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イクスタンジ(エンザルタミド)の作用機序と副作用【前立腺がん】

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2020年5月29日イクスタンジ(エンザルタミド)の効能・効果に「遠隔転移を有する前立腺がん」を追加することが承認されました!

アステラス製薬|ニュースリリース

基本情報

製品名 イクスタンジ錠40mg/80mg
一般名 エンザルタミド
製品名の由来 「Extend Life, Anti-Androgen」に由来
製造販売 アステラス製薬(株)
効能・効果 ○去勢抵抗性前立腺がん
○遠隔転移を有する前立腺がん
用法・用量 通常、成人にはエンザルタミドとして160mgを1日1回経口投与する。

 

元々、イクスタンジは2014年3月24日に「去勢抵抗性前立腺がん」を適応としてカプセル製剤40mgとして承認・販売されていましたが、2018年3月1日に錠剤(40mg/80mg)が承認されています。

それに伴い、現在ではカプセル製剤は終売となりました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
カプセル製剤は大きくて服用し辛かったのですが、錠剤は小型化され、さらに規格が追加されているので服用回数の軽減も期待できると思います。

 

イクスタンジの類薬には以下があり、作用機序は同様です。

ニュベクオ(ダロルタミド)の作用機序・類薬との違い【前立腺がん】

続きを見る

 

今回は前立腺がんイクスタンジ(エンザルタミド)の作用機序についてご紹介します。

 

前立腺がんとは

前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。

 

この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。

基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。

 

自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。

 

前立腺がんの発生・増殖メカニズム

前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。

 

男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎前立腺がんからも分泌されます。

 

前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。

前立腺がんの増殖とアンドロゲン

 

それではアンドロゲン受容体とがんの増殖機構についてもう少し詳しく解説します。

 

アンドロゲン受容体とがんの増殖機構

アンドロゲン受容体は、がん細胞の細胞質内に存在しています。

 

アンドロゲン受容体にアンドロゲンが結合して活性化すると、核内に移動していきます。

 

活性化したアンドロゲン受容体は、核内のDNAと結合することで、がん細胞の増殖が促進・活性化されると考えられています。

アンドロゲン受容体の仕組み

 

前立腺がんの治療

早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、

  • 手術
  • 放射線療法
  • ホルモン療法

などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。

 

中心的に用いられるのはホルモン療法で、前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。

 

昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。

しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。

 

現在、初回のホルモン療法としては、

などが行われます。

 

今回の適応拡大によって、イクスタンジは上記のホルモン療法と併用して使用することが可能となりますね!

既にザイティガ(一般名:アビラテロン)はホルモン療法と併用して使用可能です。

 

 

また、ホルモン療法によるADTを行っていても抵抗性を示して、がんの増殖が抑えられないこともあります。

このような状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と呼んでいて、この場合にもイクスタンジやザイティガが使用可能です。

 

他臓器に転移のないCRPCの場合、

も使用可能ですね。

 

イクスタンジ(エンザルタミド)の作用機序

イクスタンジは、前述のがん増殖機構のうち、以下を阻害する薬剤です。

  1. アンドロゲン受容体への結合を阻害
  2. アンドロゲン受容体の核内への移動を阻害
  3. アンドロゲン受容体のDNAへの結合を阻害

イクスタンジ(エンザルタミド)の作用機序

 

上記の作用機序により、アンドロゲンによるがん増殖のシグナル伝達が阻害される結果、がん細胞の増殖抑制効果が発揮されると考えられています。

 

副作用

主な副作用として、高血圧、便秘、疲労、食欲減少、体重減少、心電図QT延長、ほてり、などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 痙攣発作(0.2%)
  • 血小板減少(頻度不明)
  • 間質性肺疾患(頻度不明)

が挙げられていますので特に注意が必要です。

 

用法・用量

通常、成人にはエンザルタミドとして160mgを1日1回経口投与します。

 

あとがき

前立腺がんに使用できる薬剤には、ザイティガ(一般名:アビラテロン)もあり、近年治療選択肢が増えてきています。

 

特にイクスタンジと作用機序が同様の薬剤(アーリーダ、ニュベクオ)については、効能・効果の違い、特徴の違い、などについて以下の記事で解説していますので是非ご覧くださいませ。

ニュベクオ(ダロルタミド)の作用機序・類薬との違い【前立腺がん】

続きを見る

 

以上、今回は前立腺がんとイクスタンジ(エンザルタミド)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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