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2023年3月15日、新薬13製品が薬価収載されました!
前々回から見送られていたモノヴァー(デルイソマルトース第二鉄)がようやく薬価収載ですね。
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モノヴァー(デルイソマルトース第二鉄)の作用機序・特徴【鉄乏性貧血】
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また、前回のタイミングで見送られていたマンジャロ(チルゼパチド)も収載です。ピーク時の予測販売金額は367億円!
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マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序、GLP-1受容体作動薬との比較・違い【糖尿病】
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本来であればこのタイミングで収載される予定のヴィアレブ配合持続皮下注(ホスレボドパ/ホスカルビドパ)やネキソブリッド外用ゲル5g(パイナップル茎搾汁精製物)は見送られていますね。
その他、市場拡大再算定や費用対効果評価による薬価引き下げも了承され、2023年6月1日より薬価がダウンする薬剤もいくつかありました。
2023年3月15日:薬価収載の13製品
2023年3月15日に薬価収載された新薬一覧は以下の通りです。
製品名 (一般名) |
規格 | 薬価 | 効能・効果 (簡略) |
ラジカット内用懸濁液 (エダラボン) |
2.1%1mL | 2,751.90円 | ALSにおける 機能障害の進行抑制 |
タバリス錠 (ホスタマチニブ) |
100mg1錠 150mg1錠 |
4,188.00円 6,226.80円 |
ITP |
クレセンバ (イサブコナゾニウム) |
100mg1カプセル 点滴静注200mg1瓶 |
4,505.70円 27,924円 |
真菌症 |
パキロビッドパック (ニルマトレルビル・リトナビル) |
300シート 600シート |
12,538.60円 19,805.50円 |
COVID-19 |
マンジャロ皮下注 (チルゼパチド) |
2.5mg0.5mL1キット 5mg0.5mL1キット 7.5mg0.5mL1キット 10mg0.5mL1キット 12.5mg0.5mL1キット 15mg0.5mL1キット |
1,924円 3,848円 5,772円 7,696円 9,620円 11,544円 |
2型糖尿病 |
モノヴァー静注 (デルイソマルトース第二鉄) |
500mg5mL1瓶 1,000mg10mL1瓶 |
6,189円 12,377円 |
鉄乏性貧血 |
アーウィナーゼ筋注用 (クリサンタスパーゼ) |
10,000単位1瓶 | 172,931円 | 急性⽩⾎病、 悪性リンパ腫 |
イジュド点滴静注 (トレメリムマブ) |
25mg1.25mL1瓶 300mg15mL1瓶 |
214,801円 2,311,819円 |
非小細胞肺がん、 肝細胞がん |
リブタヨ点滴静注 (セミプリマブ) |
350mg7mL1瓶 | 450,437円 | 子宮頸がん |
アドトラーザ皮下注 (トラロキヌマブ) |
150mg1mL1筒 | 29,295円 | アトピー性皮膚炎 |
アリドネパッチ (ドネペジル) |
27.5mg1枚 55mg1枚 |
289.80円 441.40円 |
アルツハイマー型認知症 |
トレプロスト吸入液 (トレプロスチニル) |
1.74mg2.9mL1管 | 18,914.20円 | 肺動脈性肺高血圧症 |
ゾコーバ錠 (エンシトレルビル) |
125mg1錠 | 7,407.40円 | COVID-19 |
薬価の算定方法
各薬剤の薬価算定方法は2023年3月8日の中医協総会の資料に記載されているため、抜粋してご紹介します。
ラジカット:類似薬効比較方式(Ⅰ) (リルテック)
ラジカット内用懸濁液は同じく筋萎縮性側索硬化症(ALS)に使用されるリルテック錠(リルゾール)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
特に加算等はなく、以下の薬価に決定しました。
- リルテック錠50:1,315.30円(1日薬価:2,630.60円)
- ラジカット内用懸濁液2.1%:1,407.60円(1日薬価:4,914.10円)
ピーク時の予測販売金額は55億円です。
タバリス:類似薬効比較方式(Ⅰ) (レボレード)【加算あり】
タバリスは同じく慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に使用されるレボレード錠(エルトロンボパグ)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)と市場性加算(Ⅰ)(A=10%)が加算されていますね!その後、外国平均価格調整が行われ、以下の薬価に決定しました。
- レボレード錠12.5mg:2,211.40円(1日薬価:4,015.90円)
- タバリス錠100mg:4,188.00円
- タバリス錠150mg:6,226.80円(1日薬価:9,234.30円)
なお、加算の根拠は以下の通りです。新規作用機序と有用性が示されているためですね!
