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ザイティガ(アビラテロン)の作用機序と副作用【前立腺がん初回ホルモン治療】

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厚労省は2018年2月16日、「内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がん」を効能・効果に追加する新効能医薬品のザイティガ錠250mg(一般名:アビラテロン酢酸エステル)を承認したと発表がありました。

 

ザイティガは既に「去勢抵抗性前立腺がん」の効能・効果を有していましたが、去勢抵抗前にも使用できるようになりました。

今回は前立腺がんとザイティガ(アビラテロン)の作用機序についてご紹介します。

 

前立腺がんとは

前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。

この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。

基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。

自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。

 

前立腺がんの発生・増殖メカニズム

前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。

男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎前立腺がんからも分泌されます。

 

前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。

 

アンドロゲンの合成経路

アンドロゲンは精巣・副腎・前立腺がんで以下の図のような経路で合成されます。

アンドロゲンの合成経路の途中には「CYP17」と呼ばれるタンパク質がその変換に関わっていることが知られています。

 

前立腺がんの治療

早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、

  • 手術
  • 放射線療法
  • ホルモン療法

などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。

 

一方、発見時に遠隔転移を有する前立腺がんの場合、ホルモン療法が基本となります。

前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。

 

昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。

しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。

 

現在、初回のホルモン療法としては、

などを適宜併用した治療が行われます。

 

 

これらの初回ホルモン療法を行っても、がんの増殖が抑えられない場合、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と診断されます。

 

今回ご紹介するザイティガは元々はCRPCに使用できる薬剤として承認されていましたが、「ホルモン療法」と併用して初回から使用できるようになりました!

 

ザイティガ(一般名:アビラテロン)の作用機序

ザイティガは、アンドロゲン合成経路に関与するCYP17」を特異的に阻害するといった作用機序を有した薬剤です。

CYP17が阻害されることで、精巣・副腎・前立腺がんでのアンドロゲンの合成が阻害され、その結果、前立腺がん細胞の増殖が抑制されると考えられます。

 

ザイティガ(一般名:アビラテロン)の副作用

主な副作用には、肝機能異常、低カリウム血症、高脂血症、高血圧、疲労、浮腫などが報告されています。

 

ザイティガ(一般名:アビラテロン)の注意点

ザイティガは、上記のCYP17を阻害することで「コルチゾール(糖質コルチコイドの一種)」の生成も抑制してしまいます。

コルチゾール量が低下すると、フィードバック機構によってACTH濃度が上昇し、それに伴い「鉱質コルチコイド」の量が増加します。

鉱質コルチコイドの増加によって、高血圧・低カリウム血症・浮腫などの症状が発現してしまうことから、ザイティガを使用する際には「糖質コルチコイド」を補充しておく必要があります。

一般的には、糖質コルチコイドのプレドニゾロンと併用して用いられます。

 

ザイティガ(一般名:アビラテロン)の用法用量

プレドニゾロンとの併用において、1日1回1000mgを空腹時に経口投与します。

 

エビデンス紹介(LATITUDE試験)

根拠となった臨床試験(LATITUDE試験)をご紹介します。1)

本試験はホルモン療法未治療のハイリスク予後因子*を有する前立腺がん患者さんを対象に、アンドロゲン除去療法(ADT)とADT+ザイティガを直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。

*ハイリスク予後因子:次の3つの予後因子のうち、2つ以上を有する。
1.Gleasonスコアが8以上
2.骨スキャンで3カ所以上の骨病変あり
3.内臓転移あり(リンパ節転移を除く)

 

本試験の主要評価項目は「全生存期間」と「無増悪生存期間(PFS)」でした。

臨床試験名 LATITUDE試験1)
試験群 ADT群 ADT+
ザイティガ群
PFS中央値 14.8か月 33.0か月
HR=0.47, P<0.001
全生存期間中央値 34.7か月 未到達
HR=0.62, P<0.001

†PFS(無増悪生存期間):薬を投与してから、がんが大きく(増大)するまでの期間

 

以上の結果より、ADTにザイティガを追加することでPFSや全生存期間が有意に改善することが示されました。

 

1)LATITUDE試験:N Engl J Med. 2017 Jul 27;377(4):352-360.

 

あとがき

これまでザイティガは、初回ホルモン療法で抵抗を示した去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)にしか使用できませんでしたが、今後は初回のホルモン療法と併用して使用できるようになりました!

 

ただし、全ての患者さんに初回から使用できるわけではありません。

臨床試験では「ハイリスクの予後因子」を有する患者さんに対して初回ホルモン療法と併用することで治療効果があったことから、効能効果にも限定が付いています。

ハイリスクの予後因子を有する患者さんではホルモン療法のみでがんの増殖を抑える事が困難でしたが、ザイティガによって予後の延長が期待されると思われます!

 

以上、今回は前立腺がんとザイティガ(一般名:アビラテロン)の作用機序についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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