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2025年3月27日、「EGFR変異陽性の非小細胞肺がん」の一次治療を対象とするラズクルーズ(ラゼルチニブ)が承認されました!
ヤンセンファーマ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ラズクルーズ錠80mg/240mg |
一般名 | ラゼルチニブメシル酸塩水和物 |
製品名の由来 | 「LAZ」は本剤の有効成分である「lazertinib」に由来し、 “含包する”という意味を持つ「inclusion」から派生した「CLUZ」と合わせ、 ラズクルーズ®(LAZCLUZE®)とした。 |
製造販売 | ヤンセンファーマ(株) |
効能・効果 | EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
用法・用量 | アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用において、 通常、成人にはラゼルチニブとして240mgを1日1回経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | |
発売日 |
ラズクルーズは、タグリッソ(オシメルチニブ)に次ぐ第3世代のEGFR阻害薬です!
EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんは、
- Common mutation(エクソン19欠失変異、エクソン21のL858R変異)
- Uncommon mutation
に分けられていますが、ラズクルーズはCommon mutationの一次治療においてライブリバント(アミバンタマブ)との併用で使用します。
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ライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序【肺がん】
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今回は非小細胞肺がんとラズクルーズ(ラゼルチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説です!
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。

非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
今回は①非扁平上皮がんを中心にご紹介します。②扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
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ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
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非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を使用します。1)
ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
EGFR遺伝子変異陽性 |
|
ALK融合遺伝子陽性 | |
ROS1融合遺伝子陽性 | |
BRAF遺伝子変異陽性 | |
MET遺伝子変異陽性 | |
RET融合遺伝子陽性 | |
遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
|
最も頻度が高いのがEGFR遺伝子変異陽性で、約半数を占めています。
また、EGFR遺伝子変異の中でも、頻度の多いCommon mutationと、頻度の低いUncommon mutationに分類されています。1)
- Common mutation(エクソン19欠失変異、エクソン21のL858R変異):約9割
- Uncommon mutation(E709X,G719X,S768I,P848L,L861Q,エクソン19の挿入変異、エクソン20の挿入変異)
Common mutationの場合、タグリッソなどのEGFR-TKI単剤(もしくは化学療法併用)が推奨されていますが、ラズクルーズ+ライブリバントも新たな治療選択肢となります。

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タグリッソ(オシメルチニブ)の作用機序と副作用【肺がん】
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ラズクルーズ(ラゼルチニブ)の作用機序
ラズクルーズは、EGFR遺伝子変異陽性のうちCommon mutation(エクソン19欠失変異、エクソン21のL858R変異)を選択的に阻害する第3世代のEGFR阻害薬です!2)
併用するライブリバントはEGFRとMETを共に阻害することから、併用することでより強力にがん細胞の増殖を抑制できると考えられます。

また、第1・2世代のEGFR阻害薬は、しばしばT790Mと呼ばれる耐性を生じることが知られていますが、ラズクルーズはT790Mに対しても効果が期待されています!
類薬のタグリッソもT790Mに対する効果が期待されていますが、その阻害活性はラズクルーズの方が高いとの報告もありました。3)
エビデンス紹介:MARIPOSA試験(一次治療としてのライブリバント併用)
EGFRのCommon mutationを対象とした臨床試験をご紹介します(MARIPOSA試験)。4)
本試験は、EGFR エクソン19欠失変異またはエクソン21のL858R置換変異を有する手術不能・再発の非小細胞肺がん患者さんの一次治療において、以下の3群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。
- ライブリバント+ラズクルーズ併用群
- タグリッソ(オシメルチニブ)単剤群
- ラズクルーズ単剤群
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした(タグリッソ単独群に対するライブリバント+ラズクルーズ併用群の優越性を検証)。
ライブリバント+ ラズクルーズ併用群 |
タグリッソ単剤群 | ラズクルーズ単剤群 | |
PFS中央値 | 23.7か月 | 16.6か月 | 18.5か月 |
タグリッソ群との差: HR=0.70(95%CI:0.58-0.85), P<0.001 |
- | ||
奏効率 | 86% | 85% | ? |
ライブリバント+ラズクルーズ併用群で有意なPFSの延長が認められています!