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は新規作用機序を有しており、いずれか1種類以上のITP治療薬を使用しても十分な効果の得られなかった患者を対象とした臨床試験において臨床上の有用性が示されていることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)が適当である。
ピーク時の予測販売金額は60億円です。
作用機序については以下の記事で解説しています。
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タバリス(ホスタマチニブ)の作用機序【ITP】
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クレセンバ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(ノクサフィル)
クレセンバは同じく真菌症に使用するノクサフィル(ポサコナゾール)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
特に加算はなく、以下の薬価に決定しました。
- ノクサフィル錠100mg:3,003.80円(1日薬価:9,011.40円)
- クレセンバカプセル100mg:4,505.70円(1日薬価:9,011.40円)
- ノクサフィル点滴静注300mg:27,924円(1日薬価:27,924円)
- クレセンバ点滴静注用200mg:27,924円(1日薬価:27,924円)
ピーク時の予測販売金額は、カプセルで34億円、点滴静注製剤で5.6億円です。
作用機序とエビデンスについては以下で解説しています。
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クレセンバ(イサブコナゾニウム)の作用機序【真菌症】
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パキロビッド:類似薬効比較方式(Ⅰ)(ラゲブリオ)【加算あり】
パキロビッドは同じく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に使用するラゲブリオ(モルヌピラビル)の1日薬価に合わせて算定されました。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)が加算されていますね!加算前の薬価は600シートで18,862.40円でしたが、加算(×1.05)されて19,805.50円とされています。
- ラゲブリオカプセル200mg:2,357.80円(1日薬価:18,862.40円)
- パキロビッドパック300:12,538.60円
- パキロビッドパック600:19,805.50円(1日薬価:19,805.50円)
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は新規の作用機序を有し、海外ガイドライン等において比較薬より優先して使用するとされていることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は281億円です。
作用機序については以下の記事で解説しています。
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パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)の作用機序・特徴【COVID-19】
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マンジャロ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(オゼンピック)【加算あり】
マンジャロは同じく2型糖尿病に使用するオゼンピック皮下注(セマグルチド)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)が加算されていますね!加算前の薬価は5mg0.5mL1キット 2,751円でしたが、加算(×1.1)されて3,026円とされています。
さらに、外国平均価格が行われ、以下の薬価に決定しました。
- オゼンピック皮下注2mg:11,008円(1日薬価:393円)
- マンジャロ皮下注2.5mgアテオス:1,924円
- マンジャロ皮下注5mgアテオス:3,848円(1日薬価:550円)
- マンジャロ皮下注7.5mgアテオス:5,772円
- マンジャロ皮下注10mgアテオス:7,696円
- マンジャロ皮下注12.5mgアテオス:9,620円
- マンジャロ皮下注15mgアテオス:11,544円
なお、加算の根拠は以下の通りです。新規作用機序かつ臨床試験でしっかりと効果が示されたからですね!
加算の根拠
- 有用性加算:国内外の試験においてセマグルチドおよびデュラグルチドとのランダム化比較試験が実施され、いずれの試験においても、主要評価項目であるHbA1cのベースラインからの低下量は、統計学的に有意な低下が認められていることから、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)を適用することが適当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は367億円です。
作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
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マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序、GLP-1受容体作動薬との比較・違い【糖尿病】
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当日の中医協総会では、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤とすることも了承されましたので、発売と同時に在宅自己注射が可能になる見込みです。
モノヴァー:類似薬効比較方式(Ⅰ) (フェインジェクト)
モノヴァーは同じく鉄欠乏性貧血に使用する注射剤のフェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
特に加算等は無く、以下の薬価に決定しました。
- フェインジェクト静注500mg:5,969円(1日薬価:15,830円)
- モノヴァー静注500mg:6,189円
- モノヴァー静注1000mg:12,377円(1日薬価:15,830円)
ピーク時の予測販売金額は20億円です。
作用機序や特徴については、以下で解説しています。
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フェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)の作用機序・特徴【鉄乏性貧血】
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アーウィナーゼ:原価計算方式【加算あり】
アーウィナーゼの最類似薬は、ロイナーゼ(L-アスパラギナーゼ)ですが、昭和46年の薬価収載品目であることから、本剤の算定上の比較薬として用いるには適当でないと判断されました。
よって、算定方式は原価計算方式です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)と小児加算(A=5%)が加算されていますね!加算前の薬価は10,000単位1瓶で175,418円でしたが、加算(×1.1)されて175,418円になりました。
その後、外国平均価格が行われ、以下の薬価に決定しています。
- アーウィナーゼ筋注用10000:172,931円
加算の根拠
- 有用性加算:既存の治療方法であるL-ASP製剤に対して過敏症を示し、同剤が使用できなくなった患者に対しての有効性が示されていること等から、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は7.3億円です。
アーウィナーゼは2016年12月に承認されていましたが、海外製造元の製造量不足により、ずっと薬価収載が見送られていました。6年越しにようやくの薬価収載です!
