3.呼吸器系

エキシデンサー(デペモキマブ)の作用機序:類薬との違い【気管支喘息】

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2025年11月27日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「気管支喘息」と「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」を対象疾患とするエキシデンサー皮下注(デペモキマブ)の承認可否が審議される予定です!

グラクソ・スミスクライン|申請のニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 エキシデンサー皮下注100mgペン/シリンジ
一般名 デペモキマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来
製造販売 グラクソ・スミスクライン(株)
効能・効果 ●気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)
●鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)
用法・用量 半年(26週)に一度皮下投与
収載時の薬価
発売日

 

エキシデンサーは抗IL-5抗体薬に分類されていて、類薬のヌーカラ(メポリズマブ)の改良版ですね。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
両剤共に、グラクソ・スミスクラインが開発した薬剤です。

 

ヌーカラは4週毎の皮下注でしたが、エキシデンサーは6か月(26週)に一度の皮下投与で治療が可能といった特徴があります!!

 

今回は気管支喘息や慢性副鼻腔炎とエキシデンサー(デペモキマブ)の作用機序・エビデンス、そして類薬の生物学的製剤(デュピクセント等)との違いについて解説していきます。

 

気管支喘息とは

気管支喘息は、呼吸をするときの空気の通り道が、アレルギーなど炎症によって敏感になり、けいれんを起こして狭くなることで起こります。

 

発作時の症状としては、「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴(読み方:ぜんめい)や、激しい咳が出る、呼吸が苦しくなるといった症状が発現します。

日本では、子供の5~7%、大人の3~5%が喘息であると言われております。

 

子供の喘息は男子に比較的多く、アレルギーが原因であることがほとんどとされていますが、成長するに従って発作が消失することもあります。

 

主な原因としては、ダニ、ハウスダスト、ペット 花粉、といったアレルギー物質のほか、たばこ、過労、ストレス、感染症などです。原因物質による刺激が気道上皮細胞に伝わると、そこからTSLPと呼ばれるサイトカインが放出されます。1)

TSLP:Thymic stromal lymphopoietin(胸腺間質性リンパ球新生因子)

 

TSLPは各炎症カスケードの上流に位置しているため、ヘルパーT細胞(Th2)など活性化とそれに伴う炎症性サイトカインの増加によって気管支喘息の発症・増悪に繋がると考えられています。詳しくは以下をご参照ください。

テゼスパイア(テゼペルマブ)の作用機序【気管支喘息】

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ヘルパーT細胞(Th2)の産生する炎症性サイトカインのインターロイキン(IL)-5という物質が、好酸球表面にある「IL-5受容体」に結合することよって好酸球が増殖・活性化されます。

 

好酸球が活性化すると、気管支喘息などの症状の悪化に繋がると考えられています。

 

気管支喘息の治療

気管支喘息は炎症によって引き起こされているため、抗炎症作用のある「ステロイドの吸入」による治療が基本です。2)

 

その他に、発作の予防として、以下の薬剤を適宜併用して用います。

  • ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA:Leukotriene receptor antagonist)
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABAラバ:Long Acting β2 Agonist)
  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMAラマ:Long-Actng anti-Muscarinic Agent)

 

最近では、吸入ステロイドとLABAを配合した合剤(例:レルベアエリプタ)等も登場してきていますね。

アテキュラ吸入用カプセル(LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】

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重症喘息

上記のような治療を行っても、喘息がコントロールできない場合もあり、これを「重症喘息」と呼んでいます。

喘息の全患者のうち、重症喘息は約10%と推定されています。

 

喘息の諸症状は、肥満細胞好酸球が活性化されて発現すると考えられていますが、重症喘息では、特に好酸球の活性化が関与していることが知られています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
前述の通り、IL-5が過剰であればあるほど、好酸球が活性化(好酸球数増加)状態であるというわけですね。

 

今回ご紹介すエキシデンサーは、薬物治療で改善が認められなかった(効果不十分な)重度の気管支喘息に使用できる薬剤です!同様に使用できる生物学的製剤としては以下があります。2-3)

 

その他、LAMA/LABA/ICSの3剤を配合したエナジア吸入用カプセルも使用できますね。

エナジア吸入用カプセル(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】

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慢性副鼻腔炎と治療

以下のような様々な原因によって副鼻腔や鼻道が詰まってしまって炎症を引き起こす疾患です。

  • アレルギー要因
  • ウイルス感染後の細菌・真菌感染
  • 気圧変化
  • 外傷

 

木元 貴祥
木元 貴祥
昔は蓄膿症とも呼ばれていましたね。

 

また、副鼻腔炎が慢性化すると、副鼻腔の粘膜にポリープのようなもの(鼻茸はなたけもしくは鼻ポリープと呼ぶ)が生じてしまいます。

小さい場合にはほとんど無症状ですが、鼻茸が大きくなると鼻がさらに詰まってしまい、鼻閉・膿の貯留を呈すようになります。

 

慢性副鼻腔炎はいくつかの分類がありますが、特に鼻茸が特徴的なものは「好酸球性副鼻腔炎」です。

 

