5.内分泌・骨・代謝系

ビルテプソ(ビルトラルセン)の作用機序【筋ジストロフィー】

PASSMED公式LINEの登録者特典|当サイトに掲載している図表の元データ&学習支援AI 薬科GPTをプレゼント♪

2020年3月25日デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象疾患とするビルテプソ(ビルトラルセン)が承認されました!

日本新薬|ニュースリリース

基本情報

製品名 ビルテプソ点滴静注250mg
一般名 ビルトラルセン
製品名の由来 特になし
製造販売 日本新薬(株)
効能・効果 エクソン53スキッピングにより治療可能な
ジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー
用法・用量 通常、ビルトラルセンとして80mg/kgを週1回、1時間かけて静脈内投与する。
収載時の薬価 91,136円

 

ビルテプソはアンチセンス核酸医薬品に分類されていますね!

 

同様の作用機序を有する類薬には脊髄性筋委縮症に使用するスピンラザ(ヌシネルセン)があります。

スピンラザ(ヌシネルセン)の作用機序【脊髄性筋委縮症】

続きを見る

 

木元 貴祥
木元 貴祥
標的のmRNA配列に結合してその発現を抑制させるのがアンチセンス核酸医薬品です!

 

また、ビルテプソは

  • 先駆け審査指定制度の対象品目
  • 条件付き早期承認制度の指定品目

でもあります。

 

条件付き早期承認制度は肺がんのローブレナ(ロルラチニブ)、MSI-High固形がんのキイトルーダ(ペムブロリズマブ)に次いで3製品目ですね!

同日承認されたエンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)と同着の3製品目

エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】

続きを見る

 

今回はデュシェンヌ型筋ジストロフィーとビルテプソ(ビルトラルセン)の作用機序について解説します。

 

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とは

骨格筋の壊死・機能異常を主病変とする遺伝性筋疾患を総称して「筋ジストロフィー」と呼んでいます。

 

その中でもいくつかの型に分類されていますが、最も代表的な型がデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD:Duchenne Muscular Dystrophy)です。1)

DMDでは、筋細胞内に存在するジストロフィンと呼ばれるタンパク質の遺伝子異常・変異によって、全身の筋力低下(歩行障害等)が現れます。

 

根本的な治療法はなく、ステロイド投与による治療が一般的です。2)

その他、リハビリテーション、対症療法等が行われていますが、新たな治療選択肢が望まれていました。

 

DMDの原因:ジストロフィンの欠乏

DMDでは遺伝子異常・変異(主にはエクソンの欠失)によってジストロフィンが欠乏しています。

 

ジストロフィンをコードする遺伝子配列には79個のエクソンが存在していますが、ここではビルトラルセンの関与するエクソン53の欠失とDMDについて解説します。

 

ジストロフィン遺伝子が正常な場合、DNA配列から転写⇒スプライシング⇒翻訳の過程を経て正常なジストロフィンが合成されます。

しかし、例としてエクソン52が欠損している場合、異常なmRNAが合成されてしまい、翻訳時に途中でストップしてしまいます。そのためジストロフィンが合成されず、DMDを発症すると考えられています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとジストロフィン遺伝子

 

用語解説

  • 転写:DNAからmRNA前駆体を合成する過程
  • エクソン:タンパク質情報がコードされている配列
  • イントロン:タンパク質情報がコードされていない配列
  • スプライシング:イントロンが取り除かれ、エキソンのみのmRNA配列にする過程
  • 翻訳:mRNAからタンパク質を合成する過程

 

ビルテプソ(ビルトラルセン)の作用機序

ビルテプソは21個の塩基配列を有するアンチセンス核酸医薬品です。

標的とするmRNA前駆体のエクソン53に結合することで、スプライシングがスキップ(回避)されます。(エクソン・スキッピング)

ビルテプソ(ビルトラルセン)の作用機序:エクソン・スキッピング

 

木元 貴祥
木元 貴祥
その結果、mRNAはエクソン53を飛ばしたものが作られ、その情報を元にタンパク質(ジストロフィン)が合成されていくといったメカニズムですね!

 

エクソン53をスキップしているため、正常なジストロフィンよりは少し短く(小さく)なっていますが、機能としてはしっかりと果たすことができます。

 

ただし、エクソン53のスキップが有効なのはDMD患者さんの約8%とされています3)ので、全てのDMD患者さんには適用できないことにご注意ください。

 

エビデンス紹介

国内の第Ⅰ/Ⅱ相試験では、ビルテプソの24週間の静脈内投与で16人中14人でジストロフィンタンパク質の増加が見られたと報告されています。4)

 

副作用

5%以上認められる副作用として、BNP増加、駆出率減少、蕁麻疹、NAG増加、発熱、インターロイキン濃度増加などが報告されています。

 

用法・用量、在宅自己投与

通常、ビルトラルセンとして80mg/kgを週1回、1時間かけて静脈内投与します。

 

また、2021年11月17日の中医協総会にて在宅自己投与が了承され、2021年11月25日から在宅自己投与が保険適用となりました!

 

収載時の薬価

収載時(2020年5月20日)の薬価は以下の通りです。

 

  • ビルテプソ点滴静注250mg5mL1瓶:91,136円

 

算定根拠等については以下の記事をご確認ください。

【新薬:薬価収載】18製品+再生医療等製品(2020年5月20日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ビルテプソはこんな薬

  • デュシェンヌ型筋ジストロフィー初のアンチセンス核酸医薬品
  • エクソン53に結合してスプライシングを回避する(エクソン・スキッピング)

 

これまでDMDにはステロイド投与以外の有望な治療選択肢がありませんでしたが、ビルテプソによって治療選択肢が増えることを期待したいと思います。

 

近年では、核酸医薬品が相次いで登場してきています。

オンパットロ(パチシラン)の作用機序・siRNAの特徴【TTR-FAP】

続きを見る

 

木元 貴祥
木元 貴祥
現在でも核酸医薬品は様々開発されていますので、他の疾患等への応用も期待大!要チェックですね。

 

以上、今回はデュシェンヌ型筋ジストロフィーと、アンチセンス核酸医薬品のビルテプソ(ビルトラルセン)の作用機序についてご紹介しました!

 

 

\ 新薬情報オンラインの運営者が執筆! /

失敗しない薬剤師の転職とは?

数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト

どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。

  • 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
  • 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
  • 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!

上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!

薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較

続きを見る

 

日々の情報収集に最適

薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選
  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

プロフィール・運営者詳細
お問い合わせ・仕事の依頼
私の勉強法紹介

-5.内分泌・骨・代謝系
-, ,