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エザルミア(バレメトスタット)の作用機序【ATL】

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2024年5月24日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて、エザルミア錠(バレメトスタット)の「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)」に対する適応拡大が承認了承されました!

第一三共|申請のニュースリリース

現時点ではPTCLは未承認のため、ご注意ください。

基本情報

製品名 エザルミア錠50mg/100mg
一般名 バレメトスタットトシル酸塩
製品名の由来 作用標的部位EZH1/2 とharmony(ハーモニー)に由来する。
製造販売 第一三共(株)
効能・効果 ●再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫
●再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫
用法・用量 通常、成人にはバレメトスタットとして
200mg を1日1回空腹時に経口投与する。
なお、患者の状態により適宜減量する。
収載時の薬価 50mg:6,267.70円
100mg:12,017.00円
発売日 2022年12月20日(HP

 

エザルミアは、2022年9月26日に「成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)」を対象疾患として承認されたEZH1/2阻害薬です。エピジェネティクス関連タンパク質に作用する薬剤ですね。

 

木元 貴祥
エピジェネティクス・・・・なんのこっちゃって感じですよね(笑)

 

国内では、別疾患ですがEZH2阻害薬のタズベリク(タゼメトスタット)が承認・販売されています。

タズベリク(タゼメトスタット)の作用機序【悪性リンパ腫】

続きを見る

 

今回はエピジェネティクスと共に、ATLの疾患、エザルミア(バレメトスタット)の作用機序について解説していきます!

 

末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)については、エピジェネティクス関連タンパク質(HDAC)に作用するハイヤスタ(ツシジノスタット)の記事をご参照ください。

ハイヤスタ(ツシジノスタット)の作用機序【末梢性T細胞リンパ腫】

続きを見る

 

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エピジェネティクスとは

通常、体内のタンパク質発現は遺伝子配列(DNA配列)によって制御されています。しかし、目の細胞と肝臓の細胞、DNA配列は同じでも発現しているタンパク質は全く異なりますよね?

 

このように、DNA配列以外でタンパク質の発現を制御しているのがエピジェネティクスと呼ばれるシステムです。ちなみに、ジェネティクスは「遺伝学」、エピは「上に」という意味。つまり遺伝子情報の上にさらに修飾されたもの、という意味合いでしょうか。

 

具体的にはDNAはヒストンと呼ばれるタンパク質に巻き付いて存在していますが、ヒストンが緩んだ状態では遺伝子の転写が活性化され、タンパク質の発現量が増えます。しかし、ヒストンが凝集した状態では遺伝子の転写が行われず、タンパク質の発現も抑制されています。1)

エピジェネティクスとヒストン:遺伝子発現のコントロール

 

木元 貴祥
ヒストンの凝集や緩みに関与しているのがエピジェネティクス関連タンパク質というわけです。

 

通常、体内にはがん細胞の発生を抑制するため、がん抑制遺伝子・タンパク質が存在しています。しかし、エピジェネティクス関連タンパク質に異常があると、上手くがん抑制遺伝子・タンパク質が合成されなくなり、がんの発生や増殖に関与することが知られています。

 

成人T細胞白血病リンパ腫

造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。

 

細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。

  • ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
  • 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)

 

木元 貴祥
国内ではほとんどがNHLと言われていますね。

 

今回ご紹介する成人T細胞白血病リンパ腫(ATL:adult T-cell leukemia-lymphoma)もNHLの一種ですね。

 

ATLは、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)というウイルス感染によって引き起こされるT細胞腫瘍です。2)

HTLV-1が、白血球の中でもT細胞に感染し、腫瘍化化したT細胞(ATL細胞)が増殖することで発症します。

HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)というウイルス感染によって引き起こされるT細胞腫瘍

 

また、ATL細胞ではしばしば、EZH1/2(enhancer of zeste homolog 1および2)遺伝子の変異があることが知られています。

 

EZH1/2遺伝子に変異があると、エピジェネティクス関連タンパク質であるEZH1/2が過剰となり、ヒストンの凝集が促進されます。その結果、T細胞の正常分化に必要なタンパク質が合成されなくなり、がんが発生・増殖するといったメカニズムです。

ALTの発症にはEZH1/2が関与している

 

HTLV-1に感染したからと言って、必ず発症するわけではなく、HTLV-1に感染した人が、一生のうちに成人T細胞白血病リンパ腫を発症する確率は約5%とのことです。1)

