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2019年9月20日、「鼓膜穿孔」を対象疾患とする初の医薬品のリティンパ耳科用(トラフェルミン)が承認されました!
ノーベルファーマ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | リティンパ耳科用250μgセット |
一般名 | トラフェルミン(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | 英語で再生治療を意味するRegenerative treatmentの「リ」と、 英語で鼓膜を意味するtympanic membraneの「ティンパ」に由来 |
製造販売 | ノーベルファーマ(株) |
効能・効果 | 鼓膜穿孔 |
用法・用量 | 記事内参照 |
収載時の薬価 | 32,691.30円 |
有効成分のトラフェルミンはヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)で、既に以下の医薬品が承認・販売されています。
- リグロス歯科用液キット:歯周炎による歯槽骨の欠損
- フィブラストスプレー:褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)
これまで鼓膜穿孔に有効な治療薬はなく、経過観察もしくは手術が一般的でした。
今回は鼓膜穿孔とリティンパの作用機序についてご紹介します。
音の認識と鼓膜の役割
耳の構造は大きく分けて
- 外耳(がいじ)
- 中耳(ちゅうじ)
- 内耳(ないじ)
の3つの部位から成り立っています。
鼓膜は外耳道の奥の中耳との境にある半透明の薄い膜状の器官で、空気中の音を捉える役割をしています。音を捉えた鼓膜が振動することで、音を振動として中耳に伝達していきます。
その後、振動は中耳⇒内耳⇒蝸牛(かぎゅう)へと伝達され、最終的には感覚細胞によって電気信号に変換された後に大脳へと伝わります。
このように最初に音を振動として捉えることのできる鼓膜は音の認識に非常に重要な器官というわけです。
鼓膜穿孔の症状・治療
鼓膜穿孔とは、その名の通り、鼓膜に穴が開いてしまった状態です。
原因としては怪我が最も多く、次いで中耳炎などの感染症だと言われています。1)
綿棒を突っ込み過ぎた、耳に平手打ちされた、気圧の変化、ボールが耳に当たった、等々、怪我の原因は様々です。
穴が開いてしまうと急に痛みが生じ、出血・難聴・耳鳴りを呈することもあります。
通常、鼓膜は自然に治ります(1~2カ月程)。しかし穴が大きすぎる場合や2カ月経過しても自然に治らない場合、手術による修復が必要となることもあります。
感染症に起因する場合や膿が溜まっている場合には抗菌薬等が投与されることもあります。
リティンパ(トラフェルミン)の作用機序
リティンパはヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)製剤で、鼓膜穿孔に対する初の医薬品です!
読み方:bFGF=ビーエフジーエフ
bFGFは通常の生体内にも存在していて、細胞の修復活性や血管修復(血管新生)作用等を担う因子です。
リティンパは製品に添付されているゼラチンスポンジに、トラフェルミン(bFGF)の薬液を浸して鼓膜に詰めて使用します。
bFGFの作用により穴の開いた鼓膜の再生・修復が促され、通常よりも早く鼓膜が回復すると期待されています。
エビデンス紹介
根拠となった国内第Ⅲ相試験(非盲検単群)をご紹介します。2)
片側の耳に6か月以上の鼓膜穿孔を有している患者さんを対象に、リティンパを穿孔部位に適用させた際の有効性と安全性を確認した臨床試験です。
本試験の主要評価項目は「観察期16週目の鼓膜閉鎖の有無に基づく鼓膜閉鎖割合」とされ、結果は75%(95%信頼区間:50.9-91.3)であり、あらかじめ設定された信頼区間下限値の閾値(50%)を超えていました。
参考までに、海外で行われたプラセボ対照比較試験3)でも同様にリティンパの有効性が確認されています!
用法・用量
鼓膜用ゼラチンスポンジに100μg/mLトラフェルミン(遺伝子組換え)溶液全量を浸潤させて成形し、鼓膜穿孔縁の新鮮創化後、鼓膜穿孔部を隙間なく塞ぐように留置します。
ちなみに、ゼラチンスポンジは直径約1.5cm、厚さ約1cmの円柱状だそうです。
副作用
主な副作用として耳漏(30.0%)が認められています。
重大な副作用としては「ショック・アナフィラキシー(頻度不明) 」が挙げられていますので特に注意が必要です。
収載時の薬価
薬価収載時(2019年11月19日)の薬価は以下の通りです。
- リティンパ耳科用250µgセット: 32,691.30円
有用性加算の根拠
- 鼓膜穿孔を対象とする医薬品は薬価収載されておらず、当該効能では、本剤が新規作用機序医薬品となる。
- 鼓膜穿孔の自然閉鎖が見込まれない患者を対象とした国内臨床試験では、鼓膜閉鎖割合が75%、聴力改善割合が100%であったことから、一定の臨床的意義はある。また、鼓膜穿孔に対する既存の手技では、侵襲性を伴うものがある一方、本剤による治療は薬剤を染みこませたゼラチンスポンジを留置する処置であり、患者にとって手術に伴う負担が減少し、利便性が高いものである。
- 以上を踏まえ、有用性加算(Ⅰ)(A=35%)を適用することが適当と判断した。
収載時の算定根拠については以下の記事で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】14製品と市場拡大再算定(2019年11月19日)
続きを見る
まとめ・あとがき
リティンパはこんな薬
- ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)製剤
- ゼラチンスポンジをbFGFの薬液に浸して鼓膜に詰める
- bFGFの細胞修復・血管新生作用等により鼓膜の再生が促される
鼓膜穿孔に対する治療法としては自然経過か手術しかありませんでしたが、リティンパは初の治療薬として登場しました!
以上、今回は鼓膜穿孔とリティンパ(トラフェルミン)の作用機序について解説しました。
引用論文・資料等
- MSDマニュアル家庭版|鼓膜穿孔
- リティンパ耳科用 審査報告書
- 海外比較試験:Otol Neurotol. 2011 Oct;32(8):1218-23.
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