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2021年12月24日、ベージニオ錠(アベマシクリブ)の効能・効果に「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の再発高リスク乳がんにおける術後薬物療法」を追加することが承認されました!
日本イーライリリー|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ベージニオ錠50mg/100mg/150mg |
一般名 | アベマシクリブ |
製品名の由来 | 特になし |
製造販売 | 日本イーライリリー(株) |
効能・効果 | 〇ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん 〇ホルモン受容体陽性かつ HER2 陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法 |
用法・用量 | 内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはアベマシクリブとして1回150mgを1日2回経口投与する。 ただし、術後薬物療法の場合には、投与期間は24 カ月間までとする。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 50mg錠:3,258.70円 100mg錠:5,949.20円 150mg錠:8,460.10円(1日薬価:16,920.20円) |
ベージニオはCDK4/6阻害作用を有する薬剤で、2018年9月21日に「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」を効能・効果として承認されました。
イブランス(一般名:パルボシクリブ)に次いで2番手の登場です!
本日は乳がん治療とベージニオ(アベマシクリブ)の作用機序、そしてイブランスとの違いや比較ついてご紹介します☆
乳がんの概要
2011年の女性乳がんの罹患数は、約72,500人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。
最近では、北斗晶さんや、小林麻央さんが記憶に新しいと思います。
手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。
ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。
従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!
また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。
早期の乳がんの治療
早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。
場合によっては、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える治療が行われることもあります。
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パージェタ(ペルツズマブ)の作用機序と副作用【乳がん/大腸がん】
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基本的には予後良好ですが、腋窩リンパ節転移が4個以上など、再発のリスクが高いような場合もあります。
ベージニオはホルモン陽性HER2陰性で再発リスクが高い場合、術後にホルモン療法と併用して使用可能となりました!
転移のある乳がんの治療(手術不能)
発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。
乳がんは、がん細胞の性質によって、薬物療法が異なります。
- ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法
- HER2陽性の乳がん:ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)±パージェタ(一般名:ペルツズマブ)±抗がん剤
- ホルモンもHER2も陰性の乳がん:抗がん剤
最も多いとされるのが、「ホルモン陽性」の乳がんで、この場合はホルモン療法が基本です。
今回ご紹介するベージニオはホルモン陽性の乳がんに使用できる薬剤です!
ホルモン陽性乳がんの増殖メカニズム
正常な細胞では、S期→G2期→M期→G1期という順番で細胞分裂が繰り返されています。
一方、乳がん細胞では、G1期からS期への移行が「E2F」と呼ばれる転写因子によって過剰に活性化されています。
このE2Fを活性化させている因子として、
- サイクリンD
- サイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)
が知られています。
サイクリンDはエストロゲンが、がん細胞に結合することで合成が促進されています。
これらサイクリンDとCDK4/6が複合体を形成することで、E2Fが活性化され、がん細胞のG1期からS期への移行が活性化されています。
その結果、がん細胞は無限に増殖が活性化されている状態です。
従って、ホルモン陽性乳がん治療は、エストロゲンの分泌を抑制させたり、受容体への結合を抑制させたりするホルモン療法薬が中心でした。
ベージニオ(一般名:アベマシクリブ)の作用機序
今回ご紹介するベージニオは、CDK4/6を選択的に阻害する新規作用機序を有する薬剤です!
がん細胞のCDK4/6を阻害することで、E2Fの活性を抑制し、G1期からS期への移行を阻害します。
その結果、がん細胞の増殖を抑制するといった作用機序を有しています。
また、サイクリンDを抑制する目的で、基本的にはホルモン療法(アロマターゼ阻害薬、フルベストラント等)と併用して用います。
切除不能乳がんのエビデンス紹介:MONARCH 2試験、MONARCH 3試験
根拠となった臨床試験は2試験(MONARCH 2試験、MONARCH 3試験)あります。
MONARCH 3試験は、閉経後でホルモン陽性の手術不能乳がんの初回治療を対象にアロマターゼ阻害薬単剤(レトロゾールもしくはアナストロゾール)とベージニオ+アロマターゼ阻害薬を比較した第Ⅲ相臨床試験です。1)
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」で、結果は以下の通りでした。
臨床試験名 | MONARCH 3試験1) | |
試験群 | アロマターゼ阻害薬 | ベージニオ+ アロマターゼ阻害薬 |
PFS中央値※ | 14.7か月 | 未到達 |
HR=0.54, p=0.000021 | ||
