1.中枢神経系

ボルズィ(ボルノレキサント)の作用機序:ベルソムラ/デエビゴ/クービビックとの違い【不眠症】

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2025年7月31日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて、「不眠症」を効能・効果とするボルズィ錠(ボルノレキサント)の承認が了承されました!

大正製薬|申請のニュースリリース

基本情報

製品名 ボルズィ錠2.5mg/5mg/10mg
一般名 ボルノレキサント水和物 (開発コード:TS-142)
製品名の由来 ボルノレキサントで寝入る(catch some z's)?
※私の予想です…悪しからず
製薬会社 製造販売:大正製薬(株)
共同販売:Meiji Seika ファルマ(株)
効能・効果 不眠症
用法・用量 通常、成人には1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日1回10mgを超えないこととする
収載時の薬価
発売日

 

ボルズィは国内4製品目のオレキシン受容体拮抗薬ですね!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
既に以下の3製品が承認・販売されています。
クービビック(ダリドレキサント)の作用機序:ベルソムラ・デエビゴとの違い【不眠症】

続きを見る

 

今回はボルズィ(ボルノレキサント)の作用機序、そして類薬のベルソムラ/デエビゴ/クービビックとの違い・比較について解説します。

 

不眠症とは

皆様もストレスや不安、緊張で夜眠れなくなった経験があるのではないでしょうか?

日本人を対象にした調査によれば、5人に1人(約20%)が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答しているようです。1)

 

近年、ストレス社会ともいわれ、不眠症の患者さんは年々増加傾向にあります。

 

不眠の症状は以下の4つに分類されています。1)

  • 入眠障害:なかなか寝付けない
  • 中途覚醒:夜中に目が覚めてしまう
  • 早期覚醒:朝早くに目が覚めてしまう
  • 熟眠障害:睡眠が浅く、よく寝た気がしない

 

木元 貴祥
木元 貴祥
私も初めての授業や大事な商談の前日には緊張感で不眠になることがありますね・・・^^;

 

不眠症の原因と脳の興奮系・抑制系バランス

不眠は、以下のような様々な原因によって引き起こされます。

  • ストレス(仕事、人間関係、家庭など)
  • アルコール摂取
  • 薬の服用
  • 精神疾患(うつ病など)
  • 生活習慣病

 

脳内には、「興奮系」と「抑制系」の神経が存在しています。

通常はバランスよく存在していますが、上記のような原因によって、興奮系が優位となることで不眠症を発症すると考えられています。

 

興奮系には「オレキシン」と呼ばれる物質が関与しており、抑制系には「GABA(γ-アミノ酪酸)」が関与しています。

 

脳内の神経から分泌されるオレキシンが「オレキシン受容体」を刺激することで脳が興奮・覚醒すると考えられています。2)

オレキシンとオレキシン受容体

 

不眠症の治療

不眠症の治療には、

  • 非薬物療法:生活改善、適度な運動、お酒を控える等
  • 薬物療法

があります。

 

まずは、非薬物療法として日常生活の見直しや生活改善(お酒を控える、ストレスを減らす)、入眠環境を整える、 などの改善を心がけます。

 

非薬物療法を行っても改善しない場合、症状や程度に合わせて以下のような薬物療法が行われますが、日本神経治療学会のガイドラインでは以下の記載があります(一部改編)。3)

薬物療法 作用機序 副作用 依存性 コメント
ベンゾジアゼピン(BZ)系
睡眠薬
GABA増強
抑制系の増強
持ち越し
健忘
せん妄
転倒
依存
あり 使用頻度多い
非ベンゾジアゼピン(非BZ)系
睡眠薬
GABA増強
抑制系の増強
α1選択性
あり 第一選択
メラトニン受容体作動薬 メラトニン受容体作動
体内リズムの調整
少ない ない 睡眠覚醒リズム調子作用に
優れるリズム調製
オレキシン受容体拮抗薬 オレキシン受容体遮断
覚醒系の遮断
(少ない) (ない) 覚醒系を抑制
抗ヒスタミン薬 ヒスタミン受容体遮断 持ち越し効果
体重増加
なし 早期に耐性形成

 

木元 貴祥
木元 貴祥
第一選択は非BZ系の睡眠薬ですね。これは、BZ系と比較して筋弛緩作用や依存形成が少ないためです。

 

今回ご紹介するボルズィは「オレキシン受容体拮抗薬」に分類されている薬剤です!

 

なお、いずれの薬剤も最低用量から開始し、副作用を最小限に抑えながら効果が得られるように慎重に増減して治療を行っていきます。

 

ボルズィ(ボルノレキサント)の作用機序

ボルズィはオレキシン受容体を選択的に遮断する薬剤です!

