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2026年5月25日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて、「ESR1遺伝子変異の乳がん」を対象疾患とするエトカマ錠(カミゼストラント)の承認可否が審議される予定です!
現時点では未承認のため、ご注意ください。
基本情報
| 製品名 | エトカマ錠75mg |
| 一般名 | カミゼストラント |
| 製品名の由来 | |
| 製造販売 | アストラゼネカ(株) |
| 効能・効果 | 内分泌療法中にESR1遺伝子変異が確認され疾患進行が認められないホルモン受容体陽性 かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん |
| 用法・用量 | 1日1回経口投与? |
| 収載時の薬価 | |
| 発売日 |
エトカマは新規の経口の選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)ですね。
- イムルリオ錠:ESR1遺伝子変異かつ内分泌療法後に増悪した場合(増悪後)
- エトカマ錠:ESR1遺伝子変異が内分泌療法中に確認された場合(増悪前)
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イムルリオ(イムルネストラン)の作用機序【乳がん】
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ホルモン受容体陽性かつHER2陰性乳がんでは、ホルモン療法としてアロマターゼ阻害薬が使用されますが、その耐性遺伝子であるESR1遺伝子変異が治療中に認められる場合にアロマターゼ阻害薬から切り替えて使用するようです。
今回は乳がんと共に、エトカマ(カミゼストラント)の作用機序・エビデンスについて解説していきます。
乳がんの概要
2021年の女性乳がんの罹患数は約98,782人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。
手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。
ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。
従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!
また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られていて、多くの場合、ホルモン受容体(エストロゲン受容体)陽性の乳がんです。

その他、乳がんの15%~25%は「HER2(“ハーツー”と読みます)」と呼ばれるタンパク質が細胞膜に発現していることもあり、従来は予後不良と言われていました。

早期の乳がんの治療
早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。
早期乳がんの中でも術後に再発リスクが高いと診断された患者さんでは、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える薬物療法(初期治療)が行われることがあります。
治療法については、以下の記事をご参照ください。
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フェスゴ配合皮下注(ペルツズマブ/トラスツズマブ)の作用機序【乳がん/大腸がん】
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転移のある乳がんの治療(手術不能)
発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。
転移のある乳がんの場合も、がん細胞の性質によって薬物療法の種類が異なります。
- ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法(タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬など)±CDK4/6阻害薬
- HER2陽性の乳がん:ハーセプチン±パージェタ±抗がん剤
- ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん):抗がん剤±免疫チェックポイント阻害薬
最も多いとされるのが、①「ホルモン陽性の乳がん」で、この場合はホルモン療法が基本で、可能であればCDK4/6阻害薬を併用します。
なお、ホルモン療法は、閉経前であればタモキシフェンが使用され、閉経後であればアロマターゼ阻害薬が使用されます。
また、近年ではCDK4/6阻害薬を併用する場合、閉経前であってもアロマターゼ阻害薬が使用されるケースがありますね(アロマターゼ阻害薬の添付文書上は適応外に該当)。1)
アロマターゼ阻害薬は、アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素であるアロマターゼを選択的に阻害する薬剤です。
しかしながら、アロマターゼ阻害薬の治療に耐性を示すことがしばしばあり、その機序として知られているのが「ESR1遺伝子変異」1-2)です。この遺伝子に変異があると、エストロゲンがなくてもエストロゲン受容体が恒常的に活性化してしまいます。

