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2024年3月26日、「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を対象疾患とするピアスカイ注(クロバリマブ)が承認されました!
中外製薬|ニュースリリース
基本情報
| 製品名 | ピアスカイ注340mg | 
| 一般名 | クロバリマブ(遺伝子組換え) | 
| 製品名の由来 | 開発コード SKY59(抗体技術の採用による通常抗体からの 改変を表した Superior kinetics antibody)に由来する。 | 
| 製造販売 | 中外製薬(株) | 
| 効能・効果 | 発作性夜間ヘモグロビン尿症 | 
| 用法・用量 | 通常、クロバリマブ(遺伝子組換え)として、患者の体重を考慮し、 1日目に1回1,000又は1,500mgを点滴静注し、2、8、15及び22日目に1回340mg、 29日目以降は4週ごとに1回680又は1,020mgを皮下投与する。 | 
| 収載時の薬価 | 1,978,062円 | 
| 発売日 | 2024年5月22日(HP) | 
 
		
既に以下の2製品が同疾患に対して使用されています。
ピアスカイは、独自の改変を導入することで、再利用可能な「リサイクリング抗体」です。国内では、他疾患で使用されているエンスプリング(サトラリズマブ)に次いで2製品目のリサイクリング抗体ですね。
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															エンスプリング(サトラリズマブ)の作用機序・リサイクリング抗体の特徴【NMOSD】続きを見る 
 
		
再利用可能なことから、通常の抗体薬よりも投与間隔が長く、少量で治療効果が発揮できるといった特徴があります。
今回は発作性夜間ヘモグロビン尿症を中心に、ピアスカイ(クロバリマブ)の作用機序、エビデンス等について解説します。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)とは
発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:PNH)は稀な疾患(患者さん数は約400人)ですが、重篤化することから難病に指定されています。1)
後天的な原因で酸素運搬等の役割を担う赤血球が壊される(溶血)ことで発症すると考えられており、主な症状としては以下があります。
- 早朝の赤褐色尿(ヘモグロビン尿)
- 嚥下障害
- 男性機能不全
- 腹痛
- 疲労
重症化すると以下のような重度の合併症を呈してしまう2)ため、早期の発見・治療が重要です。
- 血栓症:主要な死因の一つ
- 慢性腎臓病:2/3の患者さんが合併する
- 肺高血圧症
このように赤血球の破壊(溶血)が常に起こることで様々な症状・合併症を呈してしまうのが発作性夜間ヘモグロビン尿症ですね。
 
		
発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因
通常、赤血球の表面には「グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosyl phosphatidylinositol:GPI)」と呼ばれるタンパク質が存在しています。
これは自己の免疫システム(次項の補体活性化経路)から身を守るためのもので、通常状態でしたら赤血球は自己免疫の攻撃を受けません。
しかし、PNHでは後天的な原因によってGPIが欠損してしまっていることが知られています。1)
このため赤血球は常に補体活性化(自己免疫の攻撃)を受けてしまい、常に溶血が引き起こされてしまっています。

 
		
治療
根治的な治療法としては造血幹細胞移植しかありませんが、重篤な骨髄不全やコントロール困難で致命的な血栓症に対して行われます。2)
通常、中等度から重度の溶血症状に対しては、抗補体C5抗体薬のソリリスやユルトミリスが基本です。3)
今回ご紹介するピアスカイも同列で治療選択肢に加わりますね!
また、日本人PNHの2~3%は、ソリリスやユルトミリスが効果不十分なことがあり、その原因として補体C5のp.Arg885His多型が知られています。3)
ピアスカイは、ソリリスやユルトミリスとは異なる部位に結合してC5の働きを阻害するため、p.Arg885His多型に対しても効果が期待4)されている薬剤です!
 
		
赤血球の溶血と補体活性化経路
補体(Complement)とは、生体が病原菌などを排除する際に、抗体抗原反応などを補助する免疫システムです。
補体にはいくつかの種類があり、C1~C9で表されます。
詳細は割愛しますが、免疫が活性化する際に、「レクチン経路」、「古典的経路」、「第二経路」と呼ばれる経路によって、補体の「C3」が産生・活性化されます。
この補体C3は、補体C5を「C5a」と「C5b」に分解します。

特に補体C5bは赤血球の溶血を引き起こしますので、前述のGPIが欠損している赤血球ではモロに補体の攻撃を受けてしまいます。
 
		
ピアスカイ(クロバリマブ)の作用機序と特徴
ピアスカイは補体C5を選択的に阻害する抗補体C5抗体薬です!
 
