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2022年12月23日、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」と「切除不能な肝細胞がん」を対象疾患とするイジュド点滴静注(トレメリムマブ)が承認されました!
アストラゼネカ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | イジュド点滴静注25mg/300mg |
一般名 | トレメリムマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | judicious(賢明な)とimmunotherapy(免疫療法)の頭文字〔IM〕を含む造語 |
製造販売 | アストラゼネカ(株) |
効能・効果 | 25mg製剤 ●切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん ●切除不能な肝細胞がん 300mg製剤 ●切除不能な肝細胞がん |
用法・用量 | 記事内参照 |
収載時の薬価 | 25mg:214,801円 300mg:2,311,819円 |
発売日 | 2023年3月15日 |
イジュドは免疫チェックポイント阻害薬に分類されていて、作用機序としては抗CTLA-4抗体のため、ヤーボイ(イピリムマブ)と同様ですね。
非小細胞肺がんと肝細胞がんの一次治療として、抗PD-L1抗体のイミフィンジ(デュルバルマブ)と併用して使用します!
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イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺/胆/肝/子宮体がん】
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今回は疾患解説と共に、イジュドの作用機序・エビデンスについて解説していきます。
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心ですね。
非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬を使用します。1)
ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
EGFR遺伝子変異陽性 |
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ALK融合遺伝子陽性 | |
ROS1融合遺伝子陽性 | |
BRAF遺伝子変異陽性 | |
MET遺伝子変異陽性 | |
RET融合遺伝子陽性 | |
遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
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今回ご紹介するイジュド+イミフィンジ併用療法は、上記遺伝子等がすべて陰性でPD-L1陽性もしくは遺伝子変異がない場合に、抗がん剤(白金製剤)と併用して使用します!
非小細胞肺がんのうち、扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
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ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
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肝細胞がんの概要
肝細胞がんの最も重要な原因は「肝炎ウイルスの持続感染」です。
肝炎ウイルスにはA、B、C、D、Eなど色々な種類が存在していますが、肝細胞がんと関係があるのは、C型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスです。
肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルス、約15%がB型肝炎ウイルスの持続感染に起因すると言われています。
C型肝炎ウイルスの治療薬については、近年、続々と新薬が登場しているため、治癒が期待できるようになってきました。
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マヴィレット(ピブレンタスビル/グレカプレビル)の作用機序【C型肝炎】
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転移のある肝細胞がんの治療
肝細胞がんの一次治療としては分子標的薬の単剤治療が基本です。
主に使用される分子標的薬としては、
- ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)
- レンビマ(一般名:レンバチニブ)
などがあります。
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レンビマ(レンバチニブ)の作用機序【肝細胞/甲状腺/子宮体/腎細胞がん】
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今回ご紹介するイジュドは、一次治療としてイミフィンジと併用(初回投与時にのみイジュドを投与する※)することで、ネクサバール単独よりも治療効果が高いことが示されました。
※本レジメンは「STRIDEレジメン(Single Tremelimumab Regular Interval Durvalmab)」と呼ばれる。
同様に一次治療として使用可能な免疫チェックポイント阻害薬はるテセントリク+アバスチン(ベバシズマブ)併用療法もありますね。
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テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん/肝がん】
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また、上記治療に抵抗・不耐の場合、二次治療が行われます。具体的な治療法としては、以下です。
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カボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序【腎細胞/肝細胞がん】
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がんと免疫チェックポイント
通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。
がんが生体内の免疫反応から逃れる機構が「免疫チェックポイント」です。
イジュドが関与する免疫チェックポイントを中心に紹介しますが、理解を深めるために、併用するイミフィンジについても簡単に紹介しますねー。
B7とCTLA-4
通常、がん細胞を発見した抗原提示細胞はT細胞に抗原を提示し、「がん細胞を攻撃する」ように指令を出します。
指令を受けたT細胞はがん細胞を攻撃し、排除しようとします。
しかしながら、抗原提示細胞は「B7」と呼ばれる分子を発現することがあり、B7がT細胞の「CTLA-4」に結合すると、T細胞の活性が抑制されます。
本来、B7やCTLA-4はT細胞が自己を攻撃しない(自己免疫抑制作用)のために体内に存在していますが、これを逆手に利用しているわけですね。
PD-L1とPD-1
続いて、併用するイミフィンジが関与する免疫チェックポイントについてです。
がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1(ピーディーエルワン)」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。
PD-L1はT細胞のPD-1と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。
イジュド(トレメリムマブ)+イミフィンジ併用療法の作用機序
イジュドがCTLA-4、イミフィンジがPD-L1をそれぞれ阻害するため、これらを併用するとT細胞の活性化がより顕著になります。
その他にもがん細胞内には、制御性T細胞(Treg:“ティーレグ”と読みます)が存在していることが知られています。
このTregにはCTLA-4が多量に発現していて、CTLA-4が抗原提示細胞(樹状細胞)に作用することで、樹状細胞の活性が低下してしまいます。
イジュドはTregのCTLA-4も阻害することが可能なため、Tregの活性化を抑制し、樹状細胞を活性化することでがんに対する免疫活性を高めることが可能です!
