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2022年3月28日、「遅発性ジスキネジア」を対象疾患とするジスバル(バルベナジン)が承認されました!
田辺三菱製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ジスバルカプセル40mg |
一般名 | バルベナジントシル酸塩 |
製品名の由来 | Dyskinesia(ジスキネジア)を Valbenazine(バルベナジン)で治療する |
製造販売 | 製造販売:田辺三菱製薬(株) 販売:ヤンセンファーマ(株) プロモーション提携:吉富薬品(株) |
効能・効果 | 遅発性ジスキネジア |
用法・用量 | 通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与する。 なお、症状により適宜増減するが、1日1回80mgを超えないこととする。 |
収載時の薬価 | 2,331.20円 |
発売日 | 2022年6月1日新発売(HP) |
ジスバルはVMAT2阻害薬に分類されている新規作用機序の薬剤です。
これまで、抗精神病薬等の長期服用による遅発性ジスキネジアに対しては原因薬の中止や他の薬剤への変更しか対処法がなく、有効な治療薬は存在していませんでした(一部、適応外でレセルピンやドパミン作動薬、抗コリン薬が投与されているケースも)。
今回は遅発性ジスキネジアとジスバル(バルベナジン)の作用機序について解説していきます。
遅発性ジスキネジアとは
まずはジスキネジアの概要についてです。1)
ジスキネジアとは、自分では止めらない・または止めてもすぐに出現するおかしな動きをまとめた呼び名です。
頻度の高いものとして、大きくは以下の2つに分類されていますね。
- 遅発性ジスキネジア:抗精神病薬などの長期間服用時に発現
- L-ドパ誘発性ジスキネジア:パーキンソン病治療薬(ドパミン作動薬など)の投与中に発現する不随意運動
いずれも症状は似ていて、
- 「繰り返し唇をすぼめる」
- 「舌を左右に動かす」
- 「口をもぐもぐさせる」
- 「口を突き出す」
- 「歯を食いしばる」
- 「目を閉じるとなかなか開かずしわを寄せている」
- 「勝手に手が動いてしまう」
- 「足が動いてしまって歩きにくい」
- 「手に力が入って抜けない」
- 「足が突っ張って歩きにくい」
といった症状が特徴的です。
遅発性ジスキネジアの原因
遅発性ジスキネジアの原因の多くは抗精神病薬などの長期間服用によるものです。
一部、制吐剤などの消化器官用薬や抗てんかん薬・抗うつ薬等が原因となる場合もあります。
抗精神病薬には少なからず「ドパミン拮抗作用」があり、これによって長期的にブロックされていたドパミン受容体の感受性が亢進したり、ドパミン分泌が促進したりすることで遅発性ジスキネジアが引き起こされると考えられています。
代表的な抗精神病薬については以下をご参照ください。
-
ラツーダ(ルラシドン)の作用機序・特徴【統合失調症/双極性障害】
続きを見る
対処法
確立された対処法はありませんが、一般的には
- 原因薬剤の中止
- 他の薬剤への変更
- 重症な時の不随意運動そのものへの治療
などの対処が行われます。1)
不随意運動そのものへの治療としては、GABA作動薬(ジアゼパム、クロナゼパム)、アマンタジン、コレアジン(テトラベナジン)、ビタミンE/B6、ボツリヌス毒素などがありますが、いずれも保険適応外です。
今回ご紹介するジスバルは遅発性ジスキネジアで初の治療薬となりますね!!
重篤副作用疾患別対応マニュアル(令和4年2月改定)にも既に「バルベナジン」が治療選択肢の一つとして掲載されていました。1)
ジスバル(バルベナジン)の作用機序:VMAT2阻害薬
通常、中枢神経終末から放出されたドパミンの一部は再取り込みされ、再利用されることが知られています。再取り込みされたドパミンはVMAT2と呼ばれるトランスポーターを介して神経細胞の小胞に格納されます。
VMAT:Vesicular Monoamine Transporter(小胞モノアミントランスポーター)
ジスバルはVMAT2を選択的に阻害する薬剤です!VMAT2が阻害されることで、ドパミンの再取り込みが抑制され、結果、ドパミン放出量を減少していきます。2)
このような作用機序によってドパミン量を減少させ、遅発性ジスキネジアの症状改善に繋がると考えられていますね。
エビデンス紹介
根拠となったのは以下の2つの第Ⅲ相臨床試験です。
- KINECT 3試験:海外で実施
- J-KINECT試験:日本で実施
今回は代表として海外のKINECT 3試験について解説していきます。3)
本試験は中等度または高度の遅発性ジスキネジアの患者さんを対象に、プラセボ群、ジスバル40mg群、ジスバル80mg群の有効性・安全性を検証する第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「投与6週後の異常不随意運動評価尺度(AIMS)合計スコアのベースラインからの平均変化量」とされ、結果は以下の通りでした。
プラセボ群 | ジスバル 40mg群 |
ジスバル 80mg群 |
|
AIMS合計スコアの ベースラインからの平均変化量 |
-0.1 | -1.9 | -3.2 |
- | プラセボとの差 p<0.01 |
プラセボとの差 p≦0.001 |
ジスバルはいずれの投与量でも有意にAIMSスコアを改善していますね!80mgの方がより効果が高そうな印象です。
副作用
5%以上に認められる副作用として、倦怠感(7.2%)が報告されています。
重大な副作用としては、
- 傾眠、鎮静:傾眠(16.9%)、鎮静(1.2%)
- 重篤な過敏症:重篤な発疹(0.4%)、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫(いずれも頻度不明)等
- 錐体外路障害:流涎過多(11.2%)、振戦(7.2%)、アカシジア(6.8%)、パーキンソニズム(2.4%)、錐体外路障害(2.0%)、運動緩慢(1.2%)、落ち着きのなさ、姿勢異常(いずれも0.8%)、ジストニア、表情減少、筋固縮、筋骨格硬直、歩行障害、突進性歩行、運動障害(いずれも0.4%)等
- 悪性症候群(頻度不明)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
用法・用量
通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与します。
なお、症状により適宜増減しますが、1日1回80mgを超えないこととされています。
収載時の薬価
収載時(2022年5月25日)の薬価は以下の通りです。
- ジスバルカプセル40mg:2,331.20円(1日薬価:2,331.20円)
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】14製品(2022年5月25日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ジスバルはこんな薬
- 遅発性ジスキネジアに対する初の治療薬
- VMAT2を阻害することでドパミンの放出量を減少させる
- 1日1回経口投与
抗精神病薬などの長期間服用時に発現する遅発性ジスキネジアは、これまで有効な治療薬がなく、原因薬の中止・変更や対処療法に限られていました。
ジスバルは遅発性ジスキネジアに対する初の治療薬のため、患者さんのQOL向上に寄与できるのではないでしょうか。
-
ラツーダ(ルラシドン)の作用機序・特徴【統合失調症/双極性障害】
続きを見る
以上、今回は遅発性ジスキネジアとジスバル(バルベナジン)の作用機序について解説しました!
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