		
通常の抗体は抗原と結合すると、細胞内に取り込まれ、結合したままリソソームに移行し、抗体ごと分解されてしまいます。
しかし、抗原に結合していない抗体はリソソームに移行することなく再利用されるということが分かってきました。
その点に着目したのがピアスカイです!

ピアスカイは補体C5に結合後、細胞内に取り込まれますが、細胞内の酸性条件下で抗原(補体C5)を遊離するように設計されています。5)
抗原を遊離したピアスカイはリソソームに移行することなく、細胞外に放出され、再度補体C5に結合することが可能となります!
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これにより、通常抗体薬よりも長時間作用することが可能です。
エビデンス紹介:COMMODORE 1、2試験
根拠となった臨床試験は以下の2つがあります。
- COMMODORE 1試験:既存の補体阻害剤からピアスカイに切り替えたPNH患者さんを対象に、ピアスカイの安全性をソリリスと比較評価する第Ⅲ相臨床試験
- COMMODORE 2試験:C5阻害剤による治療歴のないPNH患者さんを対象に、ソリリスに対するピアスカイの非劣性を検証する第Ⅲ相臨床試験
いずれも論文未公表ですが、代表としてCOMMODORE 2試験の結果を紹介します(学会報告より)。6)
主要評価項目は「投与5週目から25週目までに溶血コントロールを達成した割合」と「ベースラインから25週目までに輸血回避を達成した割合」とされ、ソリリスに対する非劣性が検証されました。
| 試験群 | ソリリス群 | ピアスカイ群 | 
| 溶血コントロールを達成した割合 | 79.0% | 79.3% | 
| 非劣性が証明 | ||
| 輸血回避を達成した割合 | 68.1% | 65.7% | 
| 非劣性が証明 | ||
副作用
5%以上に認められる副作用として、白血球数減少、好中球数減少などが報告されていました。
重大な副作用としては、
- 髄膜炎菌感染症(頻度不明)
- 感染症(2.1%)
- 免疫複合体反応(17.8%)
- Infusion reaction、注射に伴う全身反応(16.0%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
類薬でも髄膜炎菌感染症や感染症は重大な副作用として挙げられているため、ピアスカイも同様ですね。
免疫複合体反応については、他の抗C5抗体製剤からピアスカイに切り替える際(またはその逆)に、一過性に形成される免疫複合体による反応(関節痛等の筋骨格系および結合組織障害、発疹等の皮膚および皮下組織障害、発熱、無力症、疲労、腹部不快感、頭痛等)があらわれることがあるとのことです。
 
		
用法・用量、在宅自己注射
通常、クロバリマブ(遺伝子組換え)として、患者の体重を考慮し、1日目に1回1,000又は1,500mgを点滴静注し、2、8、15及び22日目に1回340mg、29日目以降は4週ごとに1回680又は1,020mgを皮下投与します。
なお、1回あたりの投与量は下表を参考にすることとされています。
| 体重 | 1日目 | 2、8、15及び22日目 | 29日目以降、4週に1回 | 
| 40kg以上 | 1,000mg点滴静注 | 340mg皮下投与 | 680mg皮下投与 | 
| 100kg以上 | 1,500mg点滴静注 | 340mg皮下投与 | 1,020mg皮下投与 | 
 
		
なお、2025年5月14日の中医協総会にて、在宅自己注射が了承され、2025年6月1日から自己注射可能になりました!
収載時の薬価
収載時(2024年5月22日)の薬価は以下の通りです。
- ピアスカイ注340mg:1,978,062円
算定根拠については、以下をご参考ください。
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															【新薬:薬価収載】18製品(2024年5月22日)続きを見る 
他の抗C5補体抗体との違い・比較
現在、抗C5補体抗体は以下の3製品があります。
- ソリリス(エクリズマブ)
- ユルトミリス(ラブリズマブ)
- ピアスカイ(クロバリマブ)
簡単に比較一覧表を作成しましたので、ご参考にしてみてください。

 
		
まとめ・あとがき
ピアスカイはこんな薬
- 補体C5を特異的に阻害するリサイクリング抗体
- 4週毎の皮下注投与
- 髄膜炎菌感染症には注意が必要!
PNHは治療選択肢が限られていて、しばしばソリリスやユルトミリスの不応例も報告されていることから、新規のピアスカイは新たな選択肢として期待できますね。
以上、今回は難病の発作性夜間ヘモグロビン尿症とピアスカイ(クロバリマブ)の作用機序、エビデンス等についてご紹介しました!
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