1.中枢神経系

エクフィナ(サフィナミド)の作用機序:アジレクト/エフピーとの違い【パーキンソン病】

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2019年9月20日、「パーキンソン病」を対象疾患とするエクフィナ錠(サフィナミド)が承認されました!

基本情報

製品名 エクフィナ錠50mg
一般名 サフィナミドメシル酸塩
製品名の由来 Extend Quality 及び Safinamideを組み合わせた
製造販売 エーザイ(株)
効能・効果 レボドパ含有製剤で治療中の
パーキンソン病におけるwearing off現象の改善
用法・用量 本剤はレボドパ含有製剤と併用する。
通常、成人にはサフィナミドとして50mgを1日1回経口投与する。
なお、症状に応じて100mgを1日1回経口投与できる。
収載時の薬価 1錠:963.90円(1日薬価:963.90円)

 

海外では製品名「Xadago」として既に承認・販売されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
エクフィナはMAO-B阻害剤に分類されていますが、それ以外の作用も期待されています。

 

今回はパーキンソン病エクフィナ(サフィナミド)の作用機序についてご紹介します。

 

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、脳内の「黒質」という部分のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患で、難病に指定されています。1)

 

特徴的な症状としては、

  • 安静時の振戦(手足が震える)
  • 筋固縮(筋肉が固くなる)
  • 無動(動きが遅くなる)
  • 姿勢反射障害(体のバランスが悪くなる)

などがあります。

 

発症年齢は50~65歳に多いとされており、高齢になるほど発病率が増加する疾患です。

 

パーキンソン病の原因

現時点では原因不明とされていますが、何らかの遺伝子異常や環境因子が影響していると言われています。

パーキンソン病の各症状は、脳内の神経細胞から分泌されるドパミン量が減少することで発現します。

パーキンソン病とドパミン量

 

パーキンソン病の治療

治療の基本は薬による薬物治療です。2)

 

薬物治療にはいくつかの種類がありますが、最も基本となるのが

  • L-ドパの補充
  • ドパミンアゴニスト

です。

 

ドパミンは、チロシン→L-ドパを経由して脳の神経細胞内で合成されます。

直接ドパミンを補充したとしても、ドパミンは血液脳関門を通過できないため脳内に入ることが出来ません

 

そのため、ドパミンの前駆物質であるL-ドパ(血液脳関門を通過できる)を補充することでドパミンの合成を促します。

 

また、ドパミンはドパミン受容体を刺激することで生理活性を示すことから、ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体刺激薬)もパーキンソン病の治療薬として用いられます。

パーキンソン病の治療:L-ドパの補充

 

L-ドパ治療とウェアリング・オフ現象

L-ドパは投与すると比較的速やかに代謝され、体内から消失してしまいます。

 

パーキンソン病の初期では、神経細胞内にドパミンが貯蓄されていますので、L-ドパの効果も長期間続き(オン状態)、症状もコントロールできます。

しかし、パーキンソン病が進行すると、貯蓄されていたドパミンが消費されていきますので、L-ドパで補充しても、効果が長続きしなくなってしまいます。

 

このため、L-ドパの効果が無くなる時間(オフ状態)が生じてしまい、次のL-ドパを補充する前にパーキンソン病の症状が発現してしまいます。

パーキンソン病とウェアリング・オフ現象

 

木元 貴祥
木元 貴祥
このように効果があるオン状態と効果が無くなるオフ状態を繰り返す現象を「ウェアリング・オフ(Wearing off)現象」と呼びます。

 

エクフィナ(サフィナミド)の作用機序

ドパミンはMAO-Bと呼ばれる酵素によって分解されることが知られています。

 

ウェアリング・オフ現象では、体内のドパミン量が十分ではないため、L-ドパの効果が持続しなくなってしまっています。

 

 

