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2025年10月29日、薬事審議会・医薬品第二部会にてベネクレクスタ錠(ベネトクラクス)の「慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」の効能・効果について、一次治療の適応拡大が承認了承されました。
これまでは「再発・難治性」の場合に限られていましたが、初回から使用可能となりますね。
アッヴィ|申請のニュースリリース
現時点では初回の慢性リンパ性白血病は適応外です。
基本情報
| 製品名 | ベネクレクスタ錠 |
| 一般名 | ベネトクラクス |
| 製品名の由来 | 特になし |
| 製造販売 | アッヴィ合同会社 |
| 効能・効果 | ●再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む) ●急性骨髄性白血病 ●再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫 |
| 用法・用量 | 1日1回食後経口投与。詳細は記事内参照。 |
| 収載時の薬価 | 10mg 1錠:874.60円 50mg 1錠:3,964.50円 100mg 1錠:7,601.10円(1日薬価:30,404.40円) |
ベネクレクスタは2019年9月20日、「再発・難治性の慢性リンパ性白血病」を効能・効果として承認された初の経口BCL-2阻害薬です。
その後、2021年3月23日には「急性骨髄性白血病(AML)」、2025年3月27日には「マントル細胞リンパ腫(MCL)」を追加することが承認されています。
今回は慢性リンパ性白血病(CLL)と急性骨髄性白血病(AML)とマントル細胞リンパ腫(MCL)、そしてベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。
慢性リンパ性白血病とは
白血病は「血液のがん」です。
血液細胞には、白血球(好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球、リンパ球(B細胞やT細胞)等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。
- 顆粒球(骨髄系):好中球、好酸球、好塩基球
- リンパ球(リンパ系):B細胞、T細胞、NK細胞
慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)は、リンパ球のうち「成熟した小型のB細胞」が腫瘍化する疾患です。
腫瘍化したB細胞が末梢血や骨髄に存在している時には「慢性リンパ性白血病」と呼ばれ、リンパ節にあるときは「小リンパ球性リンパ腫」と呼ばれます。
慢性リンパ性白血病の発生頻度は日本では非常に少なく、白血病全体の約1~2%で約2,000人と推定されています。
慢性リンパ性白血病の症状と治療
慢性リンパ性白血病は進行が緩やかで無症状であることが多く、この場合経過観察が基本です。
進行すると倦怠感、寝汗を伴う微熱、貧血、血小板減少が認められることもあります。
症状がある場合、イムブルビカ(イブルチニブ)単剤やカルケンス(アカラブルチニブ)+ガザイバ(オビヌツズマブ)併用療法などが行われます。1)
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カルケンス(アカラブルチニブ)の作用機序【CLL/MCL】
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今回、ベネクレクスタは一次治療(初回治療)として、以下の併用療法で使用可能となります!
- ベネクレクスタ+イムブルビカ
- ベネクレクスタ+ガザイバ(オビヌツズマブ)
ガザイバは、リツキサンを改良した抗CD20抗体薬ですね。
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ガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】
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また、上記の治療を行っても治療抵抗性になったり、一度は寛解(効いた)にも関わらず再発してしまうこともあります。
この場合、BTK阻害薬のジャイパーカ(ピルトブルチニブ)などが検討されますが、治療選択肢は限られていました。
ベネクレクスタはもともと、再発・難治性の慢性リンパ性白血病に対してリツキサン(リツキシマブ)と併用することで治療効果が認められていました。
基本的には、一次治療で使用していない作用機序の薬剤の投与が検討されますね(例:一次治療でBCL-2阻害薬のベネクレクスタを使用した場合、再発・難治例では異なる作用機序であるBTK阻害薬のジャイパーカを使用)。
急性骨髄性白血病と治療
急性骨髄性白血病(AML:Acute Myeloid Leukemia)は、白血球の中でも「顆粒球」の未熟細胞が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。
基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。1)
1カ月程の化学療法(導入化学療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後、地固め療法を数回行います。
そして完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。
しかしながら、
- 併存疾患
- 高齢
といった理由で導入化学療法が行えない場合もしばしばあります。
今回ご紹介するベネクレクスタは、標準的な導入化学療法が不適格(例:併存疾患・年齢)な患者さんの初回治療として、ビダーザ(一般名:アザシチジン)と併用することで治療効果が期待されている薬剤です!