イジュド:類似薬効比較方式(Ⅰ)(アバスチン)
イジュドは免疫チェックポイント阻害薬に分類されていますが、同効能・効果(非小細胞肺がんと肝細胞がん)を有するアバスチン(ベバシズマブ)の1治療薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
・・・?何でって感じですね・・。適応は違えど、同じ作用機序と分類ならば、同じCTLA-4阻害薬のヤーボイ(イピリムマブ)なのでは?と思ってしまいます。
特に加算等は無く、以下の薬価に決定しました。
- アバスチン点滴静注用400mg:121,608円(1治療薬価:2,311,819円)
- イジュド点滴静注25mg:214,801円
- イジュド点滴静注300mg:2,311,819円(1治療薬価:2,311,819円)
ピーク時の予測販売金額は75億円です。
作用機序とエビデンスについては以下で解説しています。
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イジュド(トレメリムマブ)の作用機序【肺がん/肝がん】
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リブタヨ:類似薬効比較方式(Ⅰ) (キイトルーダ)【加算あり】
リブタヨは同じく子宮頸がんに使用する免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)が加算されていますね!加算前の薬価は428,988円でしたが、加算(×1.05)されて450,437円になりました。
- キイトルーダ点滴静注100mg:214,498円(1日薬価:20,428円)
- リブタヨ点滴静注350mg:450,437円(1日薬価:21,449円)
加算の根拠
- 有用性加算:比較薬は添付文書上、PD-L1発現率により異なる傾向が示唆されている旨、注意喚起されている一方で、本剤はPD-L1の発現状態によらず進行又は再発の子宮頸癌に使用できるものとして薬事承認されていることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は23億円です。
作用機序については、以下の記事で解説しています。
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リブタヨ(セミプリマブ)の作用機序【子宮頸がん】
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アドトラーザ:類似薬効比較方式(Ⅰ) (デュピクセント)
アドトラーザは同じくアトピー性皮膚炎に使用する生物学的製剤のデュピクセント(デュピルマブ)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
特に加算等は無く、以下の薬価に決定しました。
- デュピクセント皮下注300mgシリンジ:58,593円(1日薬価:4,185円)
- アドトラーザ皮下注150mg シリンジ:29,295円(1日薬価:4,185円)
ピーク時の予測販売金額は44億円です。
作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
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アドトラーザ皮下注(トラロキヌマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】
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アリドネパッチ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(リバスタッチパッチ)
アリドネパッチは同じくアルツハイマー型認知症に使用する外用薬のリバスタッチパッチ(リバスチグミン)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
特に加算はなく、以下の薬価に決定しています。
- リバスタッチパッチ18mg及びイクセロンパッチ18mg:289.80円(1日薬価:289.80円)
- アリドネパッチ27.5mg:289.80円(1日薬価:289.80円)
- アリドネパッチ55mg:441.40円
ちなみに、当初算定案に対しては以下の不服申し立てがありました。回答は矢印の通りで、不服は通っていましたね。珍しいっ!
