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2022年1月20日、「脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮抑制」などを対象疾患とするピヴラッツ(クラゾセンタン)が承認されました!
基本情報
製品名 | ピヴラッツ点滴静注液150mg |
一般名 | クラゾセンタンナトリウム |
製品名の由来 | 特になし |
製造販売 | ネクセラファーマジャパン(株) |
効能・効果 | 脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮及び これに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制 |
用法・用量 | クラゾセンタンとして300 mg(12 mL)を生理食塩液500 mLに加え、 容量型の持続注入ポンプを用いて、17 mL/時の速度で静脈内に持続投与する。 くも膜下出血術後早期に本剤の投与を開始し、くも膜下出血発症15 日目まで投与する。 |
収載時の薬価 | 80,596円 |
発売日 | 2022年4月20日新発売(HP) |
エンドセリン受容体拮抗薬は他疾患では既に使用されていますが、くも膜下出血術後の脳血管攣縮抑制としては初となります!
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【肺動脈性高血圧症】エンドセリン受容体拮抗薬の作用機序と一覧・使い分け
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今回はくも膜下出血と脳血管攣縮、そしピヴラッツ(クラゾセンタン)の作用機序について解説していきます。
くも膜下出血とは
脳は外側から硬膜、くも膜、軟膜で覆われていて、くも膜と軟膜の間が「クモ膜下腔」です。
くも膜下腔に出血する状態がくも膜下出血で、多くの場合、「脳動脈瘤」と呼ばれる血管のふくらみがある日突然破裂することによって引き起こされます。
日本では1年間に人口10万人あたり約20人とされ、特に女性で多いと言われています(男女比=1:2)。2)
症状としては以下のような非常に強い症状です。
- 「頭を殴られたような」突然の激しい頭痛
- 意識が混濁
- 重症の場合は意識障害を伴い、呼吸停止になることも
予後は非常に不良で、動脈瘤破裂による初回のくも膜下出血の後には約35%が死亡に至り、数週間以内にはさらに15%が再破裂により死亡するとされています。1)
治療
治療の基本は再出血の予防です。2)
重症度合いに応じて、
- 開頭による外科的治療、あるいは
- 開頭を要しない血管内治療
が行われますが、多くの場合は外科的治療が適用とされます。
外科的治療としては「血管内コイル塞栓術」もしくは「顕微鏡下クリッピング術」がありますね。
脳血管攣縮
適切な外科的治療を行ったとしても、約1/3の患者さんでは脳動脈内腔が狭くなる遅発性脳血管攣縮が起こる場合があります。3)
症状としては手足の麻痺や意識の障害などです。
これは、エンドセリンなどの血管収縮物質がエンドセリン受容体に作用することで、脳血管の収縮・攣縮が引き起こされると考えられています。
過度な攣縮では脳梗塞になってしまいますし、脳血流量が低下することで虚血状態となり、酸素や栄養分が十分に供給されずに高度脳障害に繋がる可能性もあります。
脳血管攣縮の予防薬として、
- Rhoキナーゼ阻害薬のファスジル
- トロンボキサンA2合成酵素阻害薬のカタクロット(一般名:オザグレル)
などが使用されることもあります。2)
その他、海外ではカルシウムチャネル遮断薬のニモジピンが使用されていますが1-3)、残念ながら国内では未承認です。
今回ご紹介するピヴラッツは脳血管攣縮の予防薬として新たな治療選択肢として使用できる薬剤です!
ピヴラッツ(クラゾセンタン)の作用機序:速効性のエンドセリンA受容体拮抗薬
エンドセリン受容体にはA受容体とB受容体があります。
ピヴラッツは即効性のエンドセリンA受容体拮抗薬に分類されている薬剤です!
ピヴラッツがエンドセリンA受容体を即効性に遮断することで、脳血管攣縮作用が抑制されると考えられていますね。
ちなみに脳血管攣縮にはエンドセリンA受容体が重要だと考えられていますが、Aのみを抑制すると、B受容体から末梢血管透過性が亢進して浮腫を生じる可能性も示唆されています。4)
エビデンス紹介
動脈瘤性くも膜下出血後の日本人患者さんを対象に、2つの第Ⅲ相臨床試験が行われました。5)
共にプラセボに対するピヴラッツの有効性を検証する同じ試験デザインですが、一つは外科的クリッピング術、もう一つは血管内コイル術により動脈瘤が治療された患者さんが対象とされています。
主要評価項目は「動脈瘤性くも膜下出血後6週間以内の脳血管攣縮に関連する症状およびあらゆる原因による死亡の発現率」とされ、両試験共にピヴラッツ群で有意な改善が認められています。
副作用:浮腫に注意
1~3%未満に認められる副作用として、貧血、低ナトリウム血症、低血圧、肺うっ血、肝機能異常、顔面浮腫、浮腫、腹水などが報告されています。
重大な副作用としては
- 体液貯留:胸水(13.3%)、肺水腫(11.0%)、脳浮腫(0.5%)
- 頭蓋内出血(0.5%)、硬膜外血腫(頻度不明)
が報告されていますので、特に注意が必要です。
重要な基本的注意(抜粋)
本剤投与により肺水腫、胸水、脳浮腫等の体液貯留が発現することがあるため、本剤投与中は体液量の調節に留意し、体液貯留の初期症状を十分に観察すること。
特に、Triple H療法又はHyperdynamic療法が併用される場合は、体液貯留リスクが増強するおそれがあるため、慎重に体液量を管理すること。
用法・用量
通常成人には、クラゾセンタンとして300 mg(12 mL)を生理食塩液500 mLに加え、容量型の持続注入ポンプを用いて、17 mL/時の速度で静脈内に持続投与します(クラゾセンタンとして10 mg/時間)。
投与時期としては、くも膜下出血術後早期に本剤の投与を開始し、くも膜下出血発症15日目までの投与とされています。
肝機能、併用薬に応じて適宜減量
収載時の薬価
収載時(2022年4月20日)の薬価は以下の通りです。
- ピヴラッツ点滴静注液150mg:80,596円
算定根拠については以下をご参考ください。
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【新薬:薬価収載】8製品+再生医療等製品(2022年4月20日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ピヴラッツはこんな薬
- 速効性のエンドセリンA受容体拮抗薬
- エンドセリン受容体を遮断することで脳血管攣縮を予防する
- 浮腫に注意
これまで、くも膜下出血後の脳血管攣縮予防薬は治療選択肢が少なかったのですが、ピヴラッツは新たな治療選択肢として期待できます。
以上、今回はくも膜下出血と脳血管攣縮、そしピヴラッツ(クラゾセンタン)の作用機序について解説しました~♪
引用文献・資料等
- MSDマニュアル|くも膜下出血 (SAH)
- 日本脳卒中学会|脳卒中治療ガイドライン
- Idorsia Pharmaceuticals|くも膜下出血に伴う脳血管攣縮
- Am J Respir Crit Care Med 187: A1716, 2013
- ピヴラッツ点滴静注液 添付文書
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