7.炎症・免疫・アレルギー

イブグリース(レブリキズマブ)の作用機序と類薬比較【アトピー性皮膚炎】

2024年1月18日、「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を対象疾患とするイブグリース皮下注(レブリキズマブ)が承認されました!

日本イーライリリー|ニュースリリース

基本情報

製品名 イブグリース皮下注250mgシリンジ/オートインジェクター
一般名 レブリキズマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来 特に無し
製造販売 日本イーライリリー(株)
効能・効果 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎
用法・用量 通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、
レブリキズマブ(遺伝子組換え)として初回及び2週後に1回500mg、4週以降、1回250mgを2週間隔で皮下投与する。
なお、患者の状態に応じて、4週以降、1回250mgを4週間隔で皮下投与することができる。
収載時の薬価 オートインジェクター:61,520円
シリンジ:61,520円
発売日

 

イブグリースはアトピー性皮膚炎に使用する4製品目の生物学的製剤です!

 

アトピー性皮膚炎ではデュピクセント(デュピルマブ)ミチーガ(ネモリズマブ)アドトラーザ(トラロキヌマブ)に次ぐ登場で、作用機序としては抗IL-13抗体のため、アドトラーザと同じです。

ミチーガ皮下注(ネモリズマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

続きを見る

 

木元 貴祥
ただ、少し作用機序というか、効き方がアドトラーザと異なっていますので、その辺りについても解説していきます。

 

今回は、アトピー性皮膚炎とイブグリース(レブリキズマブ)の作用機序についてご紹介します。

 

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症を伴う疾患です。

 

主な症状は「湿疹」と「かゆみ」で、良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らなく、慢性的であるのとが特徴です。

具体的には、赤みがある、じゅくじゅくして引っかくと液体が出てくる、ささくれだって皮がむける、長引くとごわごわ硬くなって盛り上がる、などがあります。

 

部位としては、おでこ、目のまわり、口のまわり、耳のまわり、首、わき、手足の関節の内側などに出やすいとされており、左右対称に発現することもあります。

 

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の状態によって、軽微、軽症、中等症、重症の4段階に分けられており、それぞれによって治療法が異なります。

 

治療の基本は以下の3つがありますが、最も中心となるのは薬物療法です。1)

  1. 薬物療法:ステロイド外用薬を中心とした治療
  2. スキンケア:日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿状態を保つ
  3. 原因・悪化因子の除去:炎症の原因となる物質・因子を取り除く

 

ステロイド外用薬は「最強」「とても強い」「強い」「弱め(ミディアム)」「弱い」という5段階がありますが、アトピー性皮膚炎の重症度に応じて、それぞれ使い分けられています。

その他には、かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服したりもします。

 

このような治療を行っても改善が認められないこともしばしばあり、ステロイド薬の内服や免疫抑制薬(シクロスポリン)の内服が行われることもあります。

しかしながら、シクロスポリンには腎臓への悪影響などが懸念されており、長期間使用するのが難しいといった問題点も指摘されていました。

 

最近では新規JAK阻害薬による外用薬コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)や、新規PDE4阻害薬による外用薬モイゼルト軟膏(ジファミラスト)も使用可能です。

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

続きを見る

 

今回ご紹介するイブグリースは、ステロイド外用薬等で改善が認められなかった(効果不十分な)アトピー性皮膚炎に使用できる薬剤です!

 

炎症の原因:Th2細胞によるアレルギー

アトピー性皮膚炎・気管支喘息・好酸球性副鼻腔炎ではIL-4やIL-13と呼ばれるサイトカインを産生するTh2細胞(ヘルパーT細胞の一種)が関与していることが知られています。

炎症の原因:Th2細胞によるアレルギー

 

これらIL-4やIL-13が受容体に結合することで炎症反応が誘発され、アトピー性皮膚炎の症状が発現するといったメカニズムです。

 

このうち、IL-13はIL-13受容体α1(IL-13Rα1)とIL-13受容体α2(IL-13Rα2)に結合しますが、特にIL-13Rα1とIL-4受容体α(IL-4Rα)の二量体形成を促進することが、アトピー性皮膚炎に重要と考えられています。

なお、IL-13Rα2の役割については、明確には不明なものの、過剰になったIL-13を自然に消費するためのメカニズムとして存在していると考えられています。2)

アトピー性皮膚炎におけるIL-13の役割と対応する受容体

 

イブグリース(レブリキズマブ)の作用機序

イブグリースは、Th2細胞が産生するIL-13を特異的に阻害する完全ヒト化モノクローナル抗体薬です!

