PASSMED公式LINEの登録者特典|当サイトに掲載している図表の元データ&学習支援AI 薬科GPTをプレゼント♪
2025年6月4日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて「肺動脈性肺高血圧症」を対象疾患とするエアウィン皮下注用(ソタテルセプト)の承認可否が審議される予定です!
現時点では未承認のためご注意ください。
MSD|申請のニュースリリース
基本情報
製品名 | エアウィン皮下注用45mg/60mg |
一般名 | ソタテルセプト(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | |
製造販売 | MSD(株) |
効能・効果 | 肺動脈性肺高血圧症? |
用法・用量 | 3週間毎に皮下注投与? |
収載時の薬価 | |
発売日 |
エアウィンは、血管内皮細胞の増殖を促進するシグナル伝達経路である「アクチビン経路」をターゲットとする薬剤です。

今回は肺動脈性高血圧症とエアウィン(ソタテルセプト)の作用機序、エビデンスについてご紹介します!
心臓と血液循環
ご存知の通り、心臓は大きく4つの部位(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれています。
通常、成人の心臓は以下の図のような流れで血液が循環しています。
- 右心房に血液が流入(大静脈)
- 右心室から肺に血液を送る(肺動脈)
- 肺で酸素を受け取る
- 左心房に血液が流入(肺静脈)
- 左心室から全身に血液を送る(大動脈)
このように心臓は血液を肺や全身に送る際のポンプとしての役割を担っています。
肺動脈性肺高血圧症とは
心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」といいますが、この肺動脈の血圧が異常に上昇するのが「肺動脈性肺高血圧症(PAH:pulmonary arterial hypertension)」と呼ばれる疾患です。1)
肺高血圧症になると肺への血液循環が悪くなり、肺から血液に取り込まれる酸素の量が減ってしまいます。
そのため、軽い動作で息切れや呼吸困難といった症状が現れます。
しかし、何故このような病気が起こるのかは解明されていません。
この病気の原因解明が必要であり、有効な治療法の研究開発のため、肺動脈性肺高血圧症(PAH)は「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。
肺高血圧症に関わる経路と因子
肺高血圧症に関わる因子として、以下の3つの経路があります。
- プロスタグランジンI2(PGI2)経路
- 一酸化窒素(NO)経路
- エンドセリン経路
PGI2経路で合成されるcAMPや、NO経路で合成されるcGMPは血管拡張作用を有しています。
一方、エンドセリン経路ではエンドセリン受容体が刺激されることで血管収縮作用があります。

これら既存の3経路に加えて、近年では4つ目の経路である「アクチビン経路」が注目されています。
アクチビンやGDF(Growth Differentiation Factor:成長分化因子)がアクチビン受容体ⅡAに結合すると、血管内皮の平滑筋細胞の増殖が促進され、血管が狭窄してしまいます。
一方、アクチビン経路と逆の働きをするBMPを介した経路もありますが、アクチビン経路で生成されるグレムリン1などによってBMP経路が抑制されるため、PAHではアクチビン経路が相対的に優位になっていると考えられています。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療
根本的な治療薬はありませんが、肺動脈の血管を拡張させ、血圧を下げることが出来ればPAHの症状が軽減できます。
先ほどの3つの経路を標的にした以下のような薬剤が使用されています。2)
経路 | 分類 | 代表薬 |
PGI2経路 | PGI2製剤 | 静注用フローラン(エポプロステノール)、 ベンテイビス吸入(イロプロスト)、 トレプロスト注射用・吸入液(トレプロスチニル) |
PGI2受容体作動薬 | ウプトラビ(セレキシパグ) | |
NO経路 | PDE5阻害薬 | レバチオ(シルデナフィル)、 アドシルカ(タダラフィル) |
可溶性 グアニル酸シクラーゼ刺激薬 |
アデムパス(リオシグアト) | |
エンドセリン経路 | エンドセリン受容体拮抗薬(ERA) | オプスミット(マシテンタン)、 トラクリア(ボセンタン)、 ヴォリブリス(アンブリセンタン) |
高リスクの場合、静注/皮下注PGI2製剤+エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)+PDE5阻害薬の併用療法が推奨されています。2)
引用文献2)より
低・中リスクの場合、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)+PDE5阻害薬の併用療法が推奨されているものの、忍容性担保のために1~2週間の短期間で逐次開始する方法がとられることが多いようです。2)
最近では、「エンドセリン受容体拮抗薬」のマシテンタンと「PDE5阻害薬」のタダラフィルを配合したユバンシ配合錠も登場しました。
-
-
ユバンシ配合錠(マシテンタン/タダラフィル)の作用機序【肺動脈性高血圧症】
続きを見る
また、フォローアップ時のリスク評価において、中・高リスクと判断された場合、アクチビンシグナル阻害薬であるエアウィンの追加(ガイドライン公開時には未承認)が推奨されています。2)
引用文献2)より
エアウィン(ソタテルセプト)の構造・作用機序:アクチビンの阻害
エアウィンは、アクチビン受容体IIAの細胞外ドメインとヒトIgG1のFc領域(定常領域)を融合した融合タンパク質です。3)
アクチビン受容体IIAに結合できる因子を捕捉することができるため、「デコイ受容体(おとり受容体)」として働きます。

