3.呼吸器系

アテキュラ吸入用カプセル(LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】

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2020年6月29日、「気管支喘息」を対象疾患とするアテキュラ吸入用(インダカテロール/モメタゾン)が承認されました。

ノバルティスファーマ|ニュースリリース

基本情報

製品名 アテキュラ吸入用カプセル低用量/中用量/高用量
一般名 ●インダカテロール酢酸塩
●モメタゾンフランカルボン酸エステル
製品名の由来 architect や architecture を由来として、Atectura(アテキュラ)とした
デバイス ブリーズヘラー
製造販売 ノバルティス ファーマ(株)
効能・効果 気管支喘息
(吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
用法・用量 1日1回吸入
収載時の薬価 低用量:157.80円
中用量:173.10円
高用量:192.20円

 

アテキュラは

  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のインダカテロール
  • 吸入ステロイド薬(ICS)のモメタゾン

の2種類を配合した薬剤です。

参考読み方:LABAは“ラバ”、ICSは“アイシーエス”

 

気管支喘息に使用できるLABA/ICS配合剤としては既に以下が承認・販売されていますね。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ちなみに、エナジアに含まれるLABAの「インダカテロール酢酸塩」は新有効成分とのことです!

 

同日承認されたLAMA/LABA/ICSの3剤配合剤であるエナジア吸入用カプセルからLAMAのグリコピロニウムを除いたものがアテキュラですね。

エナジア吸入用カプセル(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】

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今回は気管支喘息の概要とアテキュラの作用機序について解説していきます。

 

気管支喘息とは

気管支喘息は、呼吸をするときの空気の通り道が、アレルギーなど炎症によって敏感になり、けいれんを起こして狭くなることで起こります。

 

発作時の症状としては、「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴ぜんめいや、激しい咳が出る、呼吸が苦しくなるといった症状が発現します。痰が絡むこともあります。

気管支喘息では気管支が狭窄している

 

日本では、子供の5~7%、大人の3~5%が喘息であると言われていますね。

 

子供の喘息は男子に比較的多く、アレルギーが原因であることがほとんどとされていますが、成長するに従って発作が消失することもあります。

 

主な原因としては、ダニ、ハウスダスト、ペット 花粉、といったアレルギー物質のほか、たばこ、過労、ストレス、感染症から誘発されることもあります。

 

気管支平滑筋の収縮と弛緩(拡張)

通常、気管支平滑筋の収縮や弛緩(拡張)は副交感神経と交感神経によって調節されています。

  • 副交感神経:平滑筋の収縮
  • 交感神経:平滑筋の弛緩(拡張)

 

副交感神経から産生される「アセチルコリン」が平滑筋の「アセチルコリンM3受容体」に作用することで平滑筋が収縮します。

また、交感神経から産生される「ノルアドレナリン」が平滑筋の「アドレナリンβ2受容体」に作用することで平滑筋が弛緩(拡張)します。

気管支平滑筋の収縮と弛緩(拡張):アセチルコリンとノルアドレナリン

 

気管支喘息の治療

気管支喘息は炎症によって引き起こされているため、抗炎症作用のある「ステロイド(ICS)の吸入」による治療が基本です。1)

 

その他に、発作の予防として、以下の薬剤を適宜併用して用います。

  • ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA:Leukotriene receptor antagonist)
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABAラバ:Long Acting β2 Agonist)
  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMAラマ:Long-Actng anti-Muscarinic Agent)

 

ICSとLABAを併用する場合、今回ご紹介するアテキュラが使用可能です。

 

また、同日の第二部会ではエナジアからLAMAのグリコピロニウムを除いたICS/LABAの2剤配合剤であるアテキュラ吸入用カプセル(インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル)も審議される予定ですが、こちらは2剤併用療法でコントロールが不良な場合にのみ使用できます。

エナジア吸入用カプセル(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】

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その他、抗体製剤のデュピクセント(デュピルマブ)もコントロール不良な気管支喘息に対して選択肢になります。

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

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アテキュラ吸入用カプセルの作用機序

アテキュラは、

  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のインダカテロール
  • 吸入ステロイド薬(ICS)のモメタゾン

を配合した薬剤です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
それぞれの有効成分の作用機序を順に解説していきます。

 

