9.眼疾患 疾患・作用機序まとめ

【緑内障】プロスタグランジンF2α誘導体製剤の作用機序と一覧

今回は「緑内障、高眼圧症」を効能・効果とするプロスタグランジンF2α誘導体製剤の作用機序と一覧についてご紹介します。

 

プロスタグランジンF2α誘導体製剤は4製品が販売されており、β遮断薬との配合剤も販売されています。

緑内障の疾患解説とともに紹介します☆

 

緑内障と症状

緑内障は眼の病気です。

眼の見えている範囲が徐々に狭くなったりボヤけたりしていき、治療が遅れてしまうと最悪失明に至ってしまいます。

 

高齢になればなるほど発症する確率が高くなり、日本では40歳以上の約5%に緑内障が発症すると推定されています。

早期に治療を開始すれば失明することはほぼありませんので、早めの発見・診断・治療が重要です。

 

緑内障の原因と眼房水の排出経路

緑内障は眼の中の圧力(眼圧)が異常に上昇することで視神経が圧迫されて生じます。

 

眼圧を調整する物質として眼の中の水(眼房水)があります。

この眼房水の量が異常に増えてしまうと、眼の中が眼房水でパンパンになり、眼圧が上昇してしまいます。

 

通常、眼房水は以下の排出経路によって排出されます。

  • 主経路:シュレム管(経線維柱帯流出路)による排出(約90%)
  • 副経路:ブドウ膜強膜流出路による排出(約10%)

Copyright: Santen Pharmaceutical Co., Ltd.

 

しかし緑内障では様々な原因によって上記の排出経路が障害されて眼の中に貯留してしまいます。

また、緑内障は原因によって大きく以下の分類があります。

①原発緑内障 排泄経路が障害されているもの。
隅角が開いている「原発開放隅角緑内障」と、
隅角が閉じている「原発閉塞隅角緑内障」に分類される。
②小児緑内障 先天性のもの。
③続発緑内障 他の原因(外傷や網膜剥離、薬物の副作用等)によるもの。

 

緑内障の治療

緑内障の治療の原則は眼圧を下げることです。

主な治療には以下がありますが、「原発開放隅角緑内障」の場合は主には薬物治療が基本となります。

  • 薬物治療
  • レーザー治療
  • 手術

 

薬物治療のうち、局所投与薬(点眼薬等)には以下の選択肢があります。

  • プロスタノイド受容体関連薬:プロスタノイドFP受容体作動薬、プロスタノイドEP2受容体選択性作動薬
  • アドレナリンβ受容体遮断薬
  • 炭酸脱水素阻害薬
  • アドレナリンα2受容体刺激薬
  • アドレナリンα1受容体遮断薬
  • 副交感神経刺激薬
  • イオンチャネル開口薬

 

主に第一選択薬で使用されているのはプロスタノイド受容体関連薬もしくはアドレナリンβ受容体遮断薬です。

 

基本は単剤から治療を開始しますが、眼圧が十分に下がらない場合、別の薬剤への切り替え(作用機序の異なる薬剤等)、もしくは併用療法が行われます。

 

プロスタグランジンF2α誘導体製剤の作用機序

生体内にはプロスタグランジンF2α(PGF2α)と呼ばれる物質が存在しています。

PGF2αの作用する受容体の一つに「プロスタノイドFP受容体」がありますが、プロスタグランジンF2α誘導体製剤もプロスタノイドFP受容体に作用する薬剤です。

 

プロスタノイドFP受容体が刺激されると、毛様体の平滑筋が弛緩して眼房水の

  • 副経路の排出(ブドウ膜強膜流出路による排出)

が促進されると考えられています。

 

このようにプロスタグランジンF2α誘導体製剤は副経路から眼房水が排出されるといった作用機序によって、眼内圧を低下させる薬剤です。

 

プロスタグランジンF2α誘導体製剤の副作用

主な副作用として虹彩色素沈着、睫毛・眼瞼部多毛、角膜上皮障害など、眼に限局した副作用に注意する必要があります。

特に色素沈着や睫毛・眼瞼部多毛は患者さんの見た目や印象にも関わることですので、事前にお伝えしておく必要がありますね。

 

一方、プロスタグランジンF2α誘導体製剤の副作用である膝毛異常伸長に注目し、「睫毛(まつげ)貧毛症」の治療薬として使用されることもあります。

グラッシュビスタ(ビマトプロスト)の作用機序【まつげ貧毛症】

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プロスタグランジンF2α誘導体製剤の一覧(単剤・配合剤)

現在使用されているプロスタグランジンF2α誘導体製剤の一覧表を掲載しています(2018年10月15日時点)。

 

↓クリックすると別ウィンドウで高画質用の画像が開きます↓

 

 

また、β遮断薬との配合剤についても4製品が販売されています(2018年10月15日時点)。

製品名 デュオトラバ配合点眼液 タプコム配合点眼液 ザラカム配合点眼液 ミケルナ配合点眼液
一般名
(PGF2α+β遮断薬)
トラボプロスト+
チモロール
タフルプロスト+
チモロール
ラタノプロスト+
チモロール
ラタノプロスト+
カルテオロール
用法 1回1滴、
1日1回点眼
1回1滴、
1日1回点眼
1回1滴、
1日1回点眼
1回1滴、
1日1回点眼
防腐剤 ホウ酸 ベンザルコニウム ベンザルコニウム ホウ酸
貯法 遮光・室温 遮光・室温 2~8℃・遮光 室温

 

用法は4製品とも共通していますが、防腐剤や貯法が異なっていたりしますね。

 

あとがき

現在の緑内障治療薬の第一選択薬はプロスタグランジンF2α誘導体製剤もしくはβ遮断薬です。

 

プロスタグランジンF2α誘導体製剤は局所の副作用(色素沈着、睫毛・眼瞼部多毛など)が多く、β遮断薬は全身の副作用(気管支収縮、心血管系の副作用など)が多いので、患者さんの希望に沿って使い分けられることもあります。

 

2018年には新規作用機序(プロスタノイドEP2受容体作動)を有するエイベリス点眼液(一般名:オミデネパグ イソプロピル)も登場しました。

 

エイベリスはプロスタグランジンF2α誘導体製剤の色素沈着や睫毛・眼瞼部多毛などの副作用が出ずらいとされています。

 

両剤の比較や使い分け等については以下の記事で解説していますので併せてご覧ください☆

エイベリス(オミデネパグ)の作用機序:プロスタグランジンF2α誘導体製剤との違い【緑内障】

続きを見る

 

以上、今回は緑内障とプロスタグランジンF2α誘導体製剤の作用機序・一覧表についてご紹介しました!

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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