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2022年3月28日、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」を対象疾患とするケレンディア錠(フィネレノン)が承認されました!
バイエル薬品|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ケレンディア錠10mg・20mg |
一般名 | フィネレノン |
製品名の由来 | Cardio、Renal、Diabetesに由来する造語 |
製造販売 | バイエル薬品(株) |
効能・効果 | 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。 |
用法・用量 | 通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与する。(詳細) |
収載時の薬価 | 10mg:149.10円 20mg:213.10円 |
発売日 | 2022年6月2日新発売(HP) |
<効能又は効果に関連する注意>
- アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬による治療が適さない場合を除き、これらの薬剤が投与されている患者に投与すること。
- 本剤投与によりeGFRが低下することがあることから、eGFRが25mL/min/1.73m2未満の患者には、リスクとベネフィットを考慮した上で、本剤投与の適否を慎重に判断すること。
- 日本人部分集団では、国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)の主要評価項目の腎複合エンドポイントにおいて、本剤のプラセボに対するハザード比は0.911であった一方で、国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)の主要評価項目の構成要素の腎不全、及び国際共同第Ⅲ相試験(試験17530)の副次評価項目の腎複合エンドポイントにおいては、本剤のプラセボに対するハザード比が1を上回った。試験の対象となった全体集団と比べて日本人では本剤の腎不全への進展抑制効果が弱い可能性がある。
- 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能、アルブミン尿等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。
ケレンディアは新規の非ステロイド型のアルドステロン拮抗薬(ミネラルコルチコイド受容体遮断薬)に分類されています。
ミネラルコルチコイド(MR)受容体遮断薬と言えば、高血圧症で使用されている
- アルダクトンA(スピロノラクトン)
- セララ(エプレレノン)
- ミネブロ(エサキセレノン)
が有名ですよね。
ケレンディアは高血圧症ではなく、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の治療薬として開発されました!というのも、糖尿病ではしばしばアルドステロンやMR受容体が過剰に活性化されていて、それによる臓器障害が引き起こされると考えられているからです。
今回は糖尿病による慢性腎臓病のメカニズムと、ケレンディア(フィネレノン)の作用機序とエビデンスについて紹介していきます!
慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、腎障害が慢性的に持続する疾患の全体を意味するもので、以下の場合、CKDと確定診断されます。1)
- 尿異常(蛋白尿)、画像診断・血液所見・病理所見等で腎障害の存在が明らか
- GFRが60(mL/分/1.73㎡)未満
※GFR:「糸球体ろ過量」のことで、腎機能の指標です。
CKDのリスク因子としては、以下ですね。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症(高脂血症)
- 喫煙
- メタボリックシンドローム
特に糖尿病患者さんでは約40%がCKDを発症すると言われていますよー!2)
また、2型糖尿病患者さんの中には、しばしば顕性アルブミン尿を伴わないままGFRが低下することが知られていて、このような非典型的な糖尿病関連腎疾患を含む概念として「糖尿病性腎臓病:Diabetic kidney disease(DKD)」という新しい定義が提唱されました。1)
今回ご紹介するケレンディアは2型糖尿病を合併するCKDの適用を有しているため、DKDや糖尿病性腎症(DN)に対しても使用可能です。
糖尿病の疾患については別記事で解説していますので、併せてご確認ください♪フォシーガは糖尿病とCKDの両適応を有していますので、参考になると思います。
さて、CKDの初期はほとんど無症状のため徐々に腎機能が低下していきます。
腎臓は老廃物の排泄や骨代謝、造血器機能調節といった様々な役割を担っているので、CKDによって腎機能低下が進行してしまうと、
といった様々な症状が現れます。
従って、早期からリスク因子である原疾患の治療(例:糖尿病に起因する場合は糖尿病の治療)の他、症状に対する対処療法と共に、生活習慣改善が重要です!
DKDの場合、高血圧状態になることも多いため、ループ利尿薬の他、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬)・ACE阻害薬などのRA(レニン-アンジオテンシン)系阻害薬を使用することがあります。
ちなみに、CKDの症状の一つである腎性貧血に対しては
- エリスロポエチン製剤:ネスプ(ダルベポエチン)等
- HIF-PF阻害薬:エベレンゾ(ロキサデュスタット)等
が使用されます。
-
エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】
続きを見る
レニン-アンジオテンシン系は高血圧でよく用いられる概念ですが、糖尿病やCKDでも活性化しているため、重要ですよ~。3)
レニン-アンジオテンシン系とアルドステロン
体内には、血圧や体液バランスを保つために「レニン-アンジオテンシン系(RA系)」と呼ばれる調節機構があります。
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系と言うことも
腎臓の糸球体の壁には傍糸球体装置と呼ばれる部位があり、血圧を感知して、レニンと呼ばれる物質の分泌を調節しています。
分泌されたレニンは、肝臓で合成された「アンジオテンシノーゲン」を「アンジオテンシンⅠ(ATⅠ)」に変換します。
その後、ATⅠは血管内皮細胞膜にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)により「アンジオテンシンⅡ(ATⅡ)」に変換されます。
ATⅡが結合がAT1受容体に結合することで強力な血管収縮作用に伴う血圧上昇を引き起こします。
また、ATⅡが副腎に作用することで合成されるのがアルドステロンです。
糖尿病やCKDでもRA系が活性化することが知られているため、DKDの病態を考える上で大切です!
