7.炎症・免疫・アレルギー

アドトラーザ皮下注(トラロキヌマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

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2022年12月23日、「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を対象疾患とするアドトラーザ皮下注(トラロキヌマブ)が承認されました!

その後、2024年8月5日には、オートインジェクター製剤である「アドトラーザ皮下注300mgペン」の新規剤形が追加されています。

レオファーマ|ニュースリリース

基本情報

製品名 アドトラーザ皮下注150mgシリンジ/300mgペン
一般名 トラロキヌマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来 特になし
製造販売 レオファーマ(株)
効能・効果 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎
用法・用量 通常、成人にはトラロキヌマブ(遺伝子組換え)として
初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。
収載時の薬価 29,295円
発売日 2023年9月26日(HP

 

木元 貴祥
木元 貴祥
アドトラーザは、炎症に関与しているIL-13を選択的に阻害する抗体薬です。

 

アトピー性皮膚炎に使用する新規の生物学的製剤ですね!

最近ではデュピクセント(デュピルマブ)やミチーガ(ネモリズマブ)に次ぐ登場でしょうか。

ミチーガ皮下注(ネモリズマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

続きを見る

 

今回は、アトピー性皮膚炎とアドトラーザ(トラロキヌマブ)の作用機序についてご紹介します。

 

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症を伴う疾患です。

 

主な症状は「湿疹」と「かゆみ」で、良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らなく、慢性的であるのとが特徴です。

具体的には、赤みがある、じゅくじゅくして引っかくと液体が出てくる、ささくれだって皮がむける、長引くとごわごわ硬くなって盛り上がる、などがあります。

 

部位としては、おでこ、目のまわり、口のまわり、耳のまわり、首、わき、手足の関節の内側などに出やすいとされており、左右対称に発現することもあります。

 

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の状態によって、軽微、軽症、中等症、重症の4段階に分けられており、それぞれによって治療法が異なります。

 

治療の基本は以下の3つがありますが、最も中心となるのは薬物療法です。1)

  1. 薬物療法:ステロイド外用薬を中心とした治療
  2. スキンケア:日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿状態を保つ
  3. 原因・悪化因子の除去:炎症の原因となる物質・因子を取り除く

 

ステロイド外用薬は「最強」「とても強い」「強い」「弱め(ミディアム)」「弱い」という5段階がありますが、アトピー性皮膚炎の重症度に応じて、それぞれ使い分けられています。

その他には、かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服したりもします。

 

このような治療を行っても改善が認められないこともしばしばあり、ステロイド薬の内服や免疫抑制薬(シクロスポリン)の内服が行われることもあります。

しかしながら、シクロスポリンには腎臓への悪影響などが懸念されており、長期間使用するのが難しいといった問題点も指摘されていました。

 

最近では新規JAK阻害薬による外用薬コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)や、新規PDE4阻害薬による外用薬モイゼルト軟膏(ジファミラスト)も使用可能です。

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

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今回ご紹介するアドトラーザは、ステロイド外用薬等で改善が認められなかった(効果不十分な)アトピー性皮膚炎に使用できる薬剤です!

 

炎症の原因:Th2細胞によるアレルギー

アトピー性皮膚炎・気管支喘息・好酸球性副鼻腔炎ではIL-4やIL-13と呼ばれるサイトカインを産生するTh2細胞(ヘルパーT細胞の一種)が関与していることが知られています。

炎症の原因:Th2細胞によるアレルギー

 

これらIL-4やIL-13が受容体に結合することで炎症反応が誘発され、アトピー性皮膚炎の症状が発現するといったメカニズムです。

 

このうち、IL-13はIL-13受容体α1(IL-13Rα1)とIL-13受容体α2(IL-13Rα2)に結合しますが、特にIL-13Rα1とIL-4受容体α(IL-4Rα)の二量体形成を促進することが、アトピー性皮膚炎に重要と考えられています。

 

アドトラーザ(トラロキヌマブ)の作用機序

アドトラーザは、Th2細胞が産生するIL-13を特異的に阻害する完全ヒト化モノクローナル抗体薬です!

アドトラーザ(トラロキヌマブ)の作用機序:抗IL-13抗体薬

 

IL-13とIL-13Rα1/2への結合を阻害することによって、アトピー性皮膚炎の症状を改善すると考えられています。

 

ちなみに、類薬のデュピクセントは「IL-4受容体α(IL-4Rα)」を特異的に阻害する抗体薬ですので、この差が臨床的にどのような違いになるのか、興味深いですね。

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

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エビデンス紹介(ECZTRA 1試験/ECZTRA 2試験)

根拠となった代表的な臨床試験(ECZTRA 1試験/ECZTRA 2試験)をご紹介します。2)

両試験はいずれも全身療法が対象となる中等症~重症のアトピー性皮膚炎の成人患者さんを対象に、アドトラーザ群とプラセボ群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「16週時点のIGA≦1達成率*」と「16週時点のEASI-75達成率**」とされ、結果は以下の通りでした。

試験名 ECZTRA 1試験 ECZTRA 2試験
試験群 アドトラーザ群 プラセボ群 アドトラーザ プラセボ群
16週時点のIGA≦1達成率 16% 7% 21% 9%
p=0.002 p<0.001
16週時点のEASI-75達成率 25% 13% 33% 10%
p<0.001 p<0.001

*IGAスコアが0又は1を達成した患者さんの割合
**EASIスコアがベースラインから75%以上改善した患者さんの割合

 

木元 貴祥
木元 貴祥
いずれの臨床試験においても、共に主要評価項目は達成されていますね!

 

副作用

5%以上に認められる副作用として、上気道感染(上咽頭炎、咽頭炎を含む)、結膜炎、注射部位反応(紅斑、疼痛、腫脹等)(11.7%)などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 重篤な過敏症(頻度不明)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

用法・用量、在宅自己注射

通常、成人にはトラロキヌマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。

 

2024年4月1日より、在宅自己注射も可能となりました!

 

収載時の薬価

収載時(2023年3月15日)の薬価は以下の通りです。

  • アドトラーザ皮下注150mg シリンジ:29,295円(1日薬価:4,185円)

 

算定根拠等については以下をご確認ください。

【新薬:薬価収載】13製品(2023年3月15日)

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まとめ・あとがき

アドトラーザはこんな薬

  • アトピー性皮膚炎に使用する生物学的製剤
  • IL-13を特異的に阻害することで、炎症反応を抑制させる
  • 2週間毎に皮下注投与する

 

近年、アトピー性皮膚炎の治療開発が活発で、いくつかの外用薬や抗体薬が相次いで登場してきました。

 

アトピー性皮膚炎はしばしばコントロール困難なこともあるため、新たな治療選択肢の登場は朗報ですね。

 

2024年には新規の抗IL-13抗体薬のイブグリース(レブリキズマブ)も登場しました!以下の記事で、生物学的製剤をまとめています。

イブグリース(レブリキズマブ)の作用機序と類薬比較【アトピー性皮膚炎】

続きを見る

 

以上、アトピー性皮膚炎とアドトラーザ(トラロキヌマブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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