- 本剤の算定に用いる規格間比は、最類似薬のリバスタッチ9mg及び同パッチ18mgの規格間比ではなく、アルツハイマー型認知症と同様に神経変性疾患であるパーキンソン病の治療薬のうち、製剤が複数規格あり、本剤と用法が類似しているニュープロパッチ18mg及び同パッチ9mgの規格間比「0.6069」が妥当。
→リバスタッチ9mg及び同パッチ18mgの規格間比は、原価計算方式により規格間の価格差がほぼない価格で収載されたニコチネルTTS由来であり、他の貼付剤と比較して相対的に低い値であることから、収載希望者の提案が妥当と判断する。
ピーク時の予測販売金額は26億円です。
疾患解説と作用機序については以下の記事で解説しています。
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アリドネパッチ(ドネペジル)の作用機序【アルツハイマー型認知症】
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トレプロスト吸入液:類似薬効比較方式(Ⅰ)(ベンテイビス)【加算あり】
トレプロスト吸入液は同じく肺動脈性肺高血圧症に使用する吸入薬のベンテイビス吸入液(イロプロスト)の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。
また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)が加算されていますね!加算前の薬価は18,013.50円でしたが、加算(×1.05)されて18,914.20円になりました。
- ベンテイビス吸入液10μg:2,001.50円(1日薬価:18,013.50円)
- トレプロスト吸入液1.74mg:18,914.20円(1日薬価:18,914.20円)
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は比較薬のイロプロストよりも1日の吸入回数が少なく、かつ吸入に係る時間も短いため、患者負担の軽減につながり、対象疾病の治療の改善(利便性)に該当することから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
ピーク時の予測販売金額は20億円です。
ゾコーバ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(本剤に係る特例)【加算あり】
ゾコーバはSARS-CoV-2感染症の治療薬ですが、重症化リスク因子の有無による類似薬を選択すると算定薬価が大きく変動する特殊性に鑑みて、個別に特例方式で算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)ですが、比較薬は、①対象疾患の類似性と②投与対象患者の類似性の双方から、効能・効果、薬理作用、組成・化学構造式及び投与形態・剤形・用法の観点に基づき、比較薬が2つ選定されています。
①対象疾患の類似性ではラゲブリオ(モルヌピラビル)が選定され、②投与対象患者の類似性ではゾフルーザ(バロキサビル)が選定されました。
ラゲブリオの平均一治療薬価94,312円と、ゾフルーザの平均一治療薬価4,453.5円で、2剤の一治療薬価は49,382.75円です。
ゾコーバは一治療あたり7錠服用するため、1錠当たりの薬価は、49,382.75円÷7錠≒7,054.70円となります。
そして、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)の対象のため、加算(×1.05)されて7,407.40円になりました。
- ゾコーバ錠125mg:7,407.40円(一治療薬価:51,851.80円)
なお、加算の根拠は以下とされています。新規作用機序という点ですね。
加算の根拠
- 有用性加算:本剤は新規の作用機序を有していること等から、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した
ピーク時の予測販売金額は192億円です。
作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説しています。
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ゾコーバ錠(エンシトレルビル)の作用機序【COVID-19】
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市場拡大再算定:タグリッソ
効能変更等が承認された既収載品及び2年度目以降の予想販売額が一定額(原価計算方式で算定された品目では100億円以上、それ以外では150億円以上)を超える既収載品について、一定規模以上の市場拡大のあった場合、新薬収載の機会(年4回)を活用して、薬価を見直すこととされています。
タグリッソ(オシメルチニブ)は、2022年8月24日に「EGFR変異陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法」の適応拡大が承認されていたことから、これに引っかかりました。
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タグリッソ(オシメルチニブ)の作用機序と副作用【肺がん】
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その結果、2023年6月1日より、現在販売されているタグリッソの薬価は以下に減額されます。
- タグリッソ錠40mg:10,806.60 円 → 9,670.00 円
- タグリッソ錠80mg:20,719.40 円 → 18,540.20 円
費用対効果評価
その他、当日の中医協総会では以下の薬剤の費用対効果評価案も了承され、2023年6月1日よりいくつかの薬剤の薬価が下がります。
- ポライビー(ポラツズマブ ベドチン):変更なし
- ダラキューロ(ダラツムマブ):変更なし
- エムガルティ(ガルカネズマブ)とその類薬:薬価ダウン
- アリケイス(アミカシン リポソーム製剤):薬価ダウン
- レベスティブ(テデュグルチド):薬価ダウン
- ベクルリー(レムデシビル):薬価ダウン
- パドセブ(エンホルツマブベドチン):薬価ダウン
あとがき
今回は13製品中7製品が加算品目でしたね!
前回見送りになっていた糖尿病治療薬のマンジャロ(チルゼパチド)も期待大ですね。今回の収載品の中では最も予測販売金額が高く、367億円とされています。
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マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序、GLP-1受容体作動薬との比較・違い【糖尿病】
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この他、2023年6月1日から薬価ダウンの医薬品もあります。せっかくの新薬や適応拡大なのに薬価ダウンというのは少し残念な気もしますが…昨今の流れですかねー…。
以上、今回は2023年3月15日に薬価収載された新薬13製品についてご紹介しました!
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