また、HTLV-1のキャリア数は地域性があって、九州・沖縄地域に多いとされています。

 

病型と治療

ATLの病型は、予後や症状が良好な順に、「くすぶり型」「慢性型」「リンパ腫型」「急性型」に分かれていて、それぞれ治療方針などが異なります。2-3)

  • くすぶり型:無治療経過観察
  • 慢性型:予後不良因子が無ければ無治療経過観察(予後不良因子があれば化学療法を検討)
  • リンパ腫型・急性型:化学療法(奏効すれば移植を検討)

 

特に、リンパ腫型・急性型の予後は非常に不良です。そのため、早期発見と早期の化学療法が重要となります。

 

化学療法の基本は、抗がん剤を多剤併用する「VCAP-AMP-VECP療法」が基本です。

VCAP-AMP-VECP療法

  • ビンクリスチン(vincristine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、ドキソルビシン(別名アドリアマイシン:adriamycin)、プレドニゾロン(prednisolone)を併用するVCAP療法
  • ドキソルビシン+ラニムスチン(略語:MCNU)+プレドニゾロンを併用するAMP療法
  • ビンデシン(vindesine)+エトポシド(etoposide)+カルボプラチン(carboplatin)+プレドニゾロンを併用するVECP療法

を組み合わせた治療法。

 

場合によっては、 ポテリジオ点滴静注(モガムリズマブ)を上記に併用します。

 

化学療法が奏効した場合、造血幹細胞移植が検討されますが、奏効しなかった場合、その後の治療選択肢は限られていました。

 

今回ご紹介するエザルミアは、ポテリジオを含む化学療法に抵抗性または再発した場合に使用できる薬剤です!!

 

同じく、抵抗性・再発の場合にはハイヤスタ(ツシジノスタット)も使用できます。

ハイヤスタ(ツシジノスタット)の作用機序【末梢性T細胞リンパ腫】

続きを見る

 

エザルミア(バレメトスタット)の作用機序

エザルミアは、ATL細胞で過剰に発現しているEZH1/2を選択的に阻害する薬剤です。

エピジェネティクスに関与しているEZH1/2が阻害されることで、T細胞の正常分化が促され、同時にがん抑制遺伝子・タンパク質の発現量も増えることからがん細胞の増殖抑制効果が得られると考えられています。

エザルミア(バレメトスタット)の作用機序:EZH1/2阻害薬

 

エビデンス紹介:国内の第Ⅱ相試験

根拠となった臨床試験は、ポテリジオを含む化学療法が1つ以上施行されたリンパ腫型・急性型の再発・難治性ALT患者さんを対象に行われて国内第Ⅱ相試験です。4)

 

主要評価項目は「中央有効性評価委員会による全奏効率」とされ、結果は48%と、主要評価項目を達成しました。

 

その他の結果は以下の通りです。

  • 無増悪生存期間中央値:7.4か月
  • 生存期間中央値:16.4か月

 

副作用

20%以上に認められる副作用として、脱毛症(40.5%)、味覚不全(40.5%)などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 骨髄抑制:血小板減少(73.0%)、貧血(40.5%)、好中球減少(27.0%)、白血球減少(21.6%)、リンパ球減少(16.2%)
  • 感染症(24.3%):上気道感染(5.4%)等

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

法・用量

通常、成人にはバレメトスタットとして200mg を1日1回空腹時に経口投与します。

患者の状態により適宜減量

 

収載時の薬価

収載予定時(2022年11月16日)の薬価は以下の通りです。

  • エザルミア錠50mg:6,267.70円
  • エザルミア錠100mg:12,017.00円(1日薬価:24,034.00円)

 

算定根拠については以下をご確認ください。

【新薬:薬価収載】16製品(2022年11月16日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

エザルミアはこんな薬

  • 経口EZH1/2阻害薬
  • エピジェネティクスに関与しているEZH1/2を阻害することでがん細胞の増殖を抑制する

 

木元 貴祥
ALTはまだまだ治療選択肢が限られているため、新たな治療法が登場することは朗報ではないでしょうか。

 

以上、今回は少し難しかったかもしれませんが、エピジェネティクスとそれに関与しているエザルミア(バレメトスタット)の作用機序について解説しました!

 

引用文献・資料等

  1. 国立がん研究センター 研究所|エピジェネティクスとは?
  2. がん情報サービス|成人T細胞白血病リンパ腫
  3. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
  4. 国内第Ⅱ相試験:Blood. 2023 Mar 9;141(10):1159-1168.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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