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2021年8月25日、ウプトラビ錠(セレキシパグ)の効能・効果に「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」が新たに追加承認されました!
ウプトラビは2016年9月28日に「肺動脈性高血圧症」を効能・効果として承認されている国内初の非プロスタノイド構造を持ちながらPGI2受容体に作用する薬剤です。
現在の効能・効果は以下の通りですが、2024年12月2日の厚労省の薬事審議会医薬品第一部会にて「動脈性肺高血圧症」の2歳以上の小児の用量の追加が承認了承されました。
それに伴い、「小児用0.05mg」の剤形追加も行われます。
錠0.2mg | 錠0.4mg | 錠小児用0.05mg | |
肺動脈性肺高血圧症 | 〇 | 〇 | 〇 |
外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 |
〇 | 〇 | × |
今回は代表疾患として肺動脈性高血圧症とウプトラビ(セレキシパグ)の作用機序についてご紹介します★
心臓と血液循環
ご存知の通り、心臓は大きく4つの部位(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれています。
通常、成人の心臓は以下の図のような流れで血液が循環しています。
- 右心房に血液が流入(大静脈)
- 右心室から肺に血液を送る(肺動脈)
- 肺で酸素を受け取る
- 左心房に血液が流入(肺静脈)
- 左心室から全身に血液を送る(大動脈)
このように心臓は血液を肺や全身に送る際のポンプとしての役割を担っています。
肺動脈性肺高血圧症とは
心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」といいますが、この肺動脈の血圧が異常に上昇するのが「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」と呼ばれる疾患です。
肺高血圧症になると肺への血液循環が悪くなり、肺から血液に取り込まれる酸素の量が減ってしまいます。
そのため、軽い動作で息切れや呼吸困難といった症状が現れます。
しかし、何故このような病気が起こるのかは解明されていません。
この病気の原因解明が必要であり、有効な治療法の研究開発のため、肺動脈性肺高血圧症(PAH)は「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。
肺高血圧症に関わる因子
肺高血圧症に関わる因子として、以下の3つの経路があります。
- プロスタグランジンI2(PGI2)経路
- 一酸化窒素(NO)経路
- エンドセリン経路
PGI2経路で合成されるcAMPや、NO経路で合成されるcGMPは血管拡張作用を有しています。
一方、エンドセリン経路ではエンドセリン受容体が刺激されることで血管収縮作用があります。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療
根本的な治療薬はありませんが、肺動脈の血管を拡張させ、血圧を下げることが出来ればPAHの症状が軽減できます。
先ほどの3つの経路を標的にした以下のような薬剤が使用されています。
経路 | 分類 | 代表薬 |
PGI2経路 | PGI2製剤 | 静注用フローラン(エポプロステノール)、 ベンテイビス吸入(イロプロスト)、 トレプロスト注射用・吸入液(トレプロスチニル) |
PGI2受容体作動薬 | ウプトラビ(セレキシパグ) | |
NO経路 | PDE5阻害薬 | レバチオ(シルデナフィル)、 アドシルカ(タダラフィル) |
可溶性 グアニル酸シクラーゼ刺激薬 |
アデムパス(リオシグアト) | |
エンドセリン経路 | エンドセリン受容体拮抗薬 | オプスミット(マシテンタン)、 トラクリア(ボセンタン)、 ヴォリブリス(アンブリセンタン) |
これらを適宜単剤もしくは併用して治療が行われています。
今回ご紹介するウプトラビは「PGI2受容体作動薬」に分類されており、PGI2経路に関与しています!
ウプトラビ(一般名:セレキシパグ)の作用機序
ウプトラビは、プロスタグランジンの構造を持たない(非プロスタノイド構造)物質ですが、選択的にPGI2受容体を刺激するといった作用機序を有しています。
つまり、PGI2受容体の刺激を介してcAMPの合成を促進させることで血管拡張作用を発揮します。
あとがき
これまでにPGI2製剤には注射(静脈注射、皮下注射)製剤や吸入製剤しかありませんでしたが、ウプトラビは経口で治療ができるといった特徴があります。
より侵襲性が低いため、患者さんにとっては使いやすいのではないでしょうか。
以上、今回は肺動脈性肺高血圧症(PAH)とウプトラビ錠の作用機序についてご紹介しました☆
エンドセリン受容体拮抗薬のまとめ記事も是非ご覧ください!
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【肺動脈性高血圧症】エンドセリン受容体拮抗薬の作用機序と一覧・使い分け
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