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2021年8月25日、「腎細胞がん」を対象疾患としてカボメティクス(カボザンチニブ)とオプジーボ(ニボルマブ)の併用療法に関する適応拡大が承認されました!
武田薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | カボメティクス錠20mg/60 mg |
一般名 | カボザンチニブリンゴ酸塩 |
製品名の由来 | 本剤の一般名である"CABO"と、ターゲットキナーゼの一つである"MET"に由来している。 |
製造販売 | 武田薬品工業(株) |
効能・効果 | 〇根治切除不能又は転移性の腎細胞がん 〇がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞がん |
用法・用量 | 通常、成人にはカボザンチニブとして1回60mgを空腹時に経口投与する。 なお、患者の状態による適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 20mg:8,007.60円 60mg:22,333.00円 |
カボメティクスは2020年3月25日に「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」を効能・効果として承認され、2020年11月27日には「がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞がん」の適応が拡大されています。
カボメティクスはMET、VEGFR、AXL等のがん細胞の増殖に関与する受容体を幅広く阻害することのできるマルチキナーゼ阻害薬に分類されています。
今回は腎細胞がん・肝細胞がんとカボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。
腎細胞がんと治療薬
腎臓の中でも、腎実質の細胞から発生するのが腎細胞がんです。
腎細胞がんは初期では手術で取り除くことが可能ですが、肝臓や他臓器に転移が認められる場合、手術で取り除くことが困難になります。
一般的に、他の臓器のがんでは、手術により切除できない場合や他の臓器に転移が見られた場合には、抗がん剤による化学療法が行われます。
しかし、腎細胞がんの場合、これまでの抗がん剤ではがんに対する感受性が低く、一般的に化学療法が行われることはありませんでした。
かつて、薬物治療として唯一行われてきたのが、インターフェロンα(IFN-α)製剤やインターロイキン2(IL-2)製剤を用いたサイトカイン療法でした。
その後、分子標的治療薬として以下の薬剤が登場し、現在ではこれらの薬剤が一次治療の中心です。
- オプジーボ(一般名:ニボルマブ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ)併用療法
- スーテント(一般名:スニチニブ):チロシンキナーゼ阻害薬
- ヴォトリエント(一般名:パゾパニブ):チロシンキナーゼ阻害薬
- ネクサバール(一般名:ソラフェニブ):チロシンキナーゼ阻害薬
- トーリセル(一般名:テムシロリムス):mTOR阻害薬
- アフィニトール(一般名:エベロリムス):mTOR阻害薬
-
オプジーボとヤーボイ併用療法の作用機序【悪性黒色腫/腎/大腸/肺/食道がん】
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これら薬剤の使い分けですが、下記のIMDCリスク分類(低・中・高リスク)による使い分けがよく行われています。1)
予後予測の6因子 | 何項目当てはまるか | ||
0個 | 1-2個 | 3個以上 | |
|
低リスク | 中リスク | 高リスク |
低リスクにはスーテントやネクサバールなどの分子標的治療薬単剤、中・高リスクにはオプジーボ+ヤーボイ併用療法が用いられることが多いです。
最近では一次治療として免疫チェックポイント阻害薬+インライタ(一般名:アキシチニブ)も承認されましたので、今後様々な使い分けが検討されていくと思われます。
-
バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】
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今回ご紹介するカボメティクスは単剤として一次治療または二次治療で使用可能で、今後は一次治療としてオプジーボとの併用が可能です!
肝細胞がんと治療薬
肝細胞がんの最も重要な原因は「肝炎ウイルスの持続感染」です。
肝炎ウイルスにはA、B、C、D、Eなど色々な種類が存在していますが、肝細胞がんと関係があるのは、C型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスです。
肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルス、約15%がB型肝炎ウイルスの持続感染に起因すると言われています。
C型肝炎ウイルスの治療薬については、近年、続々と新薬が登場しているため、治癒が期待できるようになってきました。
-
マヴィレット(ピブレンタスビル/グレカプレビル)の作用機序【C型肝炎】
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そして肝細胞がんの発見時に既に転移が認められている場合や再発の場合、薬物治療が基本となります。一次治療としては分子標的薬の単剤治療が主です。
主に使用される分子標的薬としては、
- ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)
- レンビマ(一般名:レンバチニブ)
などがあります。
-
レンビマ(レンバチニブ)の作用機序【肝細胞/甲状腺/子宮体/腎細胞がん】
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最近では一次治療において、テセントリク(アテゾリズマブ)+アバスチン(ベバシズマブ)も承認され、治療選択肢が広がってきていますね。
-
テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん/肝がん】
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また、上記治療に抵抗・不耐の場合、二次治療が行われます。具体的な治療法としては、以下ですね。
-
サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序【胃/大腸/肝細胞/肺がん】
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カボメティクスは二次治療の新たな治療選択肢として使用できる薬剤です!
