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2020年5月20日、新薬18製品と再生医療等製品のゾルゲンスマが薬価されました!
ちなみに2019年3月に承認されて以降、1年以上に渡って薬価収載が見送られている鉄乏性貧血治療薬のフェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)は、今回も見送られているようです・・・。
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フェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)の作用機序・特徴【鉄乏性貧血】
続きを見る
また、このタイミングで収載される予定であったバクスミー(グルカゴン)も見送られました。
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バクスミー点鼻粉末剤(グルカゴン)の作用機序・特徴【低血糖】
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今回は薬価収載予定の新薬一覧とその算定根拠についてご紹介します。
2020年5月20日:薬価収載の18製品
2020年5月20日に薬価収載された新薬一覧は以下の通りです。
製品名 (一般名) |
規格 | 薬価 | 効能・効果 (簡略) |
ラツーダ (ルラシドン) |
20mg1錠 40mg1錠 60mg1錠 80mg1錠 |
178.70円 328.90円 469.90円 493.40円 |
統合失調症/双極性障害 |
メラトベル (メラトニン) |
顆粒小児用0.2% | 207.80円 | 神経発達症 |
ロケルマ (ジルコニウムシクロケイ酸Na) |
5g1包 10g1包 |
1,095.20円 1,601.00円 |
高カリウム血症 |
キャブピリン (アスピリン/ボノプラザン) |
1錠 | 130.30円 | 血栓抑制 |
カボメティクス (カボザンチニブ) |
20mg1錠 60mg1錠 |
8,007.60円 22,333.00円 |
腎細胞がん |
テプミトコ (テポチニブ) |
250mg1錠 | 14,399.00円 | MET遺伝子陽性の 非小細胞肺がん |
ベレキシブル (チラブルチニブ) |
80mg1錠 | 5,067.40円 | 悪性リンパ腫 |
アネレム (レミマゾラム) |
50mg1瓶 | 2,218円 | 全身麻酔剤 |
ベオビュ (ブロルシズマブ) |
6mg0.05mL1筒 | 142,784円 | 加齢黄斑変性 |
ビルテプソ (ビルトラルセン) |
250mg5mL1瓶 | 91,136円 | 筋ジストロフィー |
オゼンピック (セマグルチド) |
0.25mg0.5mL 0.5mg0.5mL 1mg0.5mL |
1,547円 3,094円 6,188円 |
糖尿病 |
ルムジェブ (インスリン リスプロ) |
カート300 ミリオペン300 ミリオペンHD300 100単位1mL |
1,175円 1,400円 1,400円 277円 |
糖尿病 |
ソリクア (インスリングラルギン/リラグルチド) |
ソロスター | 6,497円 | 糖尿病 |
オニバイド (イリノテカン) |
43mg10mL1瓶 | 128,131円 | 膵臓がん |
エンハーツ (トラスツズマブ デルクステカン) |
100mg1瓶 | 165,074円 | HER2陽性乳がん |
ステボロニン (ボロファラン) |
9,000mg300mL | 444,215円 | 頭頸部がん |
ボンベンディ (ボニコグ アルファ) |
1,300国際単位 | 146,288円 | VWD |
アイラミド (ブリモニジン/ブリンゾラミド) |
懸濁性点眼液1mL | 492.20円 | 緑内障、高眼圧症 |
薬価の算定方法
各薬剤の薬価算定方法は2020年5月13日の中医協総会の資料に記載されているため、抜粋してご紹介します。
ラツーダ:類似薬効比較方式(Ⅱ) (インヴェガ)
ラツーダは同じく統合失調症に使用されるインヴェガ(パリペリドン)等における「過去6年間の最低一日薬価」に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅱ)です。
- ラツーダ錠20mg:178.70円
- ラツーダ錠40mg:328.90円(1日薬価:328.90円)
- ラツーダ錠60mg:469.90円
- ラツーダ錠80mg:493.40円
ピーク時の予測販売金額は61億円です。
作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説していますのでご確認ください。
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ラツーダ(ルラシドン)の作用機序・特徴【統合失調症/双極性障害】
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メラトベル:類似薬効比較方式(Ⅰ)(ロゼレム)【加算あり】
