PASSMED公式LINEの登録者特典|当サイトに掲載している図表の元データ&学習支援AI 薬科GPTをプレゼント♪
2022年6月20日、「がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍」を対象疾患とするジェセリ錠(ピミテスピブ)が承認されました!
大鵬薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ジェセリ錠40mg |
一般名 | ピミテスピブ |
製品名の由来 | 特になし |
製造販売 | 大鵬薬品工業(株) |
効能・効果 | がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍 |
用法・用量 | 5日間連続経口投与したのち2日間休薬し、 これを繰り返す。(記事内参照) |
収載時の薬価 | 6,265.00円 |
発売日 | 2022年8月30日新発売(HP) |
消化管間質腫瘍(GIST)はこれまで治療選択肢が少なかった領域のため、新薬の登場は期待できるのではないでしょうか。
今回はGISTとジェセリ(ピミテスピブ)の作用機序・エビデンスについて解説します。
消化管間質腫瘍(GIST)とは
消化管間質腫瘍(GIST:Gastrointestinal Stromal Tumor)とは、消化管の壁にできる悪性腫瘍の一種(肉腫)です。好発部位としては胃や小腸が多いとされています。1-2)
通常、胃がんや小腸がんは粘膜から発生しますが、GISTは粘膜下にある未熟な間葉系細胞から発生するため、胃・小腸がんとは異なる性質を有しています。
GISTの発症率は年間10万人に対して1人から2人くらいとされているため、比較的稀な腫瘍ですね。
治療
早期発見の場合、手術による根治が可能です。1-2)
再発リスクが高い場合には、術後にグリベック(一般名:イマチニブ)による術後補助療法(1年間)が行われます。
一方、発見時に他の臓器に転移があったり、再発した場合、分子標的治療薬による全身療法が基本です。
初回治療としてはグリベックが行われ、不応・不耐の場合にはスーテント(一般名:スニチニブ)、その後、スチバーガ(一般名:レゴラフェニブ)を投与します。
しかしながら、その後の治療選択肢は存在せず、新たな治療選択肢が望まれていました。
ジェセリ(ピミテスピブ)の作用機序:HSP90阻害
細胞は生体内でさまざまなストレスにさらされていて、特にがん細胞は、低酸素・低栄養・免疫系による排除・遺伝的不安定性といった多くのストレスにさらされています。
このようなストレス環境下にも耐えうるシステムとして知られているのが「HSP90(Heat Shock Protein 90)」と呼ばれるタンパク質です。
HSP90はストレス環境下で発現が亢進・活性化して、がん細胞の増殖促進に関与している各受容体(例:KIT、PDGFRA、HER2、EGFRなど)の発現を上昇させます。
ジェセリはHSP90を選択的に阻害する薬剤です。ジェセリによってHSP90が阻害されると、腫瘍増殖関連受容体の発現が低下します。
その結果、腫瘍細胞の増殖が抑制され、抗腫瘍効果を発揮すると考えられていますね。
エビデンス紹介:CHAPTER-GIST-301試験
根拠となった臨床試験をご紹介します(CHAPTER-GIST-301試験)。3)
本試験はグリベック・スーテント・スチバーガに不応・不耐の進行性GIST患者さんを対象に、ジェセリとプラセボを比較する第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「無増悪生存期間」とされ、結果は以下の通りでした。
ジェセリ群 | プラセボ群 | |
無増悪生存期間中央値 | 2.8か月 | 1.4か月 |
HR=0.51、p=0.006 | ||
生存期間中央値 | 13.8か月 | 9.6か月 |
HR=0.63 |
副作用
10%以上に認められる副作用として、味覚障害、腎機能障害、血中クレアチニン増加(28.0%)、下痢(72.0%)、食欲減退(29.3%)、悪心(25.3%)、倦怠感(26.7%)などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 重度の下痢:重度の下痢(16.0%)により脱水をきたし、重篤な腎障害があらわれることがある。
- 眼障害:夜盲(12.0%)、霧視(5.3%)、視力障害(5.3%)、網膜静脈閉塞(1.3%)、網膜症(1.3%)、後天性色覚異常(1.3%)等
- 出血:腹腔内出血(1.3%)、出血性十二指腸潰瘍(1.3%)等
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
また、特徴的な有害事象としては夜盲症の発現が認められています。
下痢・眼障害には減量・休薬基準が設けられているため、早期発見が大切です。
用法・用量
通常、成人にはピミテスピブとして1日1回160mgを空腹時に投与します。
5日間連続経口投与したのち2日間休薬し、これを繰り返します。
なお、患者の状態に より適宜減量
収載時の薬価
収載時(2022年8月18日)の薬価は以下の通りです。
- ジェセリ錠40mg:6,265.00円(1日薬価:17,900.00円)
算定根拠については以下で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】7製品(2022年8月18日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ジェセリはこんな薬
- GISTの4次治療に使用する経口薬
- HSP90を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する
- 1日1回経口投与で、5日間連続経口投与したのち2日間休薬
- 下痢と眼障害には注意が必要
GISTはこれまで治療選択肢が少なかったため、新たな治療選択肢の登場が期待されていました。
ジェセリは4次治療において、良好な治療成績が示されているため、新たな治療選択肢として期待できます!!
以上、今回はGISTとジェセリ(ピミテスピブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
- がん情報サービス|GIST(消化管間質腫瘍)
- 国立がん研究センター 希少がんセンター|GIST(消化管間質腫瘍)
- CHAPTER-GIST-301試験|Ann Oncol . 2022 Jun 7;S0923-7534(22)01718-5. doi: 10.1016/j.annonc.2022.05.518.
\ 新薬情報オンラインの運営者が執筆! /
薬剤師におススメの記事
失敗しない薬剤師の転職とは?
数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト。
どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。
- 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
- 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
- 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!
上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!
-
薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較
続きを見る
日々の情報収集に最適
-
薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選