2.循環器系

アデムパス(リオシグアト)の作用機序【肺動脈性肺高血圧症】

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アデムパス錠0.5mg、同錠1.0mg、同錠2.5mg(一般名:リオシグアト)の効能・効果に「肺動脈性肺高血圧症」が2015年に追加されました!

アデムパスは初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬といった新規の作用機序を有する薬剤です。

 

今回は肺動脈性肺高血圧症とアデムパス(リオシグアト)の作用機序についてご紹介します☆

 

心臓と血液循環

ご存知の通り、心臓は大きく4つの部位(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれています。

 

通常、成人の心臓は以下の図のような流れで血液が循環しています。

  1. 右心房に血液が流入(大静脈)
  2. 右心室から肺に血液を送る(肺動脈)
  3. 肺で酸素を受け取る
  4. 左心房に血液が流入(肺静脈)
  5. 左心室から全身に血液を送る(大動脈)

 

このように心臓は血液を肺や全身に送る際のポンプとしての役割を担っています。

 

肺動脈性肺高血圧症とは

心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」といいますが、この肺動脈の血圧が異常に上昇するのが「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」と呼ばれる疾患です。

 

肺高血圧症になると肺への血液循環が悪くなり、肺から血液に取り込まれる酸素の量が減ってしまいます。

そのため、軽い動作で息切れや呼吸困難といった症状が現れます。

 

しかし、何故このような病気が起こるのかは解明されていません。

 

この病気の原因解明が必要であり、有効な治療法の研究開発のため、肺動脈性肺高血圧症(PAH)は「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。

 

肺高血圧症に関わる因子

肺高血圧症に関わる因子として、以下の3つの経路があります。

  • プロスタグランジンI2(PGI2)経路
  • 一酸化窒素(NO)経路
  • エンドセリン経路

 

PGI2経路で合成されるcAMPや、NO経路で合成されるcGMP血管拡張作用を有しています。

一方、エンドセリン経路ではエンドセリン受容体が刺激されることで血管収縮作用があります。

肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療

根本的な治療薬はありませんが、肺動脈の血管を拡張させ、血圧を下げることが出来ればPAHの症状が軽減できます。

 

先ほどの3つの経路を標的にした以下のような薬剤が使用されています。

経路 分類 代表薬
PGI2経路 PGI2製剤 静注用フローラン(エポプロステノール)、
ベンテイビス吸入(イロプロスト)
トレプロスト注射用・吸入液(トレプロスチニル)
PGI2受容体作動薬 ウプトラビ(セレキシパグ)
NO経路 PDE5阻害薬 レバチオ(シルデナフィル)
アドシルカ(タダラフィル)
可溶性
グアニル酸シクラーゼ刺激薬
アデムパス(リオシグアト)
エンドセリン経路 エンドセリン受容体拮抗薬 オプスミット(マシテンタン)
トラクリア(ボセンタン)
ヴォリブリス(アンブリセンタン)

 

これらを適宜単剤もしくは併用して治療が行われています。

今回ご紹介するアデムパスは「可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬」に分類されており、一酸化窒素(NO)経路に関与しています!

 

アデムパス(一般名:リオシグアト)の作用機序

一酸化窒素(NO)経路ではNOから可溶性グアニル酸シクラーゼによって「cGMP(“サイクリックジーエムピー”と読みます)」が合成されます。

このcGMPは血管内皮細胞に作用することで血管拡張作用を有しています。

 

アデムパスは可溶性グアニル酸シクラーゼをより刺激することでcGMPの合成を促進するといった作用機序を有する薬剤です!

 

結果、cGMPによる血管拡張作用によってPAHの症状緩和効果が得られると考えられています。

あとがき

同じくNO経路に関与している薬剤にはPDE5阻害薬のレバチオ(一般名:シルデナフィル)があります。

 

各径路に関する様々な薬剤がありますので、今後の使い分け等の検討が興味深いと感じます。

以上、今回は肺動脈性肺高血圧症とアデムパス(一般名:リオシグアト)の作用機序についてご紹介しました★

 

エンドセリン受容体拮抗薬のまとめ記事も是非ご覧ください!

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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