11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

ビキセオス配合静注用(ダウノルビシン/シタラビン)の作用機序【AML】

2024年2月5日、厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会にて「高リスク急性骨髄性白血病」を対象疾患とするビキセオス配合静注用の承認が了承されました!

日本新薬|申請のニュースリリース

基本情報

製品名 ビキセオス配合静注用
一般名 ダウノルビシン塩酸塩、シタラビン
製品名の由来
製造販売 日本新薬(株)
効能・効果 高リスク急性骨髄性白血病
用法・用量 記事内参照
収載時の薬価
発売日

 

現在、高リスク急性骨髄性白血病の標準的な寛解導入療法はアントラサイクリン+標準量シタラビンです(推奨グレード:カテゴリー1)1)

 

木元 貴祥
ビキセオスは、アントラサイクリン系薬剤のダウノルビシンと、シタラビン1:5のモル比で配合した新規のリポソーム製剤ですね!

 

臨床試験では、既存の治療法と比較して、ビキセオスの有意な生存期間の改善が示されています。また、投与方法も既存治療と比較して簡便なため、今後使用が広がりそうな気がしますね。

 

今回は急性骨髄性白血病とビキセオス配合静注用(ダウノルビシン/シタラビン)の作用機序やエビデンスについてご紹介します。

 

急性骨髄性白血病

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球、赤血球、血小板等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。

 

また、白血球には

  • 顆粒球(骨髄系):好中球、好酸球、好塩基球
  • リンパ球(リンパ系):B細胞、T細胞、NK細胞

があります。

 

急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukemia)は、白血球の中でも「顆粒球」の未熟細胞が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。

この腫瘍化した未熟な顆粒球のことを「白血病細胞」と呼んでおり、白血病細胞の表面にはしばしば「FLT3受容体」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。

急性骨髄性白血病とFLT3受容体

 

急性骨髄性白血病の予後因子

急性骨髄性白血病には以下のような様々な予後因子が知られています。1)

因子 予後良好 予後不良
年齢 50歳以下 60歳以上
発症様式 de novo 二次性
染色体の核型 t(8;21)
t(15;17)
inv(16) or t(16;16)
3q異常
5・7番の異常
複雑核型 等
遺伝子異常 NPM1変異
CEBPA変異
FLT3変異
TP53変異
寛解までの治療期間 1回 2回以上

 

木元 貴祥
発症形式や、細胞の核型、遺伝子変異などが予後不良因子として挙げられていますね。

 

今回ご紹介するビキセオスの効能・効果の「“高リスク”AML」とは、

  • 複雑核型のような「骨髄異形成関連変化を伴うAML」
  • 二次性の発症様式を伴う「治療関連AML」

と臨床試験2)で定義されていました。

 

急性骨髄性白血病の治療

基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。1)

1カ月程の化学療法(寛解導入療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後、地固め療法を数回行います。

そして完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。

 

現在、標準的な寛解導入療法は、アントラサイクリン+標準量シタラビンで、具体的には以下のような治療です。

  • DNR+AraC療法:ダウノルビシン(DNR)50 mg/m2を5日間+シタラビン(AraC)100mg/m2を7日間持続投与
  • IDR+AraC療法:イダルビシン(IDR)12 mg/m2を3日間+シタラビン(AraC)100mg/m2を7日間持続投与

 

なお、FLT3変異を有する場合には、上記の寛解導入療法にヴァンフリタ(キザルチニブ)を併用する場合もあります。

ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序:ゾスパタとの違い・比較【AML】

続きを見る

 

今回ご紹介するビキセオスは、上記のDNR+AraC療法(日本と投与スケジュールが異なる)と比較して、生存期間の有意な延長が示されています!

 

また、最初の導入化学療法で1~2割の患者さんは抵抗性を示してしまいます(難治性)。しかも、一度完全寛解が得られたとしても、半数以上の患者さんは再発してしまいます。

 

このような再発・難治性の患者さんに対して使用できる薬剤はマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)がありますが、それ以外には有効な薬剤はなく、造血幹細胞移植などが選択肢です。

血液
マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)の作用機序と副作用【急性骨髄性白血病】

続きを見る

 

ビキセオス(ダウノルビシン/シタラビン)の作用機序

ビキセオスは、AMLの標準的な寛解導入療法に使用されているダウノルビシンとシタラビンを1:5のモル比で配合した新規のリポソーム製剤です!

リポソームのまま骨髄に到着し、白血病細胞に選択的に取り込まれた後に、ダウノルビシンとシタラビンが放出されます。

ビキセオスの作用機序:リポソーム化ダウノルビシン/シタラビン

 

それぞれの抗腫瘍効果によって、白血病細胞の増殖を抑制すると考えられていますね。

 

木元 貴祥
なお、リポソームは骨髄で長時間残存することが示唆されているため、これまでの寛解導入療法よりも少ない投与回数で有効性が期待されています!

 

エビデンス紹介:CLTR0310-301試験

高リスクAMLの初回治療の根拠となった臨床試験をご紹介します。2)

本試験は、60~75歳の未治療高リスクAML患者さんを対象に、DNR+AraC療法(海外の投与スケジュールで、3+7療法と呼ばれる)とビキセオス配合静注用を比較した海外第Ⅲ相臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「全生存期間」で結果は以下の通りでした。

試験群 3+7療法 ビキセオス
全生存期間中央値 5.95か月 9.56か月
HR=0.69、p=0.003

 

木元 貴祥
なお、国内でも第Ⅰ/Ⅱ相試験(jRCT2080224810)が実施され、海外の試験と遜色のない結果が得られているようです。

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

 

用法・用量

後日更新予定です。

寛解導入療法の他、地固め療法としても使用可能なようですね。

 

参考までに、前述の海外第Ⅲ相試験における3+7療法との投与スケジュールの違いを図式化しました。

ビキセオスと3+7療法の投与スケジュールの違い

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ビキセオスはこんな薬

  • ダウノルビシンとシタラビンを1:5のモル比で配合した新規のリポソーム製剤
  • 標準的な寛解導入療法と比較して、有意な生存期間の延長が示されている
  • 寛解導入療法と地固め療法に使用可能

 

これまでの標準的な寛解導入療法のDNR+AraC療法では、来院回数が多く、患者さんの負担になっていました。今回、ビキセオスは1日目、3日目、5日目の来院で治療が可能なため、より簡便に治療が可能です。

 

木元 貴祥
治療効果も従来のDNR+AraC療法よりも期待できますので、徐々に置き換わっていくと思われますね。

 

以上、今回は急性骨髄性白血病とビキセオス配合静注用(ダウノルビシン/シタラビン)の作用機序についてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版
  2. CLTR0310-301試験:J Clin Oncol. 2018 Sep 10;36(26):2684-2692.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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