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ファムビル(ファムシクロビル)の作用機序・特徴【再発型の単純疱疹】

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2019年2月21日ファムビル錠250mg(一般名:ファムシクロビル)の「単純疱疹」の効能・効果に“再発型”の用法・用量が追加されました!

基本情報

製品名 ファムビル錠
一般名 ファムシクロビル
製品名の由来 ファムシクロビル(famciclovir)に由来
製薬会社 製造販売:旭化成ファーマ(株)
販売:マルホ(株)
提携:ノバルティスファーマAG
効能・効果 単純疱疹
帯状疱疹
用法・用量 <単純疱疹>
通常、成人にはファムシクロビルとして1回250mgを1日3回経口投与する。
また、再発性の単純疱疹の場合は、通常、成人にはファムシクロビルとして
1回1000mgを2回経口投与することもできる。
<帯状疱疹>
通常、成人にはファムシクロビルとして1回500mgを1日3回経口投与する。

 

再発型の前駆症状発現時に1日の服用(1日2回)で治療が完了する初の単純疱疹治療薬ですね。患者さんが単純疱疹の初期症状を自覚した時点であらかじめ処方されている薬剤を服用することが可能なPIT(Patient Initiated Therapy)と呼ばれる治療法です。

既存の抗ヘルペス薬は皮疹症状発現後にしか治療開始できず、5日間の投与が必要であった。

 

今回は単純疱疹とファムビルの作用機序・特徴、そしてエビデンスについてご紹介します。

 

ヘルペスと単純疱疹・帯状疱疹

「ヘルペス」という言葉はよく耳にすることがあると思いますは、これはヘルペスウイルスによって引き起こされる小水疱(小さいみずぶくれ)が集った「急性炎症性皮膚疾患」に分類されています。1)

 

また、感染するヘルペスウイルスの種類によって以下の2種類があります。

  • 単純疱疹:単純ヘルペスウイルス(HSV)感染による
  • 帯状疱疹:水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)感染による

 

いずれもウイルスによる初感染時には症状(単純疱疹では発熱等、帯状疱疹では水痘等)が現れますが、1週間ほどで完治します。

しかし、完治したとしてもウイルスの一部が体内に残存してしまい、免疫力の低下等によってウイルスが再活性化して再発を繰り返すといった特徴があります。

 

今回は単純疱疹について詳しく説明していきます。

 

単純疱疹の症状と治療

単純疱疹は体の全部位で起こる可能性があり、部位によって呼び方が異なります。また頻度としては以下の順です。1)

  • 口唇ヘルペス
  • 性器ヘルペス
  • 顔面ヘルペス
  • カポジ水痘様発疹症

 

口唇ヘルペスは最もメジャーな単純疱疹ですので皆様の中にもご経験された方がいらっしゃるのではないでしょうか?

 

再発型の単純疱疹の症状としては感染部位のそう痒・違和感ヒリヒリ感といった前駆症状が発現し、その後、皮疹(紅斑、丘疹、水疱、潰瘍)へと進行して徐々に治癒に至ります。

 

また治療薬としては以下の抗ヘルペスウイルス薬が投与されますが、これまでは皮疹出現後に5日間投与する治療法しかありませんでした。

  • ゾビラックス錠(一般名:アシクロビル)
  • バルトレックス錠(一般名:バラシクロビル)
  • ファムビル錠(一般名:ファムシクロビル)

 

今回のファムビルの適応拡大に伴い、前駆症状発現から6時間以内に服用を開始することで、1日2回、1日間で治療が完了します

 

このように、患者さんが単純疱疹の初期症状を自覚した時点であらかじめ処方されている薬剤を服用するといった治療法を「PIT(Patient Initiated Therapy)」と呼んでいます。

 

ヘルペスウイルスの増殖過程

単純疱疹の原因ウイルスである単純ヘルペスウイルス(HSV)は以下の過程によって増殖します。

 

  1. DNAの2重らせん構造をほどき、一本鎖DNAにする(ヘリカーゼ・プライマーゼが関与)
  2. DNAを複製する(DNAポリメラーゼが関与)
  3. 細胞分裂を行う(微小管等が関与)

 

ファムビル(一般名:ファムシクロビル)の作用機序と特徴

ファムビルの有効成分であるファムシクロビルはプロドラッグのため、経口投与された後、肝臓にてペンシクロビルに変換されます。

 

