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2025年12月22日、「非小細胞肺がん」を対象疾患とするリブロファズ配合皮下注(アミバンタマブ/ボルヒアルロニダーゼ)が承認されました!
元々、ライブリバント点滴静注として承認されていましたが、今回、ボルヒアルロニダーゼを配合した皮下注製剤として登場しました。投与時間が長いことが懸念点でしたが、リブロファズでは約5分で投与が完了します。
ヤンセンファーマ|ニュースリリース
基本情報
| 製品名 | リブロファズ配合皮下注 | ライブリバント点滴静注350mg |
| 一般名 | アミバンタマブ/ ボルヒアルロニダーゼアルファ |
アミバンタマブ |
| 効能・効果 | ●EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん ●EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
|
| 投与時間 | 約5分 | 約6~7時間(初回投与時) |
| 製造販売 | ヤンセンファーマ(株) | |
ライブリバントは国内初となるEGFRとMETの二重特異性抗体として、2024年9月24日に「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果として承認されました。
その後、以下の適応拡大が承認されていて、リブロファズも同じ効能・効果です。
- 2025年3月27日:一次治療としてラズクルーズ(ラゼルチニブ)との併用療法
- 2025年5月19日:前治療無効のEGFR変異を有する非小細胞肺がんにおける化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)との併用
また、EGFR変異陽性の非小細胞肺がんは、
- Common mutation(エクソン19欠失変異、エクソン21のL858R変異)
- Uncommon mutation
に分けられていて、今までのEGFR阻害薬は「Common mutation」に対するものでした。
アミバンタマブはUncommon mutationの一種であるエクソン20の挿入変異に対して治療効果が期待されていますよ~!
EGFRのCommon mutationに対してもラズクルーズ(ラゼルチニブ)との併用で使用可能となっています。
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ラズクルーズ(ラゼルチニブ)の作用機序【肺がん】
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今回は非小細胞肺がんとリブロファズ/ライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序・エビデンスについて解説です!
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。
非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
今回は①非扁平上皮がんを中心にご紹介します。②扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
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ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
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非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を使用します。1)
| ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
| EGFR遺伝子変異陽性 |
|
| ALK融合遺伝子陽性 | |
| ROS1融合遺伝子陽性 | |
| BRAF遺伝子変異陽性 | |
| MET遺伝子変異陽性 | |
| RET融合遺伝子陽性 | |
| 遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
|
最も頻度が高いのがEGFR遺伝子変異陽性で、約半数を占めています。
また、EGFR遺伝子変異の中でも、頻度の多いCommon mutationと、頻度の低いUncommon mutationに分類されています。1)
- Common mutation(エクソン19欠失変異、エクソン21のL858R変異):約9割
- Uncommon mutation(E709X,G719X,S768I,P848L,L861Q,エクソン19の挿入変異、エクソン20の挿入変異)
Common mutationの場合、タグリッソなどのEGFR-TKI単剤(もしくは化学療法併用)が推奨されていますが、Uncommon mutationではエビデンスが乏しく、効果も得られにくいといった問題点がありました。
特に、エクソン20の挿入変異は報告が少なく、有効性も得られづらいことから、ガイドラインでは「EGFR-TKI療法を行わないよう推奨する。」と記載されています。1)
今回ご紹介するアミバンタマブは、エクソン20の挿入変異の一次治療において化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)と併用することが推奨1)されている薬剤です!
また、Common mutationに対しては、一次治療としてアミバンタマブと新規EGFR-TKIのラズクルーズを併用することで、タグリッソ単剤よりも効果が優れているとの報告(後述のMARIPOSA試験)がありますので、今後はこちらも期待できると思われます。
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タグリッソ(オシメルチニブ)の作用機序と副作用【肺がん】
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リブロファズ/ライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序:EGFR/MET二重特異性抗体
通常、正常細胞におけるEGFR(epidermal growth factor receptor:上皮成長因子受容体)は、因子であるEGF(epidermal growth factor:上皮成長因子)が結合することで活性化されます。
しかし、EGFR変異陽性の非小細胞肺がんでは、EGFの存在有無に関わらず、恒常的に活性化し、がん細胞の増殖促進作用をもたらします。
その他にも、がん細胞の増殖を促進させる受容体としてMETが知られています(因子はHGF)。

アミバンタマブは、一つの抗体分子で二つの抗原(EGFRとMET)に結合するように設計された二重特異性抗体薬です!

