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2024年3月26日、「高リスク急性骨髄性白血病」を対象疾患とするビキセオス配合静注用が承認されました!
日本新薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ビキセオス配合静注用 |
一般名 | ダウノルビシン塩酸塩、シタラビン |
製品名の由来 | 「VY」(発音は「VI」)はローマ数字「5」と「1」に由来し、 有効成分であるシタラビン及びダウノルビシンのモル比「5:1」を示す。 「ExOS」は「extension of overall survival(全生存期間の延長)」に由来する。 |
製造販売 | 日本新薬(株) |
効能・効果 | 高リスク急性骨髄性白血病 |
用法・用量 | 記事内参照 |
収載時の薬価 | 877,877円 |
発売日 | 2024年5月22日(HP) |
現在、高リスク急性骨髄性白血病の標準的な寛解導入療法はアントラサイクリン+標準量シタラビンです(推奨グレード:カテゴリー1)1)。
臨床試験では、既存の治療法と比較して、ビキセオスの有意な生存期間の改善が示されています。また、投与方法も既存治療と比較して簡便なため、今後使用が広がりそうな気がしますね。
今回は急性骨髄性白血病とビキセオス配合静注用(ダウノルビシン/シタラビン)の作用機序やエビデンスについてご紹介します。
急性骨髄性白血病
白血病は「血液のがん」です。
血液細胞には、白血球、赤血球、血小板等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。
また、白血球には
- 顆粒球(骨髄系):好中球、好酸球、好塩基球
- リンパ球(リンパ系):B細胞、T細胞、NK細胞
があります。
急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukemia)は、白血球の中でも「顆粒球」の未熟細胞が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。
この腫瘍化した未熟な顆粒球のことを「白血病細胞」と呼んでおり、白血病細胞の表面にはしばしば「FLT3受容体」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。
急性骨髄性白血病の予後因子
急性骨髄性白血病には以下のような様々な予後因子が知られています。1)
因子 | 予後良好 | 予後不良 |
年齢 | 50歳以下 | 60歳以上 |
発症様式 | de novo | 二次性 |
染色体の核型 | t(8;21) t(15;17) inv(16) or t(16;16) |
3q異常 5・7番の異常 複雑核型 等 |
遺伝子異常 | NPM1変異 CEBPA変異 |
FLT3変異 TP53変異 |
寛解までの治療期間 | 1回 | 2回以上 |
今回ご紹介するビキセオスの効能・効果の「“高リスク”AML」とは、
- 複雑核型のような「骨髄異形成関連変化を伴うAML」
- 二次性の発症様式を伴う「治療関連AML」
と臨床試験2)で定義されていました。
急性骨髄性白血病の治療
基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。1)
1カ月程の化学療法(寛解導入療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後、地固め療法を数回行います。
そして完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。
現在、標準的な寛解導入療法は、アントラサイクリン+標準量シタラビンで、具体的には以下のような治療です。
- DNR+AraC療法:ダウノルビシン(DNR)50 mg/m2を5日間+シタラビン(AraC)100mg/m2を7日間持続投与
- IDR+AraC療法:イダルビシン(IDR)12 mg/m2を3日間+シタラビン(AraC)100mg/m2を7日間持続投与
なお、FLT3変異を有する場合には、上記の寛解導入療法にヴァンフリタ(キザルチニブ)を併用する場合もあります。
-
ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序:ゾスパタとの違い・比較【AML】
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今回ご紹介するビキセオスは、上記のDNR+AraC療法(日本と投与スケジュールが異なる)と比較して、生存期間の有意な延長が示されています!
また、最初の導入化学療法で1~2割の患者さんは抵抗性を示してしまいます(難治性)。しかも、一度完全寛解が得られたとしても、半数以上の患者さんは再発してしまいます。
このような再発・難治性の患者さんに対して使用できる薬剤はマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)がありますが、それ以外には有効な薬剤はなく、造血幹細胞移植などが選択肢です。
-
マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)の作用機序と副作用【急性骨髄性白血病】
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ビキセオス(ダウノルビシン/シタラビン)の作用機序
ビキセオスは、AMLの標準的な寛解導入療法に使用されているダウノルビシンとシタラビンを1:5のモル比で配合した新規のリポソーム製剤です!