 

オレキシン受容体には

  • オレキシン1受容体
  • オレキシン2受容体

がありますが、ボルズィは両方の受容体に対して遮断作用を有します(ベルソムラやデエビゴも同じ)。4)

 

オレキシンがオレキシン受容体に結合することを阻害し、脳の興奮・覚醒を抑制する結果、睡眠作用を促すといった作用機序を有しています。

ボルズィ(ボルノレキサント)の作用機序:デュアルオレキシン受容体拮抗薬

 

木元 貴祥
木元 貴祥
覚醒系を抑制させるため、より自然に近い催眠作用だと言われていますね。

 

これまでのオレキシン受容体拮抗薬(例:ベルソムラやデエビゴ)では、その半減期の長さから翌日への残留効果の懸念点がありました。ボルズィは、この点を解決するため、速やかな吸収かつ半減期が短い化合物を探索して創薬されたようです。4)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
なるべく、親油性を減らし、組織への移行・滞留を抑えるように工夫されたようですね!

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動薬との作用機序の違い

ベンゾジアゼピン受容体作動性(ベンゾジアゼピン系)の睡眠薬は、抑制系のGABAの働きを高める働きがあります。

抑制系を亢進させることで、覚醒を無理やり抑えるといった作用機序で睡眠を促していました。

 

それに対し、オレキシン受容体拮抗薬は興奮系の働きを直接抑制することができるので、より自然な睡眠を促すことが可能と考えられています。

 

また、オレキシン受容体拮抗薬はベンゾジアゼピン受容体作動性の睡眠薬と比較して依存性(リバウンドや半跳性不眠)や副作用が少ないことも特徴です。3)

 

メラトニン受容体作動薬については、睡眠作用は弱いものの筋弛緩作用、依存形成、認知機能への影響はほぼ無いとされています。ただし、効果発現まで2~4週間を要することもあるため、即効性は期待できません。

現在は、小児の入眠困難例に使用するメラトベル(メラトニン)などがあります。

メラトベル顆粒(メラトニン)の作用機序【神経発達症】

続きを見る

 

木元 貴祥
木元 貴祥
以下に特徴をまとめました。

ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬の違い・比較

 

なお、ベルソムラは高齢者に対するせん妄予防効果も示唆されていて、国内で第Ⅲ相試験が実施されましたが、残念ながら有意差はなかったと報告されました(JAMA Netw Open. 2024 Aug 1;7(8):e2427691.)。

Suvorexant for Reduction of Delirium in Older Adults After Hospitalization: A Randomized Clinical Trial

 

エビデンス紹介:国内第Ⅲ相試験

根拠となった主な臨床試験は、国内第Ⅲ相試験(301試験)です。

現時点では論文等で未公表ですが、メーカーのニュースリリースによれば、ボルズィの5mgまたは10mg投与は、プラセボと比較して睡眠日誌による睡眠潜時および睡眠効率を有意に改善したと報告されていました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
試験結果が公表されましたら追記します!

 

副作用

後日更新予定です。

前述の臨床試験では、大きな問題となる有害事象の発現は認められず、反跳性不眠や退薬症候などを示唆する所見はなかったと報告されていました。

 

ボルズィは半減期が短いことから、翌日への残留効果(眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下)のリスクが少ないと考えられていますが、類薬同様、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意が必要だと考えられます。

 

用法・用量

通常、成人には1日1回5mgを就寝直前に経口投与します。

なお、症状により適宜増減できますが、1日1回10mgを超えないこととされています。

 

CYP3Aとの相互作用など

後日更新予定です。

前臨床試験5)によると、肝細胞代謝物がNADPH依存的に生成されたことから、CYPが関与している可能性が示唆されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
CYPとの相互作用は気になるところですので、判明しましたら更新します!

 

一包化は可能?

後日更新予定です。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

ボルズィとクービビック・デエビゴ・ベルソムラとの違い・比較

現時点までの添付文書やIFの情報を元に、クービビックデエビゴベルソムラの比較一覧表を作成してみました!

不眠症に使用するオレキシン受容体拮抗薬4製品

 

ボルズィは半減期6)が他の3製品よりも短いことから、日中の眠気などの低減にも寄与している可能性もありますね!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
あとは、CYP3A4阻害薬(例:クラリスロマイシン)との禁忌制限が気になるポイントですね。

 

まとめ・あとがき

ボルズィはこんな薬

  • オレキシン受容体拮抗薬で、オレキシン受容体を遮断することで覚醒系を抑制する
  • 類薬にはベルソムラ(スボレキサント)、デエビゴ(レンボレキサント)、クービビック(ダリドレキサント)がある
  • 半減期が他の3製品よりも短いため、日中の眠気の軽減が期待されている

 

2014年にベルソムラが日本において世界初のオレキシン受容体拮抗薬として承認を取得し、大きな話題となっていました。

その後、2020年にはデエビゴ、2024年にはクービビックが承認されました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ボルズィは4製品目のオレキシン受容体拮抗薬となりましたので、今後はこれらをどのように使い分けるのか検討されれば興味深いですね。

 

以上、今回は不眠症ボルズィ(ボルノレキサント)の作用機序について、そして類薬のベルソムラ・デエビゴ・クービビックとの違い・比較について解説しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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