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2025年8月29日、薬事審議会・医薬品第一部会にて「片頭痛」を対象疾患とするナルティークOD錠(リメゲパント)の承認可否が審議される予定です。
ファイザー|申請のニュースリリース
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
製品名 | ナルティークOD錠75mg |
一般名 | リメゲパント硫酸塩水和物 |
製品名の由来 | |
製造販売 | ファイザー(株) |
効能・効果 | 片頭痛発作の急性期治療及び発症抑制? |
用法・用量 | 急性期治療:1回75mgを経口投与? 予防:1回75mgを隔日で経口投与? |
収載時の薬価 | |
発売日 |
ナルティークは国内初の経口CGRP受容体拮抗薬です!!

- エムガルティ皮下注(ガルカネズマブ):抗CGRP抗体製剤(2021年1月承認)
- アジョビ皮下注(フレマネズマブ):抗CGRP抗体製剤(2021年6月23日承認)
- アイモビーグ皮下注(エレヌマブ):抗CGRP受容体抗体製剤(2021年6月23日承認)
また、上記のCGRP関連抗体薬は「予防」にしか使用できませんでしたが、ナルティークは「急性期治療」と「予防」の両方に使用可能です。
今回は片頭痛とナルティーク(リメゲパント)の作用機序・エビデンスについて紹介していきます。
片頭痛とは
片頭痛は日本人の約10%(約1000万人)に認められる疾患です。
年代としては20歳~40歳代、性別は女性に多いとされています(男:女=1:4)。
もしかしたら今ご覧の方々でも経験されたことがあるかもしれません。
症状としては
- ズキズキと脈打つような痛み
- 頭の片側に急に起こる
- 一度発症すると4~72時間くらい持続する
が特徴的です。

人によっては前兆症状として
- 目のちらつき(キラキラした感じ)
- 視野が狭くなる
- しびれ
- 言語障害
といった症状が現れることもあります。
片頭痛を発症しやすい要因として、
- ストレス
- 睡眠不足
- 高血圧
- ホルモンバランスの乱れ
などが知られていますね。
片頭痛の原因:三叉神経血管説
片頭痛の原因は、明確には解明されていませんが、
- 血管説(セロトニン説)
- 神経説
- 三叉神経血管説
などが提唱されています。1)
最近では、最も有力なのは「三叉神経血管説」と言われています。

何らかの原因で三叉神経が刺激されると、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」などの血管作動性物質が分泌されることが知られています。
CGRPは血管拡張作用がある物質で、血管のCGRP受容体に作用すると、血管の過度な拡張によって周囲の神経が圧迫されて痛みを生じます。
その他にもCGRPは炎症反応を増強させたり、痛みを増強させる作用もあるため、これらの作用によって片頭痛が引き起こされます。
このように血管の過度な拡張と炎症反応によって片頭痛が生じると考えられています。
片頭痛の治療
片頭痛の治療薬には、
- 急性期治療薬(片頭痛の治療目的)
- 予防薬(片頭痛の予防目的)
があります。
急性期治療薬 (片頭痛の治療目的)
今起こっている片頭痛を速やかに消失させる目的の薬です。
重症度に応じて、
- 軽度~中等度:アセトアミノフェン、NSAIDsなど
- 中等度~重度:トリプタン製剤
の使用が推奨されています。
ただし、軽度~中等度の頭痛でも、アセトアミノフェンやNSAIDsの効果が無い場合、トリプタン製剤に変更することもあります。
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【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け
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吐き気や嘔吐を併発している場合、制吐薬(プリンペランやナウゼリン等)を併用します。
ただし、トリプタン製剤は脳心血管疾患の既往患者さんなどは禁忌に該当するため、しばしば使いづらいことがありました。近年登場したレイボー(ラスミジタン)は、血管への影響がないため、使用が広がりつつあります。
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レイボー(ラスミジタン)の作用機序・トリプタンとの違い【片頭痛】
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予防薬 (片頭痛の予防目的)
片頭痛発作が月に2回以上または6日以上ある場合、予防療法が行われることがあります。1)

主に使用される薬剤は以下です。
- カルシウム拮抗薬
- 抗てんかん薬
- β遮断薬
- 抗うつ薬
- 漢方薬
2021年には新たな予防薬としてCGRP関連抗体薬も登場してきました。
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エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】
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ナルティークは1日おきに服用(隔日投与)することで、片頭痛の予防効果が期待されています!
ナルティーク(リメゲパント)の作用機序・特徴
ナルティークは片頭痛の発症や痛みに関与していると考えられているCGRPの受容体を選択的に阻害するCGRP受容体拮抗薬です。2)
CGRP:Calcitonin Gene-related Peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)

