1.中枢神経系

インチュニブ(グアンファシン)の作用機序【ADHD】

2019年6月18日、インチュニブ(一般名:グアンファシン)の「ADHD」の効能・効果に、成人適応を追加することが承認されました。

基本情報

製品名 インチュニブ錠1mg/3mg
一般名 グアンファシン塩酸塩徐放錠
製品名の由来 Intuitive(直観力のある)に由来する。
製薬会社 製造販売元:塩野義製薬(株)
プロモーション提携:シャイアー・ジャパン(株)
効能・効果 注意欠陥/多動性障害(AD/HD)

 

木元 貴祥
インチュニブは2017年3月に「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を効能・効果として承認されていますが、今回成人の適応が追加されました!

 

本日はADHD(attention deficit hyperactivity disorder)とインチュニブ(グアンファシン)の作用機序についてご紹介いたします。

 

ADHDとは

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは、

  • 不注意(集中力がない)
  • 多動性(じっとしていられない)
  • 衝動性(考えずに行動してしまう)

の3つの症状がみられる疾患です。

 

ただ、小さい子どもであればこれらの要素は誰にでも見られるものなので、なかなか診断が難しい疾患です。

さらに周囲の人に障害として理解されづらく、ただの乱暴者や親のしつけができていない子などと誤解を受けてしまうケースが多々あります。

そして、子ども時代の症状が改善されず、そのまま大人になってしまうこともしばしばあります。

 

ADHDの治療

ADHDの治療目標は、

  • 本人が自分を理解し、自身の行動をコントロールできるようになることによって、周囲の環境が改善し、自信を取り戻せること。
  • それによって生きにくさが改善され、充実した生活・社会生活が送れることです。

必ずしも不注意、多動性、衝動性を抑えることが治療の目標ではありません。

 

ADHDの治療には「非薬物療法(教育・療育的支援)」と「薬物治療」があります。

 

まずは、環境調整などの心理社会的治療による非薬物療法を優先して行います。

 

これら非薬物療法で効果の無かった場合、薬物療法が考慮され、非薬物療法と適宜並行して行われます。

 

ADHDの原因

脳内の情報伝達にはノルアドレナリンドパミンが関与しています。

 

ADHDの原因は解明されていませんが、脳内(特に前頭葉)の情報伝達に異常があると考えられています。

脳内伝達物質のノルアドレナリンやドパミン量が低下したり、脳内の情報伝達を司る「シナプス」がうまく働かないことが原因の一つではないかと言われています。

 

従って、外から入ってきた情報をうまく取り込んだり処理をしたりするのが困難になり、自分の注意や行動をコントロールできなくなる(“不注意”、“多動性”、“衝動性”が発現)と考えられています。

 

ADHDのある人の中には、以下の図のように後シナプスに伝達された情報が途中のイオンチャネルから漏れてしまい、脳内の神経伝達量が減少してしまっている場合があると考えられています。

 

このイオンチャネルの開閉を調整している受容体として「α2Aアドレナリン受容体」が知られています。

 

インチュニブ(一般名:グアンファシン)の作用機序

インチュニブの明確な作用機序は不明とされていますが、後シナプスα2Aアドレナリン受容体を刺激することでイオンチャネルが閉じ、後シナプスでの情報伝達量が回復すると考えられています。

 

従って、より多くの情報を伝達できるようになり、覚えられる情報の量や、その持続力も高まります。

その結果、不注意、多動性、衝動性といった症状の改善に繋がります。

 

このように、インチュニブは中枢神経を刺激して神経伝達物質を増やすのではなく、情報を受け取る側の機能を調節することから非中枢神経刺激薬と呼ばれます。

 

木元 貴祥
非中枢神経刺激薬は一般的に耐性や依存性が少ないとされています。

 

副作用

副作用としては、α2アドレナリン受容体刺激によって交感神経抑制作用があるため、低血圧や徐脈等が高頻度で認められることから注意が必要です。

 

薬価

収載時(2017年5月24日時点)の薬価は以下の通りです。

  • 1mg1錠:412.20円
  • 3mg1錠:544.30円

 

類薬:ビバンセ/ストラテラ/コンサータ

ADHDに適応を持つ類薬としては、以下の3種類があります。

 

これら3種類の薬剤は、インチュニブと作用機序(作用点)が少し異なっており、いずれも前シナプスに作用します。

ADHD治療薬の作用機序の違い・比較

 

木元 貴祥
詳しい解説や4製品の比較・一覧表等については以下の記事で紹介しています。
ビバンセ(リスデキサンフェタミン)の作用機序・特徴:類薬との違い/比較【ADHD】

続きを見る

 

まとめ・あとがき

インチュニブはこんな薬

  • α2Aアドレナリン受容体を刺激することで情報伝達量が回復する
  • 非中枢神経刺激薬に分類されている
  • 成人にも適応が拡大された

 

これまでインチュニブは小児期(6歳以上18歳未満)にしか使用できませんでしたが、今後は成人にも使用可能になりました。

 

木元 貴祥
類薬のストラテラ、コンサータも18歳以上にも使用が可能が、ビバンセは小児しか使用できません。

 

2019年には新たな新薬のビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミン)が登場しました!以下の記事で各薬剤の比較表も掲載していますので是非ご覧ください。

ビバンセ(リスデキサンフェタミン)の作用機序・特徴:類薬との違い/比較【ADHD】

続きを見る

 

以上、今回はADHD治療薬であるインチュニブについてご紹介いたしました♪

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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