1.中枢神経系

ピヴラッツ(クラゾセンタン)の作用機序【くも膜下出血】

2021年11月26日、厚労省の薬食審医薬品第一部会にて「脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮抑制」などを対象疾患とするピヴラッツ(クラゾセンタン)の承認が了承されました!

イドルシアファーマシューティカルズジャパン|申請のニュースリリース

現時点では未承認のため、ご注意ください。

基本情報

製品名ピヴラッツ点滴静注液150mg
一般名クラゾセンタンナトリウム
製品名の由来
製造販売イドルシアファーマシューティカルズジャパン(株)
効能・効果脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮及び
これに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制
用法・用量
収載時の薬価

 

木元 貴祥
新規のエンドセリン受容体拮抗薬に分類されていますね。

 

エンドセリン受容体拮抗薬は他疾患では既に使用されていますが、くも膜下出血術後の脳血管攣縮抑制としては初となります!

【肺動脈性高血圧症】エンドセリン受容体拮抗薬の作用機序と一覧・使い分け

続きを見る

 

今回はくも膜下出血と脳血管攣縮、そしピヴラッツ(クラゾセンタン)の作用機序について解説していきます。

 

くも膜下出血とは

脳は外側から硬膜、くも膜、軟膜で覆われていて、くも膜と軟膜の間が「クモ膜下腔」です。

くも膜下腔に出血する状態がくも膜下出血で、多くの場合、「脳動脈瘤」と呼ばれる血管のふくらみがある日突然破裂することによって引き起こされます。

 

日本では1年間に人口10万人あたり約20人とされ、特に女性で多いと言われています(男女比=1:2)。2)

 

症状としては以下のような非常に強い症状です。

  • 「頭を殴られたような」突然の激しい頭痛
  • 意識が混濁
  • 重症の場合は意識障害を伴い、呼吸停止になることも

 

予後は非常に不良で、動脈瘤破裂による初回のくも膜下出血の後には約35%が死亡に至り、数週間以内にはさらに15%が再破裂により死亡するとされています。1)

 

木元 貴祥
できるだけ、症状が発現してから早期に適切な治療を行うことが大切です!!

 

治療

治療の基本は再出血の予防です。2)

 

重症度合いに応じて、

  • 開頭による外科的治療、あるいは
  • 開頭を要しない血管内治療

が行われますが、多くの場合は外科的治療が適用とされます。

 

外科的治療としては「血管内コイル塞栓術」もしくは「顕微鏡下クリッピング術」がありますね。

 

脳血管攣縮

適切な外科的治療を行ったとしても、約1/3の患者さんでは脳動脈内腔が狭くなる遅発性脳血管攣縮れんしゅくが起こる場合があります。3)

症状としては手足の麻痺や意識の障害などです。

 

これは、エンドセリンなどの血管収縮物質がエンドセリン受容体に作用することで、脳血管の収縮・攣縮が引き起こされると考えられています。

くも膜下出血後の脳血管攣縮にはエンドセリンが関与している

 

過度な攣縮では脳梗塞になってしまいますし、脳血流量が低下することで虚血状態となり、酸素や栄養分が十分に供給されずに高度脳障害に繋がる可能性もあります。

 

木元 貴祥
かなーーーーり怖い状態ですよね・・・。

 

脳血管攣縮の予防薬として、

  • Rhoキナーゼ阻害薬のファスジル
  • トロンボキサンA2合成酵素阻害薬のカタクロット(一般名:オザグレル)

などが使用されることもあります。2)

 

その他、海外ではカルシウムチャネル遮断薬のニモジピンが使用されていますが1-3)、残念ながら国内では未承認です。

 

今回ご紹介するピヴラッツは脳血管攣縮の予防薬として新たな治療選択肢として使用できる薬剤です!

 

ピヴラッツ(クラゾセンタン)の作用機序:速効性のエンドセリンA受容体拮抗薬

エンドセリン受容体にはA受容体とB受容体があります。

ピヴラッツは即効性のエンドセリンA受容体拮抗薬に分類されている薬剤です!

ピヴラッツ(クラゾセンタン)の作用機序:速効性のエンドセリンA受容体拮抗薬

 

ピヴラッツがエンドセリンA受容体を即効性に遮断することで、脳血管攣縮作用が抑制されると考えられていますね。

 

ちなみに脳血管攣縮にはエンドセリンA受容体が重要だと考えられていますが、Aのみを抑制すると、B受容体から末梢血管透過性が亢進して浮腫を生じる可能性も示唆されています。4)

 

木元 貴祥
副作用として浮腫は注意かもしれませんね。

 

エビデンス紹介

国内の臨床試験は現時点では未公表ですが、ニュースリリースに概要が掲載されていましたのでご紹介します。

 

動脈瘤性くも膜下出血後の日本人患者さんを対象に、2つの第Ⅲ相臨床試験が行われています。

共にプラセボに対するピヴラッツの有効性を検証する同じ試験デザインですが、一つは外科的クリッピング術、もう一つは血管内コイル術により動脈瘤が治療された患者さんが対象とされました。

 

主要評価項目は「動脈瘤性くも膜下出血後6週間以内の脳血管攣縮に関連する症状およびあらゆる原因による死亡の発現率」とされ、両試験共にピヴラッツ群で有意な改善が認められています。

 

木元 貴祥
死亡率の減少効果が認められたのはいいですね!

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

上記臨床試験では体液貯留(低ナトリウム血症、低アルブミン血症、貧血、胸膜滲出液、脳浮腫、肺水腫)が多く認められていたそうです。

 

用法・用量

正式承認後に更新予定です。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ピヴラッツはこんな薬

  • 速効性のエンドセリンA受容体拮抗薬
  • エンドセリン受容体を遮断することで脳血管攣縮を予防する

 

これまで、くも膜下出血後の脳血管攣縮予防薬は治療選択肢が少なかったのですが、ピヴラッツは新たな治療選択肢として期待できます。

 

木元 貴祥
くも膜下出血の治療成績の向上に繋がることを期待したいと思います!

 

以上、今回はくも膜下出血と脳血管攣縮、そしピヴラッツ(クラゾセンタン)の作用機序について解説しました~♪

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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