インダカテロールの作用機序

インダカテロールはβ2刺激薬に分類されています。

 

アドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩(拡張)させるといった作用機序を有しています。

アテキュラの作用機序:インダカテロール(LABA)

 

モメタゾンの作用機序

モメタゾンはステロイド薬であり、抗炎症作用を有しています。

喘息では気管支の炎症によって平滑筋が収縮してしまいますが、モメタゾンによって炎症を抑制することができます。

アテキュラの作用機序:モメタゾン(ICS)

 

このようにアテキュラは、

  • LABAによる気管支拡張
  • ICSによる炎症抑制

により、炎症によって狭窄した気管支を広げ、呼吸機能の緩和が期待されています。

 

エビデンス紹介:QUARTZ試験

根拠となった臨床試験をご紹介します。

QUARTZ試験は気管支喘息患者さんを対象に、アテキュラ低用量とアズマネックスツイストヘラー(モメタゾンフランカルボン酸エステル)を比較する第Ⅲ相臨床試験です。2)

 

主要評価項目は「12週間の投与後のトラフFEV1」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群 アテキュラ
低用量
アズマネックス
12週間の投与後のトラフFEV1
(ベースラインからの変化量)
0.234L 0.051L
0.182  (0.148–0.217; p < 0.001)

 

アテキュラ低用量はアズマネックスと比較して有意なFEV1の改善が認められています。

 

副作用と注意事項

1%以上に認められる副作用として、発声障害、筋痙縮が報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • アナフィラキシー(頻度不明)
  • 重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)
  • 心房細動(頻度不明)

が挙げられていますので特に注意が必要です。

 

また、ステロイドのモメタゾンには免疫低下作用もあるため、口腔内の感染症(カンジダ症など)が発現することがあります。

従って、吸入後には「うがい」をするなどして予防することが望ましいと添付文書にも記載されています。

局所的な副作用(カンジダ症又は発声障害等)を予防するため、本剤吸入後に、うがいを実施するよう患者を指導すること。ただし、うがいが困難な場合には、口腔内をすすぐよう指導すること。また、口に含んだ水を飲み込まないよう指導すること。

 

用法・用量

通常、成人にはアテキュラ吸入用カプセル低用量 1 回 1 カプセル(インダカテロールとして 150μg 及びモメタゾンフランカルボン酸エステルとして 80μg)を 1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入します。

なお、症状に応じて以下用量の1回1カプセルを1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入ことも可能です。

 

デバイスとしては「ブリーズヘラー」を使用するとのことですね。

ノバルティスファーマ|アテキュラ患者指導箋

 

ちなみに、ブリーズヘラーにセンサーを装着の上、「Propeller アプリ」と呼ばれるスマートフォンアプリとBluetooth連動させることで

  • 吸入確認
  • 服薬リマインダー
  • 主治医に日々の服薬の記録を共有(希望すれば)

が可能になるようです!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
なんか近未来的ですね(笑)

 

収載時の薬価

収載時(2020年8月26日)の薬価は以下の通りです。

 

  • アテキュラ吸入用カプセル低用量:157.80円(1日薬価:157.80円)
  • アテキュラ吸入用カプセル中用量:173.10円
  • アテキュラ吸入用カプセル高用量:192.20円

 

算定根拠については以下の記事で解説しています。

【新薬:薬価収載】13製品(2020年8月26日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

アテキュラはこんな薬

  • 気管支喘息に使用するLABA/ICSを配合した薬剤
  • 1日1回1吸入で治療が可能
  • アプリと連動して吸入確認、服薬リマインダーが確認可能

 

気管支喘息に使用するLABA/ICSの配合剤は既に以下の製品が存在していますが、今後はアテキュラも新たな治療選択肢に加わります。

 

ちなみに同日、アテキュラにLAMA(グリコピロニウム)を加えたLAMA/LABA/ICS配合剤のエナジア吸入用カプセルも承認されています。

エナジア吸入用カプセル(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】

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木元 貴祥
木元 貴祥
気管支喘息に対しては初の3剤配合剤ですね。

 

以上、今回は気管支喘息の概要とアテキュラの作用機序について解説しました!

 

引用文献・資料等

  1. 喘息予防・管理ガイドライン2018
  2. QUARTZ試験:Respir Med. 2020 Jan;161:105809. 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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