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2021年6月23日、「片頭痛発作の発症抑制」を効能・効果とするアイモビーグ(エレヌマブ)が承認されました!
アムジェン|ニュースリリース
基本情報
製品名 | アイモビーグ皮下注70mgペン |
一般名 | エレヌマブ |
製品名の由来 | 海外における販売名(AIMOVIG)に準じた。 |
製造販売 | アムジェン(株) |
効能・効果 | 片頭痛発作の発症抑制 |
用法・用量 | 通常、成人にはエレヌマブとして70mgを4週間に1回皮下投与する。 |
収載時の薬価 | 41,356円 |
アイモビーグは海外では既に「Aimovig」の製品名で承認・販売されている抗CGRP受容体抗体製剤ですね!
CGRP:Calcitonin Gene-related Peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)
国内ではCGRPに関連する薬剤の開発がいくつも進行中!今後期待されている新たな治療選択肢です。
- エムガルティ(ガルカネズマブ):抗CGRP抗体製剤(2021年1月承認)
- アジョビ(フレマネズマブ):抗CGRP抗体製剤(2021年6月23日承認)
上記2製剤はCGRPに対する抗体薬ですが、アイモビーグはCGRP受容体に対する抗体薬のため、若干作用点が異なります。
片頭痛予防はこれまでカルシウム拮抗薬や抗てんかん薬の連日投与が基本でした。
承認時には「注射針カバーは天然ゴム(ラテックス)を含み、アレルギー反応を起こすことがあるので、投与に際し、問診を行うこと。」とありましたが、2023年2月にはラテックスフリー製剤となりました。
今回は片頭痛とアイモビーグ(エレヌマブ)の作用機序について紹介していきます。
片頭痛とは
片頭痛は日本人の約10%(約1000万人)に認められる疾患です。
年代としては20歳~40歳代、性別は女性に多いとされています(男:女=1:4)。
もしかしたら今ご覧の方々でも経験されたことがあるかもしれません。
症状としては
- ズキズキと脈打つような痛み
- 頭の片側に急に起こる
- 一度発症すると4~72時間くらい持続する
が特徴的です。
人によっては前兆症状として
- 目のちらつき(キラキラした感じ)
- 視野が狭くなる
- しびれ
- 言語障害
といった症状が現れることもあります。
片頭痛を発症しやすい要因として、
- ストレス
- 睡眠不足
- 高血圧
- ホルモンバランスの乱れ
などが知られていますね。
片頭痛の原因:三叉神経血管説
片頭痛の原因は、明確には解明されていませんが、
- 血管説(セロトニン説)
- 神経説
- 三叉神経血管説
などが提唱されています。1)
最近では、最も有力なのは「三叉神経血管説」と言われています。
何らかの原因で三叉神経が刺激されると、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」などの血管作動性物質が分泌されることが知られています。
CGRPは血管拡張作用がある物質で、血管のCGRP受容体に作用すると、血管の過度な拡張によって周囲の神経が圧迫されて痛みを生じます。
その他にもCGRPは炎症反応を増強させたり、痛みを増強させる作用もあるため、これらの作用によって片頭痛が引き起こされます。
このように血管の過度な拡張と炎症反応によって片頭痛が生じると考えられています。
片頭痛の治療
片頭痛の治療薬には、
- 急性期治療薬(片頭痛の治療目的)
- 予防薬(片頭痛の予防目的)
があります。
急性期治療薬 (片頭痛の治療目的)
今起こっている片頭痛を速やかに消失させる目的の薬です。
重症度に応じて、
- 軽度~中等度:アセトアミノフェン、NSAIDsなど
- 中等度~重度:トリプタン製剤
の使用が推奨されています。
ただし、軽度~中等度の頭痛でも、アセトアミノフェンやNSAIDsの効果が無い場合、トリプタン製剤に変更することもあります。
-
【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け
続きを見る
吐き気や嘔吐を併発している場合、制吐薬(プリンペランやナウゼリン等)を併用します。
予防薬 (片頭痛の予防目的)
片頭痛発作が月に2回以上または6日以上ある場合、予防療法が行われることがあります。1)
主に使用される薬剤は以下です。
- カルシウム拮抗薬
- 抗てんかん薬
- β遮断薬
- 抗うつ薬
- 漢方薬
今回ご紹介するアイモビーグは1か月毎の皮下注投与で片頭痛の発症予防効果が期待されている薬剤です!新たな治療選択肢として期待できますね。
類薬のエムガルティ(ガルカネズマブ)は既にガイドラインにも掲載されているため、アイモビーグも同様になると予想されます。1)
-
エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】
続きを見る
それではアイモビーグの作用機序について解説していきます。
アイモビーグ(エレヌマブ)の作用機序
アイモビーグは片頭痛の発症に関与していると考えられているCGRPの受容体を選択的に阻害する抗CGRP受容体抗体製剤です。
CGRP:Calcitonin Gene-related Peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)
CGRPの働きが阻害されることで三叉神経付近の過度な血管拡張・炎症が抑制され、片頭痛の発症を予防すると考えられています。
エビデンス紹介:20120309試験、20170609試験
根拠となったのは以下の日本人を対象とした臨床試験です。
- 20120309試験2):反復性片頭痛患者さんを対象とした第Ⅱ相試験
- 20170609試験:反復性および慢性片頭痛患者さんを対象とした第Ⅲ相試験
第Ⅱ相試験では平均月間片頭痛日数(MMD)のベースラインからの変化において、プラセボ群と比較してアイモビーグ群で有意に減少していましたよ。2)
副作用:便秘に注意
1%以上に認められる副作用として、便秘、注射部位反応(紅斑、そう痒感、疼痛、腫脹など)、傾眠などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 重篤な過敏症反応(頻度不明)
- 重篤な便秘(頻度不明)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
過敏症反応は類薬(エムガルティ、アジョビ)と同じですが、重篤な便秘についてはアイモビーグにのみ記載されています。多くの症例では、アイモビーグの初回投与後に発現しているとのことです。
<重要な基本的注意>
- 本剤投与後に、重篤な合併症を伴う便秘が発現する場合があることを患者に説明し、便秘が回復しない又は悪化する場合には医療機関を受診するよう患者に指導すること。
- 特に、便秘の既往歴を有する患者及び消化管運動低下を伴う薬剤を併用している患者では発現リスクが高くなるおそれがあるため注意すること。
CGRP受容体は消化管系にも存在しているため、アイモビーグがそれを阻害することで消化管機能が影響を受けるのではないかと考えられていますね(審査報告書より)。
用法・用量、在宅自己注射
通常、成人にはエレヌマブとして70mgを4週間に1回皮下投与します。
同日承認されたアジョビ(フレマネズマブ)は3か月に一度の投与で効果が期待されているので、使い分けのヒントになるかもしれませんね。
-
アジョビ(フレマネズマブ)の作用機序【片頭痛の予防】
続きを見る
また、アイモビーグは「本剤投与開始後3カ月を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮すること。」とされていますので、漫然とした投与には注意が必要です。
2022年9月1日より、在宅自己注射が可能になりました。
収載時の薬価
収載時(2021年8月12日)の薬価は以下の通りです。
- アイモビーグ皮下注70㎎ペン:41,356円
算定根拠等については以下をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】15製品+再生医療等製品(2021年8月12日)
続きを見る
まとめ・あとがき
アイモビーグはこんな薬
- 片頭痛の発症を予防する
- CGRP受容体を選択的に阻害する抗CGRP受容体抗体製剤
- 月に1回の皮下注投与
- 重度の便秘に注意が必要
これまで片頭痛の発症予防はカルシウム拮抗薬や抗てんかん薬の連日投与が基本でした。
近年ではCGRP関連薬の開発が進行していますので、新たな治療選択肢として期待されています!
-
エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】
続きを見る
片頭痛の代表的な急性期治療薬であるトリプタン製剤については以下の記事で作用機序や一覧表を作成していますので、併せてご覧くださいませ。
-
【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け
続きを見る
以上、今回は片頭痛とアイモビーグ(エレヌマブ)の作用機序について紹介しました!
参考資料・論文等
- 日本頭痛学会|慢性頭痛の診療ガイドライン2013、CGRP 関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)
- 20120309試験:Headache. 2019 Nov;59(10):1731-1742.
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