11.血液・造血器系

ボンベンティ(ボニコグ アルファ)の作用機序【VWD】

2020年3月25日、「フォン・ヴィレブランド病」を対象疾患とするボンベンティ(ボニコグ アルファ)が承認されました!

シャイアー・ジャパン|ニュースリリース

基本情報

製品名 ボンベンティ静注用1300
一般名 ボニコグ アルファ(遺伝子組換え)
製品名の由来 特になし
製造販売元 シャイアー・ジャパン(株)
効能・効果 フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)病患者における出血傾向の抑制
用法・用量 記事内参照
収載時の薬価 146,288円

 

フォン・ヴィレブランド病(VWD:von Willebrand disease)に対するフォン・ヴィレブランド因子(VWF:von Willebrand factor)の補充療法薬ですね!海外ではVONVENDIの製品名で既に承認・販売されています。

 

木元 貴祥
VWFのみを含む補充療法薬は国内初の登場です。

 

今回は止血のメカニズムとフォン・ヴィレブランド病、そしてボンベンティの作用機序について解説します。

 

止血と血栓形成のメカニズム

我々が怪我などをした際に出血すると、体内では血を止めようとする機構(止血機構)が働きます。

 

止血には、血小板が関わる一次止血と、凝固因子が関わる二次止血があります。

 

出血が起こると、まずは血中に存在する血小板が活性化し、損傷部位に集まってきて血栓(一次血栓)を形成します。

この際、血小板と損傷部位の橋渡しの役割を担うのがフォン・ヴィレブランド因子(VWF)です。1)

 

これを一次止血と呼びますが、これだけでは簡単に剥がれてしまいます。

 

木元 貴祥
次いで、一次止血を補強する目的で二次止血が行われます。

 

二次止血では一次血栓の周囲を「フィブリン」と呼ばれるタンパク質で覆い、強固な止血血栓(二次血栓)を完成させます。

一次止血と二次止血のメカニズム:フォン・ヴィレブランド因子(VWF)の働き

 

なお、二次止血に関与しているフィブリンの産生量が低下する疾患には血友病があり、疾患概要・治療薬については以下の記事で解説しています。

ヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と二重特異性抗体【血友病A】

続きを見る

 

フォン・ヴィレブランド病と治療

フォン・ヴィレブランド病(VWD)は一次止血に関与しているフォン・ヴィレブランド因子の機能低下・欠損・発現量低下によって発症する疾患です。2)

 

一次止血が起こりにくくなるため、症状としては

  • 鼻出血
  • 紫斑・皮下血腫
  • 口腔粘膜出血
  • 月経過多
  • 抜歯や手術時の出血の多さ

など、血小板凝集障害を思わせる出血症状が主になります。

 

フォン・ヴィレブランド因子(VWF)の異常によって大きく以下の3つの型に分類されています。1)

  • Ⅰ型:VWFは正常だが、量が少ない(60~70%)
  • Ⅱ型:VWFの機能異常(20~30%)
  • Ⅲ型:VWFの完全欠損(10%)

 

ほとんどがⅠ型・Ⅱ型のため、症状は軽度~中程度ですが、稀にⅢ型の患者さんでは重症の症状を呈してしまいます。

 

全ての型において治療の基本はVWFの補充ですが、VWFのみの補充療法薬は存在していません。そこで、VWFを含んだ血液凝固第Ⅷ因子の補充療法が行われています。

 

主には以下のVWFを含んだ第Ⅷ因子製剤がありますね。

  • コンファクトF注射用
  • コンコエイト-HT

 

Ⅰ型やⅡ型では内因性VWFの放出を促す酢酸デスモプレシンが使用されることもあります。

 

ちなみに第Ⅷ因子製剤は通常、血友病Aの補充療法として使用されています。

イスパロクト静注用の作用機序・特徴:ノボエイトとの違い【血友病A】

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木元 貴祥
今回ご紹介するボンベンティは国内初のVWFのみを補充できる治療薬ですね!

 

ボンベンティ(ボニコグ アルファ)の作用機序

フォン・ヴィレブランド病ではVWFの量不足・異常によって一次止血がうまくできていない状態です。

 

ボンベンティはヒトVWF製剤のため、投与されるとVWFとして働き、一次止血が可能となります。

フォン・ヴィレブランド病とボンベンティ(ボニコグ アルファ)の作用機序

 

出血時の補充療法(on-demandオンデマンド)や他の疾患による手術前に投与することで、出血を抑制できると考えられますね!

 

副作用:インヒビターの発現にも注意

2%以上に認められる副作用として、浮動性めまい、回転性めまい、嘔吐、悪心などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
  • 血栓塞栓症(1.4%)

が挙げられていますので特に注意が必要です。

 

頻度は不明ですが、ボンベンディの投与によって、その効果を打ち消す「インヒビター」の発現も危惧されています。添付文書にも以下の記載がありますので、効果が得られない場合にはインヒビターの発生も考えないといけませんね。

患者の血中にVWF又はFⅧに対するインヒビターが発生するおそれがある。本剤を投与しても予想した止血効果が得られない場合には、インヒビターの発生を疑い、上昇回収率やインヒビターの検査を行うなど注意深く対応し、適切な処置を行うこと。

インヒビターはアナフィラキシー反応に伴って発生することがある。アナフィラキシー反応の既往歴を有する患者においては、可能な限りインヒビターの有無を評価すること。

 

木元 貴祥
似た疾患の血友病でも補充療法によってインヒビターの発生が報告されています。
ヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と二重特異性抗体【血友病A】

続きを見る

 

用法・用量

本剤を添付の溶解液10mLで溶解し、4mL/分を超えない速度で緩徐に静脈内に注射します。

通常、18歳以上の患者さんには、体重1kg当たり40~80国際単位を投与しますが、状態に応じて適宜増減します。

 

収載時の薬価

収載時(2020年5月20日)の薬価は以下の通りです。

 

  • ボンベンディ静注用1300国際単位1瓶:146,288円

 

算定根拠等については以下の記事をご確認ください。

【新薬:薬価収載】18製品+再生医療等製品(2020年5月20日)

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まとめ・あとがき

ボンベンティはこんな薬

  • 国内初のVWFの補充療法薬

 

これまでフォン・ヴィレブランド病ではVWFのみを含んだ補充療法薬がなく、VWFを含んだ血液凝固第Ⅷ因子製剤による補充療法が行われていました。

 

木元 貴祥
ボンベンティはVWFのみを含んだ補充療法薬のため、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。

 

以上、今回はフォン・ヴィレブランド病とボンベンティの作用機序について解説しました!

 

参考資料・論文等

  1. 日本血液製剤協会|フォン・ヴィレブランド病
  2. 日本血栓止血学会|フォン・ヴィレブランド病(VWD)

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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