がんの血管新生と増殖に関与する受容体(VEGFR、MET、AXL)
がん全般的に言えることですが、がん細胞が大きくなるためには多くの栄養素や酸素が必要となります。
そこでがん細胞は、自分のところに血管を無理やり作らせようとし、それに関与する因子として、がん細胞はVEGF(血管内皮細胞増殖因子)などを放出することが知られています。
これらの因子が、血管のVEGF受容体(VEGFR)に結合すると、がん細胞に対して異常な血管が作られ(これを“血管新生”といいます)、この血管を通じてがん細胞は大量の栄養と酸素を得ることができます。
読み方:VEGFRは“ブイイージーエフアール”
また、がん細胞の細胞膜にはしばしば以下の受容体が存在しています。
- MET:肝細胞増殖因子受容体
- VEGFR:血管内皮細胞増殖因子受容体
- AXL:成長停止特異的タンパク質6受容体
METは主にがんの増殖、VEGFRはがんの増殖と血管新生、AXLはがんの増殖や抗がん剤の耐性2)に関与していると言われています。
これら受容体を介したシグナル伝達が、がん細胞の核内に到達すると、がん細胞の増殖活性化に繋がると考えられています。
カボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序
カボメティクスはがんの増殖や血管新生の関与しているMET/VEGFR/AXLを選択的に阻害するマルチキナーゼ阻害薬です。3)
血管に存在しているVEGFRを阻害することでがんの血管新生を抑制します。
加えて、がん細胞に存在しているMET、VEGFR、AXLをマルチに阻害することで、がん細胞の増殖抑制効果を発揮すると考えられています!
その他にもKIT、RET、FLT3といったがん細胞の増殖に関わる受容体の阻害作用も示唆されています。3)
腎細胞がんのエビデンス紹介:初回および二次治療
根拠となった臨床試験を2つご紹介します。
- CABOSUN試験4-5):低・中リスクの一次治療としてのカボメティクスとスーテント(スニチニブ)を比較する海外第Ⅱ相臨床試験
- METEOR試験6):低・中・高リスクの二次治療としてのカボメティクスとアフィニトール(エベロリムス)を比較する海外第Ⅲ相臨床試験
共に主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)*」とされていましたので、下表に結果をまとめてみました。
試験名 | CABOSUN試験4-5) (一次治療) |
METEOR試験6) (二次治療) |
||
試験群 | スーテント | カボメティクス | アフィニトール | カボメティクス |
PFS中央値 | 5.3か月 | 8.6か月 | 3.8か月 | 7.4か月 |
HR=0.48, p=0.0008 | HR=0.58, p<0.001 | |||
奏効率† | 9% | 20% | 5% | 21% |
- | p<0.001 |
*無増悪生存期間(PFS):がんが増殖(増悪)せずに生存している期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
一次治療のCABOSUN試験については第Ⅱ相試験のため、確証的な事は言えませんが、カボメティクスで良好な結果でした。
また、一次治療のオプジーボとの併用の根拠はCheckMate 9ER 試験です。7)
本試験は低・中・高リスクの一次治療を対象として、カボメティクス+オプジーボ群とスーテント(スニチニブ)群を比較する第Ⅲ相試験で、主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされていました。
試験群 | スーテント群 | カボメティクス+ オプジーボ群 |
PFS中央値 | 8.3か月 | 16.6か月 |
HR=0.51(95% CI:0.41-0.64) p<0.001 |
||
12か月時点の生存率 | 75.6% | 85.7% |
HR=0.60(98.89% CI:0.40-0.89) p=0.001 |
増悪リスクも死亡リスクも有意に低下していますね!低リスクから使用するのかどうかは今後議論の余地はありそうです。
肝細胞がんのエビデンス紹介:CELESTIAL試験
肝細胞がんの根拠となった海外第Ⅲ相試験をご紹介します。8)
本試験はソラフェニブに抵抗性となった肝細胞患者さんを対象に、カボメティクスとプラセボを比較する臨床試験です。二次治療が対象ということですね。