アルドステロンは腎臓の遠位尿細管に存在しているミネラルコルチコイド(MR)受容体に作用し、水の再吸収を促進させることで血圧上昇効果を有しています。血圧が上昇すると、心臓や腎臓に負荷が掛かり、その機能の低下に繋がってしまいます。
さらに腎臓や心臓にも存在している同受容体に作用することで、様々なメカニズムによって腎障害・心障害が引き起こされると考えらえています。
ケレンディア(フィネレノン)の作用機序・特徴
ケレンディアは尿細管および各組織に存在しているミネラルコルチコイド(MR)受容体を選択的に遮断する非ステロイド型の薬剤です。
尿細管に作用することで体液貯留量が減少し、腎臓・心臓の負荷が軽減され、加えて組織のMR受容体が遮断されることで臓器障害が抑制されると考えられています。4)
昔のMR受容体遮断薬はステロイド型(例:アルダクトン、セララ)で、特に第一世代のアルダクトンはMR受容体への選択性が低く、性ホルモン受容体等にも作用してしまうため、男性の女性化乳房、陰萎、月経痛などの副作用が懸念されていました。
その後、MR受容体選択性を高めた第二世代のセララが登場し、上記の副作用が少なくなりましたが、それでもしばしば発現します。
ケレンディアはよりMR受容体選択性を高めた非ステロイド型という特徴があるため、女性化乳房等の副作用の軽減が期待できるのではないでしょうか。
エビデンス紹介:FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD
根拠となった代表的な臨床試験は以下の2つの第Ⅲ相臨床試験です(いずれもプラセボと比較)。
- FIDELIO-DKD試験(試験16244)5):2型糖尿病を合併するCKD患者さんを対象に、腎不全および腎臓病の進行抑制効果をプラセボと比較
- FIGARO-DKD試験(試験17530)6):2型糖尿病を合併するCKD患者さんを対象に、心血管疾患の罹患率と死亡率の低減に関してプラセボと比較
いずれの臨床試験もケレンディア群で有意な改善が得られていますが、今回は代表例としてFIDELIO-DKDをご紹介します。5)
本試験は2型糖尿病を合併するCKD患者さん(CKD治療のためACE阻害薬やARBを使用)を対象に、標準治療に加えてケレンディアとプラセボを比較する第Ⅲ相臨床試験です。
併用薬剤の内訳:ACE阻害薬34.2%、ARB65.7%、利尿薬56.6%、スタチン系薬剤74.3%、カリウム低下薬2.4%、血糖降下薬(インスリン製剤64.1%、GLP-1受容体作動薬6.9%、SGLT2阻害薬4.6%)
主要評価項目は「腎不全+eGFRの40%以上の持続的低下+腎臓死」の複合アウトカムとされ、結果は以下の通りでした。
ケレンディア群 | プラセボ群 | |
主要評価項目 (腎不全+eGFRの40%以上の持続的低下+腎臓死) |
17.8% | 21.1% |
HR 0.82[95%CI:0.73-0.93]、 p=0.001 |
||
副次評価項目 (心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+心不全による入院) |
13.0% | 14.8% |
HR 0.86[95%CI:0.75-0.99]、 p=0.03 |
いずれの評価項目でも有意にケレンディア群で改善している結果ですね!
ただし、添付文書の「効能又は効果に関連する注意」には以下の記載があるため、日本人での治療効果については解釈が分かれるところかもしれませんね。
日本人部分集団では、国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)の主要評価項目の腎複合エンドポイントにおいて、本剤のプラセボに対するハザード比は0.911であった一方で、国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)の主要評価項目の構成要素の腎不全、及び国際共同第Ⅲ相試験(試験17530)の副次評価項目の腎複合エンドポイントにおいては、本剤のプラセボに対するハザード比が1を上回った。試験の対象となった全体集団と比べて日本人では本剤の腎不全への進展抑制効果が弱い可能性がある。
副作用
1%以上に認められる副作用として、低血圧や糸球体ろ過率減少が報告されています。
また、重大な副作用としては
- 高カリウム血症(8.8%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
用法・用量
通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与します。
- eGFR が60mL/min/1.73m2以上:20mg
- eGFR が60mL/min/1.73m2未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。
収載時の薬価
収載時(2022年5月25日)の薬価は以下の通りです。
- ケレンディア錠10mg:149.10円
- ケレンディア錠20mg:213.10円
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】14製品(2022年5月25日)
続きを見る
アルドステロン拮抗薬(MR受容体遮断薬)の一覧:アルダクトン、セララ、ミネブロとの違い・比較
アルドステロン拮抗薬(MR受容体遮断薬)には現在、
- アルダクトンA(スピロノラクトン):第一世代
- セララ(エプレレノン):第二世代
- ミネブロ(エサキセレノン):第三世代
があり、いずれも高血圧症を中心とした適応症です。以下の記事で上記3製品についてまとめています。
-
ミネブロ(エサキセレノン)の作用機序・特徴:セララとの違い【高血圧】
続きを見る
ケレンディアはミネブロと同じく第三世代ですが、糖尿病性腎臓病を対象とする初のMR受容体遮断薬です。
参考までに適応症や用法、禁忌項目等の比較一覧表についてまとめてみました♪
まとめ・あとがき
ケレンディアはこんな薬
- 2型糖尿病を合併するCKDを対象とする初のMR受容体遮断薬(アルドステロン拮抗薬)
- 尿細管および腎・心臓のMR受容体を遮断することで、CKDの進行を抑制する
- 非ステロイド型のため、性ホルモン関連の副作用軽減が期待
- 高カリウム血症には注意が必要
2型糖尿病を合併するCKDは、これまで利尿薬や糖尿病治療薬が中心でしたが、新たな治療選択肢としてケレンディアが登場したことは朗報だと思います!
現在、心不全患者さん(左室駆出率40%以上)を対象としたFINEARTS-HF試験も進行中のため、結果が気になります。
以上、今回は糖尿病による慢性腎臓病のメカニズムと、ケレンディア(フィネレノン)の作用機序とエビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
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