7.炎症・免疫・アレルギー

ミチーガ皮下注(ネモリズマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

2024年3月26日ミチーガ皮下注用(ネモリズマブ)の適応症に「結節性痒疹」を追加することについて、承認されました。また、アトピー性皮膚炎の小児用量(6歳以上)の追加も承認されています。

上記はいずれも、新剤形(30mg)における適応症です。

マルホ|ニュースリリース

基本情報

製品名 ミチーガ皮下注用60mg/30mgシリンジ
一般名 ネモリズマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来 Mitigate the Itch(かゆみを和らげる)に由来
製造販売 マルホ(株)
効能・効果 60mgバイアル:アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)
30mgバイアル:既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に伴うそう痒、結節性痒疹
用法・用量 60mgバイアル:通常、成人及び13歳以上の小児には1 回60mgを4週間の間隔で皮下投与する。
30mgバイアル:
〈アトピー性皮膚炎に伴うそう痒〉
通常、6 歳以上13 歳未満の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として
1 回30 mg を4 週間の間隔で皮下投与する。
〈結節性痒疹〉
通常、成人及び 13 歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として
初回に 60 mg を皮下投与し、以降 1 回 30 mg を 4 週間の間隔で皮下投与する。
収載時の薬価 117,181円
発売日 2022年8月8日新発売(HP

 

ミチーガは初の抗IL-31レセプターA(IL-31RA)モノクローナル抗体薬で、アトピー性皮膚炎の掻痒そうよう(かゆみ)に対して効果が期待されています。

 

アトピー性皮膚炎に使用する抗体薬としてはデュピクセント(デュピルマブ)に次いで2製品目ですね。

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

 

今回はアトピー性皮膚炎とミチーガ(ネモリズマブ)の作用機序、エビデンスについて解説していきます。

 

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症を伴う疾患です。

 

主な症状は「湿疹」と「かゆみ」で、良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らなく、慢性的であるのとが特徴です。

具体的には、赤みがある、じゅくじゅくして引っかくと液体が出てくる、ささくれだって皮がむける、長引くとごわごわ硬くなって盛り上がる、などがあります。

 

部位としては、おでこ、目のまわり、口のまわり、耳のまわり、首、わき、手足の関節の内側などに出やすいとされており、左右対称に発現することもあります。

 

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の状態によって、軽微、軽症、中等症、重症の4段階に分けられており、それぞれによって治療法が異なります。

 

治療の基本は以下の3つがありますが、最も中心となるのは薬物療法です。1)

  1. 薬物療法:ステロイド外用薬を中心とした治療
  2. スキンケア:日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿状態を保つ
  3. 原因・悪化因子の除去:炎症の原因となる物質・因子を取り除く

 

ステロイド外用薬は「最強」「とても強い」「強い」「弱め(ミディアム)」「弱い」という5段階がありますが、アトピー性皮膚炎の重症度に応じて、それぞれ使い分けられています。

その他には、痒みを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服することもあります。

 

同様に最近登場したJAK阻害薬のコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)や、PDE4阻害薬のモイゼルト軟膏(ジファミラスト)も外用薬として使用可能ですね。

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

続きを見る

 

一方で、外用薬等では改善が認められないこともしばしばあり、ステロイド薬の内服や免疫抑制薬(シクロスポリン)の内服の他、抗IL-4受容体α(IL-4Rα)抗体薬のデュピクセント(一般名:デュピルマブ)が行われることもあります。

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

 

今回ご紹介するミチーガも外用薬に対する反応が不十分な場合に使用可能です!

 

結節性痒疹とは

結節性痒疹は、強いかゆみのある赤みがかったドーム状の硬い盛り上がり(結節性病変)が皮膚にできる、炎症性の皮膚疾患です。

 

治療方針はアトピー性皮膚炎と似ています。2)

  1. 薬物療法:ステロイド外用薬を中心とした治療
  2. スキンケア:日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿状態を保つ

 

上記で効果不十分な場合、デュピクセント(デュピルマブ)が使用可能でしたが、今回ミチーガも新たな選択肢に加わります!