奏効率† | 44% | 59% |
p=0.004 |
MONARCH 2試験は、閉経前後でホルモン陽性の手術不能乳がんの二次治療を対象にフェソロデックス単剤とベージニオ+フェソロデックスを比較した第Ⅲ相臨床試験です。2)
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」で、結果は以下の通りでした。
臨床試験名 | MONARCH 2試験2-3) | |
試験群 | フェソロデックス | ベージニオ+ フェソロデックス |
PFS中央値※ | 9.3か月 | 16.4か月 |
HR=0.553, p<0.001 | ||
全生存期間中央値 | 37.3か月 | 46.7か月 |
HR=0.757, p=0.01 | ||
奏効率† | 16.1% | 35.2% |
p<0.001 |
※PFS(無増悪生存期間):薬を投与してから、がんが大きく(増大)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
このようにベージニオの臨床試験では、ホルモン陽性の乳がんに対して、フェマーラ(一般名:レトロゾール)やフェソロデックス(一般名:フルベストラント)などのホルモン療法薬と併用することで治療効果が認められたため、基本的にホルモン療法薬と併用して使用されます。
-
【乳がん】アロマターゼ阻害薬の作用機序・副作用と薬剤一覧の紹介
続きを見る
術後療法のエビデンス紹介:monarchE試験
乳がん術後の根拠となった臨床試験をご紹介します(monarchE試験)。
本試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性で再発高リスクな早期乳がん患者さんを対象に、標準的な術後ホルモン療法群とそれにベージニオを併用した群を比較する国際共同第Ⅲ相試験です。
<再発高リスクの定義> 以下のいずれかを満たすもの
- 腋窩リンパ節転移4個以上
- 腋窩リンパ節転移1~3個かつ次のいずれかに該当する:腫瘍径5cm以上、組織学的グレード3、Ki-67が20%以上
本試験の主要評価項目は「浸潤性無再発生存(IDFS)」とされ、結果は以下の通りでした。
ホルモン療法 | ベージニオ+ ホルモン療法 |
|
2年IDFS率 | 88.7% | 92.2% |
HR, 0.75(95%C.I. 0.60-0.93)、p=0.01 |
副作用
臨床試験でみられた代表的な副作用として好中球減少、白血球減少、脱毛、疲労、下痢などがあります。
特に下痢は発現頻度が高いため、注意する必要があり、重症度に応じて減量・休薬を行います。
また販売開始から約半年で、間質性肺疾患の重篤な症例が14例報告され、うち3例は死亡に至ったとして2019年5月17日に安全性速報(ブルーレター)が発出されました。
詳しくはPMDAのホームページをご確認ください↓↓
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/esc-rsc/0001.html
用法・用量
内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはアベマシクリブとして1回150mgを1日2回、連日経口投与します。
類薬のイブランス(一般名:パルボシクリブ)は1日1回投与を3週間連日投与後、1週間休薬といった用法・用量ですので、少し異なっていますね。
術後に使用する場合には24か月までです。
収載時の薬価
収載時(2018年11月20日)の薬価は以下の通りです。
- ベージニオ50mg:3,258.70円
- ベージニオ100mg:5,949.20円
- ベージニオ150mg:8,460.10円(1日薬価:16,920.20円)
算定方法等については以下の記事をご覧ください。
-
【新薬:薬価収載】12製品(2018年11月20日)と市場拡大再算定
続きを見る
ベージニオとイブランスの違い/比較
CDK4/6阻害薬には既にイブランス(一般名:パルボシクリブ)が承認・販売されています。
ベージニオもイブランスもホルモン陽性乳がんの一次治療・二次治療に使用することができますが、一次治療の併用薬剤が少し異なっています。
また用法や妊婦への投与も異なっていますので、以下に一覧表を作成しました。
使い分けのポイント
一次治療に用いる場合、イブランスでは好中球減少、ベージニオでは下痢の頻度が高いと報告されています。
一次治療の治療効果としては両薬剤も同程度(直接比較試験はない)と考えられるため、副作用による使い分け、併用薬剤(例:施設によってはアナストロゾールしか採用がない)による使い分けができるかもしれませんね。
いずれにしてもCDK4/6阻害薬は一次治療・二次治療に共に使用されることが想定されます。
従って、一次治療にイブランス+レトロゾールを使用した場合、二次治療はベージニオ+フルベストラント、一次治療にベージニオ+レトロゾール or アナストロゾールを使用した場合、二次治療はイブランス+フルベストラントとなるのではないでしょうか。
上記のようなエビデンスは存在しませんので、今後、
- どっちを先行する方が良いのか?
- CDK4/6阻害薬は一次・二次治療で変更することに意味があるのか?
等について検討されれば興味深いと感じます。
まとめ・あとがき
ベージニオはこんな薬
- CDK4/6阻害薬でホルモン療法と併用して用いる
- 類薬はイブランス(パルボシクリブ)
- 特徴的な副作用である下痢には注意が必要
- 間質性肺疾患による死亡例が報告され、安全性速報(ブルーレター)が発出された
新規のCDK4/6阻害薬としてベージニオが承認されました。
CDK4/6阻害薬は今後、乳がんの術後療法や術前療法としての開発も期待されていますので、乳がん治療の中心的位置づけになると期待されてます!
代表的なホルモン療法薬のアロマターゼ阻害薬(AI)の作用機序のまとめ記事もありますので、併せてご覧いただければ幸いです。
-
【乳がん】アロマターゼ阻害薬の作用機序・副作用と薬剤一覧の紹介
続きを見る
以上、今回は乳がん治療とベージニオ(アベマシクリブ)の作用機序、そしてイブランスとの違い/比較についてご紹介しました。
引用文献・資料等
- MONARCH 3試験:J Clin Oncol. 2017 Nov 10;35(32):3638-3646.
- MONARCH 2試験:J Clin Oncol. 2017 Sep 1;35(25):2875-2884.
- MONARCH 2試験(追加解析):JAMA Oncol. 2020;6(1):116-124.
- monarchE試験:J Clin Oncol. 2020 Dec 1;38(34):3987-3998.
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