メラトベルは国内初のメラトニン製剤ですが、その作用機序はロゼレム(ラメルテオン )と同じく「メラトニン受容体刺激作用」です。従って、ロゼレムの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)と小児加算(A=10%)が加算されていますね!加算前の薬価は0.2%1gで180.70円でしたが、加算(×1.15)されて207.80円とされています。
- ロゼレム錠8mg:86.20円(1日薬価:86.20円)
- メラトベル顆粒小児用0.2%1g:207.80円(1日薬価:103.90円)
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は、米国神経学会による自閉スペクトラム症の睡眠障害に対する治療ガイドラインにて使用が推奨されていることを評価し、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)とすることが妥当と判断した。
- 小児加算:本剤は小児に係る効能や用法が明示されていること等から、加算の要件に該当する。6歳未満の患者等での有効性を評価していないため、限定的な評価とすべきである一方、国内の検証的試験における小児の登録症例数が約300例と比較的多いことは評価できるため、小児加算(A=10%)を適用することが妥当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は11億円です。
作用機序とエビデンスについては以下の記事で解説しています。
-
メラトベル顆粒(メラトニン)の作用機序【神経発達症】
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ロケルマ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(リオナ)
ロケルマは同じくイオン吸着薬のリオナ(クエン酸第二鉄水和物)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
特に加算はありませんでしたが、外国平均価格調整が行われ、最終的な薬価は以下の通りです。
- リオナ錠250mg:80.10円(1日薬価:874.70円)
- ロケルマ懸濁用散分包5g:1,095.20円
- ロケルマ懸濁用散分包10g:1,601.00円(1日薬価:1,186.30円)
ピーク時の予測販売金額は158億円です。
作用機序と共に、高カリウム血症に使用する類薬(アーガメイト・カリメート・ケイキサレート)との比較についても考察しています。
-
ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸)の作用機序・特徴【高K血症】
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キャブピリン:新医療用配合剤の特例
キャブピリンは自社製品のタケキャブ(ボノプラザン)と低用量アスピリンの配合剤です。
「新医療用配合剤の特例」として、「自社品の薬価の0.8倍+他社の後発品の最低薬価」で算定したところ、タケキャブの薬価を下回りました(タケキャブ:130.30円×0.8+アスピリン:5.70円)。
その結果、キャブピリンの薬価はタケキャブと同じ薬価と算定されています。
- タケキャブ10mg:130.30円
- キャブピリン配合錠:130.30円(1日薬価:130.30円)
ピーク時の予測販売金額は121億円です。
作用機序については以下の記事で解説しています。
-
キャブピリン配合錠(ボノプラザン/アスピリン)の作用機序【血栓抑制】
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カボメティクス:類似薬効比較方式(Ⅰ)(スーテント)【加算あり】
カボメティクスは同じく腎細胞がんに使用するチロシンキナーゼ阻害薬のスーテント(スニチニブ)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)が加算されていますね!加算前の薬価は60mg錠で20,302.70円でしたが、加算(×1.1)されて22,333.00円とされています。
- スーテントカプセル12.5mg:7,613.70円(1日薬価:20,302.70円)
- カボメティクス錠20mg:8,007.60円
- カボメティクス錠60mg:22,333.00円(1日薬価:22,333.00円)
加算の根拠
- 有用性加算:スニチニブ等の血管新生阻害剤による治療後に増悪した根治切除不能又は転移性の淡明細胞型腎細胞癌患者を対象とした海外第Ⅲ相ランダム化比較試験では、無増悪生存期間や全生存期間等でエベロリムスに対する本剤の優越性が検証され、かつ臨床的意義のある効果の大きさが認められていること等から、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)とすることが妥当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は127億円です。
作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
-
カボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序【腎細胞/肝細胞がん】
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テプミトコ:類似薬効比較方式(Ⅰ) (ザーコリ)【加算あり】
