11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

ゾスパタ(ギルテリチニブ)の作用機序と副作用【急性骨髄性白血病】

再発または難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果とするゾスパタ錠40mg(一般名:ギルテリチニブ)2018年9月21日に承認されました。

製薬会社

  • 製造販売:アステラス製薬(株)

 

ゾスパタは、ゾフルーザラパリムスゲルに続いて3製品目の先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、世界初承認です!

また、ゾスパタはFLT3とAXLを共に阻害するといった新規の作用機序を有した薬剤です。

今回は急性骨髄性白血病とゾスパタ(ギルテリチニブ)の作用機序についてご紹介します。

 

急性骨髄性白血病

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球、赤血球、血小板等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。

また、白血球には

  • 顆粒球(骨髄系):好中球、好酸球、好塩基球
  • リンパ球(リンパ系):B細胞、T細胞、NK細胞

があります。

 

急性骨髄性白血病は、白血球の中でも「顆粒球」の未熟細胞が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。

この腫瘍化した未熟な顆粒球のことを「白血病細胞」と呼んでおり、白血病細胞の表面にはしばしば「FLT3受容体」や「AXL受容体」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。

 

急性骨髄性白血病の予後因子

急性骨髄性白血病には以下のような様々な予後因子が知られています。

因子 予後良好 予後不良
年齢 50歳以下 60歳以上
合併症有無 なし あり(感染症等)
染色体の核型 t(8;21)
t(15;17)
inv(16) or t(16;16)
3q異常
5・7番の異常
複雑核型 等
遺伝子異常 NPM1変異
CEBPA変異
FLT3変異
TP53変異
寛解までの治療期間 1回 2回以上

 

特に年齢染色体/遺伝子異常は予後因子として重要であると言われており、FLT3遺伝子に変異がある場合、特に予後不良です。

 

急性骨髄性白血病の治療

基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。

1カ月程の化学療法(導入化学療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後、地固め療法を数回行います。

そして完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。

 

ただし、最初の導入化学療法で1~2割の患者さんは抵抗性を示してしまいます(難治性)。

また、一度完全寛解が得られたとしても、半数以上の患者さんは再発してしまいます。

 

このような再発・難治性の患者さんに対して使用できる薬剤はマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)がありますが、それ以外には有効な薬剤はなく、造血幹細胞移植などしか選択肢がありませんでした。

 

今回ご紹介するゾスパタはFLT3遺伝子変異陽性の再発・難治性急性骨髄性白血病に使用できる薬剤です。

 

FLT3遺伝子変異とAXL受容体

急性骨髄性白血病の白血病細胞には、しばしばFLT3受容体AXL受容体が存在しています。

 

しかし、急性骨髄性白血病の患者さんのうち、約1/3はFLT3遺伝子に変異があることが知られており、この変異がある場合、予後は非常に不良と言われています。

FLT3遺伝子変異には以下の2つのタイプがあります。

  1. 遺伝子内縦列重複変異:ITD(Internal Tandem Duplication)
  2. チロシンキナーゼドメイン変異:TKD(Tyrosine Kinase Domain)

また、AXL受容体は抗がん剤等の耐性・抵抗性に関与している受容体です。

 

ゾスパタ(一般名:ギルテリチニブ)の作用機序

ゾスパタは、白血病細胞の内側からFLT3遺伝子変異のあるFLT3受容体と、AXL受容体を共に阻害する薬剤です。

FLT遺伝子変異にはITDとTKDがありますが、これらを共に阻害することができます。

 

両受容体を阻害することでシグナル伝達を抑制し、白血病細胞の増殖が抑えられると考えられています。

 

ゾスパタ錠の副作用

主な副作用としてALT/AST増加、貧血、発熱性好中球減少症などが報告されています。

 

ゾスパタ錠の用法・用量

通常、成人にはギルテリチニブとして120mgを1日1回経口投与します。

なお、適宜増減が可能ですが、1日1回200mgを超えないこととされています。

 

ゾスパタ錠の薬価

収載時(2018年11月20日)の薬価は以下の通りです。

  • ゾスパタ錠40mg:19,409.10円(1日薬価:58,227.30円)

 

算定方法等については以下の記事をご覧ください。

>>【新薬:薬価収載】12製品(2018年11月20日)と市場拡大再算定

 

まとめ・あとがき

ゾスパタはこんな薬

  • FLT3受容体とAXL受容体を共に阻害する
  • FLT遺伝子変異のITDとTKDを共に阻害する
  • 先駆け審査指定制度の対象品目に指定

 

これまで再発・難治性の患者さんに対してはマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)、もしくは造血幹細胞移植しか選択肢がありませんでした。

特にFLT3遺伝子変異の患者さんでは予後が不良であり、有効な治療法がありませんでした。

ゾスパタによってFLT3遺伝子変異の患者さんの予後向上が期待されています。

 

ゾスパタは、ゾフルーザラパリムスゲルに続いて3製品目の先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、世界初承認です!

以上、今回は急性骨髄性白血病とゾスパタ(ギルテリチニブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

同様の作用機序を有するヴァンフリタ(一般名:キザルチニブ)も2019年に登場しましたので、併せてご確認くださいませ~。

ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序:ゾスパタとの違い・比較【AML】

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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