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ラパリムスゲル(シロリムス)の作用機序と副作用【結節性硬化症】

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結節性硬化症に伴う皮膚病変」を効能・効果とする新投与経路医薬品のラパリムスゲル0.2%(一般名:シロリムス)が2018年3月23日に承認されました。

 

結節性硬化症に伴う皮膚病変に対する初の医薬品です!また、本剤は先駆け審査指定制度の対象品目に指定されています。

 

なお、既に販売されているラパリムス錠(一般名:シロリムス)はこれまで同様「リンパ脈管筋腫症」にのみ使用できます。

今回は結節性硬化症とラパリムス(シロリムス)の作用機序についてご紹介します。

 

結節性硬化症とは

結節性硬化症(TSC:tuberous sclerosis complex)は、脳、腎臓、肺、皮膚、心臓など、ほぼ全身の臓器に「過誤腫」と呼ばれる良性の腫瘍が生じる疾患です。

発症には遺伝的要素が強い(常染色体優性遺伝性疾患)とされており、厚労省の難病指定に認定されている疾患です。別名「プリングル病」とも呼ばれます。

 

日本における結節性硬化症の発症率は人口10,000人に約1人の割合とされており、日本全国で約1万5千人の患者さんがいらっしゃると推察されています。

症状は年齢や個人によって様々で、症状がほぼ出ない方もいらっしゃるため、実際には1万5千人以上の患者さんがいるのではないかと推定されています。

 

結節性硬化症の症状

結節性硬化症は症状の発現や重症度の個人差が大きい疾患です。また年齢によって、出やすい症状も異なっています。

結節性硬化症と診断されても必ず症状が発現するとは限らず、何も問題なく一生を過ごせる場合もあります。

全身に過誤腫が発生することから、症状は全身の様々な臓器で発現します。

 

代表的な症状・病状には以下のものがあります。

  • てんかん:最も多く80%に発現する
  • 心横紋筋腫
  • 上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)
  • 腎血管筋脂肪腫(腎AML)
  • 肺リンパ脈管筋腫症(肺LAM)
  • 皮膚病変:白斑、血管線維腫、シャグリンパッチ
  • 網膜過誤腫

 

今回ご紹介するラパリムスは結節性硬化症に伴う皮膚病変に対して使用することが可能な薬剤です。

皮膚病変は見た目に現れるため、患者さんにとっては不快な症状です。

特に血管線維腫は、頬や下顎に赤みをおびたブツブツができるため、QOLの低下を招きやすい症状です。

治療にはレーザー治療や手術等がありますが、すぐに再発してしまうことも多く、治療選択肢は限られていました。

 

結節性硬化症の原因

通常、正常な細胞が増殖する際に、様々な因子・遺伝子によって増殖の度合いがコントロールされています。

正常細胞に増殖因子が作用すると、細胞内では刺激が伝達(“シグナル伝達”と言います)され、途中、「mTOR(“エムトール”と読みます)」を経由して核に伝わります。

刺激が核に伝わると、細胞の増殖が活性化されます。

また、このmTORの働きをコントロールしている遺伝子に「TSC1遺伝子」と「TSC2遺伝子」が知られています。

これらの遺伝子は、mTORが過剰に活性化しないようにブレーキのような役割を担っています。

そのため、正常細胞では過剰な増殖は起きず、必要な分だけ増殖するようにコントロールされています。

 

結節性硬化症では
過誤腫のTSC1遺伝子またはTSC2遺伝子が変異してしまっているため、mTORのブレーキがかからなくなってしまっています。

そのため、mTORが常に活性化している状態になり、過誤腫の増殖が活性化されることで様々な症状の発現・結節性硬化症の進行が引き起こされます。

 

ラパリムスゲル(一般名:シロリムス)の作用機序

ラパリムスはmTORを選択的に阻害する薬剤です。

過誤腫で過剰に活性化しているmTORの働きを抑制することで、過誤腫の増殖が抑制され、結節性硬化症の症状緩和につながると考えられます。

 

ラパリムスゲル(一般名:シロリムス)の用法・用量

1日2回、患部に適量を塗布します。

 

ラパリムスゲル(一般名:シロリムス)の副作用

ラパリムスゲルは外用薬(塗り薬)のため全身性の副作用の発現は低く、皮膚乾燥や皮膚刺激、ざ瘡、掻痒感などが報告されています。

また、光線過敏症が発現する恐れがあるため、直射日光などの過度な紫外線に当たらないよう注意が必要です。

 

参考までに、
内服薬(飲み薬)ラパリムス錠(一般名:シロリムス)の代表的な副作用には口内炎、鼻咽頭炎、上気道炎症、発疹、下痢、頭痛などがあり、重篤な副作用として間質性肺疾患重度の感染症があります。

 

ラパリムスゲルの薬価

収載時(2018年5月22日)の薬価は以下の予定です。

  • 0.2% 1g 3,855.00円

 

ラパリムスゲルは新規作用機序のため有用性加算(Ⅱ)が10%先駆け審査指定制度加算が10%加算されています。

有用性加算となった根拠は以下の通りです。

  • 「結節性硬化症に伴う皮膚病変」の効能・効果を有する初めての医薬品である
  • 既存治療の外科的切除等に比べ侵襲性が低い
  • 外用薬のため、血中への移行が少ない

 

薬価の算定方法については以下の記事をご参照ください。

 

類薬

同様にmTOR阻害の作用機序を有する薬剤としてアフィニトール(一般名:エベロリムス)があります。

アフィニトールは結節性硬化症に伴う「上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)」と「腎血管筋脂肪腫(腎AML)」に対して使用することができますが、「皮膚病変」に対しては使用することができませんでした。

 

あとがき

今回ご紹介したのはラパリムスゲルという外用薬(塗り薬)です。

内服薬(飲み薬)のラパリムス錠(一般名:シロリムス)は「リンパ脈管筋腫症」のみにしか適応を有していないため、注意が必要です。

 

これまで結節性硬化症に伴う皮膚病変には使用できる薬剤がありませんでしたので、ラパリムスゲルによって治療選択肢が増えたことは朗報かと思います。

またラパリムスゲルは外用薬(塗り薬)のため、全身の副作用が少ないため、使いやすいと考えます。

以上、今回は結節性硬化症とラパリムス(一般名:シロリムス)の作用機序についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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