ESR1遺伝子変異によって耐性を獲得されてしまうと、アロマターゼ阻害薬を投与したとしても、がんの増殖を抑制できなくなってしまいます。
今回ご紹介するエトカマは、
- アロマターゼ阻害薬による治療中に、
- ctDNA検査でESR1遺伝子変異が確認された
- ホルモン受容体陽性・HER2陰性の乳がん
に対して、CDK4/6阻害薬のベージニオ(アベマシクリブ)との併用で効果が期待されていますよー!(アロマターゼ阻害薬から切り替える)
ちなみに、同治療ラインにおいてPIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子変異がある場合には、AKT阻害薬のトルカプ(カピバセルチブ)が使用可能です。
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トルカプ(カピバセルチブ)の作用機序【乳がん】
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参考までに、「②HER2陽性の乳がん」や「③ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん)」の場合は以下の記事をご参照ください。
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エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】
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エトカマ(カミゼストラント)の作用機序:経口投与可能なSERD
エトカマは、フェソロデックス(フルベストラント)と同じく選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD:Selective estrogen receptor degrader)に分類されています。
ESR1遺伝子変異によってアロマターゼ阻害薬に対する抵抗性があったとしても、エストロゲン受容体そのものを分解するため、がん細胞の増殖を抑制できると考えられていますね。
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また、類薬のフェソロデックスは注射剤(筋肉内投与)でしたが、エトカマは経口投与可能です。
エビデンス紹介:SERENA-6試験
根拠となった臨床試験(SERENA-6試験)をご紹介します。3)
本試験は、1次治療としてアロマターゼ阻害薬とCDK4/6阻害薬(パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブのいずれか)の併用療法を6か月以上受けており、画像上の病勢進行はないものの、ctDNA検査でESR1遺伝子変異が検出されたHR陽性・HER2陰性の進行乳がん患者さんを対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験で、アロマターゼ阻害薬からエトカマ(75mg 1日1回)に切り替える群と、アロマターゼ阻害薬をそのまま継続する群の有用性が検証されました(いずれの群もCDK4/6阻害薬は継続)。
リボシクリブは国内未承認
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)*」とされ、結果は以下の通りでした。
| エトカマ切り替え群 | アロマターゼ阻害薬継続群 | |
| PFS中央値 | 16.0か月 | 9.2か月 |
| HR=0.44(95%CI:0.31-0.60) p<0.00001 |
||
*PFS(無増悪生存期間):がんが増悪するまたは死亡までの期間
全生存期間については未報告のため、今後の追加解析が望まれます。
ctDNA(循環腫瘍DNA)と検査タイミング
ctDNA(循環腫瘍DNA)は、がん細胞が死滅したり壊れたりするときに、血液中に放出されるがん由来のDNAの断片のことです。
従来の生検(腫瘍の組織を針などで採取する検査)とは異なり、採血だけでがんの遺伝子変異を調べることができるため、「リキッドバイオプシー」と呼ばれ、患者さんの体への負担が非常に少ないのが大きなメリットですね。
エトカマの投与開始を判断するためには、アロマターゼ阻害薬とCDK4/6阻害薬による治療中に、定期的にctDNAを測定する必要があります。
臨床試験では、2〜3か月ごとの定期的な画像検査(CTやMRIなど)に合わせてctDNA検査が行われていましたが、
- 画像上の増悪がない かつ
- ctDNAでESR1遺伝子変異が検出
された場合にのみ、アロマターゼ阻害薬からエトカマに切り替えが可能です。
国内では、腫瘍マーカー等は定期的に検査するものの、CT検査はそこまで定期的に行われないこともしばしばあるため、実臨床でどのように上記を検出するのか、課題がありそうな気がします。
「ctDNA検査でESR1遺伝子変異が検出されたけど、CT検査はまだしていなかった…」
「ctDNA検査は一度だけなので、暫く検査せずに様子を見よう。あ、その間にCT検査で増悪が…」
みたいなケースは実臨床で多々ありそうです。
用法・用量
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、1日1回経口投与とされていました。
副作用
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、好中球減少、光視症などが報告されていました。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
イムルリオとの違い・比較
同じく経口のSERDであるイムルリオとの違い・比較については、後日更新予定です。
まとめ・あとがき
エトカマはこんな薬
- 国内2製品目の経口のSERD(選択的エストロゲン受容体分解薬)
- アロマターゼ阻害薬治療中にESR1遺伝子変異が確認されたホルモン受容体陽性・HER2陰性乳がんに対して効果が期待
- アロマターゼ阻害薬から切り替えて、CDK4/6阻害薬と併用する
乳がんの治療において、がんが進行する前に血液検査で耐性の兆候(ESR1変異)を捉え、先回りして薬を切り替えるという戦略は、これまでになかった新しいアプローチです。
エトカマは経口薬であり、1次治療で用いているCDK4/6阻害剤を継続したまま使用できるため、患者さんにとっても化学療法への移行を遅らせ、QOLを保ちながら治療を続けられる大きな希望になると思います。
ただし、米国では2026年4月末にFDAの諮問委員会(ODAC)にて、エトカマの「進行前の切り替え」というアプローチについて議論が行われ、PFSの改善は認められつつも、全生存期間(OS)のデータが未成熟であることなどから現時点では承認見送りの勧告が出されています。
日本ではどのように判断されるのか、第二部会の結果が非常に注目されますね…っ!
以上、今回は乳がんと共に、エトカマ(カミゼストラント)の作用機序・エビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
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