主要評価項目は「全生存期間」で結果は以下の通りでした。
試験群 | プラセボ | カボメティクス |
全生存期間中央値 | 8.0か月 | 10.2か月 |
HR 0.76 (95%CI:0.63-0.92) p=0.005 |
||
PFS中央値 | 1.9か月 | 5.2か月 |
HR 0.44 (95%CI: 0.36-0.52) p<0.001 |
副作用
10%以上に認められる副作用として、下痢(68.9%)、食欲減退(40.1%)、悪心、口内炎、嘔吐、腹痛、消化不良、発疹、疲労(50.7%)、味覚異常、体重減少、甲状腺機能低下症、発声障害、粘膜の炎症、無力症、低マグネシウム血症、低リン酸血症などが報告されています。
重大な副作用として、
- 消化管穿孔(1.1%)、瘻孔(1.1%)
- 出血(9.9%)
- 血栓塞栓症(2.3%)
- 高血圧(37.6%)
- 可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)
- 顎骨壊死(0.2%)
- 膵炎(0.9%)
- 腎障害(19.1%)
- 肝不全(頻度不明)、肝機能障害(36.3%)
- 骨髄抑制:貧血(14.4%)、好中球減少(8.3%)、血小板減少(11.0%)、リンパ球減少(4.3%)
- 虚血性心疾患(頻度不明)、不整脈(2.3%)、心不全(0.2%)
- 横紋筋融解症(頻度不明)
- 間質性肺疾患(頻度不明)
- 手足症候群(44.4%)
- 創傷治癒遅延(0.9%)
- 重度の下痢(11.0%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
用法・用量
通常、成人にはカボザンチニブとして1回60mgを空腹時に経口投与します(患者の状態による適宜減量)。
収載時の薬価
収載時(2020年5月20日)の薬価は以下の通りです。
- カボメティクス錠20mg:8,007.60円
- カボメティクス錠60mg:22,333.00円(1日薬価:22,333.00円)
算定根拠等については以下の記事をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】18製品+再生医療等製品(2020年5月20日)
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まとめ・あとがき
カボメティクスはこんな薬
- MET、VEGFR、AXL等の受容体を選択的に阻害するマルチキナーゼ阻害薬
- 腎細胞がんの一次治療と二次治療で使用可能
- 肝細胞がんの二次治療で使用可能
現在、腎細胞がんの一次治療では免疫チェックポイント阻害薬同士(オプジーボ+ヤーボイ)の併用療法が使用可能ですし、2019年には免疫チェックポイント阻害薬+インライタ(アキシチニブ)も承認されています。
-
バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】
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現在、免疫チェックポイント阻害薬との併用や、他癌腫での臨床試験も進行中ですので期待していきたいと思います!
以上、今回は腎細胞がん・肝細胞がんと新規のマルチキナーゼ阻害薬であるカボメティクスの作用機序、エビデンス等についてご紹介しました☆
引用文献・資料等
- 日本泌尿器科学会:腎癌診療ガイドライン 2017年版
- Nat Commun. 2019 Jan 16;10(1):259.
- Mol Cancer Ther. 2011 Dec;10(12):2298-308.
- CABOSUN試験(一次治療):J Clin Oncol. 2017 Feb 20;35(6):591-597.
- CABOSUN試験(一次治療)の追加解析:Eur J Cancer. 2018 May;94:115-125.
- METEOR試験(二次治療):N Engl J Med 2015; 373:1814-1823
- CheckMate 9ER 試験:N Engl J Med 2021; 384:829-841
- CELESTIAL試験:N Engl J Med 2018; 379:54-63
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