ただ、同様の対象症例(EGFRのCommon mutation)に対して、タグリッソ+化学療法(プラチナ製剤+ペメトレキセド)群とタグリッソ群を直接比較したFLAURA2試験において、タグリッソ+化学療法群で有意なPFSの延長が示されています。5)
参考までに両試験を並べてみました(患者背景やPFSの定義が若干異なるため、参考程度です)。
MARIPOSA試験 | FLAURA2試験 | |||
ライブリバント+ ラズクルーズ |
タグリッソ | タグリッソ+化学療法 | タグリッソ | |
PFS中央値 | 23.7か月 | 16.6か月 | 25.5か月 | 16.7か月 |
HR=0.70(95%CI:0.58-0.85) P<0.001 |
HR=0.62(95%CI:0.48-0.80) P<0.001 |
|||
全生存期間(OS) ※いずれも未成熟 |
HR=0.80 | HR=0.90 |
……。いずれの治療群においても似たような治療成績ですね。
まだOSのデータが未成熟のため、今後、長期の成績が発表されれば、どちらがどういった対象に適しているのか検討が進むと考えられます。

副作用
10%以上に認められる副作用として、爪囲炎(65.1%)、食欲減退、錯感覚(27.3%)、口内炎(39.4%)、下痢(22.6%)、悪心、便秘、発疹(68.4%)、ざ瘡様皮膚炎(31.4%)、皮膚乾燥(22.8%)、そう痒症(20.4%)、筋痙縮、疲労、無力症などが報告されています。

重大な副作用として、
- 間質性肺疾患:肺臓炎(1.4%)、間質性肺疾患(1.2%)
- 静脈血栓塞栓症:肺塞栓症(6.2%、1.4%)、深部静脈血栓症(4.5%、1.4%)
- 動脈血栓塞栓症
- 肝機能障害(31.8%)
- 重度の下痢(1.9%)
- 重度の皮膚障害:発疹(17.1%)、ざ瘡様皮膚炎(8.3%)
- 心不全(1.0%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
また、ライブリバント(アミバンタマブ)との併用により静脈血栓塞栓症の発現頻度が増加する傾向が認められているため、併用する際にはエリキュース(アピキサバン)を4か月間併用することとされています。
アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用投与による静脈血栓塞栓症の発症を抑制するため、当該併用投与開始後4カ月間は、アピキサバン1回2.5mgを1日2回経口投与すること。
用法・用量
アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはラゼルチニブとして 240 mg を 1 日 1 回経口投与します。
なお、患者の状態により適宜減量します。
収載時の薬価
現時点では薬価未収載です。
まとめ・あとがき
ラズクルーズはこんな薬
- 新規の第3世代のEGFR阻害薬
- EGFRのCommon mutationを選択的に阻害する
- EGFRのCommon mutationに対して、ライブリバントとの併用で効果が期待されている
- ライブリバントとの併用により静脈血栓塞栓症のリスクが高まるため、エリキュース(アピキサバン)を併用する
これまで、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんではタグリッソが最も使用されていました。

ただし、Common mutationに対して、タグリッソ+化学療法とライブリバント+ラズクルーズ併用のどちらがよいのか、検討が進むことを期待したいですね。
以上、今回は非小細胞肺がんとラズクルーズ(ラゼルチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました♪
参考資料・論文等
- 日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2024年版
- Yonsei Med J. 2022 Sep;63(9):799-805.
- RSC Med Chem. 2025 Jan 7;16(3):1049-1066.
- PAPILLON試験:N Engl J Med 2023;389:2039-2051
- MARIPOSA試験:N Engl J Med 2024;391:1486-1498
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