がん細胞のEGFRとMETに結合することによって、以下の3つの作用による抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。
- EGFRとMETのシグナル伝達阻害 → 増殖の抑制
- EGFRとMETの受容体が取り込まれて分解される → EGFRとMETの受容体数の減少
- ADCC作用:免疫細胞が、がん細胞を障害する → 抗腫瘍効果
ボルヒアルロニダーゼの特徴:皮下注投与かつ投与時間の短縮
リブロファズは有効成分以外にも「ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)」が配合されています。
通常、抗体薬のような高分子タンパク製剤を皮下注投与しても、吸収率が悪く、なかなか思い通りの作用を発揮させることが困難です。
リブロファズに配合されているボルヒアルロニダーゼは皮下組織のヒアルロン酸を分解する酵素です。
皮下組織に抗体薬が投与された際の抵抗を減少させ、さらに抗体薬の浸透・吸収を促進すると考えられます。

ボルヒアルロニダーゼが配合された類薬では、基本的には固定用量かつ投与時間の大幅な短縮が実現できているため、リブロファズも同様だと考えています。
エビデンス紹介:PAPILLON試験(エクソン20挿入変異の一次治療)
まずはEGFRエクソン20挿入変異の一次治療のエビデンスを紹介します(PAPILLON試験)。2)
本試験は、EGFRエクソン20挿入変異を有する手術不能・再発の非小細胞肺がん患者さんを対象に、一次治療としてのアミバンタマブ+化学療法群の有効性を、化学療法単独群と比較した第Ⅲ相臨床試験です(日本人を含む)。
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした。
| アミバンタマブ+化学療法群 | 化学療法単独群 | |
| PFS中央値 | 11.4か月 | 6.7か月 |
| HR=0.40(95%CI]:0.30-0.53) P<0.001 |
||
| 奏効率 | 73% | 47% |
アミバンタマブ+化学療法群で有意なPFSの延長が認められていますね!
エビデンス紹介:MARIPOSA試験(一次治療としてのラズクルーズ併用)
続いて、通常のEGFRのCommon mutationを対象とした臨床試験をご紹介します(MARIPOSA試験)。3)
第3世代のEGFR-TKIであるラズクルーズを併用した試験ですね。
本試験は、EGFR エクソン19欠失変異またはエクソン21のL858R置換変異を有する手術不能・再発の非小細胞肺がん患者さんの一次治療において、以下の3群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。
- アミバンタマブ+ラズクルーズ併用群
- タグリッソ(オシメルチニブ)単剤群
- ラズクルーズ単剤群
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした(タグリッソ単独群に対するアミバンタマブ+ラズクルーズ併用群の優越性を検証)。
| アミバンタマブ+ ラズクルーズ併用群 |
タグリッソ単剤群 | ラズクルーズ単剤群 | |
| PFS中央値 | 23.7か月 | 16.6か月 | 18.5か月 |
| タグリッソ群との差: HR=0.70(95%CI:0.58-0.85), P<0.001 |
- | ||
| 奏効率 | 86% | 85% | ? |
アミバンタマブ+ラズクルーズ併用群で有意なPFSの延長が認められています!
