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2025年6月4日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて「てんかん重積状態」を効能・効果とするスピジア点鼻液(ジアゼパム)の承認可否が審議される予定です!
初のジアゼパムの点鼻製剤ですね。
アキュリスファーマ|申請のニュースリリース
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
製品名 | スピジア点鼻液5mg/7.5mg/10mg |
一般名 | ジアゼパム |
製品名の由来 | |
製造販売 | アキュリスファーマ(株) |
効能・効果 | てんかん重積状態 |
用法・用量 | |
収載時の薬価 | |
発売日 |
てんかん領域において、有効成分のジアゼパムは注射剤(製品名:セルシン注射液)や座薬(製品名:ダイアップ坐剤)として販売されています。
てんかん重積状態ではしばしば静脈確保が困難なことがあり、その場合、保険適応されている注射剤以外の薬剤はありませんでした。

今回はてんかんとスピジア点鼻液(ジアゼパム)の作用機序について解説していきます。
てんかんとは
日本におけるてんかん患者は約100万人と報告されています。
通常、脳の神経は興奮と抑制がバランスよく働くことで正常な状態を保っています。
しかし、何らかの原因で興奮系の神経が強く働いたり、抑制系の神経の力が弱まることで、激しい電気的乱れ(過剰興奮)が生じます。
そうすると脳は適切に情報を受け取ることや、命令ができなくなり、体の動きをコントロールできなくなります。
これが、てんかんによる発作の発生機序です。
てんかんの種類とてんかん重積状態
てんかんは、発作のタイプによって、「部分てんかん」(約60%)と、「全般てんかん」(約40%)に大別されています。
部分てんかんは、脳の一部が興奮することで引き起こされ、全般てんかんは脳の全体もしくは大部分が興奮することで引き起こされます。
また、てんかんの発作症状が持続したり、意識障害があるまま短時間で反復したりする状態を「てんかん重積状態」と呼んでいます。
てんかん診療ガイドライン2018年1)には、「けいれん発作が5分以上持続すれば治療を開始すべきで、30分以上持続すると後遺障害の危険性がある」と記載があるため、できるだけ早期の治療開始が必要です。
そして「第1段階での治療薬は、ベンゾジアゼピン系薬剤のジアゼパムないしロラゼパムの静注射である」1)とされてますが、しばしば静脈確保が困難となることもあります。
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ロラピタ(ロラゼパム)の作用機序と副作用【てんかん】
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同ガイドラインでは静脈確保が困難な場合、いずれも保険適応外として以下の治療選択肢が掲載されています。
- ジアゼパム注射液注腸
- ミダゾラム鼻腔・口腔内、筋注投与
最近では、ミダゾラムの口腔内投与薬としてブコラム口腔用液が使用可能ですが、小児への使用に限定されています。
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ブコラム口腔用液(ミダゾラム)の作用機序・特徴【てんかん】
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このようなてんかん発作が起こった時に、発作を止めるために介助者またはそれに代わるものが緊急的に投与する治療薬のことを「レスキュー薬」と呼んでいますが、成人におけるレスキュー薬は今までありませんでした。

脳の興奮系と抑制系
脳の興奮系と抑制系のバランスは以下の神経伝達物質によって調整されています。
- 興奮系神経伝達物質:グルタミン酸
- 抑制系神経伝達物質:GABA(γ-アミノ酪酸)
グルタミン酸が「NMDA受容体」や「AMPA受容体」に結合することで脳が興奮します。
一方、GABAが「GABAA受容体」に結合することで脳の興奮が抑制されます。
通常、てんかん発作時には興奮系の神経伝達物質(グルタミン神経)が強く働いているため、
- 興奮系神経伝達物質の働きを抑制する
- 抑制系神経伝達物質の働きを増強(亢進)する
といった治療が必要になります。
スピジアはGABAA受容体(抑制系神経伝達物質)に関係する薬剤です。
GABAA受容体の仕組み
GABAとGABA受容体についてもう少し詳しく見ていきます。
GABAA受容体にはGABAが結合する部位が存在していまが、ここにGABAが結合するとクロールイオン(Cl-)が細胞内に流入します。
そうすることで神経の抑制系が亢進されると考えられています。
スピジア点鼻液(ジアゼパム)の作用機序
前述のGABAA受容体にはGABA結合部位の他、「ベンゾジアゼピン(BZD)結合部位」が存在しています。
スピジアはベンゾジアゼピン系の薬剤に分類されており、GABAA受容体の「ベンゾジアゼピン結合部位」に結合します。
そうすると、GABAとGABAA受容体との結合親和性が高まると考えられており、それによってクロールイオン(Cl-)の流入が増大し、神経の抑制効果がより増強(亢進)されます。
このような作用機序によって過剰に興奮した神経を抑制し、てんかん重積状態を改善するのがスピジアです!
また、海外のデータ2)では、投与後の発作停止までの中央時間は4分とされています。

用法・用量
正式承認後に更新予定です。
海外の製品では、以下の手順で投与が可能とのことでした。
https://www.valtocohcp.com/dosing-and-usage/
基本的には体重に応じて、5mg、7.5mg、10mgの規格を単回もしくは2回鼻腔内に噴霧します(15mg投与の場合は7.5mg規格×2、20mg投与の場合は10mg×2)。
副作用
正式承認後に更新予定です。
収載時の薬価
正式承認後に更新予定です。
てんかん重積状態に使用する類薬
てんかん重積状態に使用できるベンゾジアゼピン系の薬剤は以下があります。
製品名 (一般名) |
適応年齢 | 投与経路 |
ミダフレッサ静注/ドルミカム注射液 (ミダゾラム) |
小児のみ | 注射(静注) |
ブコラム口腔用液 (ミダゾラム) |
小児のみ | 頬粘膜投与 |
セルシン注射液/ホリゾン注射液 (ジアゼパム) |
成人のみ | 注射(静注) |
スピジア点鼻液 (ジアゼパム) |
小児・成人 | 鼻腔内投与(点鼻液) |
ロラピタ静注 (ロラゼパム) |
小児・成人 | 注射(静注) |
基本的には静注が推奨されますので、ミダフレッサ/ドルミカム、セルシン/ホリゾン、ロラピタが第一推奨ですね。
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ロラピタ(ロラゼパム)の作用機序と副作用【てんかん】
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まとめ・あとがき
スピジア点鼻液はこんな薬
- ベンゾジアゼピン系の薬剤
- GABAとGABAA受容体との結合親和性を高める
- てんかん重積状態で初の鼻腔内投与(点鼻液)で、小児・成人共に使用可能
スピジアは海外ではてんかん重積状態の鼻腔内投与製剤として既に承認されていましたが、日本ではようやく承認となりました!

これまで、成人において医療機関外で投与可能なレスキュー薬はありませんでしたが、スピジアは新たなレスキュー薬として期待できると思います♪
以上、今回はてんかん重積状態とスピジア点鼻液(ジアゼパム)の作用機序についてご紹介しました!
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