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

続きを見る

 

アトピー性皮膚炎などの痒みの原因

アトピー性皮膚炎の明確な発症原因は不明確ですが、

  • 家族歴・既往歴
  • 外的要因
  • 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)

などによって、炎症反応が引き起こされることで発症すると考えられています。

 

様々な原因によって、免疫細胞であるマクロファージやTh2細胞(ヘルパーT細胞の一種)からTNFα、IL-4、IL-6、IL-13、IL-31などの炎症性サイトカイン・ケモカインや化学伝達物質が放出され、これが作用することで痒みを誘発すると考えられています。1)

 

このうち、特にIL-31は痒みに関与してると考えられていて、IL-31が末梢神経細胞などの受容体に結合することで痒みが生じます。IL-31が結合する受容体は「IL-31RA(受容体A)」と「OSMRβ」の二量体です。3)

OSMR:Oncostatin M receptor(オンコスタチンM受容体)

 

ミチーガ皮下注(ネモリズマブ)の作用機序

ミチーガはIL-31が結合するIL-31RAに対するモノクローナル抗体薬です。

ミチーガ皮下注(ネモリズマブ)の作用機序:抗IL-31RA抗体

 

IL-31の働きが抑制されることで、アトピー性皮膚炎の痒みを抑えると考えらえていますね。

 

アトピー性皮膚炎のエビデンス紹介:国内PⅢ

根拠となった国内第Ⅲ相臨床試験をご紹介します。4)

本試験は中等症~重症の掻痒を有する13歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さん(ベースラインの掻痒VAS中央値は75.4)を対象に、ミチーガ群(4週毎)とプラセボ群の有効性と安全性を検証する国内第Ⅲ相試験です。

外用薬の併用は可

 

主要評価項目は「投与開始16週後の掻痒痒VAS変化率」とされ、結果は以下の通りでした。

ミチーガ群 プラセボ群
掻痒痒VAS変化率 -42.8% -21.4%
差:-21.5%(95%CI:-30.2~-12.7)
P<0.001
湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアの変化量 -45.9% -33.2%
皮膚科 QOL 指数(DLQI)スコアが4以下の割合 40% 22%
不眠重症度指数(ISI)スコアが7以下の割合 55% 21%
注射関連反応の発現率 8% 3%

 

主要評価項目の痒みは有意にミチーガ群で低下していました!

 

その他、不眠関連スコアの改善も認められていますね。

 

木元 貴祥
日本人のデータでNEJM掲載は素晴らしいと思います♪

 

なお、結節性痒疹についても同様にミチーガ群で有意な改善が認められていますよ~。5)

 

副作用

5%以上に認められる副作用として、アトピー性皮膚炎(18.5%)、皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染等)(18.8%)、上気道炎などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 重篤な感染症(3.4%)
  • 重篤な過敏症(0.3%)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

用法・用量、在宅自己注射

通常、成人及び13歳以上の小児には1 回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。

 

2023年6月1日より、在宅自己注射が可能になりました!

 

収載時の薬価

収載時(2022年5月25日)の薬価は以下の通りです。

  • ミチーガ皮下注用60mgシリンジ:117,181円(1日薬価:4,185円)

 

算定根拠については以下をご参考ください。

【新薬:薬価収載】14製品(2022年5月25日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ミチーガはこんな薬

  • IL-31RAに対するモノクローナル抗体薬
  • IL-31の働きを抑制することでアトピー性皮膚炎の掻痒を抑える
  • 4週毎の皮下注投与

 

アトピー性皮膚炎に対する抗体製剤としてはデュピクセントに次いで2製品目ですね。両薬剤の位置づけや使い分けは気になるところ。

 

近年、アトピー性皮膚炎は様々な治療薬の開発が活発です。

 

木元 貴祥
治療選択肢が増えることで患者さんのQOL向上に繋がれば嬉しく思います。

 

以上、今回はアトピー性皮膚炎とミチーガ(ネモリズマブ)の作用機序、エビデンスについて解説しました♪

 

 

\ 新薬情報オンラインの運営者が執筆! /

本サイトが書籍化(オフライン化)して新発売

>>Amazonで立ち読み

新薬情報オンラインの更新情報をLINEで受け取ろう!

PASSMED公式LINE、はじめました。

友だち追加

失敗しない薬剤師の転職とは?

数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト

どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。

  • 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
  • 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
  • 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!

上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!

薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較

続きを見る

 

日々の情報収集に最適

薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選
  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

プロフィール・運営者詳細
お問い合わせ・仕事の依頼
私の勉強法紹介

-7.炎症・免疫・アレルギー
-