その後、ウイルス感染細胞内にてペンシクロビル3リン酸(活性型ペンシクロビル)に変換され、ウイルス増殖過程における「②DNAポリメラーゼ」を競合的に阻害することでウイルスの増殖を抑制します。

 

なお、正常細胞ではペンシクロビル⇒ペンシクロビル3リン酸の変換は起こらないため、正常細胞には影響を及ぼしにくい(副作用が少ない)といった特徴があります。

 

エビデンス紹介:再発型の単純疱疹(高用量の2回投与)

再発型の単純疱疹の根拠となった臨床試験をご紹介します。2)

本試験は再発型単純疱疹(口唇ヘルペスまたは性器ヘルペス)患者さんを対象に、前駆症状発現後6時間以内にファムビル(1,000mg)もしくはプラセボの1回目を投与し、12時間後に2回目の投与が行われました。

ファムビルは1回あたり250mg製剤×4錠(1,000mg)で、計2回投与されています

 

主要評価項目は「全ての病変部位が治癒するまでの期間」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群 ファムビル群 プラセボ群
全ての病変部位が治癒するまでの期間中央値 4.7日 5.7日
HR=1.33, p=0.008
ウイルス消失までの期間中央値 3.3日 3.8日
HR=1.36, p=0.042

 

このようにファムビル高用量の2回投与は、プラセボと比較して有意に治癒するまでの期間やウイルス消失までの期間を短縮していることが示されました!

 

用法・用量

帯状疱疹については、通常、成人にはファムシクロビルとして1回250mgを1日3回経口投与します。

 

再発性の単純疱疹の場合は、通常、成人にはファムシクロビルとして1回1000mgを2回経口投与することもできます。

木元 貴祥
木元 貴祥
再発性に使用する場合、予めの処方が可能で、初期症状発現時に患者さんの判断で服用できます。

 

ただし、以下の制限がありますのでご注意ください。2)

  • 単純疱疹(口唇ヘルペス又は性器ヘルペス)の同じ病型の再発を繰り返す患者であることを臨床症状に基づき確認すること。
  • 同じ病型の再発頻度が年間3回以上の患者であることを確認すること。
  • 再発の初期症状(患部の違和感、灼熱感、そう痒等)を正確に判断可能な患者であることを確認すること。
  • 再発頻度及び患者の腎機能の状態等を勘案し、本剤の処方時に、服用時の適切な用法・用量が選択可能な場合にのみ処方すること。
  • 初期症状発現から6時間以内に受診及び服用可能な場合はその1回の再発分、それ以外の場合は次回1回の再発分の処方に留めること。
  • 国内臨床試験は、口唇ヘルペス又は性器ヘルペスの患者を対象に本剤の有効性及び安全性の検討を目的として実施された。
  • 本剤の服用は、初期症状発現後、速やかに開始することが望ましい。[初期症状発現から6時間経過後に服用を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。]また、臨床試験において、2回目の投与は、初回投与後12時間後(許容範囲として6~18時間後)に投与された。

 

なお、治療期間については「重要な基本的注意」の項に以下の記載があります。2)

本剤は、原則として単純疱疹の治療においては5日間、また、帯状疱疹の治療においては7日間使用すること。改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、速やかに他の治療に切り替えること。

 

副作用

前述の臨床試験2)では、傾眠(1.1%)、頭痛(0.8%)などが報告されています。

 

まとめ・あとがき

ファムビルはこんな薬

  • 再発型の単純疱疹に対して前駆症状発現時から使用可能
  • 再発型の単純疱疹に対して1日(2回の投与)で治療が完了
  • プロドラッグであり、ウイルス感染細胞内で活性型に変換されてDNAポリメラーゼを阻害する

 

これまでの抗ヘルペスウイルス薬は皮疹出現後に5日間投与する治療法しかありませんでした。

しかし海外では前駆症状発現時から早期に治療を開始するといった「早期短期治療」が推奨されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ファムビルの適応拡大によって、ようやく日本でも海外と同じく前駆症状発現時から治療を開始できるようになりました。

 

以上、今回は単純疱疹とファムビルの作用機序・特徴、そしてエビデンスについてご紹介しました☆

 

引用文献・資料等

  1. 日本皮膚科学会「ヘルペスと帯状疱疹
  2. ファムビル錠 添付文書

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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