テプミトコは同じく非小細胞肺がんに使用されるザーコリ(クリゾチニブ)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)と先駆け審査指定制度加算(A=10%)が加算されていますね!加算前の薬価は1錠12,520.90円でしたが、加算(×1.15)されて14,399.00円とされています。
- ザーコリカプセル250mg:12,520.90円(1日薬価:25,041.80円)
- テプミトコ錠250mg:14,399.00円(1日薬価:28,798.00円)
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は、間葉上皮転換因子(MET)に対する阻害作用により初めて一定の奏効率を示した新規作用機序医薬品であり、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが妥当と判断した。
- 先駆け審査指定制度加算:本剤は先駆け審査指定制度の対象であるが、日本における承認の基礎となった主たる臨床試験において、安全性の解析対象とされた日本人患者は17例と限られていることから、限定的な評価とした。
なお、「有用性加算が少ない!!」と製薬企業から不服意見の申し立てがありましたが、エビデンスが奏効率しか公表されておらず、延命効果はまだ不明な点が多いことから却下されていました。
ピーク時の予測販売金額は25億円です。
作用機序やエビデンスについては下記記事をご参照ください。
-
テプミトコ(テポチニブ)の作用機序【MET陽性肺がん】
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ベレキシブル:類似薬効比較方式(Ⅰ)(イムブルビカ)
ベレキシブルは同様の作用機序(BTK阻害作用)を有するイムブルビカ(イブルチニブ)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
- イムブルビカカプセル140mg:10,134.80円(1日薬価:30,404.40円)
- ベレキシブル錠80mg:5,067.40円(1日薬価:30,404.40円)
ピーク時の予測販売金額は11億円です。
作用機序とエビデンス、今後適応拡大が期待される疾患等については以下の記事で解説しています。
-
ベレキシブル(チラブルチニブ)の作用機序【悪性リンパ腫】
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アネレム静注用:原価計算方式
アネレムは新規の超短時間作用型ベンゾジアゼピン系静脈麻酔薬です。
類薬にはプロポフォールとミダゾラムがありますが、G1品目や収載から10年以上経過しているため、比較方式では算定されませんでした。
従って、算定方式は原価計算方式です。
- アネレム静注用50mg1瓶:2,218円
ピーク時の予測販売金額は13億円です。
ベオビュ:類似薬効比較方式(Ⅰ) (アイリーア)
ベオビュは同じく加齢黄斑変性に使用し、作用機序も同様のアイリーア(アフリベルセプト)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
- アイリーア硝子体内注射液40mg/mL:137,292円(1日薬価:1,956円)
- ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL 6mg0.05mL1筒 :142,784円(1日薬価:1,956円)
ピーク時の予測販売金額は294億円です。
作用機序・エビデンスと共に、類薬であるアイリーアやルセンティスとの違い・特徴について解説しています。
-
ベオビュ(ブロルシズマブ)の作用機序・特徴【加齢黄斑変性】
続きを見る
ビルテプソ:原価計算方式【加算あり】
ビルテプソはデュシェンヌ型筋ジストロフィーに使用する初のアンチセンス核酸医薬品で、類薬がないため原価計算方式で算定されました。
また、市場性加算(Ⅰ)(A=10%)と先駆け審査指定制度加算(A=10%)が加算されていますね!なお、原価の開示度に応じた係数0.6が加味され、加算自体は12%(20%×0.6)でした。
- ビルテプソ点滴静注250mg5mL1瓶:91,136円
加算の根拠
- 市場性加算:本剤は希少疾病用医薬品の指定を受けていることから加算の要件を満たす。ただし、症例数が限られて市場規模が小さいことは原価計算方式の計算の中で価格に反映されていることを踏まえて、限定的な評価とした。
- 先駆け審査指定制度加算:本剤は先駆け審査指定制度の指定を受けており、先駆け審査指定制度加算の要件を満たす一方で、本剤の臨床試験では対照群が設定されていない上に、検討症例数が国内で26例、海外では16例に限られている等、得られた成績が限定的であることから、加算率は10%が妥当であると判断した。
ピーク時の予測販売金額は54億円です。
作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
-
ビルテプソ(ビルトラルセン)の作用機序【筋ジストロフィー】
続きを見る
オゼンピック:類似薬効比較方式(Ⅱ)
オゼンピックは一旦は薬価収載が見送られていましたが、単回のSD製剤の登場によってようやく薬価収載されました!
