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今回は眼科領域でよく使用されるアイリーア(一般名:アフリベルセプト)についてご紹介します。
剤形としては以下があり、両剤形ともに2012年に承認されていますが、キット製剤は2020年にようやく新発売されました!
- アイリーア硝子体内注射液40mg/mL:2012年発売
- アイリーア硝子体内注射用キット40mg/mL:2020年発売
- アイリーア8mg硝子体内注射液114.3mg/mL:2024年1月18日承認
【出典】バイエル薬品|アイリーア製品サイト
アイリーアは以下の適応を有している薬剤で、眼の硝子体に注射して投与します。
- 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
- 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
- 病的近視における脈絡膜新生血管
- 糖尿病黄斑浮腫
- 血管新生緑内障
- 未熟児網膜症
また、2024年1月18日にはアイリーアの高用量製剤が承認され、加齢黄斑変性と糖尿病黄斑浮腫の維持期で4か月毎の治療が可能となりました!(これまでは2か月毎)
今回の記事では「加齢黄斑変性」の疾患解説と共に、アイリーアの作用機序についてご紹介します☆
眼の構造と黄斑(中心窩)
眼の構造は以下のイラストの通りですが、網膜の中心には「黄斑」と呼ばれる部位があります。
黄斑は視細胞が密集しているため、モノを見るための視機能では最も重要な部位とされています。
黄斑の中心は中心窩(“ちゅうしんか”と読みます)と呼ばれ、ここには視細胞が最も密集しているため特に重要です。
加齢黄斑変性の病態と症状
加齢黄斑変性は、黄斑が加齢とともに障害を受け、視力の低下や視力異常をきたす疾患です。
50歳以上の男性に好発し、日本では増加傾向にあります。また加齢黄斑変性は失明(中途失明)の原因の上位を占めています(中途失明の第1位は緑内障)。
発症のリスク因子としては「喫煙」や「肥満」がありますので、「目の生活習慣病」とも呼ばれています。
症状としては
- 物が歪んで見える
- 視野の中心が暗くて見えにくくなる
- 視力が低下する
などがあります。
多くの場合、症状は片眼から現れますが、両眼で見ているとなかなか症状に気付かずに、発見が遅れることもあります。
加齢黄斑変性の分類と原因
加齢黄斑変性には以下の2種類があり、原因が異なっています。
- 萎縮型:黄斑組織が加齢によって萎縮していく。進行は遅い。
- 滲出型:脈絡膜新生血管による。進行が速い。
多くの場合、「滲出型」と言われていますので、滲出型について解説します。
網膜のすぐ下には「脈絡膜」が存在していますが、網膜に老廃物が増えていくと、これを除去するために脈絡膜から新たな血管が作成されます。このように新たな血管が作られることを「新生血管」と呼んでいます。
しかし、病的で異常な新生血管は非常に脆く、血液成分が漏れ出してしまうことで、水分などが異常に貯まって浮腫となり、黄斑に障害をきたします。
異常な新生血管には「VEGF(血管内皮増殖因子)」と呼ばれる因子や、PlGF(胎盤増殖因子)が関わっていると考えられています。
これらが過剰に分泌されることで脈絡膜新生血管が引き起こされ、滲出型の加齢黄斑変性が発症します。
加齢黄斑変性の治療
萎縮型は進行が遅いことから、特に治療は行われません。
しかし、滲出型に移行することもありますので、定期的な検査によって異常がないかを調べておく必要があります。
滲出型では、以下の治療法が行われます。
- 抗VEGF療法
- レーザーによる光線力学的療法
- レーザーによる光凝固法
今回ご紹介するアイリーアは「抗VEGF療法」に分類されています。
アイリーア(アフリベルセプト)の作用機序
アイリーアは遺伝子組換え融合糖タンパク質製剤であり、以下の血管増殖因子を阻害する薬剤です。
- VEGF-A
- VEGF-B
- PlGF
新生血管の形成に関わる因子を阻害することで、異常な新生血管を抑制し、滲出型の加齢黄斑変性の症状を改善するといった作用機序を有しています!
根拠となったエビデンス:VIEW1試験・VIEW2試験
根拠となった臨床試験には、以下の2試験があります。1)
- VIEW1試験:海外第Ⅲ相試験
- VIEW2試験:日本を含む国際共同第Ⅲ相試験
いずれの臨床試験もルセンティス(一般名:ラニビズマブ)に対するアイリーアの非劣性を検討した試験です。
1年目までの投与間隔や用量については以下の4群で検討されました。
- アイリーア2mg 8週毎(最初の3回は4週毎)
- アイリーア2mg 4週毎
- アイリーア0.5mg 4週毎
- ルセンティス0.5mg 4週毎
両試験の主要評価項目は「1年目に視力が維持されていた*患者さんの割合」とされました。
承認用量である「アイリーア2mg 8週毎(最初の3回は4週毎)」群とルセンティス群の結果は以下の通りでした。
試験名 | VIEW1試験 | VIEW2試験 | ||
試験群 | アイリーア2mg 8週毎 |
ルセンティス0.5mg 4週毎 |
アイリーア2mg 8週毎 |
ルセンティス0.5mg 4週毎 |
1年目に視力が維持されていた*患者さんの割合 | 95.1% | 94.4% | 95.6% | 94.4% |
群間差:-0.7% [-4.5%~3.1%] 非劣性が証明 |
群間差:-1.1% [-4.8%~2.6%] 非劣性が証明 |
*ETDRS視力検査表による評価
以上の結果より、ルセンティスとアイリーアの治療効果は同程度ということが示されています。
なお、副作用についてもいずれの群において同程度であったとされています。
類薬とあとがき
同様の作用機序を持つ薬剤としてルセンティス(一般名:ラニビズマブ)があります☆
アイリーアはVEGF-A、VEGF-B、PlGFを阻害しますが、ルセンティスはVEGF-Aのみを阻害します。
-
ルセンティス(ラニビズマブ)の作用機序【加齢黄斑変性】
続きを見る
臨床試験1)では、ルセンティスに対するアイリーアの非劣性が証明されているため、治療効果としては同程度だと考えられます。
今後は使い分け等が検討されれば興味深いと感じます。
また、2020年には維持期で初の3か月毎の投与で治療が可能なベオビュ(一般名:ブロルシズマブ)も登場しました!
以下の記事で比較・一覧表を作成していますので是非ご確認ください。
-
バビースモ(ファリシマブ)の作用機序:類薬との違い・比較【加齢黄斑変性】
続きを見る
以上、今回は加齢黄斑変性症とアイリーア(アフリベルセプト)の作用機序についてご紹介しました。
引用文献・資料等
- VIEW1試験・VIEW2試験:Ophthalmology. 2012 Dec;119(12):2537-48.
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