7.炎症・免疫・アレルギー 10.皮膚・骨格筋

コセンティクス(セクキヌマブ)の作用機序【乾癬/強直性脊椎炎】

2021年9月27日コセンティクス皮下注(セクキヌマブ)の「尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬」に小児適応を追加することが承認されました!併せて75mg製剤も追加されています。

 

コセンティクスは2015年12月に「乾癬(尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬)」の治療薬として承認され、その後順次適応拡大されています。

  • 2018年12月21日:既存治療で効果不十分な強直性脊椎炎
  • 2020年8月21日:既存治療で効果不十分なX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
  • 2021年9月27日:小児適応の追加と75mg製剤の追加

 

今回は乾癬・強直性脊椎炎とコセンティクス(セクキヌマブ)の作用機序についてご紹介します。

 

皮膚のターンオーバー

通常、皮膚は外からの刺激・乾燥等を防御したり、細菌・ウイルスの侵入を防ぐといった免疫機能を司っています。

構造としては、表面から順に、

  • 表皮
  • 真皮
  • 皮下組織

の3層に分かれています。

 

また、表皮はさらに

  • 角質層
  • 顆粒層
  • 有棘層
  • 基底層

の4層から構成されています。

 

皮膚はその機能を保つため、基底層で常に新しい細胞が作られています

基底層で新しくできた細胞は徐々に角層へと押し上げられ、最終的には垢となって剥がれ落ちます。

このような皮膚の細胞サイクルを「ターンオーバー(分化)」と呼び、通常、約28~40日サイクルで繰り返されています。

 

乾癬とは

乾癬の患者さんでは、慢性の炎症を伴う何らかの原因で上記のターンオーバーのサイクルが4~5日と極端に短くなっています。

そのため、皮膚が盛り上がったような状態(“肥厚”と呼びます)になり、赤い発疹(“紅斑”と呼びます)を伴うことを特徴とします。

また、皮膚の一部がかさかさになって剥げ落ちる(“落屑”と呼びます)こともあります。

 

乾癬の分類

乾癬は5つの種類に分類されていますが、約9割は「尋常性乾癬」です

  • 尋常性乾癬
  • 関節症性乾癬
  • 滴状乾癬
  • 乾癬性紅皮症
  • 膿疱性乾癬

乾癬性紅皮症や膿疱性乾癬は非常に稀ですが、発症すると症状が厳しいため、重症になることが多いです。

今回のコセンティクスの適応追加によって、「尋常性乾癬」、「関節症性乾癬」、「膿疱性乾癬」に使用できるようになりました!

 

乾癬の原因

明確な原因は不明確ですが、

  • 遺伝的素因
  • 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)

などによって、免疫機能が異常になることで発症すると考えられています。

 

何らかの原因によって、マクロファージ等が産生する炎症性サイトカイン(IL-12、IL-23、TNFα)等によって炎症が引き起こされ、乾癬の症状が発現します。

IL-23はヘルパーT細胞の一種であるTh17を活性化し、Th17が産生する「IL-17A」も乾癬の発症と維持に重要であると考えられています。

 

乾癬の重症度と治療

乾癬の重症度は皮膚の症状や状態、患者さんが感じる不便さ、等を指標に「軽症」、「中等症」、「重症」の3つに分けられています。

 

重症度に応じて、以下の4つの治療が単独もしくは組み合わせて行われますが、中心となるのは外用療法です。

  • 外用療法(塗り薬)
  • 光線療法(紫外線照射)
  • 内服療法(経口薬)
  • 生物学的製剤治療(注射薬)

 

外用療法(塗り薬)には、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬が用いられます。

内服療法(経口薬)には、チガソン(一般名:エトレチナート)等のビタミンA誘導体の他、免疫抑制薬やPDE4阻害薬のオテズラ(一般名:アプレミラスト)が重症度に応じて使用されます。

 

そして生物学的製剤治療は基本的には、以下のような患者さんにしか使用することができません。

  • 外用療法、光線療法、内服療法で改善しない患者さん
  • 乾癬性関節炎で痛みが激しい患者さん
  • 乾癬性紅皮症膿疱性乾癬等の重症な患者さん

 

また、生物学的製剤治療は日本皮膚科学会で定められた病院でのみ治療ができます。

 

強直性脊椎炎とは

強直性脊椎炎は原因不明のリウマチ性疾患とされており、指定難病の一つです。

 

関節リウマチは手足の小さな関節から発生するにに対し、強直性脊椎炎は比較的大きな関節(股、膝、足、肩など)に起こることがあります。

 

原因は不明ですが、乾癬と同様、Th17が産生する「IL-17A」が発症に重要であると考えられています。

 

治療薬としては、NSAIDsを基本としますが、無効な場合にはレミケードやヒュミラといった抗TNFα抗体薬(生物学的製剤)が使用されます。

【関節リウマチ】生物学的製剤の作用機序・副作用・特徴のまとめ

続きを見る

 

しかし、上記も無効な場合、有効な薬剤はありませんでした。

今回ご紹介するコセンティクスは上記の生物学的製剤の治療歴に関わらず効果が期待されています。1)

 

1)Mod Rheumatol. 2019 Jan 3:1-9.

 

コセンティクス(一般名:セクキヌマブ)の作用機序

コセンティクスは、Th17(ヘルパーT細胞の一種)が産生する「IL-17A」を選択的に阻害するモノクローナル抗体薬です。

 

IL-17Aの作用が抑制されることで、炎症を抑え、乾癬や強直性脊椎炎の症状が改善すると考えられます。

 

まとめ・あとがき

コセンティクスはこんな薬

  • 炎症に関与するIL-17Aを選択的に阻害する抗体薬
  • 乾癬、強直性脊椎炎、体軸性脊椎関節炎に使用できる

 

同様の作用機序を有する薬剤としてはトルツ(一般名:イキセキズマブ)があり、2019年に強直性脊椎炎への適応拡大が承認されました。

トルツ(イキセキズマブ)の作用機序【乾癬・強直性脊椎炎】

続きを見る

 

その他の乾癬に使用する生物学的製剤については以下の記事をご覧ください。

【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ

続きを見る

 

以上、今回は乾癬とコセンティクス(一般名:セクキヌマブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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