同様の作用機序(GLP-1アナログ製剤)を有する薬剤はいくつか承認・販売されていることから新規性の乏しい類似薬効比較方式(Ⅱ)で算定されました。
具体的には「過去10年間に薬価収載された薬理作用類似薬の平均1日薬価」で算定されています。
- オゼンピック皮下注0.25mgSD:1,547円
- オゼンピック皮下注0.5mgSD:3,094円(1日薬価:442円)
- オゼンピック皮下注1.0mgSD:6,188円
ピーク時の予測販売金額は125億円です。
疾患解説と作用機序については以下の記事で解説しています。
-
オゼンピック(セマグルチド)の作用機序と副作用【糖尿病】
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ルムジェブ:別銘柄として算定しない
ルムジェブはヒューマログの改良版ですね。添加剤を加えたことによって、投与後の吸収が速くなるそうです。
ただ、有効成分は同じのため、別銘柄として算定せずにヒューマログと同じ薬価で算定されます。
- ルムジェブ注カート:1,175円
- ルムジェブ注ミリオペン:1,400円
- ルムジェブ注ミリオペンHD:1,400円
- ルムジェブ注100単位/mL:277円
ピーク時の予測販売金額は28億円です。
ソリクア配合注:新医療用配合剤の特例(ランタス/リキスミア)
ソリクアはランタス(インスリン グラルギン)とリキスミア(リキシセナチド)の配合剤で共に製造販売元が同じです。
従って、新医療用配合剤の特例により、「自社品の薬価の合計の0.8倍」で薬価算定されました。
キット特徴部分の原材料費を考慮し、最終的な薬価はこちらです。
- ソリクア配合注ソロスター1キット:6,497円
ピーク時の予測販売金額は32億円です。
作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
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ソリクア配合注(インスリングラルギン/リキシセナチド)の作用機序【糖尿病】
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オニバイド:原価計算方式【加算あり】
オニバイドはイリノテカンをリポソームに封入した薬剤です。
類似の効能・効果、組成を有する類似の既収載品が無いため、原価計算方式で算定されました。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)が加算されていますね!ただし、原価の開示が低かったのか、開示度に応じた係数0.2が加味され、最終的には2%(10%×0.2)の加算とされています。
- オニバイド点滴静注43mg10mL1瓶:128,131円
加算の根拠
- 有用性加算:本邦並びに米国及び欧州のガイドラインにおいて、膵癌の二次化学療法として推奨されている。また、5-フルオロウラシル及びレボホリナートの併用療法に本剤を上乗せすることによって、全生存期間が有意に延長することが検証された。以上の2点が治療方法の改善に該当し、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)を適用することが適当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は47億円です。
作用機序・特徴やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
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オニバイド(イリノテカン リポソーム製剤)の作用機序【膵臓がん】
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エンハーツ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(カドサイラ)【加算あり】
エンハーツは同じく乳がんに使用し、HER2を標的とするADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)であるカドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)が加算され、最終的には以下の薬価となりました。
- カドサイラ点滴静注用100mg:235,820円(1日薬価:20,213円)
- エンハーツ点滴静注用100mg1瓶:165,074円(1日薬価:21,224円)
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は、トラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)による治療歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌患者に対して奏効が認められたことから、治療方法の改善が示されていると考えられる。ただし、奏効率の結果を基に、本薬の延命効果に関する評価を行うことは困難であることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)とすることが妥当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は129億円です。
作用機序・特徴やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
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エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】
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ステボロニン:原価計算方式【加算あり】
ステボロニンは国内初のホウ素中性子捕捉療法です。そのため、類薬は存在せず原価計算方式で算定されました。
また、有用性加算(Ⅰ)(A=35%)と先駆け審査指定制度加算(A=10%)が加算されていますね!なお、原価の開示度が高かったのか、係数は1でしたので、最終的な加算は45%です。
加算前の薬価は306,355円でしたが、加算(×1.45)され、444,215円とされました。
- ステボロニン点滴静注バッグ9000mg/300mL1袋:444,215円