また、導入化学療法で抵抗性を示したり、一度完全寛解が得られた後に再発したりすることもあります。その場合には、以下が治療選択肢となりますね。
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ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序:ゾスパタとの違い・比較【AML】
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悪性リンパ腫とは
造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。
細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。1)
- ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
- 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)
今回ご紹介するマントル細胞リンパ腫(MCL:mantle cell lymphoma)は、NHLの一種です。
また、悪性リンパ腫では、疾患の悪性度や予後の臨床分類としてアグレッシブ分類(低悪性度、中悪性度、高悪性度)が行われますが、MCLは「低悪性度」のアグレッシブ分類とされています。1)
MCLと治療
MCLは発見時の進行度(限局期と進行期)に応じて、治療方針がそれぞれ異なります。1)
限局期(Ⅰ/Ⅱ期)では、放射線療法を基本とし、化学療法と併用することもあります。
また、進行期(Ⅱ期の一部/Ⅲ/Ⅳ期)では、大量化学療法+自家造血幹細胞移植に耐えられると判断される若年性の場合、それらが治療選択肢です。
この場合、リツキシマブと大量シタラビン療法を含んだ導入療法を施行し、奏効例に自家移植併用大量化学療法による地固め療法とリツキシマブ維持療法を実施することが推奨されています。1)
しかし、上記のような治療に耐えられない場合(例:高齢)、以下のような移植を伴わない治療法が推奨されています。
最近では、65歳以上のMCLに対して、BR療法にイムブルビカ(イブルチニブ)を上乗せすることで、より治療効果が期待できることが示されています(2023年2月24日適応拡大)。
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イムブルビカ(イブルチニブ)の作用機序と副作用【CLL】
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しかし、上記の治療に抵抗・再発が認められた場合、その後の治療選択肢は限られていましたが、2024年6月に新規のBTK阻害薬であるジャイパーカ(ピルトブルチニブ)が承認されていました。
ではベネクレクスタに関与しているBCL-2とその働きについて説明します。
BCL-2によるアポトーシスの抑制
正常の細胞がダメージや傷を受けた場合、そのまま放置されてしまうと異常細胞になってしまったり、がん細胞になってしまったりします。
そのため、細胞には「アポトーシス」と呼ばれる自然細胞死の機能が備わっており、異常な細胞はアポトーシスによって自然に消滅していきます。
しかし白血病細胞はBCL-2と呼ばれる抗アポトーシスタンパク質を過剰に発現してることが知られています。
BCL-2は通常、細胞内のミトコンドリアに存在していますが、がん細胞や白血病細胞が過剰に発現するとアポトーシスが抑制され、死ななくなってしまいます。

また、抗がん剤等で白血病細胞がダメージを受けると、通常はアポトーシスが起こりますが、BCL-2が発現しているとアポトーシスが抑制されることから、抗がん剤の耐性にも関与していると考えられています。
ベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序:BCL-2阻害薬
ベネクレクスタは白血病細胞で過剰に発現しているBCL-2を選択的に阻害する薬剤です。

BCL-2が阻害されることで白血病細胞のアポトーシス機能が回復し、自然細胞死が誘導されると考えられます。
また、CLLで併用するリツキサンやガザイバは白血病細胞のCD20を特異的に阻害するモノクローナル抗体薬です。ガザイバの作用機序については以下の記事をご覧ください。
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ガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】
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再発・難治性CLLのエビデンス紹介:MURANO試験
再発・難治性のCLLの根拠となった臨床試験を一つ紹介します。2-3)
本試験は1~3つの治療歴のある再発・難治性の慢性リンパ性白血病患者さんを対象に、ベネクレクスタ+リツキサン群とトレアキシン(ベンダムスチン)+リツキサン群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされました。
| 試験群 | ベネクレクスタ+ リツキサン群 |
トレアキシン+ リツキサン群 |
| PFS中央値 | 未到達 | 17か月 |
| HR=0.17[95%CI:0.11-0.25], p<0.001 | ||
| 2年時点の全生存率 | 91.9% | 86.6% |
| HR=0.48[95%CI:0.25-0.90] | ||
| Grade3/4の いずれかの有害事象 |
82.0% | 70.2% |
| -Grade3/4の好中球減少症 -Grade3/4の発熱性好中球減少症 |
57.7% 3.6% |
38.8% 9.6% |
このようにトレアキシン+リツキサンと比較してベネクレクスタ+リツキサンは増悪までの期間を有意に延長することが示されています。
CLL初回治療のエビデンス紹介
CLLの初回治療の根拠となった臨床試験は、以下があります。
- BO25323試験4):ベネクレクスタ+ガザイバ vs. クロラムブシル(国内未承認)+ガザイバ の海外第Ⅲ相試験
- CLL3011試験5):ベネクレクスタ+イムブルビカ vs. クロラムブシル(国内未承認)+ガザイバ の海外第Ⅲ相試験
- M20-353試験:ベネクレクスタ+ガザイバ or イムブルビカ の有効性・安全性を検討する国内第Ⅱ相試験
代表として、BO25323試験をご紹介します。
本試験は、CLLの初回治療としてのベネクレクスタ+ガザイバ群とクロラムブシル(国内未承認)+ガザイバ群を比較した第Ⅲ相試験です。
本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした。
| 試験群 | ベネクレクスタ+ ガザイバ群 |
クロラムブシル+ ガザイバ群 |
| 2年時点のPFS率 | 88.2% | 64.1% |
| HR=0.35(95%CI]:0.23-0.53) P<0.001 |
||
ベネクレクスタ+ガザイバ群で有意なPFSの改善が認められていますね。
AMLのエビデンス紹介:VIALE-A試験
AMLの根拠となった試験をご紹介します。6)
本試験は強力な導入化学療法が適応とならない(例:併存疾患・高齢)未治療のAML 患者さんを対象に、ビダーザ(アザシチジン)+プラセボ群と、ビダーザ(アザシチジン)+ベネトクラクス群を比較する第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「全生存期間」とされ、結果は以下の通りでした。
| 試験群 | ビダーザ+ ベネトクラクス群 |
ビダーザ+ プラセボ群 |
| 全生存期間中央値 | 14.7か月 | 9.6か月 |
| HR=0.66[95%CI:0.52-0.85], p<0.001 |
||
このようにビダーザにベネトクラクスを併用することで有意な生存期間の延長が示されています!
