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今回は5-FU系の薬剤であるゼローダ錠300(一般名:カペシタビン)の作用機序を5-FUと共にご紹介します。
製薬会社
- 製造販売元:中外製薬(株)
ゼローダは5-FUを改良したプロドラッグで胃がん、大腸がん、乳がんに対して使用されています!
がん細胞の増殖メカニズム:DNAの複製
がん細胞は細胞分裂を繰り返して無秩序に増殖することが知られています。
細胞分裂を行う際に必要なプロセスとして「DNAの複製」があり、がん細胞はDNAを2倍量に増やしてから細胞分裂が行われます。
DNAを構成する物質として「塩基」と呼ばれるものがあり、以下の4種類が存在しています。
- アデニン(A)
- チミン(T)
- グアニン(G)
- シトシン(C)
複製の際には、二本鎖DNAが解かれて一本鎖DNAになり、その後ポリメラーゼ等によって複製が行われて二本鎖DNAが完成します。
このようなプロセスを経てがん細胞の細胞分裂と増殖が行われています。
がん細胞の増殖メカニズム:転写・翻訳
がん細胞が増殖する際にはタンパク質の合成も必要となります。
がん細胞のタンパク質合成は以下のプロセスで行われます。
- DNAからmRNAの合成(転写)
- mRNAからたんぱく質の合成(翻訳)
mRNAを構成する塩基はDNAと少し異なり、チミン(T)の代わりにウラシル(U)が用いられています。(その他のA、G、CはDNAもmRNAも共通です)
- アデニン(A)
- ウラシル(U)
- グアニン(G)
- シトシン(C)
DNAからmRNAの転写が行われる際にはA、U、G、Cが材料となってmRNAが合成されます。
その後、mRNAを元にして翻訳が行われることで、がん細胞のタンパク質合成が完了します。
5-FUの作用機序
5-FUが体内に投与されると、体内で活性代謝物の「FdUMP」と「FUTP」に変換されます。
それぞれ以下のように作用機序が異なっています。
- FdUMP:DNAの複製を阻害
- FUTP:RNA(mRNA)の機能障害
FdUMPによるDNAの複製阻害
DNAを構成するチミンは「チミジル酸シンターゼ(TS)」と呼ばれる酵素によって合成されています。
5-FUから変換されたFdUMPは体内の「活性型葉酸」と「TS」と複合体を形成することでTSの働きを阻害します。
その結果、DNA複製の際に必要なチミンの合成が阻害され、がん細胞の複製・細胞増殖が抑制されると考えられています。
FUTPによるRNAの機能障害
5-FUから変換されたFUTPはRNAの構成塩基である「ウラシル」と類似した構造を有しています。
そのため、FUTPはウラシルの代わりにがん細胞のmRNAに取り込まれ、それによってmRNAの機能障害が引き起こされると考えられます。
ゼローダ(一般名:カペシタビン)の作用機序と特徴
ゼローダが経口投与されると肝臓のカルボキシエステラーゼとシチジンデアミナーゼによって「ドキシフルリジン」に変換されます。
ドキシフルリジン自体には抗腫瘍活性はないため、副作用もほとんどありません。
ドキシフルリジンが、がん細胞内に侵入すると、がん細胞内で活性の高い「チミジンホルホリラーゼ」によって5-FUに変換されます。
チミジンホスホリラーゼは正常細胞には僅かしか存在していないため、正常細胞内で5-FUに変換されることは少ないと考えられています(副作用の軽減)。
このようにゼローダは、がん細胞内で特異的に5-FUに変換されることで、正常細胞への影響を最小限に抑えてがん細胞の増殖抑制効果が得られると考えられます。
副作用
理論的には正常細胞への影響は少ないと考えられていますが、やはり副作用は発現してしまいます。
主な副作用としては、手足症候群、悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、好中球減少などがあります。ゼローダは経口薬のため、消化器毒性には注意が必要ですね。
また、特徴的は副作用として上記にもある「手足症候群」があります。
これは手や足の皮膚がピリピリと赤みを帯びたり、痛みを伴う副作用で患者さんのQOL低下を招きやすいと言われています。
あとがき
ゼローダは現在でも大腸がん、胃がん、乳がんに対して広く使用されている薬剤です。
単剤だけではなく、様々な抗がん剤(例:シスプラチン、オキサリプラチン、ハーセプチン、アバスチンなど)と併用して使用されることもありますので、患者さんがどのような治療を行っているのか、医師と連携して確認することが大切ですね。
経口剤で簡便な治療ではありますが、副作用(手足症候群や消化管毒性など)にも注意が必要ですし、患者さんの飲み忘れといったコンプライアンスの確認も重要です。
以上、今回はよく用いられている経口抗がん剤であるゼローダ(一般名:カペシタビン)について、作用機序と特徴をご紹介しました☆
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