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2021年6月11日、悪性神経膠腫を対象疾患とするがん治療用ウイルスのデリタクト(テセルパツレブ)が条件及び期限付き(7年間)承認されました。
第一三共|ニュースリリース
基本情報
製品名 | デリタクト注 |
一般名 | テセルパツレブ(開発コード:G47Δ) |
製造販売 | 第一三共(株) |
効能・効果 | 悪性神経膠腫 |
用法・用量 | 通常、成人には1回あたり、1mLを腫瘍内に投与し、 原則として1回目と2回目は5~14日の間隔、 3回目以降は前回の投与から4週間の間隔で投与する。 なお、投与は6回までとする。 |
収載時の薬価 | 1,431,918円 |
デリタクトは国内初となる「腫瘍溶解性ウイルス」で、再生医療等製品に分類されています。
ちなみにデリタクトより以前に、腫瘍溶解性ウイルスのCanerpaturev(開発コード:C-REV)が悪性黒色腫を対象に承認申請されていましたが、その後、申請が取り下げられました。(参考:タカラバイオのニュースリリース)
今回は悪性神経膠腫と腫瘍溶解性ウイルスであるデリタクト(テセルパツレブ)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。
悪性神経膠腫と治療
脳内には神経細胞が多数存在していますが、その中でも栄養供給や神経伝達物質の伝達などを担う神経膠細胞(別名:グリア細胞)が存在しています。
神経膠腫はこのグリア細胞が腫瘍化することで引き起こされる疾患で、グリオーマとも呼ばれてています。
神経膠腫はその悪性度によってグレード1~4に分類されていますが、グレード1は良性腫瘍です(基本、手術のみで完治)。そして、悪性度の高くなる2~4の治療は以下が一般的に行われています。1)
- グレード2:手術±放射線療法±薬物療法
- グレード3:手術+放射線療法+薬物療法(テモゾロミドなど)
- グレード4:手術+放射線療法+薬物療法(テモゾロミド±ベバシズマブなど)
特にグレード4は最も悪性度が高く、膠芽腫(グリオブラストーマ)とも呼ばれ、治療成績も満足のいくものではありませんでした。
今回ご紹介するデリタクトは悪性神経膠腫の中でも、グレード4の膠芽腫に対して治療効果が期待されています!
さて、それではデリタクトの特徴である腫瘍溶解性ウイルスと特徴ついて解説していきます。
腫瘍溶解性ウイルスとは?
がん細胞に感染してがん細胞を死滅させるウイルスを総称して「腫瘍溶解性ウイルス」と呼んでいます。
アデノウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、単純ヘルペスウイルスなどのウイルスを用いた開発が進んでいますが、今回ご紹介するテセルパツレブは単純ヘルペスウイルスを用いたものです。
単純ヘルペスウイルスには以下の2種類が知られていますが、テセルパツレブはHSV-1の遺伝子を改変して作製された世界初のがん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルス製剤です!
- 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)
- 単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)
もし通常のヘルペスについて学びたい方は以下の記事で解説していますよ。
-
ファムビル(ファムシクロビル)の作用機序・特徴【再発型の単純疱疹】
続きを見る
単純ヘルペスウイルス1型は基本的には弱毒性であり、健常人でしたら7割が免疫を獲得しています。デリタクトはがん細胞内でのみ増殖することが可能ですので、正常細胞に感染することはありません。
また、予期せぬ副作用が出たとしても、抗ヘルペス薬を投与することで簡単に増殖をストップさせることができるのも特徴かと思います!