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いられる製剤で、新規作用機序医薬品である。また、本剤を用いたBNCTは1回で治療が完了することから、頭頸部癌に対する既存治療に比べて利便性が高い。これらを踏まえ、有用性加算(Ⅰ)(A=35%)を適用することが妥当と判断した。
- 先駆け審査指定制度加算:本剤は先駆け審査指定制度の対象品目として指定を受けているが、国内臨床試験成績が30例に限られている等、得られた成績が限定的であることから、加算率は10%が妥当であると判断した。
ピーク時の予測販売金額は29億円です。
作用機序・特徴やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
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ステボロニン(ボロファラン)の作用機序・BNCT【頭頸部がん】
続きを見る
ボンベンディ:原価計算方式【加算あり】
ボンベンディは国内初のフォン・ヴィレブランド因子のみを含む補充療法薬です。類薬がないため、原価計算方式で算定されました。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)と市場性加算(Ⅰ)(A=10%)加算されていますね!ただし、原価の開示が低かったのか、開示度に応じた係数0.2が加味され、最終的には3%(15%×0.2)の加算とされています。
- ボンベンディ静注用1300国際単位1瓶:146,288円
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は国内初の遺伝子組換えvon Willebrand因子(VWF)製剤であり、ヒト血漿由来の感染症伝搬リスクは排除されていること、VWF単独製剤であるため、血液凝固第Ⅷ因子とVWFの補充をそれぞれ適切な量で調節することが可能であることから治療方法の改善が示されていると判断し、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
- 市場性加算:本剤は希少疾病用医薬品の指定を受けていることから加算の要件を満たす。ただし、症例数が限られて市場規模が小さいことは原価計算方式の計算の中で価格に反映されていることを踏まえて、限定的な評価とした。
ピーク時の予測販売金額は9.8億円です。
疾患解説と作用機序については以下の記事で解説しています。
-
ボンベンティ(ボニコグ アルファ)の作用機序【VWD】
続きを見る
アイラミド:新医療用配合剤の特例(アイファガン/ブリンゾラミド)
アイラミドはアイファガン(ブリモニジン)とエイゾプト(ブリンゾラミド)の配合剤です。
アイファガンもエイゾプトGEも同じく千寿製薬が保有しているため、新医療用配合剤の特例として「自社品の薬価の合計の0.8倍」によって算定されました。
- アイラミド配合懸濁性点眼液1mL:492.20円
ピーク時の予測販売金額は37億円です。
疾患解説と作用機序については以下の記事で解説しています。
-
アイラミド配合点眼液(ブリモニジン/ブリンゾラミド)の作用機序【緑内障】
続きを見る
再生医療等製品のゾルゲンスマ:類似薬効比較方式(Ⅰ)【加算あり】
2020年5月13日の中医協総会では再生医療等製品のゾルゲンスマ点滴静注(一般名:オナセムノゲン アベパルボベク)の保険償還価格の算定も行われました。
○ 再生医療等製品の保険適用に関する当面の間の対応
- 薬事法改正後に承認(条件・期限付承認を含む。)された再生医療等製品については、保険適用の希望のあった個別の製品の特性を踏まえ、医薬品の例により対応するか、医療機器の例により対応するかを、薬事承認の結果を踏まえて判断
- 薬価算定組織又は保険医療材料専門組織で償還価格について検討
- 上記検討の結果を踏まえ、中医協総会で薬価基準又は材料価格基準に収載するかを審議
ゾルゲンスマも同様に検討された結果、2020年3月25日の中央社会保険医療協議会 総会(第452回)にて医薬品として薬価収載されることが了承されています。
さて、ゾルゲンスマは同じく脊髄性筋萎縮症に使用するスピンラザ髄注(ヌシネルセン)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅰ)(A=50%)と先駆け審査指定加算(A=10%)加算されていますね!合計60%!すごい加算です。
加算前の薬価は104,423,264円でしたが、加算(×1.6)され、167,077,222円とされました。
- ゾルゲンスマ点滴静注(1患者当たり):167,077,222円
なお、加算の根拠は以下とされています。今までにない画期的な作用機序だからですね!しかも1回の投与で治療が完了します。
加算の根拠
- 有用性加算:本品は正常なSMNタンパク質をコードする遺伝子を組み込んだウイルスベクターであり、正常な遺伝子を細胞に直接的に導入するという新規の作用機序を有する。また、本品の臨床試験では1回の治療で長期間の有効性が認められている。以上より、有用性加算(Ⅰ)A=40%が妥当と判断した。
- 先駆け審査指定加算:本品は先駆け審査指定制度の対象品目に指定されているが、日本における承認の基礎
となった主たる臨床試験を本邦で実施していないこと等から限定的な評価とした。
ピーク時の予測販売金額は42億円です。
ユニークな作用機序で、特徴・エビデンスについては以下の記事で解説していますので是非ご覧ください。
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ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】
続きを見る
あとがき
今回はがん治療に用いる薬剤で加算品目が多かった印象です。
特にエンハーツは「条件付き早期承認制度の指定」、ステボロニンは「先駆け審査指定制度の対象品目」で、共に新規のユニークな特徴を有していますので要チェックですね!
また、今回の大注目は国内最高薬価となったゾルゲンスマでしょう。米国では$212万5000(日本円で約2億3,200万円)でしたので、米国よりは安くなりましたがそれでも1憶6,700万円です。
ただ、これまで脊髄性筋萎縮症で使用されていたスピンラザは一生涯投与が必要でしたが、ゾルゲンスマは1回の投与で治療が完了しますので、トータル的にはゾルゲンスマの方が医療費を抑えることが可能になるのではないでしょうか。
以上、今回は2020年5月20日に薬価収載された新薬18製品と再生医療等製品ゾルゲンスマについてご紹介しました!
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