IL-13の働きを完全に抑えるのではなく、IL-4RαとIL-13Rα1による経路を特に遮断し、生理的役割を担うIL-13Rα2には影響を及ぼさないと考えられています。2-3)

イブグリース(レブリキズマブ)の作用機序:IL-13のIL-4RαとIL-13Rα1による経路を特に遮断する

 

同様の作用機序を有する抗IL-13抗体のアドトラーザ(トラロキヌマブ)は、IL-13を阻害することでIL-13Rα1とIL-13Rα2の両経路を遮断するため、同じIL-13を阻害するものの、影響する経路が異なっています。4)

 

木元 貴祥
この差が臨床的にどのように影響するのかは不明確ですが、後述する臨床試験の結果は、イブグリースの方が良さそうな印象でした。

 

エビデンス紹介(ADvocate1試験/ADvocate2試験)

根拠となった代表的な臨床試験(ADvocate1試験/ADvocate2試験)をご紹介します。2)

両試験はいずれも全身療法が対象となる中等症~重症のアトピー性皮膚炎の患者さん(12歳以上)を対象に、イブグリース群とプラセボ群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「16週時点のIGA≦1達成率*」、副次評価項目は「16週時点のEASI-75達成率**」とされ、結果は以下の通りでした。

試験名 ADvocate1試験 ADvocate2試験
試験群 イブグリース群 プラセボ群 イブグリース群 プラセボ群
16週時点のIGA≦1達成率 43.1% 12.7% 33.2% 10.8%
P<0.001 p<0.001
16週時点のEASI-75達成率  58.8% 16.2% 52.1% 18.1%
p<0.001 p<0.001

*IGAスコアが0又は1を達成した患者さんの割合
**EASIスコアがベースラインから75%以上改善した患者さんの割合

 

木元 貴祥
いずれの臨床試験においても、共に主要評価項目・副次評価項目は達成されていますね!

 

直接比較はできないものの、同様の対象に対して実施されたアドトラーザの臨床試験の結果(下表)5)と比べると、数値的にはイブグリースの方が治療効果が高そうな印象を受けます。

試験名 ECZTRA 1試験 ECZTRA 2試験
試験群 アドトラーザ群 プラセボ群 アドトラーザ プラセボ群
16週時点のIGA≦1達成率 16% 7% 21% 9%
p=0.002 p<0.001
16週時点のEASI-75達成率 25% 13% 33% 10%
p<0.001 p<0.001

 

副作用

5%以上に認められる副作用として、アレルギー性結膜炎や結膜炎などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 重篤な過敏症(0.2%)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

用法・用量、在宅自己注射

通常、成人及び12 歳以上かつ体重40 kg 以上の小児には、レブリキズマブ(遺伝子組換え)として初回及び2 週後に1 回500 mg、4 週以降、1 回250mg を2 週間隔で皮下投与します。

なお、患者の状態に応じて、4 週以降、1 回250 mg を4 週間隔で皮下投与することができます。

 

自己注射については、現時点では不可です。

 

収載時の薬価

収載時(2024年4月17日)の薬価は以下の通りです。

 

  • イブグリース皮下注250mgオートインジェクター:61,520円(1日薬価:4,394円)
  • イブグリース皮下注250mgシリンジ:61,520円

 

算定根拠については、以下で解説しています。

【新薬:薬価収載】10製品(2024年4月17日)

続きを見る

 

デュピクセント、ミチーガ、アドトラーザとの違い・比較

今後、アトピー性皮膚炎に使用できる生物学的製剤は、以下の4製品です。

 

それぞれの特徴について一覧表を作成しましたので、ご参考にしていただければ幸いです。

 

イブグリースとュピクセント、ミチーガ、アドトラーザとの違い・比較一覧表

 

デュピクセントは、アトピー性皮膚炎以外にも適応症を有しているため、幅広い疾患に対して使用可能です。また、生後6か月以上の乳幼児にも使用できるといった特徴もありますね。

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

続きを見る

 

木元 貴祥
今後、使い分けの検討が進むことを期待したいと思います!

 

まとめ・あとがき

イブグリースはこんな薬

  • アトピー性皮膚炎に使用する4製品目の生物学的製剤
  • IL-13を特異的に阻害することで、IL-4RαとIL-13Rα1による経路を特に遮断する
  • 2週間毎(維持期は4週間毎)に皮下注投与する

 

近年、アトピー性皮膚炎の治療開発が活発で、いくつかの外用薬や抗体薬が相次いで登場してきました。

 

アトピー性皮膚炎はしばしばコントロール困難なこともあるため、新たな治療選択肢の登場は朗報ですね。

 

以上、アトピー性皮膚炎とイブグリース(レブリキズマブ)の作用機序と共に、生物学的製剤の比較についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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