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ロゼバラミン筋注用(メコバラミン)の作用機序【ALS】

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2024年9月24日、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を対象疾患とするロゼバラミン筋注用(メコバラミン)が承認されました。

エーザイ|ニュースリリース

基本情報

製品名 ロゼバラミン筋注用25mg
一般名 メコバラミン
製品名の由来 本剤の有効成分メコバラミン(Mecobalamin)の名称、暗赤色(Rose色)の色調から名付けた。
製造販売 エーザイ(株)
効能・効果 筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制
用法・用量 通常、成人には、メコバラミンとして50mgを1日1回、週2回、筋肉内に注射する。
収載時の薬価 10,425円
発売日 2024年11月20日(HP

 

ALSに対する治療薬としては、2015年に承認されたラジカット(エダラボン )以来ですね!!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ALSは治療選択肢が非常に限られていましたので、新たな治療選択肢として期待できると思います。

 

今回はALSと共に、ロゼバラミン筋注用(メコバラミン)の作用機序やエビデンスについて紹介します。

 

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は、主に中年以降に発症し、一次/二次運動ニューロンが選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患です。1)

病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2年~5年で死亡することが多いとされています。1)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ALSは難病にも指定されている疾患ですね…。

 

症状としては、全身の骨格筋の筋力低下や筋萎縮の進行が中心です。

また、初発症状やその後の進展は患者さん毎に多様とされていて、片側の上肢筋力低下で発症する例が最も多く、その他、下肢筋力低下、構音障害などの球麻痺症状、頸部筋力低下、呼吸筋麻痺症状から始まる例など様々です。2)

 

遺伝子変異の割合:SOD1遺伝子変異が最多

ALSの約5~10%は家族歴を有し、家族性ALS (familial amyotrophic lateral sclerosis: FALS)と呼ばれています。

家族性ALSの遺伝子変異にはSOD1、C9ORF72、FUS、TARDBPなど30種類を超える原因遺伝子が報告されていて、日本ではFALSの32~36%をSOD1変異が占め、次いでFUSが8~11%、TARDBPが2~3%と報告されています。2)

 

ただし、FALS以外のALSにおいてもSOD1遺伝子変異があることも知られていて、ALS全体(非家族性含む)の約2%がSOD1遺伝子変異を有するという報告もあります。3)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
例として、SOD1-ALSにおける発症様式をみてみましょう。

 

SOD(Superoxide Dismutase:超酸化物不均化酵素)は元々、体内で過剰に発生する活性酸素を取り除く酵素です。そのため、抗酸化作用や抗炎症作用などを示し、生体にとって有益な働きを担っています。

しかしながら、SOD1遺伝子変異を有するALS(SOD1-ALS)では、異常なSODが生成され、それが全身の運動ニューロンを障害することによって筋力の低下と委縮を引き起こすと考えられています。

 

異常なSODは、体内で凝集することで細胞毒性・細胞障害を生じると考えられています。その他の遺伝子変異によるALSも概ね同じような機序で引き起こされます。

 

治療

現在、国内で承認・保険適用が認められている治療薬は以下があります。2)

  • リルテック(リルゾール)
  • ラジカット(エダラボン)
  • ロゼバラミン筋注用(メコバラミン)

 

これまではリルテックとラジカットが中心でしたが、今回ご紹介するロゼバラミンが新たに使用できるようになりました!

 

その他、呼吸苦や疼痛の緩和には強オピオイド、ALSの痙縮に対して抗痙縮薬が使用されることもあります。

 

また、対症療法として、不安や抑うつには安定剤や抗うつ薬、筋力低下に伴う痛みに対しては鎮痛剤や湿布薬、関節拘縮の予防には定期的なリハビリテーションが行われます。

呼吸障害に対しては、非侵襲的な呼吸補助と気管切開による侵襲的な呼吸補助が行われれることもあります。

 

2024年には、SOD1-ALSに対して使用できる初のアンチセンス核酸医薬品のクアルソディ髄注(トフェルセン)も登場しました。

クアルソディ髄注(トフェルセン)の作用機序【ALS】

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ロゼバラミン(メコバラミン)の作用機序

ロゼバラミンは高用量のメコバラミン製剤です。

既にメコバラミン製剤としては、製品名メチコバールが末梢性神経障害などに対して使用されていました。

 