リポソームのまま骨髄に到着し、白血病細胞に選択的に取り込まれた後に、ダウノルビシンとシタラビンが放出されます。
それぞれの抗腫瘍効果によって、白血病細胞の増殖を抑制すると考えられていますね。
エビデンス紹介:CLTR0310-301試験
高リスクAMLの初回治療の根拠となった臨床試験をご紹介します。2)
本試験は、60~75歳の未治療高リスクAML患者さんを対象に、DNR+AraC療法(海外の投与スケジュールで、3+7療法と呼ばれる)とビキセオス配合静注用を比較した海外第Ⅲ相臨床試験です。
本試験の主要評価項目は「全生存期間」で結果は以下の通りでした。
試験群 | 3+7療法 | ビキセオス |
全生存期間中央値 | 5.95か月 | 9.56か月 |
HR=0.69、p=0.003 |
副作用
重大な副作用として、
- 骨髄抑制:発熱性好中球減少症(66.2%)、血小板減少症(24.3%)、貧血(19.8%)、白血球減少症(16.2%)、好中球減少症(13.5%)、リンパ球減少症(9.0%)、播種性血管内凝固(1.8%)、汎血球減少症(0.5%)等
- 感染症:肺炎(18.5%)、菌血症(9.5%)、敗血症(9.5%)等
- 出血:胃腸出血(4.5%)、脳出血(0.9%)、中枢神経系出血(0.9%)、肺胞出血(0.9%)、硬膜下血腫(0.5%)等
- 心臓障害:うっ血性心不全(2.3%)、心嚢液貯留(1.4%)、心不全(0.9%)、心筋梗塞(0.9%)、心タンポナーデ(0.5%)、心膜炎(0.5%)等
- 過敏症
- 消化管障害:腸閉塞(0.5%)、出血性腸炎(0.5%)、消化管潰瘍(0.5%)等
- 呼吸障害:呼吸困難(8.1%)、呼吸不全(3.2%)、急性呼吸窮迫症候群(0.9%)等
- 間質性肺疾患:肺臓炎(0.9%)、肺硬化(0.5%)等
- 中枢神経系障害:脳梗塞(0.5%)、脳症(白質脳症を含む)(頻度不明)、麻痺(頻度不明)、痙攣(頻度不明)、小脳失調(頻度不明)、意識障害(意識消失を含む)(頻度不明)等
- シタラビン症候群(0.9%)
- 腫瘍崩壊症候群(0.5%)
- ネフローゼ症候群(頻度不明)
が挙げられています。
用法・用量
寛解導入療法の他、地固め療法としても使用可能です。
寛解導入療法
通常、寛解導入療法として、本剤100ユニット(ダウノルビシン/シタラビンとして44mg/100mg)/m2を1日1回、90分かけて、最大2サイクルまで投与します。
1サイクル目として本剤を1、3、5日目に点滴静注します。1サイクル目に寛解に到達しなかった患者で、本剤への忍容性が良好な場合、1サイクル目の投与開始から2~5週間後に、2サイクル目として本剤を1、3日目に点滴静注します。
地固め療法
通常、地固め療法として、本剤65ユニット(ダウノルビシン/シタラビンとして29mg/65mg)/m2を1日1回、90分かけて、最大2サイクルまで投与します。
最後の寛解導入療法開始から5~8週間後に、1サイクル目として本剤を1、3日目に点滴静注します。1サイクル目の投与開始後に病態が進行していない患者で、本剤への忍容性が良好な場合、1サイクル目の地固め療法開始から5~8週間後に、2サイクル目として本剤を1、3日目に点滴静注します。
参考までに、前述の海外第Ⅲ相試験における3+7療法との投与スケジュールの違いを図式化しました。
収載時の薬価
収載時(2024年5月22日)の薬価は以下の通りです。
- ビキセオス配合静注用:877,877円
算定根拠については、以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】18製品(2024年5月22日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ビキセオスはこんな薬
- ダウノルビシンとシタラビンを1:5のモル比で配合した新規のリポソーム製剤
- 標準的な寛解導入療法と比較して、有意な生存期間の延長が示されている
- 寛解導入療法と地固め療法に使用可能
これまでの標準的な寛解導入療法のDNR+AraC療法では、来院回数が多く、患者さんの負担になっていました。今回、ビキセオスは1日目、3日目、5日目の来院で治療が可能なため、より簡便に治療が可能です。
以上、今回は急性骨髄性白血病とビキセオス配合静注用(ダウノルビシン/シタラビン)の作用機序についてご紹介しました。
引用文献・資料等
- 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
- CLTR0310-301試験:J Clin Oncol. 2018 Sep 10;36(26):2684-2692.
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