今回ご紹介するエクフィナはMAO-Bを可逆的に阻害するといった作用機序を有しています。

MAO-Bを阻害することでドパミンの分解が抑制され、体内のドパミン量が回復する結果、ウェアリング・オフ現象の改善・パーキンソン病症状の改善効果が期待されます。

エクフィナ(サフィナミド)の作用機序

 

その他にも、

  • ナトリウム/カルシウムチャネル阻害
  • グルタミン酸放出抑制作用

を有することが示唆されていて、神経保護作用もあるのではないか、と考察されています。3-4)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ただし、これがパーキンソン病のどのような効果・安全性に寄与するのかは不明ですね。

 

エビデンス紹介:ME2125-3試験

根拠となった国内臨床試験はいくつかありますが、代表例はME2125-3試験をご紹介します。

本試験はレボドパ製剤を併用中のウェアリング・オフ現象を有する日本人パーキンソン病患者さんを対象に、エクフィナ(50mgまたは100mgの1日1回経口)とプラセボを比較する第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「24週後における1日平均オン時間のベースラインからの変化量」とされていて、結果は以下の通りでした。5)

試験群 プラセボ エクフィナ
50mg
エクフィナ
100mg
24週後における
1日平均オン時間の
ベースラインからの変化量
-0.17±0.26hr 1.22±0.26hr 1.49±0.26hr
- プラセボとの差
p=0.0002
プラセボとの差
p<0.0001

 

副作用

重大な副作用として、

  • 幻覚等の精神症状:幻視(3.2%)、幻覚(1.1%)等
  • 傾眠(1.9%)、突発的睡眠(0.4%)
  • 衝動制御障害(0.2%)
  • セロトニン症候群(頻度不明)
  • 悪性症候群(頻度不明)

などが挙げられていますので注意が必要です。

 

用法・用量

エクフィナは必ずレボドパ含有製剤と併用します。

通常、成人にはサフィナミドとして50mgを1日1回経口投与しますが、症状に応じて100mgを1日1回経口投与とすることも可能です。

 

収載時の薬価

薬価収載時(2019年11月19日)の薬価は以下の通りです。

 

  • エクフィナ錠50mg 1錠:963.90円(1日薬価:963.90円)

 

収載時の算定根拠については以下の記事で解説しています。

【新薬:薬価収載】14製品と市場拡大再算定(2019年11月19日)

続きを見る

 

エクフィナとアジレクト、エフピーとの違い

同様の作用機序(MAO-B阻害)を有する薬剤としては、

  • エフピー(一般名:セレギリン)
  • アジレクト(一般名:ラサギリン)

がありますが、いずれもMAO-Bを非可逆的に阻害します。

アジレクト(ラサギリン)の作用機序と副作用【パーキンソン病】

続きを見る

 

今回ご紹介したエクフィナは可逆的な阻害ですので、効果や副作用の発現等に違いがあるかもしれません。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
この差が臨床的な有効性や安全性にどのように影響するのか興味深いと感じます。

 

その他の違いについては一覧表にまとめてみましたのでご参考にしていただければ嬉しいです。

エクフィナ、アジレクト、エフピーの違い・比較一覧表:MAO-B阻害薬(パーキンソン病)

 

エフピーは「アンフェタミン骨格」を有するため、覚せい剤原料に該当していますが、アジレクトやエクフィナは「アンフェタミン骨格」を有さないため、覚せい剤原料には該当しませんね

 

まとめ・あとがき

エクフィナはこんな薬

  • MAO-Bの可逆的阻害作用によってドパミン量を回復させる
  • アンフェタミン骨格を有さないため、覚醒剤原料ではない
  • 類薬にはエフピーとアジレクトがある

 

パーキンソン病は未だ根治治療がなく、症状をいかにコントロールできるかが大切です。

エクフィナはウェアリング・オフ現象の改善が期待できることから、パーキンソン病患者さんの症状改善に寄与できると考えます。

 

以上、今回はパーキンソン病とエクフィナ(サフィナミド)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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