メコバラミン自体は活性型ビタミンB12として、ホモシステインからメチオニンを合成するメチオニン合成酵素の補酵素として働き、葉酸・アミノ酸代謝やDNAのメチル化等に寄与すると考えられています。

 

ALSに対するロゼバラミンの明確な作用機序は不明なものの、メチオニン合成経路で生成される「S-アデノシルメチオニン(SAM)」およびその後のErk1/2やAkt経路による「神経保護作用」や「神経軸索の進展」によるものと考えられています。

ロゼバラミン(メコバラミン)の作用機序

 

木元 貴祥
木元 貴祥
SAMはALS患者さんでは生成量が減少しているようですね。それを補うことで神経保護作用が得られるのかもしれません。

 

その他、神経変性を引き起こすホモシステインの生成量も減少することから、神経変性の抑制効果も期待されています。

 

エビデンス紹介:JETALS試験

根拠となった臨床試験(JETALS試験)をご紹介します。3)

本試験は、国内のALS発症後1年以内(症状を自覚した日を起点とする)の患者さん を対象に、ロゼバラミン群とプラセボ群を比較した多施設共同の国内第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「ALS機能評価スケール改訂版総スコア(ALSFRS-R)*のベースラインから16週までの変化量」とされ、結果は以下の通りでした。

ロゼバラミン群 プラセボ群
ALSFRS-Rのベースラインから
16週までの変化量
-2.7 -4.6
変化量の差=2.0(95%CI:0.4-3.5)、
p=0.012

*ALSFRS-R:ALSFRS-Rは、ALS患者の日常生活機能を評価するために米国で作成された評価尺度。言語、嚥下、身の回りの動作、歩行など、ALS患者の四肢の運動機能(6項目)、球機能(3項目)、呼吸機能(3項目)の合計12項目からなり、それぞれ5段階(0:機能全廃~4:正常)で評価する。すべて正常の場合には48点となる。 

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ロゼバラミン群でスコアの有意な低下抑制が認められていますね。

 

副作用

1%以上に認められる副作用として、白血球数増加、注射部位反応が報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • アナフィラキシー(頻度不明)

が挙げられていますので、注意が必要です。

 

用法・用量

通常、成人には、メコバラミンとして50mgを1日1回(2バイアル)、週2回、筋肉内に注射します。

臨床試験においては、週2回、少なくとも1日以上の投与間隔を空けて投与が行われていました。

 

1バイアル毎に日を分けての投与や、同日中に2回分(4バイアル)を投与することはできません。

ロゼバラミン筋注用:適正使用ガイド

 

在宅自己注射も可能

ロゼバラミンは在宅自己注射も可能です。

メーカーの資材もありますので、ご活用ください。

エーザイ|ロゼバラミン > 筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療に用いられる薬剤とロゼバラミンの投与方法(RBM1010)

 

収載時の薬価

収載時(2024年11月20日)の薬価は以下の通りです。

  • ロゼバラミン筋注用25mg:10,425円

 

以下の記事で算定根拠等について解説しています。

【新薬:薬価収載】17製品(2024年11月20日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ロゼバラミンはこんな薬

  • 高用量のメコバラミン製剤
  • 神経保護作用や神経軸索の進展によってALSの進行を抑制する
  • 1日1回(2バイアル)、週2回、筋肉内に注射

 

これまで、ALSは治療選択肢が極めて少なく、新たな治療選択肢が求められていました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ロゼバラミンは、約10年ぶりのALS治療薬のため、期待できるのではないでしょうか。

 

以上、今回はALSと共にロゼバラミン筋注用(メコバラミン)の作用機序やエビデンスについて紹介しました!

 

SOD1-ALSに使用するアンチセンス核酸医薬品のクアルソディ髄注(トフェルセン)もご確認くださいませ♪

クアルソディ髄注(トフェルセン)の作用機序【ALS】

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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