エアウィンがアクチビンやGDFを補足することで、アクチビン受容体を介した平滑筋細胞増殖が抑制されます。また、相対的にBMPによる経路が活性化され、平滑筋細胞の減少による血管狭窄の正常化が期待できると考えられています。
エビデンス紹介:STELLAR試験
根拠となった臨床試験をご紹介します(STELLAR試験)4)。
本試験は、安定した基礎治療を受けている肺動脈性肺高血圧症患者さんを対象に、エアウィン群とプラセボ群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は、「24週の時点での6分間歩行距離のベースラインからの変化量」とされ、結果は以下の通りでした。
エアウィン群 | プラセボ群 | |
24週の時点での6分間歩行距離の ベースラインからの変化量 |
34.4m | 1.0m |
群間差:40.8m(95%CI:27.5~54.1) P<0.001 |

なお、本試験では約6割の患者さんが3剤併用療法を受けていたとのことです。つまり、中リスク以上の治療強化が必要な場合、エアウィンが新たな追加治療としての期待できると考えられます。
副作用
後日更新予定です。
臨床試験では、鼻出血、浮動性めまい、毛細血管拡張、ヘモグロビン上昇、血小板減少症、血圧上昇などが報告されていました。
用法・用量
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、開始用量0.3mg/kg、目標用量0.7mg/kgを3週毎に皮下投与とされていました。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
エアウィンはこんな薬
- 国内初のアクチビン経路をターゲットとする薬剤
- アクチビン受容体IIAの細胞外ドメインとヒトIgG1のFc領域(定常領域)を融合したデコイ受容体
- アクチビン受容体を介した平滑筋細胞増殖を抑制する
- 3週間毎の皮下投与
肺動脈性肺高血圧症(PAH)では、PGI2製剤、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、PDE5阻害薬といった3系統の薬剤が基本でした。

エアウィンはフォローアップ時のリスク評価にて中・高リスクの場合、新たな追加治療として期待されている薬剤です!PAHの治療成績向上に寄与できるのではないでしょうか。
以上、今回は肺動脈性高血圧症とエアウィン(ソタテルセプト)の作用機序、エビデンスについてご紹介しました!
参考資料・論文等
- 難病情報センター|肺動脈性肺高血圧症
- 日本循環器学会|2025 年改訂版肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン
- PULSAR試験:N Engl J Med 2021;384:1204-1215
- STELLAR試験:N Engl J Med 2023;388:1478-1490
\ 新薬情報オンラインの運営者が執筆! /
薬剤師におススメの記事
失敗しない薬剤師の転職とは?
数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト。
どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。
- 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
- 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
- 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!
上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!
-
-
薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較
続きを見る
日々の情報収集に最適
-
-
薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選