副作用
重大な副作用として、
- 腫瘍崩壊症候群(2.7%)
- 骨髄抑制:好中球減少(44.2%)、貧血(15.7%)、血小板減少(27.7%)、発熱性好中球減少症(17.6%)
- 感染症(29.3%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
用法・用量
<CLLおよびマントル細胞リンパ腫の場合>
通常、成人にはベネトクラクスとして、1日1回食後に経口投与ですが、用量を徐々に増やしていきますので投与量が変則的です。
下表にまとめてみましたのでご参考ください。
| 治療期 | 投与量 | |
| 用量漸増期 | 1週目 | 20mg |
| 2週目 | 50mg | |
| 3週目 | 100mg | |
| 4週目 | 200mg | |
| 5週目 | 400mg | |
| 維持投与期 | 400mg | |
患者の状態により適宜減量する。
また、CLLの場合は原則としてリツキサンと併用して使用します。併用する時期は維持投与期からですのでご注意ください。
- リツキシマブ(遺伝子組換え)の投与が困難な場合を除き、維持投与期の開始からリツキシマブ(遺伝子組換え)と併用投与すること。
- リツキシマブ(遺伝子組換え)以外の抗悪性腫瘍剤との併用による有効性及び安全性は確立していない。
ベネクレクスタ錠 添付文書より
<AMLの場合>
AMLの場合も1日1回食後に経口投与ですが、併用薬剤によって投与量が変則的です。
| 治療期 | 投与量 | ||
| 用量漸増期 | 1日目 | 100mg | |
| 2日目 | 200mg | ||
| 3日目 | 400mg | ||
| 4日目 | アザシチジン併用 | 400mg | |
| シタラビン少量療法併用 | 600mg | ||
| 維持投与期 |
アザシチジン併用 | 400mg | |
| シタラビン少量療法併用 | 600mg | ||
患者の状態により適宜減量する。
収載時の薬価
薬価収載時(2019年11月19日)の薬価は以下の通りです。
- ベネクレクスタ錠10mg 1錠:874.60円
- ベネクレクスタ錠50mg 1錠:3,964.50円
- ベネクレクスタ錠100mg 1錠:7,601.10円(1日薬価:30,404.40円)
収載時の算定根拠については以下の記事で解説しています。
-
-
【新薬:薬価収載】14製品と市場拡大再算定(2019年11月19日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ベネクレクスタはこんな薬
- 経口のBCL-2阻害薬
- 白血病細胞のアポトーシス機能を回復させる
- CLLの初回治療として効果が期待されている
これまで慢性リンパ性白血病や急性骨髄性白血病の治療選択肢は限られていたことから、今後も色々な薬剤開発が進めば良いなと感じています。
以上、今回は慢性リンパ性白血病・急性骨髄性白血病と、国内初のBCL-2阻害薬であるベネクレクスタの作用機序についてご紹介しました☆
引用文献・資料等
- 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2024年版
- MURANO試験:N Engl J Med 2018; 378:1107-1120
- MURANO試験(追加解析):J Clin Oncol. 2019 Feb 1;37(4):269-277.
- BO25323試験:N Engl J Med 2019;380:2225-2236
- CLL3011試験:Lancet Oncol. 2023 Dec;24(12):1423-1433.
- VIALE-A試験:N Engl J Med 2020; 383:617-629
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