2.循環器系 5.内分泌・骨・代謝系 疾患・作用機序まとめ

【高血圧】ACE阻害薬の作用機序と薬剤一覧の紹介

今回は「高血圧症」とその治療薬の一つであるACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬の作用機序を中心にご紹介します。

ACE阻害薬は数製品発売されていますので、その一覧についてもご紹介します。

 

高血圧症とは

高血圧はよく聞く疾患だと思います。

健康診断等で引っかかった方も多いのではないでしょうか?

血圧とは血管内の圧力のことで、通常は動脈圧を意味しています。

 

血圧は心臓が収縮するとき(血液を全身に送り出す時)に最も高くなり、これが「収縮期血圧」(上の血圧)と呼ばれています。

また、心臓が拡張するとき(血液を心臓に取り込んでいる時)には最低となり、これが「拡張期血圧」(下の血圧)と呼ばれています。

血圧の正常値は、

  • 収縮期血圧:140mmHg未満
  • 拡張期血圧:90mmHg未満

で、どちらかがこれ以上であれば高血圧症と診断されます。

 

ただし、一度の血圧測定で診断するのではなく、繰り返し、色々な場面で測定を行って、最終的に診断されます。

 

高血圧の症状

通常、高血圧になったとしても自覚症状はありません

しかしながら、放置してしまうと、脳出血・脳梗塞、心筋梗塞・心不全、不整脈、腎不全、大動脈瘤、脈硬化症といった多くの合併症を引き起こす原因となります。

従って、早期から治療を開始することが望ましいとされています。

 

高血圧症の治療

高血圧の治療の基本は「生活習慣の改善」です。

生活習慣の改善項目は以下の6項目があります。

  1. 食塩制限
  2. 野菜や果物の摂取とコレステロール・飽和脂肪酸の制限
  3. 適正体重の維持
  4. 運動療法
  5. アルコール制限
  6. 禁煙

これら生活習慣の改善を行っても高血圧が改善しない場合、薬物療法が行われます。

 

高血圧の治療薬(薬物療法)

高血圧治療薬の種類としては、以下のものがあります。

  • カルシウム(Ca)拮抗薬
  • ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬)
  • ACE阻害薬
  • 利尿薬
  • β遮断薬

患者さんの合併症や状態に合わせて上記の薬剤の単剤治療から治療が開始されます。

単剤治療で効果が認められない場合、増量もしくは2種類以上の薬剤を適宜併用して治療を継続します。

よく用いられる薬剤としては、ARBもしくはCa拮抗薬の単剤もしくはそれらの併用療法だと思います。

ARBについては以下の記事をご参考ください。

【高血圧】ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬)の作用機序と薬剤一覧の紹介

続きを見る

 

それではここからACE阻害薬の作用機序について説明します。

 

ACE阻害薬の作用機序

体内には、血圧や体液バランスを保つために「レニン-アンジオテンシン系」と呼ばれる調節機構があります。

 

腎臓の糸球体の壁には傍糸球体装置と呼ばれる部位があり、血圧を感知して、レニンと呼ばれる物質の分泌を調節しています。

 

分泌されたレニンは、肝臓で合成された「アンジオテンシノーゲン」を「アンジオテンシンⅠ(ATⅠ)」に変換します。

その後、ATⅠは血管内皮細胞膜にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)により「アンジオテンシンⅡ(ATⅡ)」に変換されます。

また、ACEは「ブラジキニン」と呼ばれる物質の不活性化(分解)にも関与しています。

 

ATⅡが結合する受容体にはAT1受容体AT2受容体が知られていますが、主にはAT1受容体に結合して強力な血管収縮作用に伴う血圧上昇を引き起こします。

 

 

今回ご紹介するACE阻害薬は上記の「アンジオテンシン変換酵素(ACE)」を阻害する薬剤です!

ACE阻害によってアンジオテンシンⅡの生成が阻害される結果、血管拡張とそれに伴う血圧低下作用を呈すると考えられます。

しかしながら、同時にブラジキニンの不活性化を阻害してしまうため、体内のブラジキニンが増加します。

ブラジキニンには「空咳」を誘発する作用があるため、ACE阻害薬の代表的な副作用として空咳が2割から3割の患者さんで認められます。

 

また、妊婦妊娠している可能性のある患者さんへの投与は「禁忌」ですのでご注意ください。

 

ACE阻害薬の一覧まとめ

現在(2018.1.12)までに高血圧治療薬として販売されているACE阻害薬は以下の通りです。

製品名 一般名
カプトリル カプトプリル
レニベース エナラプリル
セタプリル アラセプリル
アデカット デラプリル
インヒベース シラザプリル
ロンゲス/ゼストリル リシノプリル
チバセン ベナゼプリル
タナトリル イミダプリル
エースコール テモカプリル
コナン キナプリル
オドリック/プレラン トランドラプリル
コバシル ペリンドプリルエルブミン

 

あとがき

ACE阻害薬が登場したころはよく用いられていましたが、空咳の問題がありました。

その後に登場したARBは空咳の副作用が少なく、使いやすいため、現在ではARBが用いられることが多いと思います。

【高血圧】ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬)の作用機序と薬剤一覧の紹介

続きを見る

 

木元 貴祥
ACE阻害薬も作用機序的には大切な薬剤ですので、今回の記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

 

以上、今回は高血圧症とACE阻害薬の作用機序、そして薬剤の一覧について簡単にご紹介しました☆

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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