ただ、同様の対象症例(EGFRのCommon mutation)に対して、タグリッソ+化学療法(プラチナ製剤+ペメトレキセド)群とタグリッソ群を直接比較したFLAURA2試験において、タグリッソ+化学療法群で有意なPFSの延長が示されています。4)
参考までに両試験を並べてみました(患者背景やPFSの定義が若干異なるため、参考程度です)。
| MARIPOSA試験 | FLAURA2試験 | |||
| アミバンタマブ+ ラズクルーズ |
タグリッソ | タグリッソ+化学療法 | タグリッソ | |
| PFS中央値 | 23.7か月 | 16.6か月 | 25.5か月 | 16.7か月 |
| HR=0.70(95%CI:0.58-0.85) P<0.001 |
HR=0.62(95%CI:0.48-0.80) P<0.001 |
|||
| 全生存期間(OS) ※いずれも未成熟 |
HR=0.80 | HR=0.90 | ||
……。いずれの治療群においても似たような治療成績ですね。
まだOSのデータが未成熟のため、今後、長期の成績が発表されれば、どちらがどういった対象に適しているのか検討が進むと考えられます。
副作用
代表としてライブリバントの副作用情報を掲載します。
重大な副作用として、
- Infusion reaction(41.1%)
- 間質性肺疾患:間質性肺疾患(頻度不明)、肺臓炎(2.6%)
- 重度の皮膚障害:発疹(15.2%)、ざ瘡様皮膚炎(4.0%)等
- 静脈血栓塞栓症:肺塞栓症(4.6%)、深部静脈血栓症(4.0%)等
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
EGFRを阻害するため、他のEGFR阻害薬と同様、皮膚障害等には注意すべきでしょう。
Infusion reactionについては、以下の記載があります。
本剤投与によるinfusion reactionを軽減させるため、本剤投与前に、1サイクル目の第1日目及び第2日目は、副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤及び解熱鎮痛剤を投与し、必要に応じてH2受容体拮抗剤や制吐剤を投与すること。1サイクル目の第8日目以降は、抗ヒスタミン剤及び解熱鎮痛剤を投与し、必要に応じて副腎皮質ホルモン剤、H2受容体拮抗剤や制吐剤を投与すること。
血栓については、特にラズクルーズ(ラゼルチニブ)との併用時に高頻度に認められることから、併用する際にはエリキュース(アピキサバン)を4か月間併用することとされています。
ラゼルチニブとの併用投与による静脈血栓塞栓症の発症を抑制するため、当該併用投与開始後4ヵ月間は、アピキサバン1回2.5mgを1日2回経口投与すること。
「非小細胞肺癌(NSCLC)治療薬アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法における予防的抗凝固療法の適正使用に関するステートメント」が、日本腫瘍循環器学会・日本臨床腫瘍学会・日本循環器学会・日本肺癌学会・日本癌治療学会・日本静脈学会と合同で発出されていますので、併せてご確認ください。
一般社団法人 日本血栓止血学会|非小細胞肺癌(NSCLC)治療薬アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法 における予防的抗凝固療法の適正使用に関する合同ステートメント完成のお知らせ
収載時の薬価
ライブリバントの収載時(2024年11月20日)の薬価は以下の通りです。
- ライブリバント点滴静注350mg:160,014円(1日薬価:38,099円)
以下の記事で算定根拠等について解説しています。
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【新薬:薬価収載】17製品(2024年11月20日)
続きを見る
リブロファズ配合皮下注については、現時点では薬価未収載です。
まとめ・あとがき
アミバンタマブはこんな薬
- 国内初のEGFRとMETの二重特異性抗体
- EGFRエクソン20の挿入変異に対して化学療法との併用で効果が期待されている
- EGFRのCommon mutationに対しては、アミバンタマブとの併用で効果が期待されている
- リブロファズはボルヒアルロニダーゼを配合した皮下注製剤で約5分で投与が完了
他疾患では、いくつかの二重特異性抗体薬が登場していますが、非小細胞肺がんでは初の登場です!
また、これまでEGFRのUncommon mutationの中でも、エクソン20の挿入変異に対しては有効な薬剤がありませんでした。
今後は、Common mutationに対して、タグリッソ+化学療法とアミバンタマブ+ラズクルーズ併用のどちらがよいのか、検討が進むことを期待したいですね。
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ラズクルーズ(ラゼルチニブ)の作用機序【肺がん】
続きを見る
以上、今回は非小細胞肺がんとリブロファズ/ライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました♪
参考資料・論文等
- 日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2025年版
- PAPILLON試験:N Engl J Med 2023;389:2039-2051
- MARIPOSA試験:N Engl J Med 2024;391:1486-1498
- FLAURA2試験:N Engl J Med 2023;389:1935-1948
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