デリタクト(テセルパツレブ)の作用機序と特徴
デリタクトはがん細胞に直接注射して投与します(局所投与)。悪性神経膠腫は脳のがんのため、定位脳手術(局所麻酔)を行って投与する必要があります。
投与されたデリタクトはがん細胞に感染し、がん細胞内でどんどん増殖していきます。最終的には増殖したデリタクトによってがん細胞が破壊(腫瘍溶解)され、周囲にデリタクトが拡散されていきます。
拡散したデリタクトは別のがん細胞に次々に感染していき、腫瘍溶解を引き起こし続けることでがん細胞を死滅させていくといった作用機序です(直接的な作用)。
一方、デリタクトは正常細胞に感染しても増殖能力を発揮しないため、正常細胞にはほとんど影響を及ぼさないといった特徴もあります。
その他、死滅したがん細胞からは抗原が多量に提示されることから、体内の免疫系が活性化することも知られています。そのため、免疫チェックポイント阻害薬等の免疫に関与している薬剤と併用することで全身のがん細胞を攻撃できるといった作用も期待されています!(間接的な作用)
エビデンス紹介:国内第Ⅱ相試験
根拠となった国内第Ⅱ相臨床試験をご紹介します。2-3)
本試験は初期治療後に残存または再発した膠芽腫病変を有する膠芽腫患者さんを対象に、標準治療(手術+放射線療法+テモゾロミド)にデリタクトを上乗せした場合の生存期間について検討されました。
デリタクトは定位脳手術による腫瘍内投与(最大6回までの繰り返し投与。1回目と2回目は5~14日の間隔、3回目以降は4週間の間隔で投与)
主要評価項目である「1年生存割合」は中間解析時点で92.3%という結果でした。
副作用
主な副作用はとして、発熱(89.5%)、嘔吐(57.9%)、悪心(52.6%)、リンパ球数減少(47.4%)、白血球数減少(31.6%)等が報告されています。
重大な副作用としては
- 発熱(89.5%)
- 脳浮腫(15.8%)
- 血球減少(57.9%)
- 痙攣発作(15.8%)
- 出血(21.1%)
- 感染症(10.5%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
用法・用量
通常、成人には1回あたり、1mLを腫瘍内に投与し、原則として1回目と2回目は5~14日の間隔、3回目以降は前回の投与から4週間の間隔で投与します(投与は6回まで)。
収載時の薬価
収載時(2021年8月12日)の薬価は以下の通りです。
- デリタクト注(1mL1瓶):1,431,918円
算定根拠等については以下をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】15製品+再生医療等製品(2021年8月12日)
続きを見る
条件及び期限付承認と承認条件
今回デリタクトは「再生医療等製品における条件及び期限付き承認制度」によって承認されました。
これは少数例の臨床試験等で
- 有効性がある程度担保される
- 安全性が確認
されれば、条件及び期限を付して早期に承認されるという制度のことですね。
承認条件は以下とされたそうです。
- 緊急時に十分対応できる医療施設で、悪性神経膠腫の治療、脳神経外科手術手技に十分な知識・経験を持つ医師が、モニタリングや管理など適切な対
応がなされる体制下で使用する - 本承認に向けた申請までの期間中、全症例を対象に製造販売後承認条件評価を行う
- いわゆる「カルタヘナ法」の第一種使用規程を順守する
実地臨床でも有効性がしっかりと担保されれば正式承認の流れになるかと思います!
まとめ・あとがき
デリタクトはこんな薬
- 世界初の腫瘍溶解性ウイルス製品(条件付き承認)
- がん細胞に特異的に感染し、正常細胞には影響を及ぼさない
- 直接的な作用(がんに感染して破壊させる)と間接的な作用(体内の免疫系を活性化させる)によって抗腫瘍効果を発揮する
腫瘍溶解性ウイルスはユニークな作用機序で、正常細胞には影響を及ぼしにくいといった特徴があります。
以上、今回は腫瘍溶解性ウイルスであるデリタクト(テセルパツレブ)の作用機序やエビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
- がん情報サービス|神経膠腫(グリオーマ)
- 国立研究開発法人日本医療研究開発機構|脳腫瘍に対するウイルス療法の医師主導治験で高い治療効果を確認
- デリタクト注 添付文書
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