このように
- イジュドによる抗原提示細胞からのブレーキ解除
- イミフィンジによるT細胞とがん細胞のブレーキ解除
によって、各単剤治療よりもT細胞が活性化され、がん細胞を排除できると考えられています。
エビデンス紹介:非小細胞肺がん一次治療(POSEIDON試験)
非小細胞肺がんの根拠となった臨床試験(POSEIDON試験)をご紹介します。2)
本試験は、非小細胞肺がんの一次治療(PD-L1の有無を問わない)を対象に、以下の3群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
- イジュド+イミフィンジ+化学療法(白金製剤を含む) ※維持療法としてイミフィンジを単独投与する
- イミフィンジ+化学療法(白金製剤を含む) ※維持療法としてイミフィンジを単独投与する
- 化学療法(白金製剤を含む)
主要評価項目は化学療法群(③群)に対するイミフィンジ+化学療法群(②群)の「PFS(無増悪生存期間)と全生存期間(OS)」の優越性、副次評価項目は化学療法(③群)に対するイジュド+イミフィンジ+化学療法群(①群)の「PFS(無増悪生存期間)と全生存期間(OS)」の優越性とされました。
イジュド+イミフィンジ+ 化学療法群 |
イミフィンジ+ 化学療法群 |
化学療法群 | |
PFS中央値 | 6.2か月 | 5.5か月 | 4.8か月 |
化学療法群に対する差 | HR=0.72, p=0.0003 |
HR=0.74, p=0.0009 |
- |
OS中央値 | 14.0か月 | 13.3か月 | 11.7か月 |
化学療法群に対する差 | HR=0.77 p=0.0030 |
HR=0.86, p=0.0009(有意差無し) |
- |
副次評価項目ではあるものの、イジュド+イミフィンジ+化学療法群は、化学療法単独と比較して有意なPFSとOSの延長が認められていますね!
エビデンス紹介:肝細胞がん一次治療(HIMALAYA試験)
肝細胞がんの根拠となった臨床試験(HIMALAYA試験)をご紹介します。2)
本試験は、肝細胞がんの一次治療(PD-L1の有無を問わない)を対象に、以下の3群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
- イジュド+イミフィンジ(STRIDEレジメン) ※イジュドは初回のみの単回投与
- イミフィンジ
- ネクサバール(ソラフェニブ)
本試験の主要評価項目は、ネクサバール群(③群)に対するSTRIDEレジメン群(①群)の「OS」における優越性とされ、結果は以下の通りでした。
イジュド+イミフィンジ群 (STRIDEレジメン) |
イミフィンジ群 | ネクサバール群 | |
OS中央値 | 16.43か月 | 16.56か月 | 13.77か月 |
ネクサバール群に対する差 | HR=0.78, p=0.0035(優越性) |
HR=0.86, (非劣性が証明) |
- |
STRIDEレジメンは、これまで標準治療であったネクサバールと比較してOSを有意に延長しました!
副作用
重大な副作用としては、
- 間質性肺疾患(3.2%)
- 大腸炎(3.3%)、重度の下痢(2.1%)、消化管穿孔(0.1%)
- 甲状腺機能障害:甲状腺機能低下症(10.7%)、甲状腺機能亢進症(8.4%)等
- 副腎機能障害:副腎機能不全(1.7%)等
- 下垂体機能障害:下垂体機能低下症(1.0%)等
- 肝機能障害、肝炎
- 筋炎(0.8%)
- 心筋炎(0.4%)
- 膵炎(1.5%)
- 脳炎(0.1%)
- Infusion reaction(2.6%)
- 重度の皮膚障害:皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.1%)等
- 神経障害:末梢性ニューロパチー(0.6%)、多発ニューロパチー(0.3%)、ギラン・バレー症候群(頻度不明)等
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
用法・用量
<切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん>
デュルバルマブ(遺伝子組換え)及び白金系抗悪性腫瘍剤を含む他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはトレメリムマブ(遺伝子組換え)とし
て、1回75mgを3週間間隔で4回、60分間以上かけて点滴静注します。
その後、7週間の間隔を空けて、トレメリムマブ(遺伝子組換え)として、75mgを1回60分間以上かけて点滴静注します。
<切除不能な肝細胞がん>
デュルバルマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはトレメリムマブ(遺伝子組換え)として、300mgを60分間以上かけて単回点滴静注します。ただし、体重30kg以下の場合の投与量は4mg/kg(体重)とします。
肺がんの場合は75mgを3週間間隔で4回投与後、7週間空けてもう一度投与ですね。
肝細胞がんの場合、300mgを初回の1回の投与で完了です。
収載時の薬価
収載時(2023年3月15日)の薬価は以下の通りです。
- イジュド点滴静注25mg:214,801円
- イジュド点滴静注300mg:2,311,819円(1治療薬価:2,311,819円)
算定根拠等については以下をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】13製品(2023年3月15日)
続きを見る
まとめ・あとがき
イジュドはこんな薬
- CLTA-4を阻害する抗体薬
- イミフィンジとの併用で使用する
近年、非小細胞肺がんと肝細胞がんも免疫チェックポイント阻害薬の治療開発が活発に行われています。
これまで、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用は、オプジーボ+ヤーボイ併用療法が肺がん領域や悪性黒色腫で使用されていましたが、イジュド+イミフィンジも新たな治療選択肢として登場です。
-
オプジーボとヤーボイ併用療法の作用機序【悪性黒色腫/腎/大腸/肺/食道がん】
以上、今回は非小細胞肺がんと肝細胞がんの疾患解説と共に、イジュド(トレメリムマブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
- 日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2024年版
- POSEIDON試験:J Clin Oncol. 2023 Feb 20;41(6):1213-1227.
- HIMALAYA試験:NEJM Evid 2022; 1 (8) DOI:https://doi.org/10.1056/EVIDoa2100070
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