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2025年5月19日、「避妊」を効能・効果とするスリンダ錠(ドロスピレノン)が承認されました!
あすか製薬ホールディングス|ニュースリリース
基本情報
製品名 | スリンダ錠28 |
一般名 | ドロスピレノン |
製品名の由来 | 本剤は一般的な錠剤に比べ、小型で薄く飲みやすいため、 Slim と Linda(スペイン語;英訳pretty)を組み合わせて命名した。 |
製造販売 | あすか製薬ホールディングス(株) |
効能・効果 | 避妊 |
用法・用量 | 1日1錠を毎日一定の時刻に白色錠から開始し、指定された順番に従い28日間連続経口投与する。 以上28日間を投与1周期とし、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返す |
収載時の薬価 | 保険給付の対象外のため、未収載 |
発売日 |
現在の経口避妊薬(OC:Oral Contraceptives、いわゆる“ピル”)は、低用量のエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を配合したもの(LEP:low dose estrogen progestin)が主です。
今回ご紹介するスリンダは、人工プロゲステロン(プロゲスチン)のみの経口避妊薬です!
POP(Progestin-Only Pill)とも呼ばれていますね。

今回は避妊薬とスリンダ錠(ドロスピレノン)の作用機序について解説していきます。
ホルモンと月経周期
月経は子宮の内側の膜(子宮内膜)が剥がれ落ちて、それに伴って出血が起こる現象です。
月経は通常1か月の周期で起こり、この周期のことを「月経周期」と呼んでいます。
月経周期は複数のホルモンが複雑に作用することで調節されています。
以下に簡単なホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、LH)の体内濃度の変動を掲載しています。
妊娠が成立するためには、まずは「排卵」が重要で、排卵直前には黄体形成ホルモン(LH:Luteinizing Hormone)が急上昇する「LHサージ」が起こります。
排卵の少し前から受精に備え、プロゲステロン濃度が徐々に上昇し、子宮内膜が厚くなっていきます。
受精しない場合、エストロゲンとプロゲステロン濃度が急激に下がり、これをきっかけに子宮内膜が剥がれ落ちて月経となります。
もし受精して妊娠が成立した場合、エストロゲンとプロゲステロンの濃度は高値で維持されたままです。
避妊方法
妊娠を望まない場合、いくつかの避妊方法がありますが、最も汎用されているのがOC(経口避妊薬)です。
100人の女性がある避妊法を1年間用いた場合に、避妊に失敗する確率を示す指数として「パー ル指数」がありますが、その指数が下表です。
<主な避妊法とパール指数>1)2)
避妊方法 | 理想的な使用*(%) | 一般的な使用**(%) | |
OC | 0.3 | 7 | |
黄体ホルモン放出IUS | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.4 | |
銅付加IUD | 0.6 | 0.8 | |
コンドーム | 2 | 13 | |
リズム法(基礎体温法) | 0.4〜5 | 15 | |
避妊手術 | 女性 | 0.5 | 0.5 |
男性 | 0.1 | 0.15 | |
避妊せず | 85 | 85 |
*選んだ避妊法を正しく続けて使用しているにもかかわらず妊娠してしまった場合
**選んだ避妊法を使用しているにもかかわらず妊娠してしまった場合(OCについては、飲み忘れを含めた場合の失敗率)

産婦人科診療ガイドラインにおいても、「OCは可逆的避妊法の中で避妊効果において最も優れた方法のひとつであり、安全性も高い」とされていますね。3)
また、現在使用されているOCは、低用量のエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を配合したLEP(low dose estrogen progestin)が主です。
一方で、LEPの重篤なリスクとして「静脈血栓塞栓症(VTE:venous thromboembolism)」が知られています。
生殖可能年齢女性において、LEP非使用の場合のVTE 発症頻度は1 ~ 5/10,000人/年ですが、LEP使用で3~9/10,000人/年と増加すると報告されています。3)
頻度としてはそこまで高くないものの、より安全なOCの開発が望まれていました。
今回ご紹介するスリンダは、国内初のPOP(Progestin-Only Pill)です。
スリンダの審査報告書にも、「現時点では、本剤投与時の血栓症リスク、及び本剤を血栓症リスクを有する女性に使用することに大きな懸念はないと判断する。」と書かれていました。
スリンダ(ドロスピレノン)の作用機序:エストロゲンを含まないPOP
スリンダの有効成分は、単剤型人工黄体ホルモン(プロゲスチン)のドロスピレノンです。
黄体ホルモンには排卵抑制作用があり、体内である程度の濃度が維持されていると、体が妊娠状態だと錯覚し、LHサージおよび排卵が行われにくくなります。
その他、子宮内膜の菲薄化、子宮頸管粘液の高粘稠による精子の侵入障害などによっても避妊効果を発揮すると考えられています。

これまでのLEPには、禁忌項目として様々な血栓症関連の項目(例:心房細動、高血圧、脂質代謝異常などの既往歴)がありましたが、スリンダでは血栓症関連の禁忌項目は特にありません。
副作用
5%以上に認められる副作用として、不正性器出血(月経中間期出血、異常子宮出血)(89.9%)、下腹部痛(13.4%)、月経異常(過少月経、過長過多不規則月経、重度月経出血)(14.9%)、乳房不快感、頭痛(16.3%)、腹痛(12.3%)、悪心、下痢、ざ瘡などが報告されています。
用法・用量
1日1錠を毎日一定の時刻に白色錠から開始し、指定された順番に従い28日間連続経口投与します。以上28日間を投与1周期とし、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。

他の経口避妊剤から本剤に切り替える場合、以下の通りです。
本剤の服用は、切替え前に服用していた薬剤の1周期分の錠剤のうち、有効成分を含む錠剤を用法に従ってすべて服用した翌日から開始させること。本剤の服用開始が遅れた場合、妊娠する可能性がある。
薬価収載はされず、保険適応外
避妊薬は保険適応外のため、薬価収載はされません。
まとめ・あとがき
スリンダはこんな薬
- 国内初のエストロゲンを含まない経口避妊薬(OC)
- 血栓症(静脈血栓塞栓症)のリスク低下が期待されている
- 1日1回1錠を28日間1周期として繰り返す
これまでの経口避妊薬は、低用量のエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を配合したLEPが主流でしたが、血栓症のリスクが少なからずありました。
今回ご紹介したスリンダは人工プロゲステロン(プロゲスチン)のみの経口避妊薬のため、血栓症のリスク低減が期待されていますね。

以上、今回は避妊薬とスリンダ錠(ドロスピレノン)の作用機序について解説しました。
引用論文・資料等
- Contraceptive Technology. 21st edition, 844-845, 2018.
- 富士製薬工業|経口避妊薬(OC/ピル)について
- 日本産科婦人科学会|産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023
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