CGRPの働きが阻害されることで三叉神経付近の過度な血管拡張・炎症が抑制され、片頭痛の急性期症状の抑制および片頭痛発症を予防すると考えられています。
血管への作用や禁忌項目
ちなみに、トリプタン製剤は三叉神経終末5-HT1D受容体と血管内皮細胞5-HT1B受容体の作動薬です。
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【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け
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血管内皮細胞5-HT1B受容体が刺激されると各種血管が収縮するため、
- 心筋梗塞
- 虚血性心疾患
- 脳血管障害
- 一過性脳虚血性発作の既往
- 末梢血管障害
- コントロールされていない高血圧症
などの患者さんに対して、トリプタン製剤は禁忌とされています。
ナルティークは、非臨床において高用量であっても血管や心臓に影響はほとんどないことが示唆されています。2)
そのため、血管系の禁忌は無いと考えていますが、正式承認後に確認してみます。

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レイボー(ラスミジタン)の作用機序・トリプタンとの違い【片頭痛】
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ナルティークの正式承認後に、トリプタン製剤およびレイボーとの違いについて考察してみたいと思います。
エビデンス紹介
急性期治療および予防の根拠となったそれぞれの臨床試験をご紹介します。
なお、日本でも同様の試験が実施されていましたが、ここでは海外のデータを紹介していきます。
急性期治療:BHV3000-303試験
急性期治療の根拠となった臨床試験をご紹介します。3)
本試験は中等度から重度の疼痛強度の片頭痛発作患者さんを対象に、ナルティークとプラセボを比較する第Ⅲ相試験です。
主要評価項目は、投与後2時間における「痛みの消失割合」および「最も煩わしい随伴症状(MBS)*の消失割合」とされ、結果は以下の通りでした。
ナルティーク群 | プラセボ群 | |
痛みの消失割合 | 21% | 11% |
p<0.0001 | ||
MBSの消失割合 | 35% | 27% |
p=0.0009 |
*MBS(most bothersome symptom):悪心、音過敏及び光過敏に関連した症状から被験者が選択した最も煩わしい症状

予防:BHV3000-305試験(プラセボ対照)
続いて、予防の根拠となった臨床試験をご紹介します。4)
本試験は片頭痛の病歴が1年以上ある成人患者さんを対象に、ナルティークとプラセボの隔日投与における予防効果を検証した第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「治療期間中の1か月当たりの片頭痛日数のベーススラインからの平均変化」とされ、結果は以下の通りでした。
ナルティーク群 | プラセボ群 | |
1か月当たりの片頭痛日数の ベーススラインからの平均変化 |
-4.3日 | -3.5日 |
p=0.0099 |
ナルティーク群で有意な予防効果が認められていますね!
予防:I5Q-MC-CGBD試験(エムガルティとの比較)
承認根拠ではありませんが、参考までにナルティークとエムガルティ(ガルカネズマブ)の予防効果について直接比較した第Ⅲ相試験をご紹介します。5)
本試験は反復性片頭痛患者さんを対象に、ナルティーク群(プラセボの皮下注投与も併用)とエムガルティ群(プラセボのOD錠も併用)を比較した二重盲検か第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「治療期間中の1か月当たりの片頭痛日数のベーススラインから50%以上減少した参加者の割合」とされ、結果は以下の通りでした(ナルティークに対するエムガルティの優越性を検証)。
ナルティーク群 | エムガルティ群 | |
1か月当たりの片頭痛日数のベーススラインから 50%以上減少した参加者の割合 |
61% | 62% |
P=0.70 |
両群共に有意差はないという結果でした。予防効果は同じくらいということですね。

以上の結果から、ナルティークは片頭痛予防としてエムガルティと同程度の効果が期待できそうということが分かりました。
副作用
後日更新予定です。
過去に実施された経口CGRP受容体拮抗薬では、肝機能障害が高頻度に認められていた2)ことから、ナルティークでも注意が必要かもしれません。
用法・用量
後日更新予定です。
CGRP関連抗体薬との違い・比較
正式承認後に一覧表を作成予定です!
現時点でのCGRP関連抗体薬の一覧表は以下の記事に掲載しています。
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エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】
続きを見る
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
ナルティークはこんな薬
- 国内初の経口CGRP受容体拮抗薬
- 急性期治療および予防のいずれにも使用可能
- 予防効果はエムガルティと同程度
片頭痛は近年、CGRP関連抗体薬等も登場し、薬剤開発が活発化しています。
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エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】
続きを見る
急性期の治療薬としてはトリプタン製剤が長く使用されていますが、心血管障害や脳血管障害の患者さんには使用し辛く、新たな治療選択肢が望まれていました。
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【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け
続きを見る
そんな中、レイボーが新規の急性期治療薬として登場し、今回ナルティークも新たな治療選択肢に加わります!

以上、今回は片頭痛とナルティーク(リメゲパント)の作用機序・エビデンスについて紹介しました!
参考資料・論文等
- 日本頭痛学会|慢性頭痛の診療ガイドライン2013、CGRP 関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)
- CNS Drugs. 2023 Feb 4;37(3):255–265.
- BHV3000-303試験:Lancet. 2019 Aug 31;394(10200):737-745.
- BHV3000-305試験:Lancet. 2021 Jan 2;397(10268):51-60.
- I5Q-MC-CGBD試験:Neurol Ther. 2024 Feb;13(1):85-105.
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