の試験で悪い点を取ってしまった
  • 友人関係で喧嘩してしまった

ということで気分が落ち込んだり、やる気が起きないことは誰しもが経験したことがあると思います。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
このような気分の落ち込みはごくごく一般的な感情の変化ですので、これだけでうつ病とは言いません。

 

ちょっとした気分の落ち込みであれば、飲み会や買い物、友人との遊びなどで吹き飛ぶこともありますし、時間の経過で次第に回復していきます。

 

しかしながら、「うつ病」では憂うつな状態が2週間以上も続き、例え原因となっていた問題が解決しても気分が晴れないことが多く、次第に日常生活に支障(仕事に行けない、学校に行けない、外に出たくない、等)をきたしてしまいます。1)

 

憂うつな状態が「2週間」、かつ「日常生活に支障」がうつ病の診断時のポイントです。もちろんこれ以外にも診断基準は多数あります。

 

また症状としては「身体症状」と「精神症状」があり、主には以下があります。2)

身体症状 食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こり、
動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇く、等
精神症状 憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安、
イライラする、元気がない、集中力がない、
好きなこともやりたくない、等

 

詳しくは割愛しますが、うつ状態がかなり重症な場合、「大うつ病性障害」と診断されます。1-2)

 

今回ご紹介するザズベイは大うつ病性障害に対して効果が期待されている薬剤ですね。

 

原因

脳内には「神経伝達物質」と呼ばれるものが存在しており、記憶や意欲、感情等をコントロールしています。

 

その中でも意欲・活力・気分などに関わっている神経伝達物質として「セロトニン」や「ノルアドレナリン」が知られていますが、うつ病ではこれら神経伝達物質の量が不足していると考えられています。

うつ病の原因:セロトニンとノルアドレナリンが不足している

 

木元 貴祥
木元 貴祥
このため、セロトニンやノルアドレナリンを増やす治療薬が用いられていますよね。

 

その他、うつ病患者やうつ病モデル動物の脳において、GABAやその受容体であるGABAA受容体の減少・機能低下が認められています。

GABAは脳内の興奮を抑え、精神を安定させる抑制性の神経伝達物質であり、その機能が低下すると、ストレスの蓄積やイライラ、不安を引き起こし、うつ病の発症につながる可能性があるとされています。

うつ病におけるGABAの関連性:GABAの低下によって抑制系神経の働きが低下している

 

治療

うつ病をそのまま放っておいてしまうと、悪化して治りにくくなり、その後の日常・社会生活に大きな悪影響を与えてしまう可能性があります。

従って、できるだけ早く治療を開始することが大切です。

 

うつ病の治療は、

  • 休養
  • 薬物治療
  • 精神療法

を中心に行われます。2-3)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
特に、「休養」は最も重要で、家で何も考えずにゆっくりリフレッシュして過ごすことが大切です。

 

症状を抑えたり、再発を抑制したりする薬物治療にはいくつか薬の種類がありますが、中心となるのは以下のような「抗うつ薬」です。

 

上記はいずれもセロトニンやノルアドレナリンを増やす治療薬で、治療効果の発現までに2~6週間を要することが知られています。

 

今回ご紹介するザズベイは、GABAA受容体に対するポジティブアロステリックモジュレーターに分類されている新規の治療薬です。上記とは異なる経路で作用し、投与開始から約3日で治療効果が発現するため、即効性が期待されていますよ!

 

ザズベイ(ズラノロン)の作用機序と特徴:即効性が期待

うつ病ではGABAの減少やGABAA受容体の減少・機能低下が知られています。

通常、GABAA受容体にGABAが結合すると、クロールイオン(Cl-)が流入することでそのシグナル伝達が促進されます。

 

GABAA受容体にはGABAが結合する部位の他、「アロステリックサイト」と呼ばれる部位が存在しています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
アロステリックサイトとは、本来の活性部位ではない部位のことです。

アロステリックサイトに何かしらの物質が結合して、その機能が調節される現象を「アロステリック」と呼んでいますね。

 

ザズベイは、GABAA受容体のアロステリックサイトに結合してその働きを促進させるポジティブアロステリックモジュレーターです。

ザズベイ(ズラノロン)の作用機序:GABAA受容体のアロステリックサイトに結合してその働きを促進させるポジティブアロステリックモジュレーター

 

抗うつ薬の代表であるSNRIやSSRIはセロトニンやノルアドレナリンを増やすといった作用でしたが、ザズベイはセロトニンやノルアドレナリンには影響を与えないといった特徴がありますね。

サインバルタ(デュロキセチン)の作用機序と副作用【うつ病】

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また、ザズベイの臨床試験では効果の発現が早いことが確認されているため、即効性が期待されています。

 

何となく、作用機序的にはベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬に似ている気がしますね。

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エビデンス紹介

根拠となった海外の臨床試験を一つご紹介します。4)

大うつ病性障害の成人患者さんを対象に、プラセボまたはザズベイの14日投与を比較した海外第Ⅲ相試験です。

 

本試験の主要評価項目は「15日目におけるHAM-D合計スコア*のベースラインからの変化量」とされ、結果は以下の通りでした。

プラセボ群 ザズベイ群
15日目におけるHAM-D合計スコアの
ベースラインからの変化量
-12.3 -14.1
p=0.01

*HAM-D合計スコア:ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale)のことで、うつ病の重症度を評価するためのスケール

 

また、投与開始3日目においても、ザズベイ群でHAM-D合計スコアの有意な改善が認められていました。

 

国内でも同様の第Ⅱ相試験5)の結果が報告されていました。国内第Ⅲ相試験については、現時点では論文等未公表なものの、メーカーのR&D資料の中に概要が掲載されていました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
海外の第Ⅲ相試験とそん色のない結果ですね!

 

副作用

後日更新予定です。

臨床試験では、傾眠やめまいなどが報告されていました。

 

作用機序的に抑制系のGABAの働きを活性化するため、傾眠などには注意が必要そうですね。

 

用法・用量

後日更新予定です。

海外では、1日1回30mgを脂肪分を含む食品と一緒に14日間経口投与とされています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
基本的には14日間で投与完了です。それ以降の再投与等については、添付文書公開後に更新予定です。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ザズベイはこんな薬

  • 既存薬(SSRIやSNRI)とは異なる作用機序を有するうつ病治療薬
  • GABAA受容体に対するポジティブアロステリックモジュレーター
  • GABAの働きを活性化させることで精神を安定化させ、即効性が期待されている
  • 1日1回経口投与を14日間繰り返す

 

木元 貴祥
木元 貴祥
うつ病の薬物治療ではSSRIやSNRIがよく用いられていますが、効果発現までに2~6週間を要していました。

 

ザズベイは投与開始後3日ほどで効果発現が期待されていますので、うつ症状をすぐに抑えたい場合などに適しているのではないでしょうか。

 

以上、今回はうつ病(大うつ病性障害)とザズベイ(ズラノロン)の作用機序についてご紹介しました!

 

引用文献・資料等

  1. DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル2014
  2. こころの情報サイト:うつ病
  3. 日本うつ病学会:「日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.大うつ病性障害」(2024年3月1日 改訂)
  4. 海外第Ⅲ相試験:Am J Psychiatry. 2023 Sep 1;180(9):676-684.
  5. 国内第Ⅱ相試験:Psychiatry Clin Neurosci. 2023 Sep;77(9):497-509.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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