主な薬物療法としては以下があり、原因に応じて使用します。

  • 抗生物質
  • 抗ヒスタミン薬
  • 抗ロイコトリエン薬
  • ステロイドの内服薬
  • ステロイドの点鼻薬

 

木元 貴祥
木元 貴祥
重度の場合には手術等も行われますよ。

 

今回ご紹介するエキシデンサーは、薬物治療や手術で改善が認められなかった(効果不十分な)重度の好酸球性副鼻腔炎(鼻茸を伴う)に使用可能です。

 

既に類薬のデュピクセント(デュピルマブ)も慢性副鼻腔炎に使用可能ですね。

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

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エキシデンサー(デペモキマブ)の作用機序:長時間作用型の抗IL-5抗体

エキシデンサーは、IL-5を阻害することで好酸球の活性化を抑制する抗IL-5抗体薬です!4)

作用機序的には、同じく抗IL-5抗体薬のヌーカラ(メポリズマブ)と同じですね。

 

エキシデンサーはヌーカラと比較して、大幅に作用時間が延長されていますので、その理由を解説していきます。

 

通常、抗体や抗体薬が細胞内に取り込まれるとリソソームによる分解を受けてしまいます。

しかし、抗体が細胞内のFcRn(胎児性Fc受容体)と結合することで、リソソームの分解が回避でき、そのまま再利用(リサイクル)することが可能です。

 

エキシデンサーは、細胞内のFcRnと結合しやすいように定常領域(Fc領域)が改変されているため、生体内でリサイクルされることで長時間作用を可能としています!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
リサイクルによってIL-5を長期間に渡って阻害可能というわけですね!すごい!

 

気管支喘息のエビデンス紹介:SWIFT-1/2試験

気管支喘息の代表的な臨床試験としてSWIFT-1試験およびSWIFT-2試験をご紹介します。5)

両試験は、12歳以上で中用量または高用量の吸入ステロイド療法にもかかわらず増悪歴があり、好酸球数高値(過去12か月間に300/μL以上、またはスクリーニング時に 150/μL以上)を特徴とする好酸球性の重症喘息の患者さんを対象に、エキシデンサーとプラセボを比較する第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は52週時点の「年間喘息増悪率 」とされ、結果は以下の通りでした(以下、両試験の合算結果)。

エキシデンサー群 プラセボ群
年間喘息増悪率 0.51 1.11
率比0.46(95%CI:0.36-0.59)

 

各々の試験においても、エキシデンサー群で有意な改善が認められていました!(いずれもP<0.001で有意差あり)。

 

あくまで参考ですが、サブグループ解析において、ベースライン時の好酸球数が高値であるほどエキシデンサーの有効性が高い傾向にありました。

N Engl J Med 2024;391:2337-2349

 

木元 貴祥
木元 貴祥
前述の通り、IL-5と好酸球数は関連性があるためだと考えられます!使い分けのヒントになりますね。

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

 

用法・用量、在宅自己注射

正式承認後に更新予定です。

臨床試験では、6か月(26週)毎に皮下投与とされていました。

 

在宅自己注射については不明です。

 

エキシデンサーと類薬(デュピクセント等)の比較・違い

気管支喘息に使用できる抗体薬としては既に以下が承認・販売されていますのでエキシデンサーで6製品目です。

 

アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き3)では、バイオマーカーや併存疾患(アトピー性皮膚炎などの他のアレルギー性疾患)の有無によって、参考となる使い分けの図が掲載されています。

成人重症喘息に対する生物学的製剤の薬剤治療選択・使い分けの指標

アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き2025

 

木元 貴祥
木元 貴祥
エキシデンサーは、好酸球数が高値な場合によい選択肢となりそうですね。

 

その他、投与間隔等に違いがありますので一覧表にしてみました。

気管支喘息に使用する生物学的製剤(抗体薬)の比較・一覧表

PPT元データはPASSMED公式LINEから申請可能

 

これまで、最も投与間隔が長かったファセンラでも8週間隔でしたが、エキシデンサーは6か月(26週)毎の投与で治療が可能です!

 

他疾患への適応拡大も期待したいところですね。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

エキシデンサーはこんな薬

  • IL-5を選択的に阻害して好酸球の活性化を抑制する抗IL-5抗体薬(類薬はヌーカラ)
  • FcRnへの親和性を高め、生体内でリサイクルされる長時間作用型
  • 投与間隔は6か月(26週)毎
  • 好酸球数が高値の場合に適している

 

気管支喘息においては、エキシデンサーが6製品目の生物学的製剤となりました。

 

これまでは最長でも8週毎の投与でしたが、エキシデンサーは半年毎の投与で効果が期待できるため、来院・通院回数の減少につながるのではないでしょうか。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
患者さんにとってもよい選択肢になるかと思います!今後は各薬剤の使い分けの検討が進めば興味深いですね。

 

以上、今回は気管支喘息や慢性副鼻腔炎とエキシデンサー(デペモキマブ)の作用機序・エビデンス、そして類薬の生物学的製剤(デュピクセント等)との違いについて解説しました。

 

 

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木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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